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Burst29. いざ、ニホンノ帝国へ
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「ニホンノ帝国へは、ここからなら東へ進んで、トナリノ王国を横断し、船に乗るのが速いな!」
グレースの案内で、オトメたちはワガマーマ公国を出た後、東へと進んでいた。
いくつかの街を通り過ぎ、国境の街、『サーカイ』へとたどり着く。
この街は西側がオトメたちの国、『テジナ王国』で、川を隔てた東側が『トナリノ王国』になっている。
「私たちの国、『テジナ王国』っていったんだ...」
「知らなかったのですか?まあ、普通の人は他の国との交流もありませんし、『国』といえば自分の国のことですからそういうものかもしれませんね」
「それにしても一つの街が二つの国に分かれているなんて面白いね」
「もともとは国境にそれぞれの国が街を作ったのですが、交流が盛んになるにつれて、一つの街のようになったようです。自然と街の名前も同じになりましたが、正確には『テジナ王国』の『サーカイ』と、『トナリノ王国』の『サーカイ』です」
「ややこしいね...」
「国境の川は船で渡るのだが、一応、身分証明書の提示が求められる。まあ、罪人でもない限り、止められることはないがな!」
ここでグレースが説明を始めた。
「船かぁ...乗ったことがないから楽しみ~~」
「まあ、近距離だし、初めてだと楽しいかもしれないな!ニホンノ帝国には長旅になるから船酔いとかをすると辛いかもしれないが...」
「船酔い?」
「船に乗ると波で揺れる状態がずっと続くから慣れない人は気持ちが悪くなるんだ。これも人によるからひどい人もいればほとんど感じない人もいる...オトメなんかは大丈夫そうだな!」
「それって褒めてるの?」
オトメが首を傾げる。
「そうですね!オトメさんはずぶと...健康ですから大丈夫でしょう!」
マリアもグレースと同意見のようだ。
「何かディスられてる気がするけど...マリアちゃんがそんなことするはずないよね!ここは喜んでおこう!」
「やっぱり、オトメは大丈夫そうだな...」
「ライセンスカードって、トナリノ王国でも使えるの?」
「ああ、この辺りの国では統一規格だから大丈夫だ。ニホンノ帝国でも使える」
「グレースちゃん、物知りだね!」
「まあ、旅慣れているからな!そこは頼りにしてくれ!」
「私のセリフが...」
マリアはちょっと残念そうだった。
街の中に入ると、人でごった返していた。
「わぁ!すごい活気だね!」
「何か不自然に人が多い気がします。どうしたのでしょう?」
三人が船着き場へ向かうと、看板が立っていた。
『トナリノ王国への船は運行中止しています。再開は未定です』
「ん?どういうこと?船が故障しているのかな?」
「どうやら、そうではなさそうですね」
見ると、トナリノ王国からの船が人や荷物を降ろすと、船はそのまま何も乗せずにトナリノ王国へと戻っていく。
「おい、どうしたのだ?船に人は乗せないのか?」
グレースが役人らしき人に聞く。
すると、
「実は双方の街の管理者の方がケンカをしてしまってな。こちらの管理者の方が『相手が謝りに来るまで船は出さない』の一点張りで、乗船許可を出せないんだ」
「なんだそれは!人々の利便性より私情を優先するとは、管理者として問題があるだろう!」
「そうはいっても、我々は雇われの身だからなぁ...」
「埒が明かない!管理者はどこにいる!直談判してくる!」
「一般市民には会ってくれないと思うがな...一応、屋敷は街の中心にあるあの高い建物だ」
役人が青い屋根の大きな屋敷を指さす。
「行こう!私がビシッと言ってやる!」
「大丈夫かなぁ...」
オトメたちは心配しながら、グレースについていった。
屋敷に着くと、グレースが門番に話しかける。
「頼もう!私はグレース・キュードー、旅の者だ!船の件でここの管理者に話がある!取次ぎ願おう!」
「ああ、悪いがそういった連中は通すなとの命令を受けている。帰ってくれないか」
「何だと!」
グレースが怒るが、オトメが取り成す。
「まあまあ、ここはリーダーの私に任せて」
そう言うと、門番に向かってにこやかに語り掛ける。
「私、冒険者パーティ『ドリーミング・ガールズ』の代表のオトメ・アイリンです。ワガマーマ公国のアネノ姫様とも知り合いなんですよ!ぜひ、街の管理者の方にご挨拶させてください!」
「嘘を言うな!お前みたいなやつが姫様と知り合いの訳がないだろう。侮辱罪で逮捕されないうちに帰れ!帰れ!」
「なっ!私、嘘なんてついてない!」
「まあ、まあ、オトメさん。仕方ありません。一度、引き返して何か対策を考えましょう」
「でもマリアちゃん...」
「マリア...その物腰!気品あふれるお姿!も、もしかしてあなた様はアネノ姫様のご友人のマリア・ド・エライヒト様でいらっしゃいますか!」
「は、はい...そうですが...」
門番の気迫にマリアは一歩、後ずさってしまう。
「失礼しました!すぐに取次ぎいたします。中でお待ちください!」
門番は慌てて門を開けて、中に案内を始めた。
こうして、三人は屋敷の中に入れてもらうことができたのだった。
「リーダーは私...」
「これでも交渉には自信があったのだが...」
何か納得のいかない二人の言葉を背中で聞きながら、一番前を優雅に歩いていくマリアであった。
・・・
「これはこれはマリア様。よく、おいでくださいました。わたくし、この街の管理を任されております、『シージェラ・テサカーイ』と申します。この度は家の者が失礼しました」
オトメたちが応接室で待っていると、一人の可愛らしい女性がやってきて、丁寧な挨拶をした。
「シージェラさんですか。あまり年も離れていないようですし、堅苦しい話し方は止めましょう。私のことは『マリア』と呼んでください」
マリアは相手の様子を見て、くだけた話し方の方が良いと判断したようだ。気さくに話しかける。
「あら、私もそちらの方がうれしいわ!私は貴族ではないのでそういったやり取りが苦手で...」
シージェラはホッとしたような表情を見せる。
「私も今はただの冒険者ですので、気を使わなくても結構です。お互い、気楽に話しましょう!」
「まあ!マリアさんが素敵な方で良かったわ!」
二人はいい雰囲気だ。
「そうそう、気を使わなくていいよ!私は『オトメ』!よろしくね!」
「そういうことだ!私は『グレース』。マリアを師匠と仰いでいる」
オトメとグレースが自己紹介をすると、
「それに引き替え、お供の方の態度の悪いこと!マリアさんがいなかったら追い返しているところですわ!」
シージェラの頬はひきつっていた...
「ねぇねぇ、なんで船に乗せてくれないの?もう一人の管理者の人と何かあったの?」
オトメが早速、本題に入るが、
「あなたに教える義理はありません!」
シージェラが冷たく言い放つ。
「そうですか...私たちに何かお手伝いできることがあればと思ったのですが...何か深い理由があるのでは?」
「よくぞ聞いてくださいました!マリアさん!そうなんですの!ジェンヌときたら私というものがありながら!」
シージェラはどうやら『ジェンヌ』という人物に腹を立てているようだ。
「何?この態度の差...」
オトメは不満げだが、
「まあまあ、ここは私に任せて...このお菓子なんか美味しそうですよ!」
「あっ、ホントだ!」
マリアはオトメの気をそらせると、続きを話し出した。
「まあ!『ジェンヌ』さんですか。もしや隣の管理者の方ですか?それにシージェラさんと懇意にしているように感じましたが...」
「さすがマリアさんですわ!そうなんですの!私とジェンヌはお互い、川を隔てた街の管理者の子供ということで、昔から仲良くしておりました」
シージェラの話が始まった。
グレースの案内で、オトメたちはワガマーマ公国を出た後、東へと進んでいた。
いくつかの街を通り過ぎ、国境の街、『サーカイ』へとたどり着く。
この街は西側がオトメたちの国、『テジナ王国』で、川を隔てた東側が『トナリノ王国』になっている。
「私たちの国、『テジナ王国』っていったんだ...」
「知らなかったのですか?まあ、普通の人は他の国との交流もありませんし、『国』といえば自分の国のことですからそういうものかもしれませんね」
「それにしても一つの街が二つの国に分かれているなんて面白いね」
「もともとは国境にそれぞれの国が街を作ったのですが、交流が盛んになるにつれて、一つの街のようになったようです。自然と街の名前も同じになりましたが、正確には『テジナ王国』の『サーカイ』と、『トナリノ王国』の『サーカイ』です」
「ややこしいね...」
「国境の川は船で渡るのだが、一応、身分証明書の提示が求められる。まあ、罪人でもない限り、止められることはないがな!」
ここでグレースが説明を始めた。
「船かぁ...乗ったことがないから楽しみ~~」
「まあ、近距離だし、初めてだと楽しいかもしれないな!ニホンノ帝国には長旅になるから船酔いとかをすると辛いかもしれないが...」
「船酔い?」
「船に乗ると波で揺れる状態がずっと続くから慣れない人は気持ちが悪くなるんだ。これも人によるからひどい人もいればほとんど感じない人もいる...オトメなんかは大丈夫そうだな!」
「それって褒めてるの?」
オトメが首を傾げる。
「そうですね!オトメさんはずぶと...健康ですから大丈夫でしょう!」
マリアもグレースと同意見のようだ。
「何かディスられてる気がするけど...マリアちゃんがそんなことするはずないよね!ここは喜んでおこう!」
「やっぱり、オトメは大丈夫そうだな...」
「ライセンスカードって、トナリノ王国でも使えるの?」
「ああ、この辺りの国では統一規格だから大丈夫だ。ニホンノ帝国でも使える」
「グレースちゃん、物知りだね!」
「まあ、旅慣れているからな!そこは頼りにしてくれ!」
「私のセリフが...」
マリアはちょっと残念そうだった。
街の中に入ると、人でごった返していた。
「わぁ!すごい活気だね!」
「何か不自然に人が多い気がします。どうしたのでしょう?」
三人が船着き場へ向かうと、看板が立っていた。
『トナリノ王国への船は運行中止しています。再開は未定です』
「ん?どういうこと?船が故障しているのかな?」
「どうやら、そうではなさそうですね」
見ると、トナリノ王国からの船が人や荷物を降ろすと、船はそのまま何も乗せずにトナリノ王国へと戻っていく。
「おい、どうしたのだ?船に人は乗せないのか?」
グレースが役人らしき人に聞く。
すると、
「実は双方の街の管理者の方がケンカをしてしまってな。こちらの管理者の方が『相手が謝りに来るまで船は出さない』の一点張りで、乗船許可を出せないんだ」
「なんだそれは!人々の利便性より私情を優先するとは、管理者として問題があるだろう!」
「そうはいっても、我々は雇われの身だからなぁ...」
「埒が明かない!管理者はどこにいる!直談判してくる!」
「一般市民には会ってくれないと思うがな...一応、屋敷は街の中心にあるあの高い建物だ」
役人が青い屋根の大きな屋敷を指さす。
「行こう!私がビシッと言ってやる!」
「大丈夫かなぁ...」
オトメたちは心配しながら、グレースについていった。
屋敷に着くと、グレースが門番に話しかける。
「頼もう!私はグレース・キュードー、旅の者だ!船の件でここの管理者に話がある!取次ぎ願おう!」
「ああ、悪いがそういった連中は通すなとの命令を受けている。帰ってくれないか」
「何だと!」
グレースが怒るが、オトメが取り成す。
「まあまあ、ここはリーダーの私に任せて」
そう言うと、門番に向かってにこやかに語り掛ける。
「私、冒険者パーティ『ドリーミング・ガールズ』の代表のオトメ・アイリンです。ワガマーマ公国のアネノ姫様とも知り合いなんですよ!ぜひ、街の管理者の方にご挨拶させてください!」
「嘘を言うな!お前みたいなやつが姫様と知り合いの訳がないだろう。侮辱罪で逮捕されないうちに帰れ!帰れ!」
「なっ!私、嘘なんてついてない!」
「まあ、まあ、オトメさん。仕方ありません。一度、引き返して何か対策を考えましょう」
「でもマリアちゃん...」
「マリア...その物腰!気品あふれるお姿!も、もしかしてあなた様はアネノ姫様のご友人のマリア・ド・エライヒト様でいらっしゃいますか!」
「は、はい...そうですが...」
門番の気迫にマリアは一歩、後ずさってしまう。
「失礼しました!すぐに取次ぎいたします。中でお待ちください!」
門番は慌てて門を開けて、中に案内を始めた。
こうして、三人は屋敷の中に入れてもらうことができたのだった。
「リーダーは私...」
「これでも交渉には自信があったのだが...」
何か納得のいかない二人の言葉を背中で聞きながら、一番前を優雅に歩いていくマリアであった。
・・・
「これはこれはマリア様。よく、おいでくださいました。わたくし、この街の管理を任されております、『シージェラ・テサカーイ』と申します。この度は家の者が失礼しました」
オトメたちが応接室で待っていると、一人の可愛らしい女性がやってきて、丁寧な挨拶をした。
「シージェラさんですか。あまり年も離れていないようですし、堅苦しい話し方は止めましょう。私のことは『マリア』と呼んでください」
マリアは相手の様子を見て、くだけた話し方の方が良いと判断したようだ。気さくに話しかける。
「あら、私もそちらの方がうれしいわ!私は貴族ではないのでそういったやり取りが苦手で...」
シージェラはホッとしたような表情を見せる。
「私も今はただの冒険者ですので、気を使わなくても結構です。お互い、気楽に話しましょう!」
「まあ!マリアさんが素敵な方で良かったわ!」
二人はいい雰囲気だ。
「そうそう、気を使わなくていいよ!私は『オトメ』!よろしくね!」
「そういうことだ!私は『グレース』。マリアを師匠と仰いでいる」
オトメとグレースが自己紹介をすると、
「それに引き替え、お供の方の態度の悪いこと!マリアさんがいなかったら追い返しているところですわ!」
シージェラの頬はひきつっていた...
「ねぇねぇ、なんで船に乗せてくれないの?もう一人の管理者の人と何かあったの?」
オトメが早速、本題に入るが、
「あなたに教える義理はありません!」
シージェラが冷たく言い放つ。
「そうですか...私たちに何かお手伝いできることがあればと思ったのですが...何か深い理由があるのでは?」
「よくぞ聞いてくださいました!マリアさん!そうなんですの!ジェンヌときたら私というものがありながら!」
シージェラはどうやら『ジェンヌ』という人物に腹を立てているようだ。
「何?この態度の差...」
オトメは不満げだが、
「まあまあ、ここは私に任せて...このお菓子なんか美味しそうですよ!」
「あっ、ホントだ!」
マリアはオトメの気をそらせると、続きを話し出した。
「まあ!『ジェンヌ』さんですか。もしや隣の管理者の方ですか?それにシージェラさんと懇意にしているように感じましたが...」
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