ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生

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○○年後の2人

確信犯?

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毎年バレンタインデーになると、智は紙袋に沢山チョコをもらって帰ってくる。

それでも私と結婚してからは、いかにも本命らしき高そうな物や手作りチョコは受け取ってはいないと言うのだけど。

妻帯者に本命チョコを用意するというのも…正直どうかと思う。
けれど、外では「愛妻家の北条さん」として通っている彼は今でも社のアイドルだ。
それに、外回りの多い智がせっかくの好意を無碍に断る事も出来ないのは、わかりきっている事で。

私としても余計な角を立てて欲しくないので、受け取らないで!と強くも言えない。

なので、当日は黙って紙袋を用意したのだった。


「今年も盛況ね」

「いっくら甘い物が好きったって、チョコばっかり食べられるかってーの」

今年の戦果は37個。
昔は100個を下らなかった事を考えれば、数は確かに減ったのだろう。


「…食べないの?」

以前と違い、智は明らかに義理だと判る物は食べるけど本音が透けて見えるような物には一切手をつけなくなった。

「食べて欲しいの?
それとも悠香が食べる?」

義理チョコならともかく。
彼に「食べて欲しい」「振り向いて欲しい」という、想いの込められたモノを私が食べていいとは思えない。
もっとも…だからといって、彼が嬉々として食べている所を見たいとも思わないけど。

「やっぱり扱いに困るモノは、来年から受け取らない事にしようかなー?」
苦笑しながら、何か言いたげな目を向ける智。

彼の言いたい事は…大体想像がつく。
そこで私が「じゃあ来年からはそうして」と言えば、智はその通りにする筈。
私にそう言わせたいのだとも、思うけど。

けれど、妬いていると素直に認めるのも癪で私は曖昧に微笑み

「コーヒーのおかわりは?」

と席を立った。


「なぁ、それより悠香は?
なんかくれないの?」

やや不満げな声に、内心くすりと笑ってしまう。

「あら、こんなに沢山あるのに?」

わざと驚いてみせると、明らかにむくれる気配。

「冗談よ、はいどうぞ」
コーヒーと一緒に綺麗にラッピングした箱を差し出すと、智は嬉しそうに両手で受け取り、すぐさま包みを解いた。

「毎年チョコを食べ過ぎてムカムカするって言ってたでしょ?
だからチョコじゃない方がいいのかしらとも思ったのよね」

「ナニ言ってるの、悠香から貰うチョコは特別だよ」


目をキラキラさせながら、1個摘んで口に放り込んだのを確かめてから、最上級の笑顔をつくり

「ホントはね、チョコなんて見たくもないって言われたら悲しいから、首にリボンを巻いて「私をあ・げ・るvv」って言おうかな、とか思っていたのよ?」

そう口にしてみた。


その瞬間、彼は飲んでいたコーヒーが妙な所に入ったのか、グッと唸りそしてゲホゲホと咳き込んだ。

「ゆ、悠香、さん?」

「でも、ちゃーんと受け取ってくれて嬉しいわ」

「そ、そっちがいい!」

咽たせいで涙目になりながら大声をあげる智に言い返す。

「あら、受け取ってくれたんじゃなかったの?」

「んじゃ返す、返すからそっちにして」

「もう食べちゃったじゃない。
それに2つもあげられませんからね?」

にっこり釘を刺すと

「オトコゴコロを弄ぶなんて…!」

と大げさに嘆き、机に突っ伏した。
 

——弄ぶなんて人聞きの悪い。

そう思いつつも、ちょっとイジワルが過ぎたかも…と取り成すように彼のやや癖のある髪に手を伸ばす。

けれど髪に触れる直前ガバッと顔をあげた智は、驚いて引っ込めようとした私の手を両手で握り締めた。

「じゃあこうしよう。
ホワイトデーには俺とプレゼントをあげるから。
だから今、悠香を頂戴」


——そうきましたか。

咄嗟に上手い切り返しが思い浮かばず

「お返しは3倍と相場が決まっているのよ?」

と口にした私に、智はニヤリと笑った。


——あぁ…その顔。
なんか嫌な予感がするんですけど。

「じゃあ3倍満足させるから」
ストレートな物言いに顔がカッと火照る。

真っ赤に染まった顔を一瞥し満足そうに目を細めると、智は耳元に唇を寄せた。

「ホワイトデーも今夜も頑張るから」


* * *

季節外れな上に下世話な話ですみません(汗)
そして何を頑張るのかは…ナイショです。


この2人バカップルにお付き合い下さいましてありがとうございました。
2人の話はここらで終わりとさせていただきます…が、また思いついたら気まぐれで更新するかもしれません。

次のお話「Fly high~勘違いから始まる恋~ 」もよろしくお願いします。



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