バスト・バースト!

世々良木夜風

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Burst42. 伝説の街・オーパイ

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「では行きますよ!」
サユリがオトメたちに声を掛ける。
荷車にはオトメたち三人が乗り込んでいた。
皆、綺麗な服に着替えている。まるで女友達と遊びにでも行くかのようだ。
まあ、グレースだけはいつもの戦闘服せいふくなのだが...
「じゃあな!健闘を祈ってるぜ!」
ヤクーザの首領が送り出す。
「うん!」
「行ってきます!」
「いよいよだな!」
三人は気合を入れる。
その時、荷車が動き出した。
首領に手を振る三人。今回はそんなに速くは走らない。
二、三十キロくらいだろうか。皆が振り落とされない程度の速度だ。
そして三十分ほどで目的地に到着した。

「この辺りで私たちは霧に包まれました」
見ると、森が近くに迫っている。魔物も隠れやすく、危険そうな場所だ。
「確かに森が近いが、他はこれといって特徴のない場所だな...」
いざなわれるのに何か条件はあるのでしょうか?」
マリアが聞くと、
「多分、オーパイの人たちが望んでいるのは『絆』です。皆さんにはそれがあります!きっといざなわれるでしょう。キンリンへ向けて歩いてみてください」
三人はサユリに言われた通りに歩き出す。
しばらく歩き、サユリの姿が小さくなった頃、
「来た!」
グレースが口にする。
「うん。霧が出てきたね...」
「はぐれないように手を繋ぎましょう」
「手、手だよね...ユメミルさんが掴んだのは確か...」
「...オトメさんの好きな場所に触ってくれていいですよ...」
「そ、そうじゃなくて!手、手でいいよ!せっかくの綺麗な服が皺になっちゃうし...」
「お前はどこを触ろうとしてたんだ...」
オトメたちがそんな会話をしていると、やがて霧が晴れ、目の前に小さな街が現れた。
話に聞いた通りに大きな神殿がそびえる、厳かな街だ。
「ここがオーパイ...」
「いよいよですね!」
「ああ...」
三人の顔に緊張が浮かぶ。
やがて、街の門へとたどり着いた。

「うわぁ!綺麗!」
中に入るとそこには美しい街並みが続いていた。
「女の子しかいないみたいですね」
その中を行ったり来たりしているのは全て若い女性。
しかも綺麗な胸を誇示する様にピッタリとしたTシャツを着ている。
「でも、何か変だよな。現実感が無いというか...」
道行く人はにこやかな笑みを浮かべているが、何故か感情が感じられない。
普通は目的地に向かうか、ぶらぶらするかするものだが、どこか歩く方向に人間性が感じられない。まるでプログラムされているような...
「あれ!あそこの子たち、とっても仲良しみたいだよ!」
一人で歩いている女の子が多い中で、時折、二、三人で楽し気に談笑しているグループがある。
「あの人たちは...」
マリアが赤くなる。
マリアの視線の先を見ると、二人の女性が人前にも拘らずキスをしていた。
「わっ...あぁするんだ...今後の為に観察しておかないと...」
オトメが良く見える位置に移動しようとするが、
「ダメです!見ちゃいけません!」
マリアが注意する。
しかし、マリアも目を隠した手の隙間からしっかり見ている様だった。
「なるほど!こうしてこっそり見るんだね!これで本番もバッチリ...」
オトメも真似をしている。
「お前ら、真面目にやれよ...」
グレースが愚痴をこぼす。
「おい、ここはどこだ?」
グレースは研究熱心な二人を放っておいて、道行く人に声を掛ける。
「ここはオーパイですよ!外からのお客様は久し振りだわ。胸のサイズを変えて欲しいのならこの道をまっすぐ行ったところにある神殿で変えてもらえますよ!」
それから数人に聞いてみたが、皆、似たような返事だ。
個性はある。可愛い系だったり、お姉さん風だったり、中性っぽい魅力があったり...
しかし、何かうわべだけで、中身を感じさせなかった。
「やはり...」
グレースは自分の推測に自信を深めたようだ。
一方、オトメとマリアは、
「マリアちゃん!あんなことしてるよ!」
「す、すごい...私、できるでしょうか...」
「大丈夫!二人で頑張ろう!」
「そうですね!いい勉強になりました」
相手が無反応なのをいいことに間近で観察していた...
「おい!いい加減、行くぞ!」
そう言うと、二人の手を引いて神殿へと向かうのだった。
「あっ!いいところなのに!」
「グレースさん!もう少しだけ...」
二人は心残りがありそうだったが、しぶしぶついていった。

街の奥にある神殿へとたどり着くと、入口には一人の女性がいた。
「あなた方も胸のサイズの変えにいらしたのですか?」
そう三人に聞いてくる。
「そうだ。この中で変えてもらえるのだろうか?」
グレースが代表して答える。
「はい、どうぞ中へお進みください」
女性はニコニコしながら答えた。

「何か、入口の女性、うれしそうだったね」
オトメが感想を口にする。
「あの様子だと、絆を欲しているのは...」
グレースは何やら思考に沈んでいるようであった。
「本当に殺風景ですね...」
神殿の奥には広い通路があるだけ、部屋も飾りもなかった。
やがてオトメたちの先に扉が見えた。
前にはサユリが言っていた通り、女性が立っていた。
「いらっしゃいませ!よくぞおいでくださいました。ここから先は一人ずつ入っていただくことになります。いよいよ理想の胸が手に入りますよ!」
「じゃあ私から行こう!」
グレースは二人に目くばせすると中に入って行った。

グレースが入って行くと、オトメはバースト・ボールを出し始めた。
「あぁぁ~~~~~~ん!!!マリアちゃん!!」
「えっ!」
今度はマリアの名前をはっきりと口に出した。
するとオトメの両手に今までより一回り大きなバースト・ボールが生まれる。
「オトメさん、どうして私の名前を...」
マリアが聞くが、オトメは申し訳なさそうに目を伏せ言った。
「ごめんね...」
マリアはそれに答えることができなかった。
一方、扉の前の女性は、
「そ、それはバースト・パワーの塊!何故!!」
非常に驚いている。その時、
「カーーーン!」
扉に何かが当たる音がした。すると、
「行っっけ~~~~!!」
オトメがバースト・ボールを扉、目掛けて投げつける。
「いけません!」
扉の前の女性が前にふさがる。
しかし、バースト・ボールは女性もろとも目の前の扉のあった壁を消し去った。
「女性が消えました!それに神殿の壁も!やっぱり昨夜グレースさんの言った通り!」
そう叫びながらマリアたちは壁の先の部屋に飛び込んだ。

「お、お主たち、いったい何を...」
広間の向こうでは一人の老婆が立ち尽くしていた。その間にはグレースが立っている。
老婆の向こうには祭壇の残骸が見える。
オトメのバースト・ボールは祭壇まで届いたようだ。
「さあ、お前たちがここでしてきたことを洗いざらい吐いてもらおうか!」
グレースが老婆を問い詰める。
「お主たちは招かれざる客のようじゃ...お帰り願おうか...」
自分を取り戻した老婆がそう言うと、オトメとグレースの体が光った。
「何故、お主は光らぬ!」
老婆がマリアの体が光らないのに気がついた時、マリアは精一杯の声で叫んだ。
「お願い!二人を守って~~~~!!」
すると、二人の体を包んでいた光が消えた。
「よし!師匠!よく頑張った!!」
「よっしゃ~~!暴れちゃうよ~~!」
そう言うと、オトメはバースト・ボールをどんどん生み出し、神殿を消していく。
グレースは老婆に詰め寄り、木刀を突きつけて脅した。
「他の魔法使いの場所まで案内してもらおうか!」
「何故...」
老婆はただ呆然とするのみだった...

・・・

「わしたちの安住の地が...」
それから小一時間。オーパイは完全に消え去っていた。
オトメたちがいるのは森の中。街の名残もない。
「魔法使いはお前たち、四人だけか...」
グレースがつぶやいた。
目の前には四人の老婆が。全員、未だに信じられないという顔をしている。
「わしたちをどうする気じゃ...」
そのうちの一人がグレースに聞く。
「一緒にヤクーザ村まで来てもらおうか!そこで詳しく話を聞く」
「わしらを役人に突き出すつもりか」
別の一人が心配そうに聞く。
「基本的にそうするつもりはありません。ヤクーザ村の村長は魔法使いです。見れば皆さん、お年を召しておられるご様子。悪意でこのようなことをしたのでなければ、そこで過ごしてもらうのもいいでしょう。許可も取ってあります。ねぇ、グレースさん!」
「そうだ。昨日、ヤクーザ村の村長に話をした。その際、『住む場所に困るようなら、この村に住んでもらってもいいぜ』と言っていた。あの村の者は口が堅い。他の街の者に知られることもないだろう」
「お主たち、オーパイの秘密を知っておったのか?」
また別の一人が聞く。四人の間には上下関係は無いようだった。
「推測でしかなかったがな。前にオーパイに行った『ハチャメチャ・ヤクザズ』からの話を総合して推理しただけだ」
「あいつらか!あれは失敗じゃった...まさか一人だけが取引に応じるとは...」
「どうやらそのあたりがユメミルさんたちの悲劇の原因らしいですね...その辺も含めて詳しく聞きたいので一緒に村に来てはいただけないでしょうか?何度も言いますが、悪意がないのであれば皆さんの安全は保証します」
「どうする?」
四人の老婆が話し合いを始めた。
「転移は阻害されてしまう。どうやらあの女子おなごが原因のようじゃ...」
老婆がマリアを横目で見る。
「まさか、他人にかかったサリ―の魔法まで阻害するとは...一体、何者...」
「他に行くところもないしの...このままでは役人に捕まるか、森の中をさまようかじゃ...」
「ヤクーザ村のことは遠視したことがある。魔法使いが治めているというのは本当じゃ...」
「なら、一か八か賭けてみるか?どうせ、老い先短い身じゃ。死ぬことになったとしてもそれほど悔いはない」
「では決まりじゃな...分かった。お主らの村に案内せい...もし、わしらを信用してくれるなら皆で転移してもよいが...」
四人の意見はオトメたちについていくことで決まったようだった。
「どうする?マリアちゃん」
「私は信用してもいいと思います。私が逆の立場なら、これが最善の方法だという結論に達するでしょう」
「私もいいと思う。逃げたとしてもオーパイはもうない。ユメミル殿たちのような悲劇はもう起こらないだろう...」
「じゃあ、転移していいよ!私は信じてるからね!...だってお婆さんたち、私に『オーパイ』や『内なるバースト・パワー』を教えてくれた人たちだよね!」
オトメが言うと、
「覚えておったか...ではいくぞ!」
オトメたち七人の体が光り、次の瞬間、皆はヤクーザ村に来ていた。
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