Shine Apple

あるちゃいる

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四話

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 窓の外から肥溜めの香りが微かに香る
 扉の向こうからトントンという音と味噌汁の香りが漂う。
 俺は目を覚ますと寝ぼけた目を擦りながら見慣れない天井を見上げた。
 
 (ああ、上村ばあちゃんの家か……)

 昨晩は随分たくさん呑んだからか頭がまだクラクラしている。
 どうやら二日酔いらしい。
 布団から出て立ち上がるも目眩めまいが酷くて壁に手を添えながら扉を開ける。
 何となく記憶している婆ちゃん家の間取りを思い出しながら洗面所に向かうが見当たらなかった。
 記憶違いと思い直し、婆ちゃんにでも聞こうと未だにトントンと台所仕事をしてるだろう場所めがけて歩くと、薄っすらと湯気の向こうに婆ちゃんの姿を見つけた。
 その背中に向かって声を掛けた

 「婆ちゃんおはよー……洗面所って何処でしたっけ?」
 「……目が覚めたのかい? 井戸は外だが先にこれ呑みな」

 そう言ってお椀に味噌汁をよそってくれた。
 そのお椀を受け取って啜ろうと顔を近付けて驚いた。
 ほうれん草をすり潰して片栗粉でトロトロにした様な緑色の液体が入っていたのだ。

 「ば、婆ちゃん家の味噌汁は変わってんな……何か凄いよ⁉」

 「そうかい? 一般的なマジックポーションさね」
 (マジックポーション⁉)

 そう思った俺は婆ちゃんを改めてよく確認した。
 そこには夢で見た魔女みたいな服を着た婆ちゃんが立っていた。

 「ゆ、夢じゃなかったのか⁉」
 「何寝ぼけてるんだい? いいからさっさと呑みな!」
 「いやいやいや!呑めないよ!何だよこれ!」

 そう抵抗すると
 面倒くさそうに俺へ向かって箸を突きつけるとゴニョゴニョと何か呟いた。

 すると俺の身体は金縛りの様に動けなくなった。
 パニックになりかけてる俺に婆ちゃんは近づいて来て、顎をクイッと上にあげると俺からお椀を取り上げて飲ませ始めた。

 美人なオネェさんかイケメンな人に顎クイされるならまだ良いが、シワシワの婆ちゃんに顎クイされる未来が来ようとは夢にも思わなかった。

 金縛りになりながらも、何とか口を閉じようと抵抗していると

 「口移しでもいーんだよ?」

 口角をあげてニンマリとする婆ちゃんを見た瞬間抵抗をやめた。

 ゴブリゴブリと音を鳴らしながら、緑色の液体を呑ませられる。
 口当たりはドロっとしていて、砂でも入っているのか時折ジャリジャリしてる。
 その後に続く味噌汁の香りが鼻孔を擽る。味は妙に甘ったるい……。
 なんとも言えない味わいの液体を飲み干すと、吐き気は無くなり目眩も無くなり頭がスッキリとしてきた。

 「どうだい? 魔力枯渇は治ったかい?」

 そう言って俺に背を向けて鍋(?)を回し始めた。

 「あ……ああ、さっきよりは随分良くなったよ……ありがとう……ございます?」
 さっき迄指すら動かせなかったが、今は腕を回せる様でコキコキと鳴らす。

 「そうかい、まぁまだ足りないだろうからあと数杯は飲んでもらうよ? 抵抗するなら……分かってるね?」

 そう言いながらニヤリと笑いながらお椀を差し出された。

 苦笑いしながらも一応受け取り、両手で持って飲み始めた。
 抵抗すると今度は本当に口移しで呑まされると感じた俺は少しずつだが、グビリグビリと飲み干す。

 10杯は呑んだ辺りから随分と楽になった俺に、今度は香りの良いお茶のような物を渡してくれた。

 薬湯なのだそうだ。

 それを呑みながら部屋の中を見渡してみると、壁には見慣れない草がぶら下がり何となく薬草なのか? と、わかる草が何十種類も目に映る。

 天井から吊るされたドデカイ鍋から小瓶に緑色の液体を注ぎながら、そんな俺を見ていた婆ちゃんが声をかけてきた。

 「所であんた何者だい? 魔の森から歩いて来るなんざ魔人か何かなのかい?」
 「あ、すいません名乗るのが遅れましたね」

 そう言って咳払いをして名乗ろうとしたら、被せるように婆ちゃんが話し始めた

 「あたしゃこの街を仕切ってる魔女のヨネだよ。 まぁヨロシクな」

 「あ、ハイよろしくお願いします……えっと、俺は一畳拓巳いちじょうたくみといいます、この街の隣……っていうか、森の向こう側にある滝の向こう側から来ました」

 「……何だって?森の奥に滝があるのかい? ていうか、あんたやっぱり魔人かい?」

 そう言うと杖を取り出して構え出した婆ちゃんを宥めながらここに来た経緯を話し始めた。

 しばらく俺の話を聞いていた婆ちゃんはお茶を啜りながらいつの間にか出してたお茶菓子を食べながら言った。

 「ふーん……森の奥は未だに未到達地だから何とも言えないが、あんたの目を見ると嘘は言ってない様だね」

 「信じてもらえて何よりだよ」
 「そんで?その食ったっていう実はまだあるのかい?」

 そう言われたのでちょっと待ってと言って部屋に戻ると着ていた服のポケットを探る……までも無くゴロゴロと転がり出てきた木の実を数個拾って持っていった。

 「コレですよ」と言って差し出しながら、腹は空いていたのでモグモグと1つ食べる。

 恐る恐るその実を受け取った婆ちゃんはジーッと見るなりハッとした様に驚くと、本棚の中から一冊の古い本を出してきた。

 その本をパラパラと捲り一つのページを開くと、そこに書かれていた絵と木の実とを比べ始めた。

 「この絵を見ろ! ソックリだ! 伝説の光る実だよ!」

 そう言うとその本の絵がよく見えるように俺に向ける

 確かに描かれている形は似ている気がした。そこに書いてある文字は読めない筈なのに何故か読めた。

 見たこともない文字なのに読めると言う不思議な感覚に戸惑いながら読みすすめて行くと、そこにはこう書かれていた。

 『その実は光る泉の真ん中に生え、神々の慈しみをいっぱいに浴びて育っていた林檎であった、私はその実を食べて驚いた
 一つ食べれば若返り
 二つ食べれば体力が回復
 三つ食べれば魔力が回復
 四つ食べれば最大魔力向上
 五つ食べれば最大体力向上
 六つ以上食べた私はこの国の王になった』

 表紙を確認してみると題名が書かれており、王の日記と書いてある。
 裏を見てみると其処には書いた本人だろうか? 名前が漢字で書いてあった

 【正一】

 俺はその名前に見覚えはなかったが、上村婆ちゃんに昔の話を聞いたのを思い出していた。

 神隠しにあったという子供達はもしかしたら、この国に足を踏み入れたのではないかと……そして国を作った?

 何とも奇妙な出来事だがそう考えれば納得が行きそうだった。

 「この日記は何年前に書かれたものなんですか?」

 確かめる為にも書かれた日付を聞いたのだが、その答えは

 「1000年以上も前だよ、この国を作った魔導師様はな、そんな事より木の実はまだあるのかい?」

 少し色っぽさが混じった声で、そう聞き返してきた婆ちゃんを、見て驚いた。其処には皺くちゃだった婆ちゃんは居らず、40代くらいの女性が立っていた。

 俺は文献を読み直して確信した

 『1つ食べれば若返り……』

 (いくら何でも効果高すぎだろ⁉)

 妙に色っぽい婆ちゃんだった人をドキドキしながら見つめ返すのであった。
 
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