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第15話 村巡り

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 俺達は指示されたように、早朝からギルド前に来ていた。この時間帯にギルドへ来るのは初めてだ。
 俺達の場合、依頼を受けての活動を行っていなかったため、朝からギルドに来る必要はなかった。だから、この時間どころか、朝から来る事自体が初めてだった。
 この時間は、さすがに早いようで、一般の依頼を受けている冒険者も二組しか来ていない。それでも、ギルドの窓口は全て開いており、職員も揃っているようだ。
「うわ~、ギルドの職員さんって、こんな時間から来てるんだ」
 ティアが驚くのも無理はない。今の時間を前世の時間で言えば、午前6時頃。
 この時間に窓口が全部開いているっことは、最低でもその30分前には来ているはず。お疲れ様です。そして、ありがとうございます。いや、マジで。
 そんな訳で、今回俺達の護衛対象である、ギルド職員二名も既にこの場に来ていた。
 一人は40歳代の男性でカルトさん。もう一人は、カルトさんが訂正するのを押さえ込んで、26歳と言い張る女性のカチアさん。そして、馬車の御者のクロさん。この三人が護衛対象だな。
 俺達が乗る馬車だが、クロさんも含めて七人しか乗らないのに、三頭立ての屋根付き箱馬車だった。装飾を少し華美にするだけで貴族が乗ってもおかしくない作りだ。
 と言うか、カルトさんいわく、
「外板はトレントの古木を加工して、いろいろ付与されていますから、下手な貴族馬車より強度は上ですよ」
 との事。その説明に、ミミのヤツが反応して、いつものごとく叫ぶ。
「トレント! やっぱ、おったかー!!」
 俺達には日常なのだが、カルトさん達には、と思ったのだが、意外にもクロさん含め全員がスルーする。……ミミの言動は、西ギルドでは職員レベルで知れ渡っているのかもしれない。
 馬車での配置は、眼が一番良いティアが御者台に、魔法による砲台として、ミミのヤツは屋根の上だ。そして俺とシェーラは、御者台と馬車後部の監視台を交互に受け持つ。
 配置が終わると、直ぐ出発する。初日から二カ所の村を廻るため、出発は早い。
「うみゅ~、ミナセから反時計回りか~」
 ミミが屋根の上で何やら言っているようだ。
 移動を開始し、街中を抜け、西外門を出た辺りから、ティアは真剣な顔で周囲を見回し始める。
「そんなに気を張らなくても、大丈夫だよ。王都近くの街道沿いは大したモンスターも出ないし、冒険者ギルドの馬車を襲う盗賊なんて、まずいないからね」
 ティアの様子を見たクロさんが、笑いながらそう言っている。
 確かに、王都周辺の街道は、のべつ幕無しに人や冒険者が通っており、自然にモンスターの討伐が進む。だから、モンスターの出現率はかなり低い。
 また、盗賊だが、この場合の盗賊とは、JOBとしての『盗賊』ではなく、職業と言おうか、犯罪者としての盗賊の事だ。
 この馬車の側面には、デカデカと冒険者ギルドのマークが描かれている。そのため、遠目に見ても、誰が見てもこれが冒険者ギルドの馬車だという事が分かる。
 だから、盗賊は襲わない。冒険者ギルドの馬車を襲えば、付近一帯の冒険者が総出で狩り出しに来るのが分かっているからだ。
 実際、以前冒険者ギルドの馬車が襲われた際は、一年間に亘って徹底的な調査と追跡を行い、隣国へ逃げた者すら捕らえ、自国に連れ帰った上で公開処刑にした。
 当然これだけの事をやれば、ギルド側も大赤字だが、それを徹底してやる意思を示す事で以降の抑止力とした訳だ。
 また、その際、一帯にいる他の盗賊も巻き添えになる形で殲滅された事から、ギルド馬車を襲う計画を立てている盗賊を、他の盗賊クループが密告したと言うケースすらあるとか。
 この世界には『真偽』なんて言う、嘘の分かるスキルが存在するため、時間と費用さえ掛ければ、大抵の犯罪者は捕まえる事が出来る。極端な話、事件が起こった町の全員に『真偽』スキル持ちが『お前は犯人か? 犯人に心当たりはあるか?』と尋ねて廻れば良いのだから……。
 冒険者ギルドの場合は、その費用手間を惜しまずにやる、と言う事だ。確実に。
 ティアも、その事は出立前に聞かされてはいたのだが、やはり根が真面目なのか、全力を出してしまう。ひょっとすると、昨日の事も影響しているかもしれない。
「ティア、一週間だから、最初から気を張ると直ぐにバテるぞ。視界は広いから、無理する必要はないぞ」
「うん!」
 俺の忠告に返事はするものの、気負いは全く変わっていない。さて、どうしよう、と考えていると、屋根の上からミミのヤツが声を掛けてきた。
「ティア! 歌いってみよ~! 馬に向かって、競馬アニメのアレ!! 元歌の方でも可!」
 ……だな、ティアには歌だ。歌を唄わせれば、無駄な力は抜けるだろう。ただ、その選曲はどうなんだ? 元歌ってのは知らないが、アニメのやつはアレだろ、うんこたれ蔵なアレ。他に競馬アニメってあったっけ?
 そして、流れてくるイントロ。……やっぱり、うんこたれ蔵なやつだ。
 俺の、そのアニメに対するイメージは別として、付与効果自体は十分のようで、三頭の馬の動きが目に見えて変わってくる。
 クロさんは、ティアの『歌唱』スキルの事は知っていたようで、歌自体には別段驚く事はなかったが、その効果には驚いていた。
 一応、初めての事なので、クロさんも最初は手綱を絞り、馬の速度が上がり過ぎないようにしていたのだが、途中から、馬に任せるようにしていく。
 馬たちも、自分たちの身体に起こっている事に気づいたらしく、少しずつ加速していった。
 勿論、馬たちも、自分たちが疲れるような速度は出さない。ただ、今までと同じ力で駆けるだけだ。
「気持ちよさそうに走ってるな」
 クロさんが、誰に言うでも無く、ぽつりと呟いた。確かに、素人の俺が見ても、ティアが唄う前よりも元気そうなのは分かる。
 その後、ティアは元歌とアニメの曲を交互に歌い続けた。その結果予定よりも一時間以上早い時間に、最初の村であるミナセ村へと着いた。
 この間、一度もモンスターにすら遭遇しておらず、視界内に現れる事すらなかった。

 村に着いたあとは、俺達はギルト支所の前で待機だ。俺は、王都以外は初めてなのだが、村という割には意外に大きい。見渡す限りでも200以上の家がある。それだけ見ても、一戸4人換算で800名。多分、1000人は超えると思う。
 日本の村などと違って、周囲を塀で囲む関係上、一カ所に集まっているため、余計に戸数が多く思えるのかもしれない。日本は、あっちにパラパラ、こっちにパラパラと家々が散らばってるからな。
 ところで、この村の冒険者ギルド支所は、普通の一軒家だった。多分、元々普通の家を、そのままギルトとして使用しているのだと思う。
 このギルド支所だが、王都のギルドと違って、入り口に一人ではあるが冒険者らしき警備員がいた。
 最初、建物が建物なので、セキュリティー的に警備が必要なのか、と思ったんだが、あのギルド馬車の件を考えると、違う気がする。
 なので、カチアさんに聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「あ~、あれ。あれはね、冒険者と買い取り価格とかでもめた時用ね。こう言う村だと、結構多いのよ。人と人の関係が近すぎて、身内感覚になるから、逆にもめやすくなるの」
 こう言う村だと、ギルドの職員も、村人全員と知り合い状態だろう。だからこそ、身内感覚でわがままを言ってくる者がいるらしい。分からなくはない話しではあるか。
 その後、支所に入っていった二人が出てきたのは、1時間近く経ってからだった。
 彼らが行っているのは、この村で買い取った品物の受け取りと、資金の受け渡しだ。こう言った小さな村では、地産地消と言う訳にはいかないので、定期的に王都のギルドとやり取りを行っているらしい。
 そして、カルトさんが肩掛けしている大きめのバッグが、例の1000万ダリの『魔法のバッグ』である事が判明した。しかも、そのバッグをあと二つ持ってきているらしい。そして、各村々のギルドには、100万ダリの『魔法袋』があるとか。
 さすがはギルド、って事だろう。ミミのヤツが「ぐぬぬぬぬぬぬぅ……」などと言っていた。俺としては、100万ダリのやつはともかく、1000万ダリのやつになると、うらやましがる気にすらならない。いつかは!などと考える余地もないよ。
 最初の村を出た馬車は、そのまま次の村へ向かって走り出す。余計な寄り道は全くしない。食事も前もって購入していた弁当を馬車で食う。元々は、結構、タイトなスケジュールになっているようだ。
 村の外門を出たところで、馬車を引く馬が御者台にいるティアの方を振り返った。どうやら歌を要求しているらしい。馬たちも、この村に来るまでの間で、ティアの『歌唱』の効果を完全に認識したらしい。
 ティアは、そのリクエストを見て、喜んで歌い出す。
 
 村を巡る依頼は、順調過ぎるぐらい順調に進んだ。街道で遭遇するモンスターも、『グリーンゴブリン』程度のものなので、ミミの『ファイヤーアロー』だけで片づく。
 ただ、その際、立場上『魔石』の回収が出来ない事に、ミミのヤツはなぜか「ウッキー!」と猿化していらついていたが。
 この旅は、二ヶ所毎に村の宿へと泊まり、次の村へと進む。王都を囲むように存在する村々を、反時計回りにだ。
 そんな順調だった村巡りだったが、8ヶ所目のヤマセ村を目前にして少々問題が発生する。
 ミミは、ヤマセ村まであと1キロという地点になった時、ティアが装備している『魔法のウエストポーチ』から、新品の兜を取り出して装備した。
 その兜は、革製ではあるが顔全面を覆うフェイスマスクが付いている。
 ……おい、何だよ、それ。
「ミミちゃん! 何でぇ!?」
 ティアも、当然その姿をおかしいと思ったようで、大きめの声を出した。そして、その声に、後部監視台にいたシェーラも顔を覗かせ、絶句だ。
 ミミは通常、当然ながら兜も装備している。だがそれは、いわゆるヘルメット型で、ミミはそれを「聖戦士の兜!」と呼んでいた。多分、いつものごとく、アニメか何かに出ていた物に似ているのだろう。
 ミミ以外の、俺達三人が装備している兜も、多少のデザインは違うものの、同じくヘルメット型だ。間違っても、フェイスマスク(フェイスガード)など付いていない。
 一応、冒険者でも、近接戦職の者の中には金属製や革製で、そんな兜を装備している者はいる。だが魔法使いでそんな物を装備している者など見た事がない。
 魔法使いは、目視した座標に対して魔法現象を発動させる。そのため、視界が非常に大切だ。フェイスマスク等で視界を遮るなど、言語道断!。
 ……と言うか、全くもって似合ってない。それにつきる。
「ミミちゃ~ん、変!」
「シャラップ!! 以降、私の名前を呼ぶ事を禁じる!! ロウ! あとシェーラも!!」
 何じゃ、そりゃ?。
 と、まあ、そんな意味不明なやり取りがあった。
 そして、ヤマセ村へと入ったのだが、外門をくぐった時点で、ミミのやつは馬車の屋根にうつ伏せにへばりついた。
「……私は屋根。ただの屋根。我は屋根なり。我が心、既に空なり」
 小声で何やら呟いている。
 そんな状態で、ギルド支所前まで着いたのだが、カルトさんとカチアさんがギルドへ入ったあとも、ミミのやつは降りて来る様子はない。
「おい、ミ…」
「ガルルルルルゥ!!」
 ……唸られた。
「あ~、取りあえず降りてこい。このあと宿へ行くんだぞ」
「ガル!」
 あ、降りてきた。だが、降りてきたミミの目は、フェイスマスク内で忙しく左右に動いている。普段の索敵以上の警戒度だ。そして、直ぐにシェーラの背後に隠れた。
 挙動不審にもほどがあるぞ……。
 そんな中、ミミの楯にされてたシェーラが呟いた。
「ひょっとすると、この村は、ミ…」
「ガルルルルルルゥ!!」
「…の村なのか?」
「……ガル!」
「そっか! ミ…」
「ガルルルルルゥ!!」
「…ちゃんって、口減らしで売られそうになったから、王都に残って冒険者に成ったんだったね。そうか、ここがミ…」
「ガルルルルルルゥ!!」
「ちゃんの村か~」
 なるほど、そう言うことか。でも、挙動不審すぎるから、逆に目立ってる気がするぞ。
 そんな、挙動不審な不審者であるミミではあったが、幸いにも気付かれる事なく宿屋まで入る事が出来た。だが、幸運もそこまでだったようだ。
「あれ? ひょっとしてエニアん所のミミちゃんかい?」
 宿屋へ入って、カルトさんが宿泊手続きを終えた時、宿屋のおばさんから不審者ミミが声を掛けられた。
「ガ、ガルゥー」
 うなり声を出しつつ、首を必死に横に振るミミ。
 宿屋のおばさんは、しばらく超挙動不審者なミミを見ていたが、ゆっくり頷く。
「あ~、まあ、そうだね。安心しなよ。黙っといてあげるから」
 そう言われた瞬間、ミミは宿屋のおばさんに抱きついて「ガルルー!!」と嬉しげな声を上げる。……ガルルはもう良いだろが。
 その日、ミミは宿の部屋から一歩も出ないで過ごした。
 そして、朝出発する段になると、ゴキブリのような早さで馬車の壁を這い上り、屋根の上にへばり付く。
 そんなミミを、俺達は生暖かい目で見送った。
 
 ミミが生まれ育ったヤマセ村を出たあと、一つ目の村を巡り、次の10番目の村へと向かっている時、後部監視台にいた俺に正常に戻った(?)ミミから声が掛けられた。
「ロウ、あの、遠~くの空に見えるアレ、鳥? なんかデカくね?」
 言われた位置を見ると、かなりの遠方だが黒い点が見える。
 その日は快晴に近く、雲がほぼなかった事もあって、その黒点は小さいながらもハッキリと見えていた。
「遠近感がハッキリしないけど、あの距離であれなら、かなり大きいんじゃないか?」
「だよね~」
 と、まあ、この時点では結構お気楽だったんだよ、二人とも。
 そのあと直ぐに、俺達二人の話を聞いたティアも、御者台から立ち上がって後方の空を見た。シェーラは前方の索敵があるので、こちらを向く事はない。
「……鳥だよ。……真っ黒で、多分、……20㍍以上!! あれ、真っ直ぐこっちに来る!!」
 ミミ言う所の「ティアって、『鷹の目』スキル、隠しスキルで絶対持ってるよね!」に同意したくなるほどの目がソレを捕らえ、俺達に警告を送ってくる。
「「20㍍!?」」
 俺とミミの声がハモる。
 そして、ティアの声に反応したのは俺達だけではなかった。
「黒い、20㍍の、鳥!? クロさん! 馬車を森の中へ突っ込ませてください! 多少の損傷は無視です!!」
 車内から、御者台側の小窓を開けたらしいカルトさんの声が響く。
「森!? カルトの旦那! 森なんて周りにありませんよ!!」
 クロさんが叫ぶように、見える範囲で森と言えるのは、一番近いところで1キロはある。そして、そこへ行くには、かなりの高低差が激しく荒れた草原を突っ切るしかない。それなら、道なりに目的地方向にある1.5キロ程先の森の方が、よほど早く着くだろう。
「クッ! 全力で走らせてください!! カチア! どうだ!?」
 カルトさんの悲壮な声と共に、俺のいる後部監視台側の小窓が開き、カチアさんの顔が飛び出した。
 カチアさんの手には、オペラグラスのような物が握られており、それを目に当てて空へと視線を向ける。
 そして、その直後、カチアさんの叫び声が響き渡った。
「黒死鳥!! 黒死鳥です!!」
 その叫び声は、先ほどのカルトさん以上に悲壮感を含んでいた。
「黒死鳥!?」
 俺が疑問の声を上げるが、それをミミが遮る。
「ロウ! 来るってば!!」
 言われて空へ視線を向けると、その姿が先ほどよりも遙かに大きく見えている。
 俺は、全力で走り出した馬車の屋根上へと上がり、『闇の双剣』を引き抜く。
「あと500㍍!!」
 ティアが彼我の距離を伝えてくる。
「射程入ったらアロー行くから!!」
 激しく揺れる馬車の屋根の上にへばり付いたミミが、言ってきた。その言い回しに、いつもの意図的な変な部分が無い。余裕が無い事の表れだ。
「ロウ!!」
「シェーラはこの揺れじゃ無理だ! そこで頼む!」
 俺のように『器用さ』の補正値が高くないシェーラでは、これだけ激しく揺れ動く馬車の屋根の上では、ただ立つだけでも無理だろう。御者台で何とかしてもらうしか無い。
「ティア、100万馬力!」
 たれ蔵な競馬ソングを歌い始めていたティアに、歌の変更を求める。あの『黒死鳥』とか言う鳥のスピードから見て、どう考えても森までは間に合うはずが無い。だから、ティアの『歌唱』は防衛の方に使う。
 歌のリクエストが『100万馬力』な歌な訳は、あの『黒死鳥』と言うモンスターの巨大さと相対速度を考えて、『力』が必要と思ったからだ。
 そしてティアの歌が響いてくると、『力』に+11の補正値が入っているのが分かった。元々の補正値と合わせて、合計14の補正値。これでいけるか?。
 そう思案していると、射程に入ったらしくミミが『ファイヤーアロー』を同時三発展開して、それを次々に放っていく。だが……。
「マジかー!! iフィールド!?」
 ミミが放った10発以上の『ファイヤーアロー』は、全て『黒死鳥』の目前で散霧した。
「魔法耐性!? いや魔法無効化か!!」
 そんなミミやシェーラの声に応える余裕は、俺には一切無い。『黒死鳥』が目前に迫っていたからだ。
 そして、『黒死鳥』と目が合ったのが分かる。ターゲットが俺になったようだ。
 『黒死鳥』は、俺をその巨大な足の爪でつかむ事にしたらしい。
 そのため、その翼を前面に向けエアーブレーキを掛ける。だが、それでも相対速度は60キロは十分にある。
 その速度で、成人男性の身体と同じほどの巨大な足を広げ、俺を掴み去ろうとした。
 『素早さ』補正値によって擬似的に遅くなった時間の中、つかみ掛かってきている二本の足の真ん中に移動し、両手の双剣を足の内側にある指、人間で言うところの親指にあたる指へと全力で振り切る。
 その手応えは、この『斬』値特化な『闇の双剣』を手にしてから初めて感じるほど、重く硬いものだった。
 衝撃で身体が吹っ飛ぶのを、屋根の上に設置されている荷物固定用の金具に足を掛け耐える。
「「ロウ!!」」
 ティアとミミの悲鳴が聞こえるが、それより『黒死鳥』だ。『黒死鳥』は、俺を掴めなかったため、一旦馬車上空を通り過ぎ、前方で旋回しようとしている。
 それを目で追っていると、ミミが俺に『低級回復薬』を二本同時にぶっ掛けてきた。
 え? あ、ティアが泣きながら『魔法のウエストポーチ』をミミに投げ渡している。
 そして、若干ワタワタとお手玉状態で受け取ったミミは、その『魔法のウエストポーチ』から新たな『低級回復薬』の小瓶を三本取り出すと、一本ずつ俺にぶっ掛けてくる。
 ……あ、今気がついたけど、俺、血まみれだ。鎧の両肩部分がバッサリと切れていて、その下の服が切れた上で血に染まっている。……そりゃ~、痛いはずだ。
 俺の肩の痛みが消えるまで、結局6本の『低級回復薬』が必要だった。
「もう大丈夫だ!」
「大丈夫くあるか~!! 両腕、取れ掛かってたんだぞ~!!」
 だけど、そうも言っていられない。
「また来るぞ!!」
 シェーラの声が響く。
 今度は前方からだ。
 クロさんは、どうやら馬車の速度は落とさない事にしたようだ。そのままの速度で道なりに、『黒死鳥』へと向かっていくコースを取っている。
 馬車を引く三頭の馬も、さすがは冒険者ギルドの馬と言うだけはあり、おびえてクロさんの命令を拒否するような事は無かった。
「のしゃっぷけみんぐ、のしゃっぷけみんぐ~」
 屋根にへばり付いたミミが、また、何やら変な呪文を呟いている。何じゃそれりゃ。
「ロウ! 足の指! 二本切れてる!!」
 ティアが『鷹の目』バリの視力で見て取った事を報告し来た。
 完全に切断とまでは行かなかったようだが、両方とも骨までは切断され、肉と皮でぶら下がった状態になっているようだ。指としての機能は発揮できないのは明らかだ。
「その剣で、あれだけやって、アレかい!!」
 ミミの叫びは、俺の気持ちと同じだ。
「ティア! るろ剣! るろ剣! 切れ味上昇!!」
「分かった!」
 ちょ、ちょっと待て! アレって実質峰打ちだろ!! ……いや、『歌唱』はティアのイメージによる訳だから、いけるのか? って言うか、『歌唱』は剣の『斬』値にも付与出来るのか?。
「魔法で目隠しすっから、クロさん、その間に馬車右にずらして!!」
 ミミはそう叫ぶように言うと、まだ射程に達しない状態で、最大距離に『ファイヤーストーム』を複数発生させた。
 クロさんは、それを確認すると即座に馬車の軌道を変える。馬車は今までの街道を外れ、ガタガタの草原地帯へと入っていった。
「うごぉぉぉぉぉ────!!」
 路面の関係で揺れが激しくなったため、屋根にへばり付いたミミはその衝撃を直接受けた事から奇声を上げている。まあ、この当たりはいつもの事と言えるけど。
 ミミは、そんな状態でも、更なる『ファイヤーストーム』を、俺達が移動した側にずらして複数発生させていく。『黒死鳥』からこの馬車が見えないようにする煙幕代わりだ。
 だが、その壁状に広がる『ファイヤーストーム』の炎の煙幕に、大きなトンネルを開けるようにして『黒死鳥』が現れた。
「チッ、ギリ足りない!?」
 ミミが言ったのは、『黒死鳥』の位置からの軌道と馬車の位置関係だ。あわよくば、横にすれ違って再度仕切り直し、その間に前方の森までの距離を稼ごうという思惑だったのだろう。
 だが、思ったほど横にずれてはおらず、『黒死鳥』が十分軌道を修正出来る位置だった。
 『黒死鳥』は、やはり軌道を変えて、馬車を斜め前方から襲いかかってくる。
 俺は、両足に力を込め、覚悟を決める。翼だ。翼に飛べない程度のダメージを与えられればそれでいい。
 『黒死鳥』は自分の足を切った俺を、完全にターゲットに定めたようだ。俺を見ながら、真っ直ぐに突っ込んでくる。
 ……これなら、最悪、俺が馬車を飛び降りれば、馬車は逃げられるかもな。ホントに駄目なら、そうするしかないか。
 ……何だろう、ちょっと、主人公かゲストキャラ位にはなった感じだな。前世のモブ夫のまま死んだよりはましか。……ま、死にたくはないけどさ!!
 意識を集中する事で引き延ばされた時間の中、そんな事を考えながら、今度は足ではなく翼を目標とする事を決め、タイミングを計る。
 そして、俺が『闇の双剣』の一本だけを両手で持ち、振りかぶった瞬間、馬達の頭上を越えて来た『黒死鳥』に向かって、真横から大剣が叩き付けられた。
 シェーラだ。シェーラが御者台の上から、『強力ごうりき』『加重』をそれぞれ最大で大剣を振ったのだろう。
 トレントの古木から作られ、高強度を誇るこのギルド馬車が、大きくきしみ、ギシッ!と言う音まで上げた。
 シェーラによって振るわれた大剣は、『黒死鳥』の左脇腹へと当たったが、傷を与える事は出来なかった。だが、その衝撃によって、僅かではあるが軌道が変わった。
 その軌道の変化を、引き延ばされてスローモーションに感じる時間軸の中で見ながら、振り下ろしていた『闇の双剣』の軌道を強引に変えていく。
 直前までは位置的に狙えなかった、羽の関節部分が狙えるようになったからだ。
 体も強引に右へと移し、『黒死鳥』の左翼関節部へと『闇の双剣』で切り掛かる。強引な動きに、腕や足、そして腰の筋肉が悲鳴を上げるが無視する。たとえ、筋繊維が多少断裂しても『低級回復薬』で直る。
 その攻撃は、彼我の相対速度の関係で、実際は『黒死鳥』の翼の関節に『闇の双剣』の刃を当てて踏ん張った、と言っていい状態だった。
 その交差は、外部からそれを見ていた者がいたら、正に一瞬だっただろう。ただ、『素早さ』補正値によって擬似的に引き延ばされた俺の時間では、30秒ほどの時間に感じられた。
 そして、俺達はすれ違う。
 俺は弾かれ、馬車の屋根後方から転げ落ちそうになる。
 『黒死鳥』は、馬車後方70㍍ほどに、着陸に失敗したセスナ機のように縦回転も加わえて転がって行く。
「やったのか!」
「シェーラ! それフラグ!!」
「翼を切っただけで、致命傷にはほど遠いぞ!!」
「どうする!」
「飛べない鳥は、ただの豚! 今のうちにやっとく!!」
「ミミちゃん! それ、何か違う!」
「あり? そだっけ?」
 ……いつもの調子が戻ってきたようだ。
「クロさん! 馬車は念のためにこのまま行ってください! ミミ!護衛な!」
「大丈夫手ですか!?」
 カルトさんが馬車の中から言って来る。
「アレを手負いで放置する訳にはいきませんから!」
 なんと言っても、ここは王都周辺の村々を繋ぐ街道だ。交通の要所と言っても良い。利用者は、他の領へと続く大きな街道に勝るとも劣らないほどはいる。
 あのまま残しておいて、回復でもしたら大惨事だ。回復せずとも、道沿いで暴れるだけども十分に大惨事だと言える。
 俺は、衝撃で吹き飛ばされ、屋根からぶら下がった状態から、手を離し草原へと飛び降りた。10回転以上の回転受け身という名の転がりを続けて、若干目を回したまま『黒死鳥』の落下地点へと向かって走り出す。
「シェーラ! 私も!」
 後方に離れていく馬車から、ティアの声が聞こえてきた。多分、シェーラに自分も下ろすように頼んだのだろう。……いや、危ないから、来ないで良いよ。
 
 墜落現場に到着すると、既に『黒死鳥』は身を起こしていた。ただ、やはり左の羽を痛めたようで、飛ぶ事は出来ないようだ。更に、両方の足の指も損傷しているため、自由に歩く事も出来ない。
 俺が近づくと、憎悪もこもった目でにらみ付けてくる。そして、特撮物の怪獣のような声を上げて威嚇してきた。
 足や翼のケガの関係で本来の動きは出来ないとは言え、一人でどうかなるようには思えない。俺は、やっぱり主人公キャラじゃないな。
 『黒死鳥』。レベルは知らないが、カルトさん達があれだけパニックになる位だ、かなり危険なモンスターなのは間違いない。
 それでも、だ、飛んでいなければ、その脅威度は格段に落ちるはず。飛んでいるからこその『黒死鳥』だと思う。って言うか、そう思いたい……。
 取りあえず、切れさえすれば何とかなるはず。
 俺は、間違ってもこいつが馬車の方に向かわないように、馬車の反対側へと回り込んで行く。
 そして俺は、取りあえず一つだけ安心した事がある。それは、この『黒死鳥』が攻撃魔法を使わない、と言う事だ。30㍍ほどの間合いを開けて、回り込んでいる間、こちらに向かってくる動作はするものの、魔法攻撃は全くなかった。
 現在の身体がまともに動かない状態なら、絶対に魔法を使ってくるはず。それがないという事は、攻撃魔法自体を持っていないという事だと考えた。
 ミミ言う所の『iフィールド』のような魔法を消滅させるような力を持っているからには、攻撃魔法を持っていてもおかしくない、と思っただけに、これは良材だ。
 とは言え、まだ、絶対に攻撃魔法はない、と決まった訳ではないので、一応注意はする。
 完全に回り込み、『黒死鳥』の動きを見定めるように牽制を繰り返していた俺に、『黒死鳥』の反対側からティアの声が聞こえてくる。
「ロウ! 来たよ! シェーラも一緒!」
 その声に、『なんで来た!』と思う思いと共に『来てくれたか!』と思ってしまう。
 そして、その場に流れ出す『百万馬力』な歌。
 その歌は、俺にスポットで唄っているのではなく、シェーラと俺両方に唄っているようで、『力』への付与値は先ほどより大分低い。
 そんな風に、パラメーターを確認しているうちに、シェーラが攻撃を掛けたらしく、『黒死鳥』が伸び上がって悲鳴と思われる声を上げた。
 俺は、その瞬間を逃すまいと、『黒死鳥』の胸元まで駆け込み、全力で切り込む。
 俺が切り込んだのは、『黒死鳥』の胸の部分。使用したのは『闇の双剣』の片方。それを両手持ちで、ダッシュした速度と力も乗せて、だ。
 だが、剣筋にあたる『黒死鳥』の胸部には傷一つどころか、その体毛一本すら切れていなかった。
 切れない! 『斬』値が足りないのか!? チッ、もう一度だ。
 再度、『黒死鳥』の後方をシェーラが攻撃するのを待ち、その瞬間に切り込む。
 だが、やはり切れない。手応えとして切れている感じが全く無い。相手が生き物であり、体毛のクッションもあるため、鉄を切ろうとしたように、と言うような感触ではないが、切れている手応えが無いのだ。全く。
 『力』の補正値が低い俺では、『打撃』としてのダメージすら与えられていない。マズイ。
 駄目だ、グズグズ考えている間に、『黒死鳥』のターゲットが、現状より大きなダメージを与えているシェーラに移りそうになっている。マズイ。
 俺は、『黒死鳥』が後方を向こうと動き出すところに、かなり強引に突っ込み、足下の切れて引きずっている指の切断面に剣を叩き付けた。
 これは、ダメージとしては微々たるものだが、痛みとしては大きかったようで、『黒死鳥』が後方を向くのを止め、俺の方に攻撃を掛けてくる。良し。
「ティア! るろ剣!」
 切れないのでは意味がない。特に俺は。だから、『斬』値の底上げを頼む。
 今度は、俺にスポットで唄ってくれたらしく、馬車の時と同じ値が付与されている。
 そして、今度も、シェーラのバックアタックのタイミングで突っ込み、『黒死鳥』の胸部に攻撃を掛ける。だが、切れない。また、全く切れない。
「シェーラ! 駄目だ! 全く切れない! 傷一つ入らない!」
 その俺の叫び声に答えたのは、シェーラではなくカルトさんだった。
「毛筋に刃を通すんです!!」
 ハッと、声のする方を見ると、80㍍ほど先の街道に馬車が止まっており、そこにカルトさんがいた。先には行かず、戻ってきたらしい。ミミは、馬車の屋根の上だ。
「毛筋!?」
 ……足の指も翼も切れた。相対速度のカウンター効果があったにせよ、切れたのは間違いない。だが、今は全く切れない。体毛一本たりともだ。
 これは、いくら何でもおかしい。その原因が『体毛』自体にあるとしたら、『体毛』が鉄以上の強さを持つとしたら……。
 足の指には体毛は無い。羽の関節を切った時には、真正面から真っ直ぐに刃を当てていた、羽の流れに合わせて。だから切れた? ……可能性は有る。
 先ほどまでの俺の斬撃は、袈裟懸け、逆袈裟だった。体毛の流れに対して斜め方向だ。
 剣による斬撃は、その踏み込みと両手持ちという関係上。最も大きな力が出せるのが斜めの攻撃、いわゆる『袈裟懸け斬り』である。一見、いわゆる『唐竹割り』が上のように思えるが、腰の回転が入らないため、力(体重)は乗っても速度が乗り切らないから、総合的には落ちる。更に、移動を伴う攻撃となればなおさらだ。
俺は走り込んで、全力で斬り掛かったがゆえに、その斜め切りをやっていた訳だ。
 だから、体毛の下まで刃が通らなかった、と言う事か。了解。理解終了!。なら、やってみよう。やってやるよ!。
 そして、シェーラにバックアタックの指示を飛ばし、その隙が出来た時に突っ込んだ。
 今度は、真上からの切り下ろし。主観的にに引き延ばされた時間の中で、『黒死鳥』胸部の体毛一本一本を見定めながら、剣の軌道を微調整して行く。
 刃先がその体毛の隙間に入っていくのが見て取れる。そして伝わってくる、それまでと違う手応え。切れている。間違いなく切れている。
 できる限りの全力で振り切った剣と共にに、僅かではあるが血が舞う。
 その瞬間、『黒死鳥』から今までとは違う声が発せられる。
「やったのか!!」
 相も変わらずフラグを立ててくれるシェーラ。
「いや、ほんの少し切れただけだ! だけど、今度は切れた!」
「分かった! 少しでも切れたのなら問題ない! 少しずつでもダメージを与え続ければ良い!」
 その通りだ、切れれば血が流れる。血が流れれば確実に弱っていく。そして、一定量血液を失えば死ぬ。これは、モンスターであろうが同じだ。
 問題は、それまでの間、こっちがダメージを受けずに攻撃を続けられるかどうかって事だな。まあ、やるしかないさ。
 
 そして、戦いは続いた。実に30分間以上だ。『黒死鳥』からの、くちばしでの攻撃、体当たりを躱しつつ少しずつ、少しずつ傷を付けていった。
 シェーラのバックアタック等で、大きな隙が出来た時には、以前攻撃して出来た傷を狙って攻撃を掛けた。無論、全てが上手くいった訳ではない。だが、三回の攻撃が成功した辺りで、その傷口が広がり、次からの攻撃がしやすくなると後は外す事無く当てられるようになった。
 そして、繰り返すこと10回。ついに大きめの血管を切り裂く事に成功したらしい。それまでとは違う量の血液が噴き出した。
 そして、いつの間にか30㍍ほどの位置に来ていたらしいミミから、「スティール!」との声が掛けられた。あ、完全に忘れてたよ。って言うか、ミミ、なんでそこにいる!
 護衛対象のクロさん達の馬車は、と見ると、ギルドの馬車以外に三台の馬車が止まっており、その周囲にはそれらの馬車の護衛らしき冒険者が10人以上いた。
 まあ、そうだな。これだけ人通りが多い街道沿いで、30分以上戦っていれば、他の人も通りかかって当然だ。
 俺が、そんな事を考えていた時、『黒死鳥』の方から、バキッ!と言う大きな何かが折れるような音が聞こえてきた。
 そちらを見ると、この30分間、シェーラがひたすら攻撃を集中し続けていた、左の翼がついに折れたようだ。
 『黒死鳥』から、か細い悲鳴のような鳴き声が聞こえてくる。まだ終わってはいないが、ほぼ態勢は決したと言って良いだろう。
 シャワーのように出ていた血が、少しずつ勢いを失って行く。それに従って『黒死鳥』の精気も失われて行く。反撃も来ない。
 そして間もなく地面に突っ伏した。
「やったか!」
 またもやシェーラのフラグ発言だったが、今度は大丈夫そうだ。
「ティア! ラッキーソング頼む!」
 ティアにいつもの八代な『ラッキーソング』を頼み、『運』に付与が入ったのを確認した上で『スティール』を実行する。
 そして発生する、今までに無く強い光。その強烈な光の中に浮かぶのは楯。
 息をのむ、俺とティア、そしてシェーラ。そんな俺達をよそに、ミミがその楯をかっさらい、ティアの身につけている『魔法のウエストポーチ』へと突っ込んだ。
 そして、俺達全員に目で言って来る。『黙れ!! 何も言うな!!』と。
 その直後にミミが声を上げる。
「黒死鳥! 死亡確認!!」
 必要以上に大きな声を出したのは、街道にいる者達にそれを伝えるためだろう。そして、今の光について誤魔化すため……。
 街道の方から歓声が響いてくる。
「本当にやったのですか…… まだ小ぶりとは言え、黒死鳥をレベル11程度の者達が……」
 ミミ同様に、いつの間にか近くに寄ってきていたカルトさんから呟きが漏れている。
 ……あの大きさで、まだ小ぶりなのかよ。
 そんな事を考えていると、ダッシュで走ってきたティアが、俺の鎧を脱がし始める。
「おい、ティア!」
「良いから脱いで!」
 横の留め具を外され、あっと言う間に鎧を脱がされた。そして、その下のアンダーウエアーまで、引っ剥がされる。上半身裸だ。
 そして、その俺の身体を前から、後ろからと、幾度も確認した上でティアはホッと息を吐いた。
「良かった。本当に直ってる」
 最初に『黒死鳥』とすれ違った時の傷の事か。……自分的にはよく分からなかったんだが、ティアとミミの様子からして、相当ひどかったのかもしれない。
「悪かったな、心配掛けて」
 俺がそう言うと、「そうだよ!」と言って背中を平手で叩かれた。
 そして、次の瞬間、ティアの数倍の力で同じように叩かれる。ミミに、だ。そして、ミミは言う「シェーラも、思いっきりやっとく!」と。
 ……いや、シェーラの『思いっきり』はしゃれにならないから!!
 シェーラは、一応手加減はしてくれた。……でも、叩く事は叩くんだな。
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