異世界で勇者になってたクラスメイトの愛が重すぎる

北山カナ

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歓迎

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「我が国の恩人であるユキト殿が心を寄せる者とあれば、手厚くもてなすのが礼というものだ。心より歓迎しよう」 
 
 王様がそういった通り、私は、それはそれは丁重に扱われることになった。急遽歓迎会を開いてくれ、豪華な食事をごちそうになり、この世界のことを何も知らない私に、王宮の家庭教師をつけて勉強を教えてくれるとまで約束してくれた。 
 
「しかしタチバナ、ミユウか…ユキト殿といい不思議な響きの名だな」 
 
 王様の前で緊張して言葉に詰まる私の代わりに、横で付き添ってくれている小林くんが完璧な笑みを浮かべ、よどみなく答えていく。 
 
「確かにここではあまり聞かない名前ですよね。不思議な響きかもしれませんが、僕たちの故郷でも名前に意味を込める風習があります。例えば…橘さんの名前である美優という字には美しいと優しいという意味があります」 
「美しくて優しい…名が体を表した、橘さんにぴったりな名前だといつも思っていたんです」 
 
 小林くん??何を言ってるの?? 
 王様の前で突然デレるとか、とても正気の沙汰とは思えない。本当に名が体を表すというなら、お前の名前は今日からゼウスだ。 
 ほら、みんなポカンとしてる!異世界では美醜の感覚が違うのかなって思われるでしょ!みなさん!多分一緒なので安心してください! 
 今すぐそう大声で弁明したかったが、生暖かい目で見ている王様の前でとてもそんなことできるはずもなく、「小林くんってばお世辞がうまいんだからー」と、乾いた笑みと共にそう言うことしかできなかった。 
 
 
 食事会では、魔王を倒すために小林くんと共に戦った、元勇者一行の人たちと同席することになった。 
 
「そーいや、お前どこに住むんだ?」 
 
 赤髪短髪で体格のいいこの人はカインさん。戦士として近接戦を担当していたらしい。随分と砕けた態度をとっているが、私と打ち解けたわけではない。第一声からこんな感じだった。 
 
「小林くんの家に泊めてもらうことになりました」 
 
 ここでは小林くんが私の保護者として面倒を見てくれるらしく、住居問題も小林くんの家に居候することで解決した。 
 
「おいおい、大丈夫かぁ?好きな女とひとつ屋根の下だからって手ぇ出すなよ~」 
 
 カインさんがニヤニヤと笑い、小林くんの背中をバシバシ叩いた。 
 
「なっ!?そんなことするわけない!大体、同じ家って言っても空き部屋はたくさんあるから離れた所を貸すし、使用人の中には女の人も数人住んでるから大丈夫だよ!」 
 
 小林くんは顔を真っ赤にして声を張り上げた。その姿にカインさんはさらに笑みを深める。 
 
「橘さん…僕は女神様に誓って何もしないけど、嫌なら今からでもどこか他の物件買い取るよ!近くの宿でもいいし!だから、僕の知らないところで他の人の家に行くとかだけは…」 
「大丈夫だよ。小林くんはそんなことしないって分かってるから」 
「女に必死になってるユキトマジでおもしれー!」 
 
 何がそんなに面白いのか、カインさんはずっと爆笑している。 
 
「タチバナさん、ごめんなさいね。あのバカが」 
 
 艶のある金髪の美しい女性が、少し呆れたようにカインさんを見た。彼女はこの国の第一王女で、勇者一行の魔導士を務めていたらしい。 
 
「今までユキトは全く女性になびくことがなかった上、何でも涼しい顔をしてこなしてしまうから、あなたに対して必死になってるのが珍しくて面白いんですよ。ねぇ?リヒト」 
 
「あぁ、こんなユキトは初めて見た」 
  
 リア王女の横のリヒトさんがうなずく。ずっと難しい顔をして黙っているから、あまりこの食事会に乗り気ではないのかと思っていたが、気のせいだっただろうか。 
 リヒトさんは生涯未婚を貫く僧侶なのがもったいないくらい美しい顔立ちをしている。 
 にしても、勇者一行のメンバーは顔採用なのかと思うほど美形ぞろいだ。私が著しくこの場の顔面偏差値を下げているのが明白で、なんだかとてつもなく居心地が悪い。 
 
 リヒトさんが小林くんに向けていた目線をこちらに移した。眉を寄せて、何か言いたげな顔をしている、ように見える。少し不機嫌そうにも見えるな。私は別にリヒトさんに何もしていないどころか、まともに話もしていないはずなんだけど。 
 もしかして私の存在を怪しんでる?それとも私の存在が気に入らない? 
 
「あのー」 
「じゃあ僕たちはそろそろ帰ろうかな。いろいろ説明したいこともあるから、あんまり遅くなるわけにもいかないし」 
 
 思い切ってリヒトさんに話しかけようとしてみたが、タイミング悪く小林くんの声に被さり、私の声はかき消された。 
 まぁ、いいか。きっとこれから私にはこういった視線が幾度となく突き刺さるだろう。 
 世界を救った勇者の思い人が全て終わった後に突然やってきて、しかもそれが平凡で特に役にも立たないお荷物となれば、それもしょうがない。これから覚悟しなくては。 
 
 私たちは最後に王様に挨拶を済ませ、王宮を後にした。 
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