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五話
しおりを挟むすっかり色っぽく若返ったヨネ婆ちゃんは俺が持ってた木の実をベスト毎奪うとショルダーバッグみたいな物を投げて寄こした。
「そのバッグはアイテムバッグと言ってね? 生き物以外ならこの部屋くらいの広さくらい入るすぐれものだよ、それでも少し足りないから宝石も付けといたから、それを売るといいよ。あんたいい買い物したね!」
そう言うと嬉しそうに木の実が入ったベスト毎持って自室へと消えて、また戻ってきた。
「使い方教えるの忘れていたよ。 そのバッグに手を突っ込みな」
言われるがままにバッグに手を突っ込むと、中に入ってる物のリストが頭に浮かんで来た。
干し肉✕20
水袋
ダイヤモンドみたいな宝石✕10
ルビーみたいな宝石✕5
翡翠っぽい宝石✕3
水晶の粉✕50kg
砂金✕10kg
だった。
ある程度売れそうな物が入ってたので何か貰い過ぎな気がして来ていた。
「その中に入ってる水晶の粉や砂金は魔術を使う時の触媒になるから無くなったら継ぎ足しな」
水晶の粉は価値が分からなかったからどーでも良いとしても、砂金が売れないのは少しショックだった。
それでも宝石なんかを売れば家に帰ってからも、ある程度働かなくても生きられるかも知れない。
取り敢えずお礼を言い、そろそろ家に帰ると告げると怒られた。
「何言ってるだい? あんたはまだ子供だし森には入らせないよ?」
どうやら森に入るには許可が必要なようだった。だが、早く帰って昼飯の準備もしなきゃならないし、壁や床材を買いに行かなきゃならない。このバッグのおかげで運ぶ手間も無くなったから早く使ってみたいってのもあった。
「いや、この街に居座るつもりも無いし、早く帰りたいんだけど……っていうか俺は子供じゃないぜ?」
日本人は若く見られがちだが、流石に30歳何だから子供には見えない筈だ、老人だから30歳くらいは子供に見えるかも知れないが……。
「何言ってんだい? どっからどーみても10歳かそこらにしか見えないよ? それで30歳なんて無理があるよ?」
ものすごく呆れられてしまった……。
納得できない俺を見かねたのか、ちょっと待ってなと言うと自室へと入ってすぐに戻ってきた。その手には手鏡が握られている。
ホレとばかりにその手鏡を向けられて俺は固まった。
そこには口を開けて呆然と佇む13歳くらいの時の俺が写っていた。
ゆっくりと手鏡を受け取ると更にじっくりと眺めた。
どっからどーみても中学時代の俺だった。
『一口食べると若返る……』
俺の頭にあの言葉がジワリと蘇ってきた。
「ま、ま、まじかよ……これじゃ帰っても俺だと信じてもらえない! これはマズイ! 最悪だ! 仕事にも戻れないじゃないか!」
顔を青ざめさせて慌てる俺にヨネ婆ちゃんがトドメとばかりに言葉を放つ
「この街でも仕事なんてつけないよ? まぁ、安心おしよ。 あんた魔力多そうだから魔法を教えながら見習いとして置いてやるから」
そう言うと口角を上げてニヤーっと笑った。
いくら色っぽくなっても笑い方がそれだと気持ち悪い。
悪い魔女に捕まった様な心境になった。
いや、実際悪いのか? そう思ってヨネ婆ちゃんを改めて見る。
黒いフードを被って鍋を回す姿は魔女そのまま出し、笑い声もヒェッヒェッヒェと笑う。
こき使われて馬車馬の様に働かされる未来が頭に浮かぶ……。
俺は頭をブンブン振り回し、とりあえず今の話は横に置いておく事にして、今後の事を考え始めた。
◇
13を多く見積もっても15にしかならんし、30歳の顔に戻すには歳を重ねるしかない……でもそれだと完全に俺は行方不明だ。
捜索隊も出るかもしれない……。
上村夫妻に心配を掛けることになるし、会社も当然クビだろうし?……あ?これって……もしかしなくても……。
「神隠しじゃん……」
もしかして上村で居なくなった人もこのお陰で帰れなかったとか⁉
そう思えてきた俺はあの村で起きた過去の話を思い出していた。
十数人と居なくなっても洞窟を引き返せていたら戻ってこれたはずだった。
それなのに戻れなくなったのは、きっと俺の様にあの実を食ったのだろう。
甘い物の少なかった時代だ、そりゃ食いつくに決まってる。
現代に生きてた俺ですら貪り食うほど美味かったのだから。
俺は額に冷や汗を滲ませながら回想しては一人でウンウン唸った。
取り敢えず15年は戻れないのは理解した。っとなると……やはりヨネ婆ちゃんの元で見習いとして住まわせてもらいながら生きて、成人したら……成人したら何になるんだ?
疑問に思ったので聞いてみた。
「なぁ婆ちゃ……」
婆ちゃんと言いかけた所でお椀が額にあたり悶絶しながら転げまわった。
目にチカチカとした星を見ながら起き上がると婆ちゃんに大声で怒鳴った。
「何しやがる‼ ババ……」
そう言い終わる前に今度は杖で頭を叩かれた。
痛みで踞る俺に魔法で作った水を浴びせながらヨネ婆ちゃんは言う。
「誰が婆ぁなんだい? わたしゃ若返ったんだよ! お姉様だろうが? それにこれからは師匠と呼びなっ!」
そう言うと口角を上げてニタリと笑う。
反論しようとする俺の目を見て杖を構えると
「返事は⁉」
口は笑ってるのに目が笑ってなかった婆ちゃんを見て、しぶしぶ返事をした。
これから15年は耐えるしかないと少し絶望しかけたが、魔法を使える様になるならいいかと思い直す。
少し血色が良くなった俺を眺めがらバ……師匠は言う。
「この街の成人は15歳からだよ? 冒険者の登録も成人してからになるから約5年はここで暮らしなっ」
ほほう……15歳とな?ほうほう……。
俺は良い事を聞いたとばかりに師匠に伝える。
「師匠! 都合の良い事に俺は15歳なんで冒険者に成れますね!魔法の修行しながら冒険者を目指そうと思います!」
そう言ったのだが何故か得意げな顔をしながら何かをブツブツと唱えると、俺の前に半透明のプレートが現れた。
そこには俺の名前と種族と年齢が書かれていて……
名前 タクミ
種族 人族
年齢 10歳
と、書かれていた……。
「え……じゅ……えええっ⁉」
「ふふふ、残念じゃったなぁ……10歳でくふふふふっ」
明らかに何かやったに違いなかったが、何をしたのかすら分からず、このまま10歳として生活して行くしかなかった。
30歳がまた少し伸びてしまった……
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