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Burst35. ニホンノ帝国
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「ここがニホンノ帝国...」
オトメたちはニホンノ帝国の港街『コーベ』にたどり着いた。
「思ってたのと違う...」
オトメはがっかりした表情でそう言った。
「もしかして『サムライ』が刀を差して歩いていて、『ゲイシャ』が優雅に歩いていて、『ニンジャ』が陰に潜んでいるとか想像してたんじゃないだろうな...」
「そうじゃないの?!」
「それは昔のニホンノ帝国の風習の珍しいところだけを切り取った誤った認識だ。今はグローバル化が進んでいるからどこの国もそう変わらない」
「そんなぁ~~~」
オトメはその場に崩れ落ちてしまった。
「まあ、『キヨト』に行けばそういう体験ができると聞いたことがあります。サユリさんに会えたら、その後、寄ってみましょう!」
マリアが慰めると、
「『キヨト』!あの金や銀でできた『テラ』があって、赤い門の続く『キツネのジンジャ』があって、飛び下りて度胸試しができる『キヨミズノブタイ』なるアトラクションがあるという...」
オトメは立ち上がり、目を輝かせる。
「うん!外国人の間違った異国に対する知識を総動員したようなセリフだったな!いちいちツッコまないからそこはよろしく!」
グレースはオトメを突き放した。
「ま、まあ、実際に行ってみれば分かりますし...せめてそれまで夢を見させてあげましょう!」
マリアは優しいので少女の純粋な夢を壊すような野暮なことはしなかった。
「それはそうと、どうやってサユリさんを探しましょうか?」
マリアはオトメに聞くが、オトメは、
「ニンジャ...ゲイシャ...キヨミズ...」
違う世界に行っているのでこの世の音が聞こえていないようだった。
「私が思うに、アネノ姫の昔話でサユリ殿は『ヒョージュンゴ』を話していた。それなら『トキヨ』に行くのが良いと思う」
代わりにグレースが答える。こちらは大変、頼りになりそうだった。
「『トキヨ』ですか...帝都ですね!街も巨大だと聞きますし、それがいいかもしれません。ここからどれくらい離れているのですか?」
「ああ、結構離れているが、『シンカンセン』を使えばあっという間だ。確か三時間くらいで行けるから今日中に着ける」
「まあ!あの有名な『シンカンセン』ですか!私も一度乗ってみたいと思っていました!」
「師匠でも珍しいか!それもそうだな、乗ればその速さにビックリだ!私も初めて乗ったときは驚いて声も出なかったほどだ!」
「では、早速、参りましょう!」
「シンカンセン...トキヨ...シブヤクロッシング...」
二人は未だ夢の中にいるオトメを引きずって、『シンコーベ』ステーションへと向かった。
・・・
「こ、これがシンカンセン...」
オトメは感動のあまり、窓にへばりついていた。
「私も初めて乗りましたが、本当に速いですね!景色が飛んでいきます!」
マリアも想像以上の速さに驚いている。
「すごいだろう。どうやらニホンノ帝国独自の極秘技術らしい。確かにこの乗り物が広まれば、世界中どこにでもすぐに行くことができるだろう」
グレースは自分のことのように自慢していた。
その時、メロディの後に車内アナウンスが入る。
「まもなく、キヨトです...」
「今、キヨトって言った!ここで降りたらキヨトに行けるよ!」
「はいはい。サユリさんに会った後に行きましょうね!その方がゆっくり楽しめますよ!」
「え~~~!!待ちきれないよぉ...」
「全く、オトメは子供だな!そんなことじゃ師匠に笑われるのがオチだ!」
「えっ、うっ、大丈夫だよ、マリアちゃん!私は大人だから我慢できる!トキヨに行って戻ってくるまでの我慢...我慢...」
「オトメさんは偉いですね!」
「そう?!えへへ、うれしいなぁ...」
「やっぱり子供じゃないか...」
カップルというより親子連れにしか見えない会話であった。
・・・
「ああ...キヨトが離れていく...」
オトメは心残りがありそうな目で過ぎ行くキヨトステーションを眺めていた。
「それにしてもあまり平原がありませんね。ずっと街が続いている感じです」
マリアが大陸との違いに気づいたようだ。
「ああ、ニホンノ帝国は山が多く、平地が少ない。その為、平地に人が密集して、街同士がほとんど繋がってるんだ」
「では魔物はどこにいるのですか?」
「魔物は自然と山に集まることになる。普通に生活している分には出会うことはないが、放っておくと増えて山にあふれるので定期的に退治しているんだ」
「まあ!じゃあ、冒険者は山に入って魔物退治をするのですね?」
「いや、ニホンノ帝国には冒険者はいない。街の胸の大きな女性がライセンスを取って、退治しているんだ」
「えっ!じゃあ、職業ではなく副業的にやっていると?」
「う~~ん。むしろボランティアに近いかな!報酬は交通費と弁当代くらいしかでない」
「それで成立するのですか?」
「そこがニホンノ帝国の特殊な所で、この国は周りとの同調圧力が極端に強い。その為、胸が大きいのにライセンスを取らないと、周りから『あのお嬢さん、Dカップなのにライセンス取ってないんですって!』とか、ライセンスがあるのに退治に参加しないと、『あの家の娘さん、ライセンスあるのに今度の魔物退治に参加しないんですって!』とかいって噂されるので、半強制的に参加させられるんだ」
「まあ!私たちの国では考えられません!」
「その代わり、困った時には互いに助け合う。共同体の誰かが困っていたら救いの手を差し伸べる。どちらがいいかは状況次第だろうな!」
「なるほど...」
「ちなみに男性からの誘いを断る方法は、『ごめんなさい。今度の休日は魔物退治があって...』がお決まりだそうだ」
「えっ!それって女の子からの誘いを断るときにも使えるの?」
さっきまでちんぷんかんぷんな顔をしていたオトメが急に話に入ってくる。
「...使えるんじゃないか?」
「マリアちゃん!誰かに誘われたら、『ごめんなさい。今度の休日は魔物退治があって...』って言うんだよ!そしたら断れるから!」
「は、はい。覚えておきます...」
「だから何で女なんだ...」
とりあえず話を合わせる社交上手なマリアと、思ったことを素直に言う正直なグレースであった。
・・・
それから約二時間、メロディの後に車内アナウンスが入る。
「まもなく、終点、トキヨです...」
「あっ、トキヨって言った!もう着いたの?」
オトメがあまりの早さに驚く。
「すごいだろ。この国では大抵の場所にはその日のうちにたどり着けるんだ」
グレースが説明すると、
「えっ、じゃあ道の駅は?」
「ほとんどないな!というか、街同士が繋がってるから、泊まるところには苦労しない。さて、今日はもう遅いし、どこかで食事を取った後、カプセルホテルにでも泊まるか」
「『カプセルホテル』って?」
「行ってみれば分かる。これも初めてなら面白いと思う。駅の近くのホテルは高いのに大したことないからな!トキヨステーションの近くならこっちの方がいい」
「まあ、楽しみです!グレースさんは物知りですね!」
「まあ、住んでたからな!」
「くっ!マリアちゃんに点数稼いでる...」
得意気なグレースと悔しそうなオトメを連れて、マリアはシンカンセンを降りていった。
・・・
「これがカプセルホテル...」
オトメは興味津々で設備を眺めている。
「ああ、雑魚寝に近いが、スペースが区切ってあって、ちゃんとしたベッドがついている。貴重品はそこの金庫に入れておいたらいい。安全だ」
「まあ、金庫まで...お風呂はどうするのですか?」
「風呂は浴場がフロアごとにある。ちなみにこのフロアは女性しか来れないようにエレベーターが設定されている。だから安心だ」
「全然、安心じゃないよ!マリアちゃんに何かあったらどうするの!」
「じゃあ、オトメが一緒に寝たらいいじゃないか」
「「ええっっ!!」」
二人が同時に声をあげる。やがて顔を見合わせ、
「や、やっぱり、別でいい。ここじゃ周りに聞こえるし...」
「そ、そうですね。それは私も恥ずかしいです...」
「私が下のベッドに入るから、マリアちゃんは上のを使って!そうしたら誰か来たら分かるから!」
「私が上ですか...上手く出来るでしょうか...ってそういう意味じゃないですね!すいません!忘れてください!」
マリアが失言を恥じて赤くなる。
「大丈夫!マリアちゃんならきっと上手くできるよ!私こそ自信ないなぁ...」
「そんなことありません!オトメさんはいつも夢の中で上手に...って、ご、ごめんなさい!私ったら何を!」
オトメとマリアは真っ赤になって俯いてしまった。
「周りに筒抜けだけどな...今の会話...」
グレースは二人の会話の間、周りの音が静かになっていたのに気づいていた。
多分、みんなオトメたちが気になって、今夜は眠れないだろう...
オトメたちはニホンノ帝国の港街『コーベ』にたどり着いた。
「思ってたのと違う...」
オトメはがっかりした表情でそう言った。
「もしかして『サムライ』が刀を差して歩いていて、『ゲイシャ』が優雅に歩いていて、『ニンジャ』が陰に潜んでいるとか想像してたんじゃないだろうな...」
「そうじゃないの?!」
「それは昔のニホンノ帝国の風習の珍しいところだけを切り取った誤った認識だ。今はグローバル化が進んでいるからどこの国もそう変わらない」
「そんなぁ~~~」
オトメはその場に崩れ落ちてしまった。
「まあ、『キヨト』に行けばそういう体験ができると聞いたことがあります。サユリさんに会えたら、その後、寄ってみましょう!」
マリアが慰めると、
「『キヨト』!あの金や銀でできた『テラ』があって、赤い門の続く『キツネのジンジャ』があって、飛び下りて度胸試しができる『キヨミズノブタイ』なるアトラクションがあるという...」
オトメは立ち上がり、目を輝かせる。
「うん!外国人の間違った異国に対する知識を総動員したようなセリフだったな!いちいちツッコまないからそこはよろしく!」
グレースはオトメを突き放した。
「ま、まあ、実際に行ってみれば分かりますし...せめてそれまで夢を見させてあげましょう!」
マリアは優しいので少女の純粋な夢を壊すような野暮なことはしなかった。
「それはそうと、どうやってサユリさんを探しましょうか?」
マリアはオトメに聞くが、オトメは、
「ニンジャ...ゲイシャ...キヨミズ...」
違う世界に行っているのでこの世の音が聞こえていないようだった。
「私が思うに、アネノ姫の昔話でサユリ殿は『ヒョージュンゴ』を話していた。それなら『トキヨ』に行くのが良いと思う」
代わりにグレースが答える。こちらは大変、頼りになりそうだった。
「『トキヨ』ですか...帝都ですね!街も巨大だと聞きますし、それがいいかもしれません。ここからどれくらい離れているのですか?」
「ああ、結構離れているが、『シンカンセン』を使えばあっという間だ。確か三時間くらいで行けるから今日中に着ける」
「まあ!あの有名な『シンカンセン』ですか!私も一度乗ってみたいと思っていました!」
「師匠でも珍しいか!それもそうだな、乗ればその速さにビックリだ!私も初めて乗ったときは驚いて声も出なかったほどだ!」
「では、早速、参りましょう!」
「シンカンセン...トキヨ...シブヤクロッシング...」
二人は未だ夢の中にいるオトメを引きずって、『シンコーベ』ステーションへと向かった。
・・・
「こ、これがシンカンセン...」
オトメは感動のあまり、窓にへばりついていた。
「私も初めて乗りましたが、本当に速いですね!景色が飛んでいきます!」
マリアも想像以上の速さに驚いている。
「すごいだろう。どうやらニホンノ帝国独自の極秘技術らしい。確かにこの乗り物が広まれば、世界中どこにでもすぐに行くことができるだろう」
グレースは自分のことのように自慢していた。
その時、メロディの後に車内アナウンスが入る。
「まもなく、キヨトです...」
「今、キヨトって言った!ここで降りたらキヨトに行けるよ!」
「はいはい。サユリさんに会った後に行きましょうね!その方がゆっくり楽しめますよ!」
「え~~~!!待ちきれないよぉ...」
「全く、オトメは子供だな!そんなことじゃ師匠に笑われるのがオチだ!」
「えっ、うっ、大丈夫だよ、マリアちゃん!私は大人だから我慢できる!トキヨに行って戻ってくるまでの我慢...我慢...」
「オトメさんは偉いですね!」
「そう?!えへへ、うれしいなぁ...」
「やっぱり子供じゃないか...」
カップルというより親子連れにしか見えない会話であった。
・・・
「ああ...キヨトが離れていく...」
オトメは心残りがありそうな目で過ぎ行くキヨトステーションを眺めていた。
「それにしてもあまり平原がありませんね。ずっと街が続いている感じです」
マリアが大陸との違いに気づいたようだ。
「ああ、ニホンノ帝国は山が多く、平地が少ない。その為、平地に人が密集して、街同士がほとんど繋がってるんだ」
「では魔物はどこにいるのですか?」
「魔物は自然と山に集まることになる。普通に生活している分には出会うことはないが、放っておくと増えて山にあふれるので定期的に退治しているんだ」
「まあ!じゃあ、冒険者は山に入って魔物退治をするのですね?」
「いや、ニホンノ帝国には冒険者はいない。街の胸の大きな女性がライセンスを取って、退治しているんだ」
「えっ!じゃあ、職業ではなく副業的にやっていると?」
「う~~ん。むしろボランティアに近いかな!報酬は交通費と弁当代くらいしかでない」
「それで成立するのですか?」
「そこがニホンノ帝国の特殊な所で、この国は周りとの同調圧力が極端に強い。その為、胸が大きいのにライセンスを取らないと、周りから『あのお嬢さん、Dカップなのにライセンス取ってないんですって!』とか、ライセンスがあるのに退治に参加しないと、『あの家の娘さん、ライセンスあるのに今度の魔物退治に参加しないんですって!』とかいって噂されるので、半強制的に参加させられるんだ」
「まあ!私たちの国では考えられません!」
「その代わり、困った時には互いに助け合う。共同体の誰かが困っていたら救いの手を差し伸べる。どちらがいいかは状況次第だろうな!」
「なるほど...」
「ちなみに男性からの誘いを断る方法は、『ごめんなさい。今度の休日は魔物退治があって...』がお決まりだそうだ」
「えっ!それって女の子からの誘いを断るときにも使えるの?」
さっきまでちんぷんかんぷんな顔をしていたオトメが急に話に入ってくる。
「...使えるんじゃないか?」
「マリアちゃん!誰かに誘われたら、『ごめんなさい。今度の休日は魔物退治があって...』って言うんだよ!そしたら断れるから!」
「は、はい。覚えておきます...」
「だから何で女なんだ...」
とりあえず話を合わせる社交上手なマリアと、思ったことを素直に言う正直なグレースであった。
・・・
それから約二時間、メロディの後に車内アナウンスが入る。
「まもなく、終点、トキヨです...」
「あっ、トキヨって言った!もう着いたの?」
オトメがあまりの早さに驚く。
「すごいだろ。この国では大抵の場所にはその日のうちにたどり着けるんだ」
グレースが説明すると、
「えっ、じゃあ道の駅は?」
「ほとんどないな!というか、街同士が繋がってるから、泊まるところには苦労しない。さて、今日はもう遅いし、どこかで食事を取った後、カプセルホテルにでも泊まるか」
「『カプセルホテル』って?」
「行ってみれば分かる。これも初めてなら面白いと思う。駅の近くのホテルは高いのに大したことないからな!トキヨステーションの近くならこっちの方がいい」
「まあ、楽しみです!グレースさんは物知りですね!」
「まあ、住んでたからな!」
「くっ!マリアちゃんに点数稼いでる...」
得意気なグレースと悔しそうなオトメを連れて、マリアはシンカンセンを降りていった。
・・・
「これがカプセルホテル...」
オトメは興味津々で設備を眺めている。
「ああ、雑魚寝に近いが、スペースが区切ってあって、ちゃんとしたベッドがついている。貴重品はそこの金庫に入れておいたらいい。安全だ」
「まあ、金庫まで...お風呂はどうするのですか?」
「風呂は浴場がフロアごとにある。ちなみにこのフロアは女性しか来れないようにエレベーターが設定されている。だから安心だ」
「全然、安心じゃないよ!マリアちゃんに何かあったらどうするの!」
「じゃあ、オトメが一緒に寝たらいいじゃないか」
「「ええっっ!!」」
二人が同時に声をあげる。やがて顔を見合わせ、
「や、やっぱり、別でいい。ここじゃ周りに聞こえるし...」
「そ、そうですね。それは私も恥ずかしいです...」
「私が下のベッドに入るから、マリアちゃんは上のを使って!そうしたら誰か来たら分かるから!」
「私が上ですか...上手く出来るでしょうか...ってそういう意味じゃないですね!すいません!忘れてください!」
マリアが失言を恥じて赤くなる。
「大丈夫!マリアちゃんならきっと上手くできるよ!私こそ自信ないなぁ...」
「そんなことありません!オトメさんはいつも夢の中で上手に...って、ご、ごめんなさい!私ったら何を!」
オトメとマリアは真っ赤になって俯いてしまった。
「周りに筒抜けだけどな...今の会話...」
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多分、みんなオトメたちが気になって、今夜は眠れないだろう...
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