ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 72. 天国へのぼるガーネット

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「ガーネット!!...ガーネット!!...」
姫様が自分の名を呼ぶ声が聞こえる。
気が付くと、ガーネットは空中に浮いており、下には、動かなくなった抜け殻の体を揺り動かしている、姫様の姿が見えた。

「私...」
自分の手を見るガーネット。
うっすらと透けて見えた。

「死んだんだ...」
しかし、不思議と悲愴感はなかった。

「姫様...あんなに一生懸命になって...相変わらずお優しいんですね!」
必死に何かできないか、もがいている姫様を見て、笑顔になるガーネット。
「あっ!」
姫様が人工呼吸を始めた。
「ダ、ダメです!!姫様の大事なファーストキスを私なんかに...」
ガーネットが赤くなっていると、空から天使が現れた。
窓を通過すると、部屋へと入ってくる。

「ガーネットよ!お前は善人であったので、天国へと召される...ついてくるがよい!」
天使がそう言うと、ガーネットの体が部屋の外に出され、そのまま空へと昇っていく。

どんどんと見えなくなっていく姫様の姿。

「さよなら、姫様...どうか私のことは忘れて、好きな人と幸せになってください...」
姫様に向けて、最後の言葉を述べるガーネット。

(あの時、『姫様に好きな人がいる』と聞いた時、私は一瞬、目の前が真っ暗になりました...)
ガーネットは、旅に出た日の朝の、姫様と王様の会話を思い出していた。
(必死に作り笑いしましたけど...そうですよね!姫様とは身分が違います!...私などと...)
寂しそうにうつむくガーネット。
(でも、思ったんです!!これは、私に良くしていただいた姫様に恩返しをするチャンスだと!!)
しかし、ガーネットは再び、顔を上げる。
(ですから、私は危険を承知で『奇跡の雫』を探す旅に出ることを決意しました!!)
その時のことが頭をよぎったのか、ガーネットの目に決意の色が浮かぶ。
(姫様がついてこようとされたのには驚きましたけど...申し訳ありません!それだけは...姫様を危険な目にあわせるわけにはいかなかったのです!!...ひどいことを言ってごめんなさい...)
ガーネットは『ついてきたら絶交』と言ってしまったことを反省する。
(結局、自分では何もできず、アメジストさんたちやアリーのおかげで、なんとか、雫を手に入れることができました!ホントに感謝しかありません!!)
旅を思い返すと、助けられてばかりだった。自分が不甲斐なく思えてくる。
(そして、姫様に少しだけ恩返しをすることができました!!...死んじゃいましたけど...これで良かったんです...)
ガーネットはにっこりと微笑む。
(こんなこと言うと、軽蔑されるかもしれませんが...)
少し、間をとるとガーネットは続けた。
(姫様が他の誰かと仲睦まじくしていらっしゃるのを、心から祝福することはできません...)
寂しそうな顔のガーネット。
(もちろん、結婚は祝福します!!でも...お二人がご一緒におられるのを近くで見ているのは...)
ガーネットの顔が曇る。
(きっと、嫉妬の念が生じることでしょう...それくらいならいっそ!!)
思い詰めた様子のガーネット。
(これで...良かったんです...)
ガーネットが寂しく笑った時、天上の門が見えてくる。
(さよなら!綺麗で優しい姫様...愛してしまった私をお許しください...)
ガーネットがゆっくりと目を閉じた時、

「ん?」
天使が突然、声を上げた。
「??」
ガーネットが不思議に思っていると、
「どうやら、お前がここに来るのはお預けになったようだ!」
天使が口にする。
「どういう...キャ~~~~~~!!」
ガーネットが言葉の意味を聞こうとするが、その体は地上に向け、恐ろしい速さで落下していった。

(キャ~~~~~~!!死んじゃう!!)
ガーネットはその感覚に、死んでいるにもかかわらず、そんなことを思ってしまう。それと同時に、
<バサッ!>
メイド服のワンピースが舞い上がる。
風の影響は受けないはずだが、体が下に引っ張られている反動だろうか?
「キャッ!」
丸見えになってしまう下着。
前だけは隠そうと、必死になって、両手で服を押さえるガーネットだが、それが精一杯だ。
ワンピースの後ろからは、綺麗なおしりの形にくっきりと浮かび上がる、ピンクの布が見えていた。
落ちていく恐怖感と、おしりが見えてしまっている恥ずかしさに耐えていると、王城が視界に入ってきた。

(ぶつかる!!)
外壁に当たる瞬間、目を閉じるガーネット。
しかし、衝撃はない。
「・・・」
ガーネットが恐る恐る目を開けると、城の中を幽霊のように通り抜けていくのが分かった。
やがて、姫様の部屋にたどり着くと、そこには、

「姫様?...それに...アリーと大賢者様?!」
床に寝ている自分を取り囲む、3人の姿がハッキリと見て取れた。そして、

<スポッ!>
横たわった抜け殻の体にすっぽりと、収まる。
<パチッ!>
目を開けると飛び込んできたのは、

「ガーネット!!」
涙の跡が残った姫様の顔だった。
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