醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ

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にぎわう街と義理の両親

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「すごい……」

 初めて見る海と、とても賑わう街並みに、思わず感嘆の声がもれた。自分の国の王都や、これまで旅の中で通ったどの街より、大きく活気があるように感じた。

「大陸を繋ぐ海に面しているからね。貿易で栄えた街だよ」

 優しいアンスガーの言葉に、私は馬車の中に視線を戻した。アンスガーも懐かしそうな顔で、街並みを見ている。2か月という長旅を終え、ようやくアンスガーの生まれ故郷に到着することができた。
 もう一度、馬車の窓から顔を出し、街並みをじっくりと見た。自分の国とは違い、色とりどりの建物が並び、とても明るい雰囲気だ。

「すごいわね……こんなに賑わっている街は、初めて見たわ。それに不思議な匂いがする」

 嗅いだことのない不思議な匂いが、風にのって運ばれてくる。

「それは海の匂いだね」
「海の匂い……」

 海の匂い、という素敵な言葉に、私の胸はさらに高鳴った。



「長旅、ご苦労様」

 アンスガーのお母様、私にとっては義母となる美しい女性が、労わるような表情で言った。隣に座っているお父様も頷いている。お父様も整った顔をしており、なるほど、確かにアンスガーのご両親だな、と思った。

「何事もなかったか」

 お父様の問いにアンスガーは頷いた。

「ええ、特に問題なく来れました。順調でしたよ」

 お父様は頷くと、ちらりと私を見た。その視線が火傷痕に注がれているようで、私はびくりと肩を揺らして固まった。

「エルヴィーラさんも、長旅で疲れたろう」

 お父様の労わるような言葉に、私はほっと肩の力を抜いた。

「いえ……こんな長旅をしたのは初めてだったので、とても楽しかったです」
「ああ、貴女の国……ハイツレンの民は、あまり国外に出ないからな」

 確かに、私の数少ない交流関係の中でも、国外に出たという話はあまり聞かない。

「だから自国以外の商品が売れるかと思いきや、そういう訳でもなくてな……」
「あなた……」

 お父様が商売について語り出そうとすると、苦笑いを浮かべたお母様が話をさえぎった。お父様ははっとした表情をすると、気まずそうに口を閉ざした。
 そんなお父様の姿を見て、表情を笑顔に変えたお母様が、こちらを向いた。

「私たちは結婚に賛成よ。うちに来てくれてありがとう」
「ああ……これでライムバッハーに居てくれたら申し分ないんだが……」

 お母様は顔を引きつらせながら、お父様をひじで強く押した。お父様は再びはっとした表情をすると、気まずそうな顔をした。

「……ごめんね、エルヴィーラ。父さんは正直者で……あまり商売人向きじゃないんだ」

 アンスガーは苦笑いを浮かべて言った。

「良いの……素敵な国だし、住んでみたいわ」

 私も苦笑いを浮かべなら言うと、アンスガーは気遣うような表情をした。無理をしていると思っているのかもしれない。けれど住んでみたい、と思ったのは事実だ。

「ごめんなさいね……」

 お母様は申し訳なそうな顔で謝った。私は心からの笑みを浮かべた。

「いえ、本当に住んでみたいのです」

 顔を見合わせたアンスガーの両親は嬉しそうに笑った。

「……祖父と会ってから、また気持ちを聞くね」

 アンスガーの言葉に視線を向けると、心配そうな表情をしていた。一番に難しい問題を思い出し、静かに頷いた。



 立派な部屋に置いてある鏡台にそっと座る。そして置いてある陶器の器から軟膏を指で取り出すと、顔の火傷痕にのせた。鏡に視線をうつし、静かに塗り込んでいく。
 旅の途中で手に入れたこの軟膏はとても良く効いていた。ひきつれいた皮膚が少しずつ良くなり、赤黒かった色もピンクになりつつある。

「良くなってきたね」

 湯浴みを終えた寝巻姿のアンスガーが後ろに立ちながら言った。私は鏡越しに笑顔を見せる。

「ええ、とても良い薬だわ。色々と試してくれてありがとう」

 旅では私の火傷痕を見て、たくさんの行商人が薬を売りにきた。大抵はまがい物だったけれど、この薬は良く効いた。

「明日は化粧をしてみるかい?」

 アンスガーの提案に、ゆっくりと頷いた。今までは余計に醜くなると思って避けていたが、ひきつれが多少はましになったので挑戦したい。
 それに明日はアンスガーのおじい様と対面しなければいない。だから気合いを入れたかった。
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