ガーネットのキセキ

世々良木夜風

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Maid 75. 新たな旅立ち

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「姫様...」
その日の夜。同じベッドで眠っている姫様の、安らかな寝顔を見て、ガーネットがつぶやく。
ちなみにさすがに裸ではない。姫様の寝間着を拝借していた。

「なに?」
姫様が目を開ける。
「も、申し訳ございません!!起こしてしまいまして!!」
ガーネットが慌てて、謝ると、
「いいのよ!私も眠れなかったの!お話しましょ!」
姫様は優しく答える。

「あの...やっぱり...いいです...」
しかし、ガーネットは目を逸らしてしまった。
「どうしたの?私と一緒じゃ...イヤ?」
悲しそうな姫様の声。
「そ、そうじゃありません!!...その...目を合わせるとドキドキしてしまいまして...」
それに対し、即座に否定したガーネットが、頬を染めながら理由を述べると、
「...私もよ!愛しのガーネットとこういう形とはいえ、ベッドをともにしているなんて...」
姫様の顔も赤くなった。

しばらく後、
「...姫様!」
「な~~~に?」
思い切って声をかけてきたガーネットに、甘えるように答える姫様。
「その...当分の間、留守にいたしますので...」
「うん...」
言いにくそうなガーネットの言葉を、ゆっくり待つように返事をすると、

「...その...お顔を...もっと良く見せてもらってもよろしいですか?」
ガーネットは顔を真っ赤にしながら口にした。すると、
「もちろん!!」
姫様は顔を近づけてくる。

「姫様のお顔...とっても綺麗です...近くで見たら...尚更...」
ガーネットが感嘆のため息を漏らす。
「ガーネットもとっても可愛いわ!これが私のものになるなんて...ってやらしい意味じゃないわよ!!」
姫様はうっとりとした声を出したが、慌てて、言い訳をする。
「ふふふ!結婚してもしなくても、私は姫様だけのものですよ!」
そんな姫様にガーネットは微笑みかける。すると、

「じゃあ...ガーネットに約束してもらいたいことがあるの!!」
姫様が真面目な顔に変わると、話を切り出した。
「なんでしょうか?」
ガーネットの問いに、
「絶対、『無理はしない』こと!!それと『命は大切にする』こと!!...そして...『焦らない』こと...これだけは守ってね!!」
姫様がガーネットに約束を迫る。
「...はい!分かりました!約束します!」
ガーネットはうれしそうに誓った。
(姫様、相変わらずお優しい...それに...)
ガーネットは自分が死んだと分かった時、姫様が跡を追おうとしたことを思い出す。
(これは姫様のためでもあるんだ!!)
自分を大切にすると、心に決めるガーネット。

しばらく、至近距離で、顔を見合わせていた二人だったが、
「ガーネット...」
姫様が色っぽい声を出す。
「なんですか?姫...」
そこでガーネットは言葉を止めてしまった。
「・・・」
姫様が潤んだ目で自分を見つめている。
その顔はほんのり、紅潮していた。
「ダメです!そんな目で見つめられたら...」
そう言いながらもガーネットの唇は、吸い寄せられるように、姫様に近づいていく。
「キスくらい...いいよね...」
姫様がゆっくりと目を閉じた。
「姫様!!」
「ガーネット!!」
二人は長い間、唇を重ね合ったのだった。

☆彡彡彡

翌朝、城門で、
「では、行ってまいります!!」
新しいメイド服と下着に身を包んだガーネットが、凛々しく出発の挨拶をする。
「頑張ってね!ずっと見てるから...」
姫様の言葉に、
「あの...宿にいる間だけは...」
ガーネットが恥ずかしそうに答える。
「ふふふ!分かってるわ!見ないから、ありのままのガーネットでいて!」
姫様が、顔をほころばせて言うと、
「あ、ありのままって!!」
思い当たることがあるのか、ガーネットの顔が耳まで真っ赤になる。
「そういう意味じゃなくて、『リラックスして』ってこと!!」
誤解を解きながら、姫様は思っていた。
(ガーネットは私の前だと、自分を良く見せようとする...気持ちは分かるけど...やっぱり、本当のガーネットを知りたい!!...これはある意味チャンスだわ!)
「はい...」
小さくうなずくガーネット。

「話は終わった?」
そんな二人に、さっきからヒマそうにしていたアリーが声をかけると、

「では、改めて!!...行ってまいります!!」
真面目な顔で、挨拶をし直すガーネット。
「待ってるわ!」
姫様の言葉に、深く礼をすると、後ろを向き、歩きだした。
「またね~~~~!」
アリーも手を振ると、ガーネットについていく。


しばらく歩いていると、
「ミャ~~~~!」
マリンが姿を現した。
「マリン!!」
うれしそうに抱きしめるガーネットと、
「すぐ、会えたね!」
意味ありげなことを口にするアリー。
「ミャ~~~~!!」
マリンはというと、きつく胸に押し当てられ、顔を赤くしていた。

「これで、みんな揃ったね!」
ガーネットは二人に笑いかける。
「今度はどんな旅になるのかな~~~!」
興味津々といった様子のアリー。
「ミャ~~~~!」
マリンも楽しそうな声を上げるが、
(こ、今回の旅も...ありのままの姿のガーネットを...)
心の中では、先ほどは否定したことを考え、ワクワクしていたのだった。

「姫様!きっと『奇跡の雫』を手に入れて帰ってまいります!!」
ガーネットはもう一度、気合を入れ直すと、街の門を出ていくのだった...
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