Shine Apple

あるちゃいる

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六話

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 あれから早くも一月ひとつきが過ぎ去った。
 朝は日が昇る前に起きて、井戸で顔を洗ったら水瓶に水を貯める。
 生活魔法の一つで水を井戸から汲んだ後、その水を浮かせながら水桶に運ぶ。
 これが最初の一週間苦戦した。
 そもそも魔法なんて一度もやったことのない人間がイメージだけで浮かす事など出来る筈もなく、何となく浮いてるイメージを保つだけでも日が暮れて行く。
 なので、最初の一週間は水瓶を一杯にするだけでヘロヘロになっていた。
 その一週間が過ぎて何となくコツをつかめる様になり、何とか午前中だけで終わらせる事が出来るようになると、今度は薪を割る仕事を任された。
 薪を割るにも魔力を使ってやる物だから全く進まない。だがこれも何とか一週間くらいでコツを掴める様になった。
 叩き割るイメージで最初やっていたが、そうでは無く……空気の塊を膨張させて割ると言う物だった。
 水汲みに薪割りが午前中で終わるようになると、今度は薪を使って火を熾す仕事をいい使ったのだが、これにも時間が掛かった。
 指先に火を灯すんだと言われても、いまいち分からず、結局親指と中指をパチンと鳴らしてマッチの様に点けるやり方が一番やりやすかったのだが、音を出すなと怒られる始末。
 だが何度やっても治らなかったので諦められた。

 「お前は隠密仕事は無理だねぇ……」

 ため息を吐きながら言われた。

 つまり、斥候等には成れないと言われた。猟にも向いてない様で、狩りには連れて行けないと言われた。
 冒険者の中には魔物の群れを確認しに行ったりする斥候や、猟師の付き添いで森や山に入り足止めなどの魔法を使う仕事があるそうだ。だが、音が出てしまう魔法使いはそれだけでマイナスになる為仕事を請け負う事が出来ないのだそうだ。

 基本中の基本の火魔法は、あらゆる魔法の使い方に繋がるらしく……現に水、土、風魔法を使う度に指パッチンしないと使えなくなっていた俺は、それだけで狩りが主な仕事の冒険者には向いていないのだそうだ。

 そんな絶望する様な話を初っ端にされた俺は落ち込む事になったが、見方を変えた。
 狭まった選択肢のお陰で迷わずにそっち方向へ向かって努力出来たからだった。

 取り敢えずの目標は荷物持ち。
 身体能力を上げて重い荷物も軽々持てる様な力を得ようと筋トレを始めた。
 だが、筋トレは無駄だった。
 魔力を込めるだけで、筋肉が無くても運べる浮遊魔法を覚えろと怒られた。
 次に料理や解体を素早く出来る様にした。
 解体は大学時代に覚えていたので、あとは素早く丁寧にやるだけだったので、これは3日くらいでだいぶマシになった。
 魔法と関係ない所が良かったのか直ぐに活躍出来ると褒められた。
 それと同時に教わったナイフの刃先を鋭くさせる為の魔法には苦労した。
 これは風魔法と水魔法の合わせ技が必要で、悪戦苦闘していたが、そこらの主婦や料理人には必須のスキルらしく、寝ぼけながらでも使える様に叩き込まれた。

 これには二週間掛かり、ようやく普通にできる様にはなった。(寝ぼけながらは無理)



 「おい、タクミ! タクミー!」

 今日も日課の薪割りをしていると表玄関の方から師匠の声が聞こえて来た。
 遅れると杖の餌食にされるので慌てて玄関へと走っていくと、見慣れないオジサンが立っていた。
 昔やったゲームのトル○コみたいな感じの髭を生やし、スリーサイズがドラ○もんみたいな小太りのオジサンは、俺が来ると訝しげな顔で睨み

 「こんな子供が役に立つんですか?」

 中々失礼な言葉を師匠に向かって話し始めた。

 「ああ、大丈夫さ!基本は覚えてるからねぇ」

 そんな事を言いながらニヤー……と笑う

 この笑い方が出るという事は、碌でもない考えの時だ。
 師匠とともに住んで一ヶ月、何度もこの顔の後に行った作業は本当にろくでもなかったからだ。
 鈍い俺でも気付くくらい。

 なんとなく嫌な気分で師匠の横に立ち説明を待っていると、俺の背中を押しながら言う

 「タクミ、アンタしばらくその人の下で働きな! 給金は先に半年分預かってるから怠けずに頑張るんだよ?」

 (それで説明終わりかよ!)

 そう言うと金の入ってるだろう袋をチャリチャリいわせながら玄関扉を閉められた。

 唖然と立ち竦む俺を面倒くさそうにサッサと歩け!と、どやされる。

 まるで売られた馬のような感じで師匠の屋敷を後にする。
 (BGMは当然ドナドナだな)

 なんの仕事をこれからするのかさえ聞いていなかった俺は不安になったのでオジサンに聞いてみることにしたのだが、来ればわかると言うだけだった。

 暫く前を歩く男の跡をヒョコヒョコ付いていくと、1つの宿屋へと入って行く。

 この街の半分が宿屋で、町人の仕事の殆どは宿屋経営か食事処だった。
 この街出身の冒険者は数えるほどしかいない。

 俺が歩いてきた魔の森は上級冒険者や国のお抱えの騎士、大店の雇われ傭兵等が行く場所で、最後に立ち寄る街と言うことで自然とサービス業が増えていったのだそうだ。

 男が入っていった跡に続いて中へ入ろうとしたら中から目つきのキツイお姉さんが出てきて手で制されて止められた、何だこいつと見上げると、裏へ回るように言われた。

 そして裏へと回ると紙袋に何かが入った物を渡されてシッシッとされた。

 袋の中からは油っぽい肉の香りがした。
 どうやら浮浪児と間違われたらしい。

 (俺そんなに見窄みすぼらしい格好してるのか?)

 そういえば来た時から変わらない服を着ていたっけな……と、自分の着ていた服を眺めた。
 所々解れていたりしている。
 毎日一応水魔法の応用兼ねて洗濯っぽい事はしていたが、洗剤もないのでそこまで綺麗には洗えていない。
 この格好が不味いのかと思い当たった俺は、その宿を跡にして服を買いに行くことにした。

 実はいうと、街の中を歩くのは初めてだったので口実ができた事を喜んでいたのは内緒だ。

 俺が街へと消えた後、なかなか店に入って来ない俺を待ち疲れた男は裏口に居た店員の娘にここに居た小僧を知らないか訪ね、残飯を渡して追い払ったと聞くや否や顔を青ざめさせながら街へと走っていった。

 いくら小僧とはいえ魔女から預かった子供をその日の内に失踪させたとあっては雷が落とされる(物理的に)

 当て所もなく走り回りタクミを探しながら男は気がついた。

 名前すら聞いて無かったことに気付いた男は探しようがないことにも気が付いて、トボトボと自分の店に帰っていった。

 汗だくになって帰ってくると店の前に小奇麗な格好をした少年が立っていた。
 顔付きや着ている服で上客だと感じた男は

 「いらっしゃいませ! 当店へお泊りですか?」

 手を重ねてゴマすり気味に尋ねる

 「あ、おじさん」

 そんな声を聞いて改めて少年の顔を見ると、魔女の所の小僧だった。

 さっきまで乞食かと疑うほど汚らしい格好をしていたのに服を着替えただけでこうも変わるのかと驚き、下働き用にと魔女に押し付けられたのだが、考えを改めた。

 「先程は失礼しました。 私はこの宿を経営しているダッズと申します」
 そう言うと頭を深々と下げてきた

 「これはご丁寧に……僕はタクミと言います!よろしくお願いします。 ところで僕は何をしたら宜しいですか?」

 何故か威圧的だった先程とは違い丁寧な言葉を使ってきた男に気になっていたことを尋ねた。

 「最初は下働きで薪割りなどの雑用を頼もうかと思っていたのですが、如何でしょう、食事処の方で接客などしてくれますか?」

 魔女に渡した給金以上の金もくれるというので、二つ返事で了承して俺はその日からボーイになった。

 
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