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【第八章】あなたと色づく世界
あの頃みたいに
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二人だけの静かな時間。
木漏れ日が、私たちの肩に揺れながら落ちてくる。それがとても優しくて心地よい。
「実はね、昨日、ハチに久しぶりに会うから少し緊張してたんだ」
私はハチを横目で見ながら微笑んだ。
「前みたいに話せるかな。ハチは大人になって、変わっちゃってるかなって。でも、全然変わってなくてよかった」
「つまり、成長してないってことだよね?」
ハチが、少し自虐的に笑う。こういうところも昔から変わってない。……って、人のことは言えないけど。
「もう! いい意味で言ったんだよー。元気そうでよかった」
ふと、ハチが歩みを少しだけ緩める。そして、私に向き直るようにして、ぽつりと言った。
「可琳はさ……」
「ん?」
「綺麗になったね」
一瞬、ドクンと心臓が大きく脈打つ。全身が熱くなると同時に、凍りつくような感覚も襲ってきた。
――本当の姿で会っても、ハチは私に同じ言葉をくれるのだろうか。
その考えが頭をよぎった瞬間、私は言葉を失ってしまった。顔がこわばっていたのだろう。ハチが少し慌てたように口を開く。
「あの……可琳さん?」
「……見た目だけなのかなーって思って」
「違うよ! 見た目はもちろん可愛いけどそれだけじゃない! 一緒にいると楽しいし! 可琳と話してると、昔みたいにホッとするんだ」
その必死な様子が、なんだか昔のハチらしくて、胸がきゅっとした。同時に、つくづく、どうして本当の自分で会わなかったんだろうと後悔する。あの頃も今も、自分に自信がないからなんだけど。
沈みかけた心を隠すように、私は頑張って笑顔を作った。
「ありがとう……ごめんね、変な言い方して」
これ以上ハチを困らせたくなくて、私は笑顔でハチに言う。
ハチを騙しているような罪悪感が、胸にじわじわと広がる。
この世界での私は、この姿を選んだ。それだけのことなのだから、気にしても仕方がない。そう自分に言い聞かせる。
それよりも、ハチとの時間を楽しもう。
久しぶりの川遊びは本当に楽しかった。
水しぶきが陽光を受けてキラキラと輝き、ひんやりとした水が足に触れる感触が心地よい。冷たさがじんわりと体に伝わり、懐かしい記憶が私の中で鮮明に甦ってくる。
ハチと一緒にはしゃいでいると、あの頃に時間が逆戻りしたみたいだ。大人になった私たちが、あの頃の無邪気さを取り戻したような気がする。ハチの笑顔も声も、まるで宝物みたいに私の胸に刻み込まれていく。
足元の水を蹴り上げるたびに、波紋が広がる。それを眺めながら、あの頃の気持ちを思い出した。
人は、当たり前にできたことができなくなって初めて、その大切さに気づく――。
現実の私は車椅子に座り、もう一度歩けるようになるなんて、夢のまた夢だと思っていた。でも、この世界は違う。
私は普通に立ち、歩き、風を感じ、土の感触を足で確かめることができた。
自由に歩いていたときにはわからなかったその素晴らしさに、胸が熱くなったことを覚えている。
――この世界はハチだけでなく、私のことも救ってくれたんだ。
ハチと一緒に、転げ回るようにはしゃいで、笑って、遊んだ日々を思い出す。あの頃、どれほどここが私にとって大切な場所だったのか、改めて気づかされる。
あの頃と変わらない景色がここにある。太陽が水面に反射して、眩しいくらいに輝いている。頬を撫でる風の優しさに、私はそっと目を閉じた。
ハチが私のことを覚えていてくれて、また出会うことができて。再びこの世界に来ることができて、本当によかった。
木漏れ日が、私たちの肩に揺れながら落ちてくる。それがとても優しくて心地よい。
「実はね、昨日、ハチに久しぶりに会うから少し緊張してたんだ」
私はハチを横目で見ながら微笑んだ。
「前みたいに話せるかな。ハチは大人になって、変わっちゃってるかなって。でも、全然変わってなくてよかった」
「つまり、成長してないってことだよね?」
ハチが、少し自虐的に笑う。こういうところも昔から変わってない。……って、人のことは言えないけど。
「もう! いい意味で言ったんだよー。元気そうでよかった」
ふと、ハチが歩みを少しだけ緩める。そして、私に向き直るようにして、ぽつりと言った。
「可琳はさ……」
「ん?」
「綺麗になったね」
一瞬、ドクンと心臓が大きく脈打つ。全身が熱くなると同時に、凍りつくような感覚も襲ってきた。
――本当の姿で会っても、ハチは私に同じ言葉をくれるのだろうか。
その考えが頭をよぎった瞬間、私は言葉を失ってしまった。顔がこわばっていたのだろう。ハチが少し慌てたように口を開く。
「あの……可琳さん?」
「……見た目だけなのかなーって思って」
「違うよ! 見た目はもちろん可愛いけどそれだけじゃない! 一緒にいると楽しいし! 可琳と話してると、昔みたいにホッとするんだ」
その必死な様子が、なんだか昔のハチらしくて、胸がきゅっとした。同時に、つくづく、どうして本当の自分で会わなかったんだろうと後悔する。あの頃も今も、自分に自信がないからなんだけど。
沈みかけた心を隠すように、私は頑張って笑顔を作った。
「ありがとう……ごめんね、変な言い方して」
これ以上ハチを困らせたくなくて、私は笑顔でハチに言う。
ハチを騙しているような罪悪感が、胸にじわじわと広がる。
この世界での私は、この姿を選んだ。それだけのことなのだから、気にしても仕方がない。そう自分に言い聞かせる。
それよりも、ハチとの時間を楽しもう。
久しぶりの川遊びは本当に楽しかった。
水しぶきが陽光を受けてキラキラと輝き、ひんやりとした水が足に触れる感触が心地よい。冷たさがじんわりと体に伝わり、懐かしい記憶が私の中で鮮明に甦ってくる。
ハチと一緒にはしゃいでいると、あの頃に時間が逆戻りしたみたいだ。大人になった私たちが、あの頃の無邪気さを取り戻したような気がする。ハチの笑顔も声も、まるで宝物みたいに私の胸に刻み込まれていく。
足元の水を蹴り上げるたびに、波紋が広がる。それを眺めながら、あの頃の気持ちを思い出した。
人は、当たり前にできたことができなくなって初めて、その大切さに気づく――。
現実の私は車椅子に座り、もう一度歩けるようになるなんて、夢のまた夢だと思っていた。でも、この世界は違う。
私は普通に立ち、歩き、風を感じ、土の感触を足で確かめることができた。
自由に歩いていたときにはわからなかったその素晴らしさに、胸が熱くなったことを覚えている。
――この世界はハチだけでなく、私のことも救ってくれたんだ。
ハチと一緒に、転げ回るようにはしゃいで、笑って、遊んだ日々を思い出す。あの頃、どれほどここが私にとって大切な場所だったのか、改めて気づかされる。
あの頃と変わらない景色がここにある。太陽が水面に反射して、眩しいくらいに輝いている。頬を撫でる風の優しさに、私はそっと目を閉じた。
ハチが私のことを覚えていてくれて、また出会うことができて。再びこの世界に来ることができて、本当によかった。
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