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【第一章】記憶の底にある世界
不可思議な彼女
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ポケットの中のスマホが震え、通知を見ると、遠い昔にSNSでつながったままの友人、窪裕史からのメッセージだった。
『久しぶり! 元気か? 小学校の同窓会のハガキ来てただろ? 洵は行く?』
なんとなく、その同窓会に彼女が来るような気がした――いや、あるいは、僕自身が僕として見てくれる誰かに会いたくなったのかもしれない。
窪に「行こうと思う」と返信し、彼女のことを覚えているかと訊いてみようと思ったが、途中まで入力したメッセージは、送ることなく消去した。
彼女と一緒に体験した不思議な出来事は鮮明に覚えているのに、彼女の名前も、どうやって知り合って、どのように別れたかは、まるで薄い霧の向こう側にあるように感じられる。
覚えているのは、彼女と遊んだ期間が七月の中頃から夏休みが終わるまでの、ほんの短い期間だったことくらいだ。
小学五年の夏だった。
両親が離婚した頃だったので、時期はしっかりと覚えている。
夏休みが終わってからは、彼女は学校には来ていなかったので、きっと夏の間だけ僕の小学校に来た転校生だったのだと思う。田舎の小学校なので生徒数は少なく、全学年一クラス。僕のクラスは男女合わせて二十三人で、持ち上がり式の同じ顔ぶれだった。
彼女とのことを思い出せる記憶で一番古いものは、とある日の放課後の教室だ。
たしか僕は忘れ物か何かを取りに来たのだと思う。ドアを開けると、彼女が一人、窓際に立ち外を眺めていた。
僕が彼女の名前を呼ぶと、彼女は振り向き、窓を静かに閉めた。
……なんだろう、この違和感。瞬間的に胸に広がるざわめき。その時交わした彼女との会話は思い出せない。ただ一つだけはっきりしていたのは、彼女が閉めた窓の外に見えるはずの山が消えていたことだ。
まるで、存在そのものが消去されたように、そこにはただ空が広がっていた。
僕は目をこすった。
もう一度見ても、山はどこにもなかった。
彼女は「一緒に帰ろう」と僕の手を取り、僕達は教室を後にした。
教室を出る間際、もう一度振り返ると、別の窓から見える景色には、いつもの山が、まるで何事もなかったかのように佇んでいた。
山が消えたように見えたのは僕の見間違いかもしれないと、その時は思った。
それからというもの、僕の周りでは、いや正確には彼女の周りで、不思議な現象が度々起こるようになった。
そもそも彼女は、いつの間にか僕のそばに現れた気がするのに、もうずっと前からこの場所にいたような存在でもあって、僕はそんな不可思議な彼女のことがとても気になっていた。
『久しぶり! 元気か? 小学校の同窓会のハガキ来てただろ? 洵は行く?』
なんとなく、その同窓会に彼女が来るような気がした――いや、あるいは、僕自身が僕として見てくれる誰かに会いたくなったのかもしれない。
窪に「行こうと思う」と返信し、彼女のことを覚えているかと訊いてみようと思ったが、途中まで入力したメッセージは、送ることなく消去した。
彼女と一緒に体験した不思議な出来事は鮮明に覚えているのに、彼女の名前も、どうやって知り合って、どのように別れたかは、まるで薄い霧の向こう側にあるように感じられる。
覚えているのは、彼女と遊んだ期間が七月の中頃から夏休みが終わるまでの、ほんの短い期間だったことくらいだ。
小学五年の夏だった。
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夏休みが終わってからは、彼女は学校には来ていなかったので、きっと夏の間だけ僕の小学校に来た転校生だったのだと思う。田舎の小学校なので生徒数は少なく、全学年一クラス。僕のクラスは男女合わせて二十三人で、持ち上がり式の同じ顔ぶれだった。
彼女とのことを思い出せる記憶で一番古いものは、とある日の放課後の教室だ。
たしか僕は忘れ物か何かを取りに来たのだと思う。ドアを開けると、彼女が一人、窓際に立ち外を眺めていた。
僕が彼女の名前を呼ぶと、彼女は振り向き、窓を静かに閉めた。
……なんだろう、この違和感。瞬間的に胸に広がるざわめき。その時交わした彼女との会話は思い出せない。ただ一つだけはっきりしていたのは、彼女が閉めた窓の外に見えるはずの山が消えていたことだ。
まるで、存在そのものが消去されたように、そこにはただ空が広がっていた。
僕は目をこすった。
もう一度見ても、山はどこにもなかった。
彼女は「一緒に帰ろう」と僕の手を取り、僕達は教室を後にした。
教室を出る間際、もう一度振り返ると、別の窓から見える景色には、いつもの山が、まるで何事もなかったかのように佇んでいた。
山が消えたように見えたのは僕の見間違いかもしれないと、その時は思った。
それからというもの、僕の周りでは、いや正確には彼女の周りで、不思議な現象が度々起こるようになった。
そもそも彼女は、いつの間にか僕のそばに現れた気がするのに、もうずっと前からこの場所にいたような存在でもあって、僕はそんな不可思議な彼女のことがとても気になっていた。
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