わたし"だけ"が魔法使い

丸晴いむ

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15 夏の湖

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「ノーマ先生!見てください蕾ができましたよ」

 と、教室に駆け込んで先生と一緒に花が咲いて行くのを見守った。
ここまで実に長かった…土に近い位置から新しく出てきた3つの芽がじわじわ伸びるのが焦れったかったのなんの。
最初の一本を飾るようにして絡んで巻き付く細めの三本。すごくオシャレでとっても綺麗な仕上がりに大満足なんだけど、本当にじれったかった…!

 一か月近く待った甲斐があった、立派な花が咲いた。

「大きい花ね。いい出来だわ」
「ありがとうございます!みんなありがとー!」
「私のは親指ぐらいのマーガレットに似た花だったわ。水色のね」

 わたしの花は、手をぱーっと広げたぐらいある。濃い赤から淡いピンクのグラデーションだ。
金色に光る筋が花びらに見える。

「この花はどうするんですか?」
「これは妖精へのお礼になるの。明日にはなくなってるわね」
「うち4人いますよ」

 喧嘩になっちゃうね?

「妖精は形にこだわらないから大丈夫よ。今夜はきっと4人仲良くお祝いね」
「だったらよかったです」

「思ったより時間がかかっちゃったけど、間に合ってよかったわ。そろそろ主釣り対策しないとね」
「釣りですか?」
「夏になったら湖を使った学科対抗の行事があるのよ」

 このまま授業に入るようで、先生は黒板にカッカと書き出す。

「要は一番大きい魚を釣った寮が優勝で、寮内の結束を高める行事よ。あ、ごめんね」
「い~いです、続けてください」

 ごめんねがなければ特に気にならなかったのに…。うぐぅ。

「えーと…湖の下にダンジョンがある影響か、びっくりするぐらい大きな魚がいるの。私を丸呑みしちゃいそうなぐらいのね」
「それはでっかいですね!」

 大きい魚、なんて言っても赤ちゃんぐらいの大きさしか見たことがない。自分で釣った事があるのはせいぜい手のひらサイズだ。

「魔力を込めた石が餌で、これは2年生が集めるの。魚を釣り上げるのは1年生で、魚を仕留めるのが3年生ね」
「これでもかってぐらいわたしにはどうしようもないですね!」

 っていうか魚を仕留めるって何?

「私が居た時はくじで決められた4人パーティーで、4学科が協力する行事だったのよ。魚の魔物化を防ぐ目的があるから、行事を続けるにあたってルールが変わったのね」
「その時の魔術科の役割は何でしたか?」
「1年の時は魔力を感知して船を魚に誘導する係で、2年では魔石を作ったわね。3年では魔法で魚をこんがり焼き上げたわ」
「先生かっこいい!」

 一人でもできないことはない、かな?いや無理でしょ。だって魚が大物過ぎる。

「わたしは一人で参加なんですか?よそに入れてくれたりとか…」
「私が付いてるから大丈夫よ。二人で頑張りましょう」
「……」
「先生これでも青の魔法使いだったのよ。生徒に混じるなんて逆にズルいぐらいだわ」

 冒険者のギルドカードは、その実力が一目でわかるようにランクによって色が違う。
初心者の黒から色づいて行って、青は上級の証だ。

「…あれ?現役じゃないんですか」
「あら~」

 だった、って言った。ちょっと引っかかる。
教師役は現役の冒険者が、休業中に引き受けたりもできる。だから、勝手にそうなのかなって思ってたけど、え。まさか…

「ノーマ先生引退してるんですか!」
「まあまあ。魔法使いは他と違って、怠けてても衰えないから…」
「そんな…。あの、今現役の魔法使いっているんですか?」

 この質問に、思い出すように指を折っていく。よかった、絶滅はしてないみたい。

「私が繋がってる先輩と後輩だけでも13人は確実に居るから安心して!リザニアが拠点だから当分会えないだろうけど」

 近いうちに絶滅しそう…。リザニア地方は王都があって、ダンジョン攻略激戦区らしい。一部では地上と地下の境界が曖昧で魔物が出てきてるだとか…噂だけど。
少数魔法使い、そんな場所で生きてるならかなり優秀なんじゃない?わたしも頑張らなきゃ。

「私はダンジョンについて調べる学者なの。ギルドカードは返納したけど仕事でバリバリ魔法も使ってたんだからね」
「ちょっと悲しいけど安心しました…」
「というわけで魔石は先生に任せて。魔力の込め方は2年で教えるからね」

 えっと、さっき先生が学生の時は何をしたって言ってたっけ。

「1年は誘導係でしたっけ」
「そうよ、魔法でも何でもないけどね。妖精に導いて貰うの。シェリーは妖精と仲良しだから簡単よ」

 だったら、他の学科の子は妖精に教えて貰えないからわたし有利かも!
フィフィちゃんとティティくんがいるから剣術科は大物釣りあげそうだなぁ。
弓術科のエルフさんはどうなんだろ?

「釣りあげるのは2人で力を合わせるとして、トドメはシェリーに任せるわ」
「2人で釣り上げられますか?私、あんまり腕力に自信ないんですけど」
「身体能力向上の魔法も2年で教えるわ。今年は私が魔法をかけるわね」

 どれぐらい能力が上がるのか分かんないけど、お父さんは川に橋を架けるのに丸太を素手で用意したことがある。
もしかして、逆にハンデもらいすぎでは?
いやでも、トドメはわたしって…。

「魚って、釣ったら終わりじゃないんですか?トドメって何」
「こーんなに大きい魚が船で跳ねたら、沈んじゃうわよ。ダナーくんの雷を放てばいいんじゃないかしら」

 こんな感じで、案外さくっと対策は練れてしまった。
ちゃんと実行できるように練習しとかなきゃね!
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