わたし"だけ"が魔法使い

丸晴いむ

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「まだまだ、なんだったらもっとお水あげてみてもいいんじゃない?」

 夕食前の井戸端会議。
どう思う?と見回せばルーフがぽよんぽよんとリズミカルに弾み、リナーはくるくる回ってる。
リーグは逆さまになって不敵に笑い、ダナーは今日も広範囲に広がりすぎて姿が見えない。
よさそうな感じかな。

「4人分の協力があるんだから、いつもの4倍かな」

 いつも道理のコップ一杯分程度の水をやり、それを過ぎてもさらに注ぎ続ける。

とぷとぷと、ぷにょん

 ルーフから体を張った抗議が入った。光を乱反射して、視界が揺らめいて歪む。
これぐらいでやめた方がいいみたい。いつもの倍ってとこかな。

 夕方の南棟の畑は、結構賑やか。朝と夜の二回水遣りをするみたい。
別に急ぎじゃないし人も多いから、畑をぐるっと回って帰る。
ふと、すれ違った人に意識が向いた。エルフの耳だ。くそぉ貴重な魔法使い素質なのに…。

「ルクラス」
「あぁ、こっちは終わった」

 レナさんだ。彼女と関りがあるなら、魔力を矢にして打つ弓の使い手なのかもしれない。



*** 


「お待たせなの、食堂に行くの」

 フィフィちゃんは授業が終わると、まずお風呂で汗を流してくる。その間に私は井戸に行ってて、合流してご飯。
フィフィちゃんに限らず女子はそうしてるんだけどね。食べたらもう一度ゆっくりお風呂に入るよ。
時間をずらせば1人広々入れるけど、混んでても一緒がいいから私はいつも待ってる。

「前に見たエルフさん、弓術科にいたよー」
「そうなんだ」
「ふぅん」

 食堂でティティくんとも合流。
さっそく今日の出来事として話してみたけど、同じエルフなのにあんまり興味なさそうな感じ。

「前に、周りは魔法使いばっかりって言ってなかった?あの人は一体何なの~」
「そう言われても、フィフィの里の人じゃないの」
「僕達と関係ないし」

 それは失礼しました。

「エルフは里が違えば仲が悪いの。覚えておいてほしいの」
「蒼眼だろ」
「目の色?確かに青かったね」

 里によって目の色が違うのかな。血が近いのかもね。
うちの村はそういう統一性はなかった。その代わり人の場合は土地ごとに名前の音が似てたりするかも。

「シェリーちゃんの杖、どうだったの?」

 そろそろ完成かな、と今日の成長っぷりを見て2人で朝から盛り上がっていたのだ。
るんるん気分で先生に聞いた結果がまさかのまだまだ、で逆にびっくりだったけど。

「わたしの杖、まだまだなんだって。もしかしたらわたしの背ぐらい伸びるかも」
「それならそれで、それがシェリーちゃんにとってピッタリの形なの」
「妖精が考える、だけどね」

 妖精たちが考える、わたしにピッタリな杖か…。4人のセンスに期待したい。

「フィフィの得意な長さは長剣なの」
「適性を調べるって言ってたもんね。もしフィフィちゃんが杖を育てたら長いのかな」

 自分に最も適した武器を見極めるのは大事だ。剣術科の子はもしもに備えて短剣も長剣も大剣も試すらしいけど、触りだけでまずは一番得意を伸ばす。
ダンジョンに入れるようになったら、手に入れた素材を売って自分用の武器を誂えるらしい。
わたしは武器である杖を作ってるから、タダだ。これも魔術科を推すポイントに加えとこっと。

「僕は短剣」
「ティティは素早さを生かした剣士になるの。フィフィとタイプが違うから上手くパーティーを組めるの」

 長剣と短剣なら、同じ前衛同士でも間合いが違う。戦略は広がりそうだね。

「わたしも入れてくれる?」
「もちろんなの」
「いいよ」

 冬になると、4人か5人でパーティーを組んでダンジョンに潜る試験がある。同じ学科は2人までだから、剣術科のユーグはここでさよなら。
ごめんねユーグ。幼馴染よりも、新しい女友達を優先するよ!
まぁ気にしなくてもユーグもどうせ男友達と全力でやんちゃしてるんでしょ。

 翌朝。朝食中そう言ってやったら、案の定別にいいよと即了承された。

「一応パーティーの打診してたけど、魔法使いはやっぱ人気ないんだよなぁ。渋ってたから助かる」
「何勝手にパーティー組もうとしてんの!」
「お互い様だろ、怒るなよ~。女子と組めるってだけで喜んでた奴は外したり色々考えてたんだからなこっちは」

 ちょっとはわたしの事も考えてくれてたみたい。許そ。

「昨日は自分に合った剣が分かったんでしょ?ユーグは何だった」
「俺は長剣。剣の長さによって組み分けやり直すのかと思ったけど、他のリーチの雰囲気も掴めた方がいいからってごちゃ混ぜなんだ。効率悪いと思わねぇ?」

 男友達が増えたからか、最近ユーグはちょっと口調が荒くなった。ま、憧れの軟派騎士の真似しておだてるような発言してるよりマシかな。

「組み分けはこのままがベストなの!フィフィはダグラス先生がいいの」
「ダグラス先生まじめすぎて怖いんだよな。バドの授業は楽しくていいぞ」
「バド先生は皆になめられてると思うの」
「ララ先生は普通」

 えー、先生の名前を呼ばなきゃいけないほど先生がいていいな。
私もノーマ先生って呼んでみよっと!
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