ローズマリーの冒険

世々良木夜風

文字の大きさ
上 下
20 / 59

Episode 20. 木陰で休憩

しおりを挟む
「あ~~~~!!生き返る!!」
水筒から水を飲むとローズが心底、幸せそうな声を上げる。

ここは、街道から少し離れた場所にある木陰。
朝から歩きっぱなしの二人は、ここでしばらく休憩を取ることにした。
地面には大きな布が敷かれている。マリーが気を利かせて持ってきたものだ。
周りは大草原で風が吹きわたり、気持ちがいい。
また、見晴らしがいいので魔物の警戒にも持って来いだった。

「ローズちゃん、頑張ったもんね!!たくさん飲んで!」
マリーがその様子を微笑ましそうに見つめている。
「ぷはぁ!冒険の合間の水は最高の御馳走よね!!マリーも飲むでしょ?」
ローズはそう言って、マリーに水筒を渡す。
「えっ!!いいの?!」
なぜかひどく驚いた様子のマリーにローズは言う。
「マリーも長時間、歩いて喉渇いたでしょ?いいも何も二人の水だし...」
マリーたちは水筒を一つしか持ってきていなかった。
個別に持ってもいいのだが、荷物がかさばるので二人分、まとめて入れてきたのだ。
足りなくなれば、転移石でいつでも家に補充に帰れるので問題なかった。
「・・・」
じっと水筒の口を見つめるマリー。
しかし、すぐに思い切ったような顔をすると、水筒に口をつける。
(さっきまでここにローズちゃんのお口が...)
マリーの顔が赤くなる。
水というよりも水筒の金属の味を強く感じる自分がいた。
「はぁ...はぁ...」
荒い息づかいのマリー。
その様子を見たローズは、
「もう!マリーったら!!そんなに頑張って飲まなくても水は逃げないわよ!!」
そう言って笑う。
しかし、マリーはそんな言葉など聞こえなかったように、躊躇いがちに口にした。
「あ、あの...と、とっても...良かったよ...次はローズちゃんが飲んで!」
水筒を差し出すマリーの頬が赤い。目も潤んでいた。
「えっ!あたしはさっき飲んだけど...じゃあ、もう少しだけ...」
そう言ってローズが水筒に口をつける。
(ロ、ローズちゃんが...私の...口をつけた場所を...)
マリーの目がローズの口に釘付けになる。
「はあ!やっぱりいいわね!!」
ローズの言葉を聞いたマリーは、
「よ、よかった??...うれしい...」
そう言って幸せそうな顔で微笑んだ。
「ふふふ。大袈裟ね!マリーは!!」
ローズも思わず笑顔になってしまう。
二人はしばらく笑顔で見つめ合った...双方に解釈の違いは存在したが...

「あっ!焼き菓子あるんだ!!食べよ!!」
マリーが背負い袋からお菓子を取り出す。

こういう事が出来るようになったのも、ドラゴンを倒して大金を手にしてからだ。
それまでは一日、二食。
パンと野菜中心の料理のみ。タンパク源はハムとチーズくらいだった。それもあまり多くは食べられない。
しかし、今は鶏や豚などの肉料理も食卓に上るようになり、お昼に間食を取る余裕もできた。
金貨100枚は現在の日本の通貨に換算すると一千万円近くになる。
魔法の防具で半分以上、使ってしまったが、それでもかなりの額が残っている。
先の見えない冒険者生活とはいえ、仮免の時代とは雲泥の差があった。

「あっ!ありがと!!これ美味しいのよねぇ...こんなものが食べれるようになるなんて...」
ローズはマリーからお菓子を受け取ると、うれしそうにかじりつく。

お菓子もまあまあ高価な為、貧乏人には高嶺の花だ。
普通の庶民も何か特別なことがあった日に食べるくらいだった。
マリーたちは今は毎日でも食べられる。

お腹が満たされると、ローズは少し眠くなったようだ。
「ふぁぁぁあ!あたし、ちょっと寝ようかしら?...悪いけど見張りお願いできる?」
ローズはそう言うと、ゴロンと横になる。
そして、背負い袋を枕にして眠りだした。


「ス~~~~...ス~~~~...」
ローズが気持ちよさそうに寝ている。
(ふふふ!ローズちゃん、頑張ったもんね!!...でも可愛い寝顔...)
マリーは微笑ましげにその様子を見ていたが、やがてその寝顔の虜になる。
(もっと...近くで...)
マリーはローズに近づくと、顔を至近距離で眺め始めた。
(綺麗...すべすべでくすみ一つない...可愛いな...恋人になったら毎晩、見てられるのかな?)
マリーはそんな事を考えてしまう。
その時、一際強い風が吹きわたった。
「わぁ!気持ちいい!!」
ずっと歩いてきて疲れた体にその風はとても心地よかった。マリーはつい声を出してしまう。
「うう...ん...」
それに反応したのかローズが軽くうめく。
(いけない!!静かにしないと!!)
そう思ったマリーが、ローズの顔から離れる。
そしてローズの全身を見ると、
「っっ!!」
危うく、大声を出すところだった。
というのも、ローズのドレスが風で腰まで捲れ上がり、下着が丸見えになっていたのだ。
(な、直してあげないと!!)
マリーはローズの腰の辺りに移動する。そして、
(可愛い...ローズちゃんの下着姿、こんな近くで見るの初めて...)
ローズのつけた可愛い下着に見入ってしまった。
(いけない!!そうじゃなくて早く、直してあげないと!!)
マリーは軽く首を振って邪念を吹き飛ばすと、ローズのドレスの裾に手をかける。
その時、顔がローズの下着のすぐそばにまで近づいてしまった。
(ロ、ローズちゃんの...ここ...こんなに...顔を近づけて...)
マリーは真っ赤になるが、そこで、
(あっ!下着がほつれてる!!...今なら直せるけど...)
ローズの下着のほつれに気づいてしまった。
ハサミで切ってやればとりあえずは大丈夫だろう。後で繕ってやればいい。しかし、裁縫道具は家に置いてある。
(一度、家に戻って...って転移石はローズちゃんの背負い袋の中!!今、枕にしてるから、取ろうとしたら起こしちゃう!!)
その方法は使えなかった。
(ど、どうしよう...今、直さないとほつれが広がって...買ったばかりなのに...)
マリーは迷ってしまう。
(ローズちゃんが起きてから...ってどう説明するの?!下着、見たのがバレちゃうじゃない!!)
そして考えた末、ある結論に思い至った。
(わ、私、今日はローズちゃんとお揃いの下着だよね...)
マリーの顔が真っ赤になる。
(わ、私のをはいてもらって...私がローズちゃんのをつけたら...私はそんなに激しく動かないから、今日一日くらいは大丈夫かも...)
要するに二人の下着を交換しようということだ。それの意味するところを考えると、マリーは躊躇わずにはいられなかった。
(わ、私はいいけど...ローズちゃんは私のなんか、はきたくないよね...)
そう思いながらも、ローブの中に手を入れると、スッと下着を下ろした。
そして広げて汚れを確かめる。
(だ、大丈夫...だよね...)
注意深く見たら、気づくかもしれないが、普通に見る分には綺麗なままだった。
(においはと...)
下着に鼻を当て、大きく息を吸う。
(大丈夫!...多分...)
注意してにおいを確かめたが、気になるほどではなかった。
(・・・)
じっとローズの下着を見つめるマリー。
しばらく踏ん切りがつかなかったが、ついに心を決めた。
(これはローズちゃんの為なの!!)
そして、まずはドレスの裾を直す。
(こ、このままじゃ見えちゃうもんね!!将来はお互い見せ合うことになるとは思うけど...今は...まだ...)
そう頬を染めながら考えるマリー。しかし、時間をかけるとローズが起きてしまうかもしれない。
(えいっ!!)
マリーは思い切ってローズのドレスに手を突っ込むと下着を下ろした。
(こ、これが...ローズちゃんの...脱ぎたての...)
思わず下ろした下着を見つめるが、
(ダ、ダメ!!今はとりあえず、急がないと!!)
そう考えると自分の脱いだ下着をローズにはかせる。
(わ、私のつけた下着を...ローズちゃんが...)
そして、今度はローズの脱いだ下着をそっと身につけた。
下着がそこに触れた瞬間、
(ロ、ローズちゃんの...あそこに触れた布が...私の...ここに...)
マリーは真っ赤になる。体が火照ってくる。
目を閉じていると、頭の中が変な気持ちでいっぱいになりそうだった。その時、
「んん...マリー?そばにいてくれたの?」
ローズが目を覚ました。
「ロ、ロ、ロ、ローズちゃん!!わ、わ、私、仕方なく!!決してやましい気持ちでしたわけでは!!」
マリーが慌てて言い訳をする。
「ん??何の話?...まあ、いいわ!ひと眠りしてスッキリしたわ!!でもなんかドレスの中の感覚が...」
ローズは首を捻っている。
「な、な、なんでもないよ!!気のせいじゃない?!それよりもう大分、時間も経ったし、出発しない?!」
その様子を見たマリーが大慌てで言う。
「そうね!汗に濡れてた下着が乾いてる気がしたんだけど...多分、寝てる間に乾いたのよね!さあ、出発よ!!」
「う、うん!!」
そう言うローズの言葉を受けて、マリーは大急ぎで荷物を片付けるのだった。

そしてその日の道中、マリーの意識はある一点に集中していた。
(ローズちゃん...ローズちゃんを感じるよ!...いつか...布越しじゃなく...直接...)
そんなことを考えながら顔を真っ赤にしているのだった。
しおりを挟む

処理中です...