バスト・バースト!

世々良木夜風

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Burst40. ユメミルとの再会

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「着きました。ここがキンリンです」
サンプから三日。普通は二か月以上かかる道のりをサユリは踏破していた。
荷車の中では...
「はぁ、はぁ...」
マリアが荒い息をしている。
「大丈夫、マリアちゃん...」
心配するオトメ。
「オ、オトメさんの足が...私のスカートの中に...はぁ、はぁ...」
「ごめん、荷台が揺れるから自然に...でもマリアちゃんもそんな短いスカートはいてるから...」
「だって、オトメさんが喜んでくれるから...どうでしたか?...楽しかったですか?...」
マリアが頬を染める。
「うん!とっても素敵だった。今のマリアちゃんの顔も最高だよ!私までおかしくなりそう...」
「なら...うれしいです...思い切ってこの服を着て良かった...」
「何やってるんだ?白昼堂々...」
グレースはため息をつきながらマリアの衣服を直す。
「ありがとうございます。グレースさん...ちょっと落ち着いてきました...」
オトメとマリアの行為は回を重ねるごとに大胆になり、オトメは揺れるに任せてマリアのいろんな所に触れていた。
マリアもオトメが触りたそうなところは薄着にしている。シャツも透けそうなほど薄い。
「これでお二人の痴態も見納めかと思うと寂しいです」
サユリは残念そうにしている。
「これでなんでくっつかないんだか...」
グレースは最早、あきれるしかなかった。

「これからどうします?まだ昼過ぎですが、オーパイへいざなわれた場所まで行きますか?」
サユリがオトメたちに聞く。
「どうする?」
オトメがマリアに聞くが、グレースが答えた。
「いや、明日にしよう!これが最後だからな...」
「そうだね...」
「・・・」
オトメが寂しそうに、マリアは意味ありげにグレースを見つめていた。
「それでは、お昼を取ったらヤクーザ村へご一緒していただけますか?」
サユリがオトメたちに提案する。
「えっ!もう行くの?!」
「私たちがそんな大切な場にご一緒していいのですか?」
オトメとマリアがそう言うが、サユリは言い切った。
「はい!どうせなら早い方がいいです。それにお世話になった皆さんにもご一緒して欲しい...私とユメミルの勝負を見届けて欲しいんです!」
「勝負って...」
グレースがこぼすが、
「うん!分かった!」
「サユリさんの覚悟!見届けさせていただきます!」
オトメとマリアは真剣な顔でサユリを見返した。

・・・

そして、昼食を食べた後、オトメたちはヤクーザ村へと向かう。
今度はゆっくり歩いてだ。サユリも心の整理をしているのだろう。
「あれがヤクーザ村です」
サユリが村を指さす。
「あれ?あの村って...」
「私たちが魔物の群れと闘った村!」
オトメとマリアが驚く。
「そりゃそうだろ。村人たちもヤクーザ村って言ってたじゃないか!」
グレースは元々気づいていたようだ。
「じゃあ、ユメミルさんって...」
「そう。『ロスト』と名乗ったあの村長だ!『ヤクーザ家では無闇に名前を人に教えない』ってサユリ殿も言っていた。おそらく『ロスト』の本名は『ユメミル』だろう!」
「そう言われると全ての辻褄が合う気がします!そうですか...あの方がユメミルさん...」
「三人ともユメミルとは知り合いだったのですか...どうですか?今も元気ですか?...結婚は...」
「うん、元気にしてたよ!結婚はしてないみたい。家に一人で住んでいて、子供もいないって言ってた...」
「そうですか...」
サユリはどこかホッとした顔をしながらも、ユメミルの孤独に胸を痛めているようでもあった。
やがて四人はヤクーザ村につく。
日は大分、低くなっていた。

・・・

「あなたがたは!」
村に入るとオトメたちの顔を見て、村人たちが集まりだす。
「あの時はありがとうございました!」
「今は皆、平和に暮らしています」
口々にお礼を言われる。
するとコムネスキーとA子もやってきた。C子の姿も見える。
「これは胸の無い人!あの時は本当にありがとうございました!」
「おかげでコムネスキーと結婚し、子供も授かることができました!胸の無い人!」
A子はお腹を押さえる。心なしか膨らんでいるように見える。
「それはおめでとう!...じゃなくて、相変わらず、失礼なカップルだなぁ...あぁ、今は夫婦か...私は『オトメ』!名前で呼べぃ!!」
オトメがお約束にお約束で答える。すっかり一人前だ。
「本日はどういった御用で?」
コムネスキーが聞く。
「ちょっとこの人を村長さんに紹介しようと思って...」
「まあ、この方はどういうご関係の方で...」
A子が興味深げに聞く。
「う、うん。ちょっと...老後を一緒に過ごすのにいいかなって思って連れてきたの!村長さん、一人で寂しそうだったし...」
「そうですか。確かに村の者も心配しています。どうぞ屋敷へお入りください」
そう言うと、村人全員でオトメたちを村長の元へと案内してくれた。

・・・

「なんじゃい!騒がしい...」
オトメたちが屋敷に着くと村長が家から出てきた。
「ダーリン...」
サユリがふとつぶやく。すると、
「お、お前は!なんでここに!来るなと言ったはずだ!!」
村長は急に取り乱し始めた。
「うう...」
そして、胸を押さえ、苦しみだした。
「村長!!」
村人たちが慌てだす。
「大丈夫!見てて!」
それをオトメが制止する。
「しかし...」
村人たちがためらっている間に、サユリがゆっくりと村長に近づき、話し出した。
「村長さん。私はあの時のサユリではありません。昔のサユリはもう死にました」
「何!それはどういう...」
「私はサユリの生まれ変わりです。昔の記憶はありません。ただ、昔のサユリの魂に惹かれここに来ました。あなたも昔を思い出す必要はありません。ただ、もし、あなたの魂が私を求めているのなら、側に置いていただけませんか?」
「昔を...思い出す必要はない...」
「そうです。私たちは初対面です。二人を繋ぐものは魂のみ。もう苦しむ必要はありません。心の隙間もそのままで構いません。そっとしておきましょう...」
「このままで...いい...ただ...魂の赴くまま...」
「それでも...苦しいですか?」
サユリが泣きそうな顔になる。
「・・・」
しばしの沈黙がその場に訪れる。
「そうですか...では...」
サユリの目から涙がこぼれる。そして、立ち去ろうとしたその時、
「待て!確かに苦しい!だけどそれは昔のような胸が引き裂かれるような苦しみではなくて...お前の泣き顔を見るのが苦しいんだ...」
「ダーリン...」
サユリが立ち止まり、振り返る。
「頼む!教えてくれ!どうしたらお前を笑顔にすることができるんだ!」
その言葉を聞いた瞬間、サユリが村長に抱きつく。
「なっ!」
驚く村長。
「そんなの、決まってます!ただ、隣にいてくれたらいい...それだけで私は笑顔になれます!」
「しかし、お前は涙を流し続けているじゃないか!」
村長はオロオロしている。
「馬鹿ですね...これはうれし涙というんです...」
「サユリ...」
村長もサユリを抱きしめる。
「『ハニー』って呼んでください...」
「えっ!」
「聞こえませんでしたか?『ハニー』です...」
「あ、ああ、ハニー...」
村長は微妙な顔をしながらサユリを呼んだ。

「パチパチ...」
周囲から小さな拍手が聞こえた。
その拍手はどんどん大きくなり、村中の人が村長とサユリを祝福した。
「村長!男前!」
「これからは楽しい日々が待っていますね!」
「村長の笑顔を見れる日がくるとは思っていませんでした!」
様々な歓声が上がる。
「お前ら!見んじゃねぇ!それより宴の準備だ!ありったけの酒と美味いもの持って来い!」
村長が号令をかける。
「おお、それでこそヤクーザの首領様!首領の復活に乾杯!」
「よ~し!隠しといたいい酒、持ってきてやる!」
「料理は任せて!いっぱい作るよ~!」
村はこの数十年、見なかったような大きな盛り上がりを見せた。

「良かったね!サユリさん、ユメミルさん...」
「あら、その名は呼んじゃダメですよ!首領様でしょうか?とにかくめでたいですね!」
「ふう、ヒヤヒヤした。私が言い出した手前、失敗したらどうしようかと気が気じゃなかった!」
「ふふふ。大丈夫ですよ!だって二人の...いやオテンバさんを含めた三人の絆はアネノ姫様のお話で十分、分かっていましたから...」
「そうだね!」
オトメたち三人も一息つき、料理を手伝おうとしたが、『村の恩人はゆっくり待っていてください』と言われ、首領の屋敷でゆっくりさせてもらえることになった。
ただ、隣では...
「ふふふ、ダーリン!これからいっぱい、思い出作りましょうね!」
「ハニー、そうだな!お前となら楽しい日々が過ごせそうだ!」
年寄り同士がいちゃついているのであった...
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