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第五十四話 妖魔王様の甘いお仕置き

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 「さて、レイチ。君は、僕とヴィオが別々の存在だということを確認したいのだったね?」
 ヴィオラは寝室へ直行すると、完璧にベッドメイクされたベッドに俺を下ろし、向き合って掛ける。

 「いや、特にそんなことは言っ──」
 「確認したいはずだ。ヴィオとずっと一緒にいたから、僕とは逢わなくていいと言っていたんだから」
 鋭い眼差しが俺を射る。

 「待て! 言ってないから! ヴィオとずっと一緒にいたし、と思って挨拶は略したけど!」
 焦って言い訳する俺の言葉を受け、ヴィオラは深々と溜め息をつく。

 「レイチときたら、スラサンには念話を繋ぐのに僕はまるきり無視するし、挙げ句の果てに、ずっと一人で仕事してやっと逢えた僕を無視してスラサンに真っ先に駆け寄るとか、もう本当に僕のことなんてどうでも良くなったみたいで……こんなことならやっぱりレイチを僕の眷属にしておくべきだったよ」

 ヴィオラの言葉にウッと唸った。
 いや、そうやって客観的に言葉にされると、俺、結構ひでぇな。

 「いや、ゴメン! ほんとマジで! 俺、ヴィオとヴィオラは同じだと思ってて……」
 「そう。その誤解を解くためにも、きちんと身体で確認したほうがいいよね」
 「身体で?!」

 ヴィオラの言葉に思わず凍りつく。
 待って何する気?! 怖い怖い!

 「そんなに固くならなくていい。レイチはいつも通り、リラックスして僕を感じていてくれればそれでいいから」
 そう囁きながら、ヴィオラの手が俺の髪を撫で、耳裏を通って首筋へ降り、真っ直ぐ背筋を撫で下ろすと前に回ってベルトを外し、プルオーバーのシャツを捲り上げていく。
 そのままヴィオラは慣れた手つきでトラウザースも下着も取り去り、俺を素っ裸に剥いてしまう。

 ヴィオラ自身は、脱がなくたって裸になれるってのにがっちり着込んだままだ。

 一般的に魔王と言えば黒いずるずるとした衣を着込んでるイメージだけど、こっちの魔王は見た目に拘る淫魔出身の妖魔王、トロリとした手触りのほんのり透けるドレープシャツを着てたり、長い脚をこれでもかと強調するタイトなパンツを穿いていたり、お洒落でセクシーで格好良くて、ちょっとムカつく。

 「俺だけ裸なのかよ」と文句を言ったら、
 「お仕置きだからね」とサラリと言われた。

 「……天蓋を閉めてくれよ」
 天蓋付きのベッドなのに、今は天蓋が全開だ。

 妖魔城に泊まるようになって、天蓋の意味を思い知った。
 側近たちが遠慮なく入って来るんだ。やれ、人間の国で侵略戦争が始まったの、勇者を名乗る人間が現れて魔族を虐殺しているだの、魔王の仕事は二十四時間年中無休だ。眠る必要のない妖魔だから尚更遠慮がない。

 しかも、この妖魔城にいる妖魔はほぼ全員、元淫魔だ。セックスを恥ずかしいと思うことが一切ない。
 彼らにとってはセックスは食事のようなもので、あるじの食事の邪魔をしてしまうという遠慮はあっても、見てはいけないという感覚はない。
 まさに、天蓋は命綱なのだ。

 電気を消してとお願いする女の子みたいで毎回妙な恥ずかしさを覚えるんだけど、仕方ない。

 「ダメ。お仕置きだから閉めてあげない。みんなにレイチの淫気のお裾分けしてあげようよ」
 Sっ気漂う笑みを浮かべて言うと、ヴィオラは俺を膝に抱きかかえ、俺の体に悪戯を始めた。

 「え、ほんとにこのまま? や、無理、ゴメン、ヴィオラ、謝るから、カーテン閉めてくれって。嫌なんだよ、見られるの、ほんと無理だから……」
 「嫌がってるレイチも可愛い。おちんちんふにゃふにゃのままだね。本当に嫌なんだ」
 クスリと笑い、それをふにふにと楽しげに弄ぶ。
 俺が逃げようと身じろぎをしたら、ヴィオラは魔力の紐を放ち、俺の手首と足首を左右それぞれにまとめて縛りあげ、凄まじく恥ずかしい格好で固定されてしまう。

 天蓋のカーテンは開けっ放し、その向こうは未施錠の扉。そちらに向かって脚を開かされ、萎えたモノを晒している無様な姿の俺。

 「やめてくれ、ヴィオラ。本当に、俺、こういうの無理だから……ゴメン、謝るから、本当にマジで、やめてくれって……」
 言ってるそばから、鼻がツンとしてくる。

 「やめてあげたいけど、ゴメン、無理。泣いてるレイチが可愛すぎて……」
 ヴィオラは背後から俺を抱き込み、うなだれたままの俺の陰茎や陰嚢を弄ったり、乳首を指先で転がしたりしている。
 いつもならもっと気持ちいいのに、今はただ触られている感触がするだけだ。

 「可哀想に、恥ずかしすぎて性感も吹っ飛んじゃったんだね。ちょっとだけ催淫をかけようか」
 ヴィオラが耳元に囁く。

 俺が攻める側にいたなら、見られてもそこまで恥ずかしいとは思わないだろう。
 でも、こうして一方的に嬲られる姿を晒すのは恥ずかしい。絶対に見られたくないんだ。

 ヴィオラはいつの間にか傍らに控えさせていたスライムのヴァスに指先を這わせ、たっぷりと粘液を纏わせて尻に挿入してくる。

 後ろの孔の中をヴィオラの長い指にかき回され、疼くような感覚を覚える。
 催淫の魔法が効いてきたのかもしれない。
 ヴィオラはクプクプと抜き挿ししながら、指をくねらせ、中を刺激していく。
 俺はこぼれそうになる吐息を噛み殺した。

 視界にはずっと扉があって、そこから今にも誰かが飛び込んで来そうな気がしてしまう。せめて前を隠したいのに、手首が拘束されていて動かせない。
 脚を閉じようとしたら、
 「こら、レイチ。ダメだよ」
 という、赤ん坊か愛玩犬でも叱るみたいな甘い声と共に両脚をグイッと開かされ、ヴィオラの長い脚で閉じられないように固定されてしまった。

 「やだ……っふ、ぅ……も、やめ……んんっ、あっ……」
 ヴィオラの指が中でぬるぬるとうごめくと、恐らくは催淫で無理に高められた官能が俺をさいなむ。

 うずうずと疼くような感覚が次第に強まっていく。

 「うう……頼むから、もう、やめ……」
 「やめていいの?」
 ヴィオラの指が、もう覚えられてしまった俺の弱いところをぐいぐいと遠慮なく刺激する。

 「ああぁ……!」
 ビクッと体が跳ね、つま先がギュッと折れ曲がる。

 ヴィオラの空いたもう片方の手が、胸のポッチをくりくりと刺激しだす。

 「ああ、や……!」

 体を動かしたい。手でそこいらを掻きむしりたいような衝動が襲うのに、拘束されているためにどうにもならないもどかしさ。

 「やだ、ヴィオラ、これ外して」
 「まだダメ」
 意地悪なヴィオラの指はいつの間にか三本が根元までずっぽり入り込み、グプグプと激しく出入りしながら俺の中を掻き回す。
 ハッハッ、とその動きに合わせて息が弾む。

 ……足りない。
 あと一歩届かない、じれったい感覚を覚えてしまう。
 指じゃ足りない。もっと奥を、もっと太く長いもので……。

 「ヴィオラ……指、もういい」
 小さく首を振る。

 「どうして? 指、気持ちよくない?」
 「やだ……指じゃ、イけない」
 「んー。何をどうしてほしいのか、ちゃんと言葉にしてくれないとわからないよ」
 耳に吐息を吹きかけるように囁く声が、エロい。
 ヴィオラの指は激しくも単調な刺激を繰り返し、止まる様子はない。

 柔らかな刺激は、もっと激しいものに慣れてしまった身にはただ苦しくて、思わずうぅと唸る。

 「……ちんこ! 挿れろよ! それじゃイけねぇよ!」
 やけっぱちで声を上げた。

 ヴィオラが嬉しそうに、俺の後ろでふふっと笑う。

 「レイチ、最高。大好きだよ」
 ヴィオラが熱っぽく囁いて耳を食んだ。
 ハァハァと熱い吐息が耳穴に吹き込まれ、舌が這う音がヌチュヌチュと卑猥に響く。

 尻から指が抜けていき、俺の体がヒョイと抱え上げられる。

 尻の割れ目に熱い杭の先端があてがわれ、何度か往復し、そこを見つけ出す。
 柔らかく口を開けたそこに丸い先っぽが押し付けられ、俺の体が静かに下ろされると、そこからそれがヌチヌチと侵入してくる。

 「……あっ」
 俺を犯し、満たしていく圧倒的な質量に、思わず声が上がる。

 ヴィオラのそれは、魔物なのに熱くて、大きくて、そして感触が優しい。鉄みたいなガチガチじゃなく、フワッとしてる中に固い芯があるような感触で、優しく掻き分けて入ってくるようで、気持ちいい。

 トロリと俺の幹を雫が伝い落ちる感触に、初めていつの間にか勃起していたことに気づく。

 ヴィオラの膝に座らされた格好で、そっと揺さぶられる。

 その律動に合わせてハ、ハ、と吐き出す息に微かに声が混じる。

 抽挿は次第に早く激しくなっていき、俺の声も呼吸の音を掻き消すほどになっていることに、自分でも気づいていない。

 それに気づいたのは、カチャリと音を立てて目の前の扉が開いた時だった。

 ドキンと衝撃が全身を駆け巡るが、一旦高められた官能はもう容易には去らず、口からは恥ずかしい喘ぎ声が立て続けにこぼれ続ける。

 いやだ、やめてくれ、と言いたかったが、言葉にならない。

 緊張はそこを締め付け、俺を犯すモノの感触を余計に強く感じさせることになった。
 「あ、あ、あ……!!」

 無駄と知りつつ、逃れたいともがく。

 「レイチ気持ちよさそう。僕も混ざっていい?」
 目の前に現れたのは、小さなヴィオラ──淫魔のヴィオだった。

 「レイチ、ビックリした?」
 背後からヴィオラが激しく俺を揺さぶりながら、悪戯っぽく笑う。

 わざわざ扉から入ってこさせることねえだろうが! と、言いたいけど、やはり言葉にならない。

 「ああ、もう、すーっごい最高に上質な淫気でたまらないよ。レイチのおちんちんちょうだいね」
 頬を上気させて唇を舐めながら呟くように言うと、ヴィオは裸になって俺に跨がってきた。

 「ねー、挿れるから一瞬止まって」
 ヴィオの言葉に
 「いいよ」とヴィオラが応える。

 ヴィオラの動きが止まり、ヴィオは「んしょ」と声をもらしながら俺のモノを後ろの孔に飲み込んでいった。

 「ああン」
 挿れただけで、もう蕩けるような声をあげている。

 俺は、気づいたら大小のヴィオラに挟まれる格好になっていた。

 ヴィオラが律動を再開する。
 下から突き上げられる衝撃で俺のモノがヴィオを突き上げる。
 ヴィオはそれだけじゃ足りないとばかりに自ら腰を揺さぶる。

 上からも下からも揺さぶられ、もうひとたまりもなく白濁を吐きだしたが、それで二人が収まるはずもなく、奇妙な3Pは夜明けまで続いた。

 朦朧とした意識の中で、どこか妙に冷静に考えたのは、ヴィオラとヴィオの関係のことで。

 俺は、ヴィオラとヴィオは完全に同期した存在だと思っていたんだ。二台の端末だけどソフトとデータは全く一緒、みたいなものだろうと。

 けれど実際には、LANで繋がってはいるけど、別々の端末なんだ。
 多分、ヴィオラはそれを言いたかったんだろう、と。
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