ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 73. 真・奇跡の雫

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「ガーネット!!ガーネット!!」
「姫様...どうして...」
再び、目を涙でいっぱいにしながら、抱きしめてくる姫様に、いまだ、状況が理解できていないガーネットがつぶやく。
「本当に良かった!!ガーネット~~~~!!」
しかし、姫様は感極まった様子で話にならない。
すると、サンストーンが口を開いた。

「まさか、本当に生き返るとはねぇ...」
「えっ?!サンストーンが言うから飲ませたんじゃない!!確信はなかったの?!」
その言葉にアリーが驚いている。
「えっ?!飲ませたって...」
ガーネットが床を見ると、空になった魔法のガラス瓶が転がっていた。

「そりゃ、初めてのケースだから、誰にも分からないじゃないか!」
その間にも、サンストーンがアリーに答えている。
「なら、なんであんな自信たっぷりに...」
アリーが聞くと、
「だって、そうしないとサファイア姫が何するか分からなかったでしょ!」
「そっか...」
サンストーンの返事にアリーは納得したようだ。

「えっと...なんの話...」
ガーネットが途方に暮れながらも、なんとか口にした言葉に、
「そうだね!僕たちがこの部屋に来たところから話そうか...」
サンストーンが状況を説明しだした。

〇・〇・〇

「ガーネット~~~~!!...ガーネットがいない世界なんて!!」
姫様はナイフを手にすると、自分ののど元に当てた。その瞬間、
「いけない!!...エレキ!」
アリーとともに姫様の部屋に飛び込んできたサンストーンが魔法を使った。
<バチッ!>
すると、姫様の手がしびれる。
<カラン!>
ナイフが床に落ちた。
「ダメだよ、そんなことしちゃ~~~~!」
アリーがすかさず、落ちたナイフを取り上げた。

「だって、ガーネットが!!...ガーネット~~~~~!!」
姫様は両手を顔に当て、号泣し始めてしまった。
「もしかして...」
アリーが、床に倒れているガーネットを見て、つぶやくと、
「おそらく、自分の持つ全ての生命力を使って、ここまで走ってきたんだろう...恐れていたことが現実になるとは...」
サンストーンも無念そうな顔をする。その時だった。

<ピカ~~~~~~ッ!!>
姫様の足元に転がっていた魔法のガラス瓶が、まぶしく輝き始める。

「なに?!」
「これは...『奇跡の雫』が変化しようとしているのか!!」
目を見開いているアリーと、その原因を必死で考えているサンストーン。

しかし、その輝きは消えることはなく、ガラス瓶からいつまでも光を発していた。

「これはまさか!!」
サンストーンが叫ぶ。
「なに?」
アリーの問いに、
「『奇跡の雫』は完成形ではなかったのか!!」
サンストーンが口にする。
「どういうこと?」
再び、アリーが聞くと、
「『七色の奇跡の雫』は清らかな心で『奇跡の雫』に変わる!!でも、その先があったんだ!!」
サンストーンが興奮した口調で答えた。
「その先?」
ピンとこない様子のアリーに、サンストーンは説明する。
「『奇跡の雫』が更なる自己犠牲をその目にした時!それは真の完成形に至る!!いわば『真・奇跡の雫』!!」
「真・奇跡の雫...」
アリーのつぶやきに、サンストーンは続けた。
「これならきっと、ガーネットを救える!!...サファイア姫!すぐにそれをガーネットに飲ませてください!!」
その期待に満ちた声を聞いた姫様は、
「...本当?」
そっと、光っているガラス瓶を拾い上げる。
「急いで!!死んでから時間が経つと効かなくなるかもしれない!!」
サンストーンの切羽詰まった声に、
「分かった!!」
姫様は涙を拭くと、ガラス瓶のふたを開け、ガーネットの口に流し込んだ。

〇・〇・〇

「そして、今に至るというわけだ...」
サンストーンが話を結んだ。

「ガーネット~~~~!!ホントに良かった~~~!!」
まだ、泣いている姫様。
「良く分かりませんけど、そんなことのために貴重な『奇跡の雫』を?!」
ガーネットが呆れた様子でそう言うと、
「『そんなこと』?!ガーネットが死んじゃったら、『奇跡の雫』に意味なんてないわ!!」
姫様は断言する。
「でも、姫様には好きな人がいらっしゃって、その方と結婚をご希望なのでは...」
ガーネットが確認すると、姫様は間髪をいれずに答えた。
「だから、ガーネットが結婚してくれるんでしょ?そのために危険な旅に出たんじゃ...」
「・・・」
呆気にとられているガーネットを見て、姫様の顔色が変わる。
「まさか...私の勘違い?!」
血の気が引いている姫様を前に、
「えっと...それって...姫様の好きな人は...」
信じられない様子で、途切れ途切れに口を動かすガーネット。
「...ガーネットなの!...迷惑だった?」
さっきとは違う意味で泣きそうになる姫様。
「い、いえ、決して!!...しかし、私は一介のメイド!!姫様となど...」
慌てて、そうは言ったものの、まだ、ガーネットは戸惑っているようだ。
「そんなの関係ないわ!!私、チャンスだと思ったの!!お父様は『誰であろうと認めてくれる』とおっしゃった!だから、ガーネットが『奇跡の雫を手に入れる』と言ってくれた時はうれしくて!!」
姫様の話に、
「ほ、本当に私でよろしいので...」
ガーネットは少し、実感が湧いてきたようだ。姫様に確認をとる。
「本当もなにも、ガーネット以外と結婚するくらいなら死んだ方がマシだわ!!」
姫様の言葉を聞いたガーネットは、
「『死ぬ』なんておっしゃらないでください!!姫様が死んだら、私も死にます!!」
悲しそうな顔で、断言する。
「私だって同じよ!!ガーネットが死んだら、一緒に死ぬわ!!だから...」
すると、同じことを叫んだ姫様は、一拍置いた後、続けた。
「ムチャしないでね!!今回の旅だって、何度ハラハラしたか!!」
姫様が眉を寄せると、
「えっ?!なぜそれを...」
ガーネットが驚いている。
「それは!!」
姫様は失言を後悔しているようだったが、思い切ったように口を開いた。
「私、実はマリ...」
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