27 / 28
1章 牢獄編
帰宅
しおりを挟む
まさか、デリックさんがここまで警戒されているとは思わなかった。
僕の見立てでは、この男は自身の保身のためであれば味方を簡単に裏切るクズだと思っていたが……どうやら衛兵の立場として、独自のラインを持っているらしい。
ただ、これで確信した。
やはりネブラ様は、モーランを殺せと僕に言っていることを。
「出してやったんだから、もう面倒を起こすなよ。俺がモーランさんに怒られちまう」
と、彼は言い残して第二出口の方へと歩き始めた。
「どこに行くんですか?」
「モーランさんの援護に決まってるだろ。この怪我じゃあまり役に立てないかもだが、出来ることはあるからな」
当たり前のように、彼はそう言い放った。
おかしい。
僕の読みでは、彼は死ぬ可能性がある場所に行くはずがないのに。
「命欲しさに僕たちを出したはずなのになぜ死地に赴くんですか? グランツさん」
「ん? モーランさんがいるんだから、俺が死ぬはずないだろ」
キッパリと、そう言い切る。
グランツがそれほどまでにモーランの武力を信じ切っている事に、僕は驚愕した。
同時に、彼ほど命を大事にしている男が「死ぬリスクが無い」と言い切れるモーランの武力に、背筋に冷たい汗が流れた。
ガロスやルシアンは無事だろうか。
今すぐ確認に行きたいが、彼がモーランの援護に行くと言っていたのを思い出し、僕は僕の役割を認識した。
僕は、こいつをモーランの元へ送ってはならない、と。
なぜなら彼の怪我であっても、おそらくクロスボウなどの投擲物は使えるからだ。
向こうがどうなっているかは分からないが、まだ戦いが続いていた場合、彼の到着で戦況が一気に不利になる可能性すらある。
何が何でも、彼をモーランから引き剥がさなければならない。
「そうですか。では僕たちは僕たちで楽しむので、モーランさんへの加勢、頑張ってくださいね」
と言い、僕はラグと共に馬小屋の方へ歩き出した。
「待て。なんでそっちに馬小屋があることを知ってやがる。まさか牢屋内だけじゃ無くて、周辺の地形もバレてるのか」
やはり止めてきた。
こいつはモーランと共にデリックさん達を最速で仕留め、すぐにモーランを連れて自分の家族の保護に向かうつもりだったのだろう。
その甘い考えは、真っ向から潰す。
「ええ、知ってますよ勿論。やはり行くなら早い方がいいので、馬は必要かと思いまして」
「ちなみに……どこに行くつもりか、俺に教える気はあるか?」
「わざわざ言わなくても、あなたなら分かってるんじゃないですか?」
彼は苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
「分かった。このタイミングで言ってきたという事は、モーランさんへの加勢を阻止したいって意味だろ。……俺は、家に帰ることにする」
僕が今1番聞きたかったセリフを彼が口からこぼして、馬小屋の方に向かった。
「だが、一つだけ言わせてくれ。これだけの怪我を負った俺と戦いたくないって事は、ラグも本調子じゃないって事だろ? この状態の俺に負ける可能性を考慮する程度の戦力なら、モーランさんへの加勢に行ったところで無駄足だぞ」
捨て台詞のように僕らに言い放ち、グランツは彼の家の方に馬を走らせた。
片手でお腹を抑えながら、空いた手で手綱を握る姿を見て、おそらく戻ってこないだろうと考え心の中でガッツポーズをとった。
「あとは、モーランを殺せば全員晴れて脱出できるぞ、ラグ」
「そうっすねセドリックさん!」
すでに全滅している可能性もあるが、それは口には出さなかった。
身内が死んだ時、ラグがどんな変化を起こすのか僕には予想ができなかったというのもあるが。
何よりも、その可能性を僕が考えたく無かったからだ。
僕の見立てでは、この男は自身の保身のためであれば味方を簡単に裏切るクズだと思っていたが……どうやら衛兵の立場として、独自のラインを持っているらしい。
ただ、これで確信した。
やはりネブラ様は、モーランを殺せと僕に言っていることを。
「出してやったんだから、もう面倒を起こすなよ。俺がモーランさんに怒られちまう」
と、彼は言い残して第二出口の方へと歩き始めた。
「どこに行くんですか?」
「モーランさんの援護に決まってるだろ。この怪我じゃあまり役に立てないかもだが、出来ることはあるからな」
当たり前のように、彼はそう言い放った。
おかしい。
僕の読みでは、彼は死ぬ可能性がある場所に行くはずがないのに。
「命欲しさに僕たちを出したはずなのになぜ死地に赴くんですか? グランツさん」
「ん? モーランさんがいるんだから、俺が死ぬはずないだろ」
キッパリと、そう言い切る。
グランツがそれほどまでにモーランの武力を信じ切っている事に、僕は驚愕した。
同時に、彼ほど命を大事にしている男が「死ぬリスクが無い」と言い切れるモーランの武力に、背筋に冷たい汗が流れた。
ガロスやルシアンは無事だろうか。
今すぐ確認に行きたいが、彼がモーランの援護に行くと言っていたのを思い出し、僕は僕の役割を認識した。
僕は、こいつをモーランの元へ送ってはならない、と。
なぜなら彼の怪我であっても、おそらくクロスボウなどの投擲物は使えるからだ。
向こうがどうなっているかは分からないが、まだ戦いが続いていた場合、彼の到着で戦況が一気に不利になる可能性すらある。
何が何でも、彼をモーランから引き剥がさなければならない。
「そうですか。では僕たちは僕たちで楽しむので、モーランさんへの加勢、頑張ってくださいね」
と言い、僕はラグと共に馬小屋の方へ歩き出した。
「待て。なんでそっちに馬小屋があることを知ってやがる。まさか牢屋内だけじゃ無くて、周辺の地形もバレてるのか」
やはり止めてきた。
こいつはモーランと共にデリックさん達を最速で仕留め、すぐにモーランを連れて自分の家族の保護に向かうつもりだったのだろう。
その甘い考えは、真っ向から潰す。
「ええ、知ってますよ勿論。やはり行くなら早い方がいいので、馬は必要かと思いまして」
「ちなみに……どこに行くつもりか、俺に教える気はあるか?」
「わざわざ言わなくても、あなたなら分かってるんじゃないですか?」
彼は苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
「分かった。このタイミングで言ってきたという事は、モーランさんへの加勢を阻止したいって意味だろ。……俺は、家に帰ることにする」
僕が今1番聞きたかったセリフを彼が口からこぼして、馬小屋の方に向かった。
「だが、一つだけ言わせてくれ。これだけの怪我を負った俺と戦いたくないって事は、ラグも本調子じゃないって事だろ? この状態の俺に負ける可能性を考慮する程度の戦力なら、モーランさんへの加勢に行ったところで無駄足だぞ」
捨て台詞のように僕らに言い放ち、グランツは彼の家の方に馬を走らせた。
片手でお腹を抑えながら、空いた手で手綱を握る姿を見て、おそらく戻ってこないだろうと考え心の中でガッツポーズをとった。
「あとは、モーランを殺せば全員晴れて脱出できるぞ、ラグ」
「そうっすねセドリックさん!」
すでに全滅している可能性もあるが、それは口には出さなかった。
身内が死んだ時、ラグがどんな変化を起こすのか僕には予想ができなかったというのもあるが。
何よりも、その可能性を僕が考えたく無かったからだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる