ローズマリーの冒険

世々良木夜風

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Episode 29. もう一度トロルロードの拠点へ

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「なんですの?」
スカーレットはローズの『条件』とやらを聞いてきた。
「トロルロードの集落までの道のりは別行動でお願いしたいの。向こうで落ち合って、向こうで別れましょ!」
「なんでそんな面倒なことを?」
ローズの答えにスカーレットは怪訝な顔をする。
「そ、それは...」
ローズは咄嗟に説得力のある返事が出てこない。
転移石の事は秘密である以上、仕方のない事だ。
マリーの方を見るが、マリーも何も浮かばないようで困った顔をしている。
すると意外な所から助け船が出た。
「お嬢様。お二人は夜は二人だけで過ごしたいのでは?」
それはワカクサだった。するとスカーレットは、
「あっ!そういう事ですのね!!...そうですわね...わたくしたちもそちらの方が都合がいいですわ...」
その言葉に思い当たることがあったようで、納得してくれる。何故か少し顔が赤くなっていた。
「私たちは少し西に行った場所にある泉に寄ってから向かうつもりですが、お二人はどう行かれるので?」
どうやら別行動をすることは了承してくれたようだ。ワカクサが行程がぶつからないように二人の予定を聞いてくる。
「あたしたちはまっすぐ向かうわ!!多分、あたしたちの方が早く着くから、向こうで待ってるわね!」
ローズがそれに答えた。
「いいんですの?途中で水浴びしなくても?」
スカーレットが、少し心配そうに聞いてくるが、
「大丈夫!あたしたちは家に...じゃなくて...その...」
ローズがまた答えに窮すると、
「あっ、そういうプレイがお好みで...分からなくもないです...お嬢様は綺麗好きすぎて...」
「ワカクサ!!」
またワカクサが勝手に理解してくれた。
溜息を吐くワカクサをスカーレットが真っ赤になって叱る。
不思議に思ったマリーたちだったが、とりあえず問題はないようなので出発することにした。
「と、とにかく、あたしたちは行くわね!!場所は分かってるわよね!」
ローズの言葉に、
「もちろん、確認してから行きますわ!!マスター!地図をお願い!」
スカーレットがマスターに地図を要求する。
「分かってますよ!ただ、往復1週間の旅だ。お父上にきちんと報告してから行ってくださいね!」
マスターがスカーレットに念を押す。
「もう!急いでますのに...面倒ですが仕方ありませんわ!!いつもみたいに早口でしゃべって、お父様が口を開く前に家を出ましょう!」
「はい。お嬢様」
「やれやれ...シェナリー伯も大変だ...」
スカーレットの言葉にマスターは溜息を吐くのだった。

☆彡彡彡

「分かってくれて良かったね!」
トロルロードの拠点への道中、マリーが口を開く。
「そうね!あたしは構わないけどマリーは毎日、お風呂に入りたいんでしょ?」
そうローズが聞いてくる。
「えっ?!私の為に言ってくれたの??...ありがとう...」
マリーは申し訳なさそうに、そしてどこかうれしそうに答えた。
「まあ、あたしも重いキャンプ道具、持ち歩くのイヤだしね!!それに、やっぱり二人が気楽でいいわ!!」
ローズはマリーの様子を見てそう言う。どうやら気を遣ってくれたようだ。
「う、うん!!」
マリーはそれに気がついたのか笑顔で頷く。
ローズは少し照れたようで鼻を掻いていたが、
「それにしても、やけにあっさり納得してくれたわね!スカーレットたちが何か意味ありげな事を言ってたけどどういうことかしら?」
そう言って、話題を変えた。
「さあ...それにスカーレットちゃんたちも二人で行きたいみたいだったよね!...もしかして...」
マリーは何かに気づいたようだった。
「それ、あたしも思ってたのよ!!」
ローズも同意見のようだ。
「「向こうも転移石を持っている!!」」
二人の意見は奇しくも同じだった。
「それなら納得だよね!!シェナリー伯爵ほどの家ならあってもおかしくはない...でもそれならなんで泉に寄る必要があるんだろ...」
マリーが首を傾げるが、
「ここら辺の地理に詳しい人なら寄るのが当たり前だと思ったからじゃない??むしろ『まっすぐ向かう』って言ったあたしたちが怪しいかも...」
ローズの推理に、
「そうだね!私たちも気をつけないと...今回は分かってくれたみたいだけど...でも、なんか変なこと言ってたよね?」
マリーがワカクサのセリフを思い出す。
「『プレイ』っていうのがよく分からないけど、冒険者なら1週間くらい水浴びなしでも平気な人も多いし、そういう事なんじゃない??スカーレットは貴族だけあって、『綺麗好き』だって言ってたしね!!」
「そっか、そういう意味だったんだ!」
ローズの説明に、マリーはようやく納得がいったようだった。
「でも、転移石があるのならなんでわざわざ、シェナリー伯爵に報告しなきゃいけないのかなぁ?」
マリーが別の疑問を持つと、
「シェナリー家といえども、転移石のことは秘密みたいね!!みんなの耳があったからそう答えざるを得なかったのよ!」
ローズの予想に、
「そっか!!道理でめちゃくちゃな答えだと思った!!...まあ、スカーレットちゃんらしい答えだったけどね!」
マリーが答えると、
「ふふふ!そうね!!」
ローズもつられて笑うのだった。

☆彡彡彡

一方、翌日、スカーレットたちは、
「ダメ!!ワカクサ!!そこは...」
「しかしこの先、体を洗う場所はありません。ここは特に綺麗にしておかないと...」
「で、でも、そんなにされるとわたくし...」
「はいはい。ここですね!」
「あ~~~~~!!」
水浴びを楽しんでいるようだった。

しばらくして、体の火照りが収まったスカーレットが聞く。
「あの子たちもどこかでしてるのかしら?」
するとワカクサは、
「そうですね!北の丘にまっすぐ向かう経路は、人はほとんど通りませんから、どこでしても大丈夫でしょう...それであのコースを選んだのでは?」
と答える。
「でも、体も洗わずに...」
スカーレットが真っ赤になりながら言うと、
「そういうプレイが好きな人もいるみたいですよ!多少...というか人によってはかなり体臭が好きな方もおられるようですし...」
ワカクサの説明にスカーレットは更に赤くなる。
「そんなの恥ずかしくないのかしら?まあ、他人の趣味に口を出す気はありませんけど!」
そう言うが、
「その恥ずかしさが感情を高めてくれるのですよ!お嬢様も昔からここを見られるのが大好きで...」
そう言ってワカクサが覗き込むと、
「あっ!そんな近くで見ないで!!そんなことされると...」
スカーレットたちは第2ラウンドを始めるのだった。

☆彡彡彡

そして、出発してから3日後、
「待たせましたわね!」
スカーレットたちがマリーたちの待つ、トロルロードの拠点跡にやってきた。
「そんなに待ってないよ!!私たちもゆっくり来たから、さっき着いたとこ!!」
マリーが笑顔で答える。
「そう...あなたたちも楽しみながら来たのね...それは良かったですわ!」
「ま、まあ、楽しいといえば楽しかったけど...」
スカーレットの言葉にマリーは微妙に違和感を感じたのだった。

しかし、その違和感は偵察から帰ってきたローズの言葉に掻き消された。
「この集落の中だけど、結構アンデッドいたわよ!」
すると、スカーレットが聞いてくる。
「どんなアンデッドがいまして?」
「あたしが見たのはスケルトン、ゴースト、ゾンビくらいだったわ!強いアンデッドは生まれなかったようね!!」
ローズが答える。
「でも、奥まで見たわけではありませんわよね?...一番怖いのはトロルロードの亡骸から生まれるアンデッドですわ!!」
スカーレットの言葉に、
「私はお嬢様のなら奥まで見てますが...」
「ワカクサは黙ってて!!」
スカーレットは真っ赤になって、何か言おうとしたワカクサを叱る。
「「???」」
マリーたちは相変わらず二人の会話についていけないのだった。

「じゃあ、早速、取り掛かりましょうか!」
ローズの言葉に、
「お任せください!!」
ワカクサが張り切って答えた。
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