ローズマリーの冒険

世々良木夜風

文字の大きさ
40 / 59

Episode 40. ジークの稽古

しおりを挟む
<キンッ!!...キンッ!!>
サクラノの門の近くで剣のぶつかり合う音が聞こえている。
通りがかりの人が不思議そうにその様子を眺めていた。

「もっと体の力を抜いて!!」
ジークの言葉にローズが肩の力を抜き、リラックスしようとする。その瞬間、
<キィィィィ~~~ン!!>
「あっ!!」
ローズの剣が弾き飛ばされてしまった。
「力を抜くというのはリラックスするのとは違う!!ごうの剣を振るっている状態から意識的な力みだけを取り除くんだ!!」
「はい!!」
ジークの言葉に再び剣を拾い上げたローズが、また向かっていく。
「まだ硬い!!」
「はい!!」
二人の剣戟が続く。その様子を見ながらマリーは考えていた。
(見えないなぁ...さすが、ローズちゃん...)
マリーが見つめているのはローズのドレスのスカートの裾。
さっきから一生懸命、中を見ようとしているが、ギリギリの所で下着が見えない。
(どうしたらあんな動きが出来るんだろ...)
マリーは不思議で仕方がなかった。
ローズのドレスの裾は本当に短い。
そのスラリと伸びた太ももがハッキリ見えているほどだ。
しかし、今まで一度も下着が見えたことはなかった。
(この様子じゃ、ミランダさんとの試合の時も大丈夫だったよね!!でも、意識を失ってる間に見られたかも!!)
マリーはローズの純潔が守られていることは確認できたが、下着を見られたかまでは分からなかった。
(もし見られてたら...で、でも私が選んだ可愛い下着だし、ローズちゃんに恥はかかせてないはず!!...でも他の人に見られるのは微妙だなぁ...)
そんな事を考えていると、稽古が終わったようだった。

「ふう...マリー、付き合わせてゴメンね!!...でもそんな一生懸命に見て...マリーも剣に興味があるの?」
ローズがマリーに近寄り、声をかけてくる。
「ううん!私が興味があるのはローズちゃんの下...ってなんでもない!!そ、そう!!『二人の動きがすごいなぁ』って見とれてたの!!」
マリーは何か言おうとしたが、慌てて言い直した。
「すごいのはジークさんよ!あたし、全然、歯が立たなかった...」
ローズが悲しそうな顔をする。
「そんなことはない!!私はとても高度な事を言っている。1日、2日どころか、人によっては何年もかかるような難しい事だ!!しかしローズ君は既に何かをつかもうとしている!正直、驚きだ!!」
ローズの後ろからジークの声が聞こえてきた。
「そ、そうですか?」
そう言われてローズは少しうれしそうな顔をする。
「ローズ君の剛の剣はもはや完成に近づきつつある。そして今やじゅうの剣もつかみつつある。後は実戦を重ねれば少しずつ分かってくるだろう...後は時間の問題だ!!」
ジークは感心したように頷きながら言う。実際、ローズの天才ぶりに驚いているようだった。
「今日はありがとうございました!!おかげであたしの中でもやもやしていたものが少し形になった気がします!!」
ローズはそう言って頭を下げた。
「それは良かった!また、時間があったら見てあげよう!それまでは魔物相手に訓練するといい!!」
「はい!!よろしくお願いします!!」
ジークの言葉にローズは再び、深々と頭を下げた。

☆彡彡彡

それから1週間後。
<キンッ!!...キンッ!!>
ローズがジークと稽古をしていると、
「あっ!!ジークさん!!...なんでローズなんかと!!」
どこかで聞いた声が聞こえてきた。
「おお!ミランダ君じゃないか!!サクラノに来てたのかね?」
「ミランダさんじゃない!!『別の街に行った』って聞いてたけど、なんでサクラノなんかに?」
ジークとローズが同時に質問する。が、
「そんなのジークさんに会いにきたに決まってるじゃないですか~~~~!...分かってるく・せ・に♡」
ミランダはローズを無視すると、ジークの側に寄り、色っぽい仕草で甘い声を出す。
「「・・・」」
唖然とするマリーとローズ。
「ミランダさんってあんなキャラだったっけ...」
ふとマリーが呟くと、
「ああ~~~。ミランダは10年前にジークさんに剣を教えてもらってから、ずっとゾッコンなんだよ...」
とキャサリンが教えてくれた。
「はっはっは!ミランダ君は相変わらずだね!!あんまりおじさんをからかうもんじゃないよ!」
ジークが顔色一つ変えずにそうやってあしらうと、
「え~~~~!!ミランダは本気です~~!!ジークさんこそ、その類まれな才能を次の世代に残さないと...私とならきっと優秀な子孫が残せますよ!!」
ミランダはそう言って、頬を染めた。
「ミランダねぇ...」
ローズは自分のことを名前で呼んだミランダに呆れているが、マリーはというと、
(あ、あんなふうに迫ったらローズちゃんも...「わ、私となら優秀な子孫を...」やっぱり言えない!!)
何故か、一人、真っ赤になっていた。
「やれやれ...私はもう年だよ。ミランダ君もいい加減に相手を見つけたらどうだい??冒険者をやっていると、顔も広いだろう!!」
ジークが困ったようにそう言うと、
「私の想い人はジークさん、ただ一人です!!あの日、私に剣を教えてくれなかったら今の私は...」
ミランダは潤んだ目でジークを見つめる。
「困ったね!まさか、こんなことになるとは...とにかく、悪いが君とは付き合えない!別の人を探すんだね!」
それでもジークは頑なにミランダの求愛を拒んだのだった。
「...そうですか...でも私の気持ちは変わりません!!これからも会いに来ますね!!それくらいいいでしょう?」
ミランダはそれを聞いて悲しそうな顔をするが、ジークに向き直ると笑ってそう言った。
「・・・」
ジークがどう答えるべきか考えていると、
「それと今日、来たのには別の理由もあるんです!!」
と突然、ミランダが話題を変えた。
「別の理由??」
ジークが問い返すと、
「はい。久しぶりにジークさんに剣を習いたいと思いまして...じつは私、剣の上達が思うように進まなくて焦ってるんです...この間も...」
ミランダはそう言って、ローズの方を見た。
「あ、あれはまぐれで!!」
急に話を振られたローズは焦るが、
「あら?まぐれも実力のうちよ!!あなたは格下の魔物にまぐれで負けたら、『あれはまぐれです!』ってみんなに言うのかしら?」
「それは...」
ミランダの問いにローズは答えられない。
まぐれでも負けは負けだ。
それを素直に認めるのがカッコいい剣士だとローズは思っている。
よって、ミランダの言葉を肯定することなど出来なかった。
その様子を見たミランダは言葉を続ける。
「あれだけの大舞台であなたは私と引き分けた...あなたはそれだけのものを持っている...もちろん、いつかは抜かれる日が来るかもしれない。でも、まだまだ私はナンバーワンでいたいの!!」
ローズを見つめながらそう口にしたミランダは、今度はジークの方に向き直る。
「お願いします!!私に剣の稽古をつけてください!!」
そして、深く頭を下げるのだった。
「若いな...」
そう呟いたジークだったが、
「いいだろう!!かかってきたまえ!!」
そうミランダに答えた。そして、
「ローズ君はすまないが、しばらく自分で練習していてくれるか?」
と申し訳なさそうにローズに頼む。すると、ローズは、
「あたしも二人の稽古を見させてもらっていいですか?参考にしたいんです!!」
そうジークにお願いするのだった。
「...好きにしなさい...」
そのジークの言葉に、
「本当?!じゃあボクも!!」
「こりゃあ、楽しみだ。ジークさんの剣なんてそう見られるもんじゃない!!」
「俺も是非、見学させてもらおう!!」
キャサリン、ネルソン、ダイアンたち、ミランダのパーティメンバーも集まってきた。
「じゃあ、私も...」
マリーはそう言って、そっとローズの隣に座ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...