14 / 17
14
しおりを挟む「まだまだ、なんだったらもっとお水あげてみてもいいんじゃない?」
夕食前の井戸端会議。
どう思う?と見回せばルーフがぽよんぽよんとリズミカルに弾み、リナーはくるくる回ってる。
リーグは逆さまになって不敵に笑い、ダナーは今日も広範囲に広がりすぎて姿が見えない。
よさそうな感じかな。
「4人分の協力があるんだから、いつもの4倍かな」
いつも道理のコップ一杯分程度の水をやり、それを過ぎてもさらに注ぎ続ける。
とぷとぷと、ぷにょん
ルーフから体を張った抗議が入った。光を乱反射して、視界が揺らめいて歪む。
これぐらいでやめた方がいいみたい。いつもの倍ってとこかな。
夕方の南棟の畑は、結構賑やか。朝と夜の二回水遣りをするみたい。
別に急ぎじゃないし人も多いから、畑をぐるっと回って帰る。
ふと、すれ違った人に意識が向いた。エルフの耳だ。くそぉ貴重な魔法使い素質なのに…。
「ルクラス」
「あぁ、こっちは終わった」
レナさんだ。彼女と関りがあるなら、魔力を矢にして打つ弓の使い手なのかもしれない。
***
「お待たせなの、食堂に行くの」
フィフィちゃんは授業が終わると、まずお風呂で汗を流してくる。その間に私は井戸に行ってて、合流してご飯。
フィフィちゃんに限らず女子はそうしてるんだけどね。食べたらもう一度ゆっくりお風呂に入るよ。
時間をずらせば1人広々入れるけど、混んでても一緒がいいから私はいつも待ってる。
「前に見たエルフさん、弓術科にいたよー」
「そうなんだ」
「ふぅん」
食堂でティティくんとも合流。
さっそく今日の出来事として話してみたけど、同じエルフなのにあんまり興味なさそうな感じ。
「前に、周りは魔法使いばっかりって言ってなかった?あの人は一体何なの~」
「そう言われても、フィフィの里の人じゃないの」
「僕達と関係ないし」
それは失礼しました。
「エルフは里が違えば仲が悪いの。覚えておいてほしいの」
「蒼眼だろ」
「目の色?確かに青かったね」
里によって目の色が違うのかな。血が近いのかもね。
うちの村はそういう統一性はなかった。その代わり人の場合は土地ごとに名前の音が似てたりするかも。
「シェリーちゃんの杖、どうだったの?」
そろそろ完成かな、と今日の成長っぷりを見て2人で朝から盛り上がっていたのだ。
るんるん気分で先生に聞いた結果がまさかのまだまだ、で逆にびっくりだったけど。
「わたしの杖、まだまだなんだって。もしかしたらわたしの背ぐらい伸びるかも」
「それならそれで、それがシェリーちゃんにとってピッタリの形なの」
「妖精が考える、だけどね」
妖精たちが考える、わたしにピッタリな杖か…。4人のセンスに期待したい。
「フィフィの得意な長さは長剣なの」
「適性を調べるって言ってたもんね。もしフィフィちゃんが杖を育てたら長いのかな」
自分に最も適した武器を見極めるのは大事だ。剣術科の子はもしもに備えて短剣も長剣も大剣も試すらしいけど、触りだけでまずは一番得意を伸ばす。
ダンジョンに入れるようになったら、手に入れた素材を売って自分用の武器を誂えるらしい。
わたしは武器である杖を作ってるから、タダだ。これも魔術科を推すポイントに加えとこっと。
「僕は短剣」
「ティティは素早さを生かした剣士になるの。フィフィとタイプが違うから上手くパーティーを組めるの」
長剣と短剣なら、同じ前衛同士でも間合いが違う。戦略は広がりそうだね。
「わたしも入れてくれる?」
「もちろんなの」
「いいよ」
冬になると、4人か5人でパーティーを組んでダンジョンに潜る試験がある。同じ学科は2人までだから、剣術科のユーグはここでさよなら。
ごめんねユーグ。幼馴染よりも、新しい女友達を優先するよ!
まぁ気にしなくてもユーグもどうせ男友達と全力でやんちゃしてるんでしょ。
翌朝。朝食中そう言ってやったら、案の定別にいいよと即了承された。
「一応パーティーの打診してたけど、魔法使いはやっぱ人気ないんだよなぁ。渋ってたから助かる」
「何勝手にパーティー組もうとしてんの!」
「お互い様だろ、怒るなよ~。女子と組めるってだけで喜んでた奴は外したり色々考えてたんだからなこっちは」
ちょっとはわたしの事も考えてくれてたみたい。許そ。
「昨日は自分に合った剣が分かったんでしょ?ユーグは何だった」
「俺は長剣。剣の長さによって組み分けやり直すのかと思ったけど、他のリーチの雰囲気も掴めた方がいいからってごちゃ混ぜなんだ。効率悪いと思わねぇ?」
男友達が増えたからか、最近ユーグはちょっと口調が荒くなった。ま、憧れの軟派騎士の真似しておだてるような発言してるよりマシかな。
「組み分けはこのままがベストなの!フィフィはダグラス先生がいいの」
「ダグラス先生まじめすぎて怖いんだよな。バドの授業は楽しくていいぞ」
「バド先生は皆になめられてると思うの」
「ララ先生は普通」
えー、先生の名前を呼ばなきゃいけないほど先生がいていいな。
私もノーマ先生って呼んでみよっと!
0
あなたにおすすめの小説
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる