Shine Apple

あるちゃいる

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十四話

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 食堂が完成したとダッジさんに伝え、近隣の宿屋にも声を掛けてもらう。
 日本なら屋根から餅を撒くところだが、餅米が無かった。
 召喚しても良かったのだが、クッキーと銅貨を入れた袋を撒くことにした。

 建築に関わった少年達のうち、俺と同年代くらいの子達が来てくれていた。

 食べ物も沢山用意して食堂に並べてから屋根に登り声を掛ける。

 「今日は沢山の方々にお集まり頂き大変嬉しく思います! この度無事に【魔女の食事処】が開店しました! この喜びを皆様にもお分けしたいと思います!」

 (因みに宿の名前は【魔女の隠れ家】だ)

 新築祝いとしての口上がどんなものか知らないので、適当に叫ぶと屋根の上から小銭入りのクッキー袋を撒いた。

 上から降ってくる何かに最初は皆狼狽えていたが、拾った少年が中を開けると歓喜した。

 「お金が入ってるぞ‼」

 その一言で一斉に飛び掛る人々と
 雨の様に降ってくる袋を取ろうと手を伸ばす人々で、一時騒然とし始めた。

 新築だからと何かを撒くような事は無かった様でオロオロするダッジさんと目を丸くしている宿屋の方々とでカオス状態になった。

 「中に入ってる物も美味いぞこれ‼」

 そう叫んだ何処かの誰かの声で更にカオスになり始めた頃、ようやく撒く物が無くなると俺は大声で叫んだ

 「今日は思考を凝らした食事を用意してあります! 全て無料ですのでどうぞお楽しみ下さい‼」

 そう叫び屋根から降りて急いで厨房へと走る。

 宿屋側の入り口から厨房へと入り、召喚でパスタの麺と他の具材を出し、次々と隣の食事処へと運んでいく。

 食事処の厨房では汗を流しながらナタリーさんが麺を茹で、盛り付けは双子姉妹がやり、配膳は長男次男が運んでいった。

 祝袋を撒いていた時から中で食事をしていた人達も居たらしく、ドンドン食べていくのでヘルプの声が撒いてる間にもしていたのだ。

 追加のパスタを三女にも手伝ってもらいながら運び込むと、宿屋側の厨房へと戻り俺もパスタを茹でる。

 結構な量を茹でないとまったく足らなくなってしまったので急いで茹でるのだが、流石に竈が二つだと厳しくなってきた。

 なので金粉ひと握り、水晶の粉をひと握り掴むと巨大な幾何学模様を描いて欲しいものを召喚する。

 召喚するのは茹で上がってるパスタと出来上がってるペペロンチーノとチーズたっぷりのカルボナーラをそれぞれ千食分出すと、長男のドランと次男のドルンに声を掛けて運んでもらった。

 暫くはナポリタンだけ提供するが、そのうち出す予定の物も宣伝のために出しておく。

 追加の麺も持っていき、ナタリーに渡したあと食堂を覗く。
 立食にしたので思い思いの場所で口いっぱいに頬張る方々と、一度ナポリタンは食べていたのでペペロンチーノとカルボナーラに舌づつみをうつ各宿屋の方々。

 ごった返しながらも落ち着いた感じで腹が一杯になった人から順に出口専用口から出ていってる様子が見て取れた。

 概ね成功したと安堵してると後ろから聞き慣れない声で話しかけられた。

 「ちょっとタクミ! 何よこの美味しいの! あたし知らないんだけど⁉」

 振り返ると俺の身長より小さい感じの少女が叫んでいた。

 よく見ると魔女のヨネと同じ服を着ている。
 大きさは違うが作りは同じ感じがした。
 何となく顔もヨネの面影を残している。
 俺がマジマジと眺めてるのが気付いたのかポージングをしながら少女は言う。

 「どうどう? 可愛いかい? うっかり恋に落ちないでおくれよ? あたしにヒェッヒェッヒェ」

 笑い方が同じなこの少女はどうやら師匠の魔女らしい……。

 「最後の1つを食べたらまた若返ってしまってな? これでまた長生きできるってもんよヒェッヒェッヒェ」

 そう笑うとコチラを見て言う

 「そんな事よりなんだい? この食堂は? 宿賃は貰っているが此方の儲けも少しこっちに回してもらうよ?」

 「いや、経費は貰ってないから売上は渡せませんよ? それにこちらの経営はナタリー親子にして貰う予定なので無理です」

 そう言ったのだが頑として譲らず杖を構えだした魔女は言う。

 「若返ったおかげで化粧品やら服とかに金が掛かるんだよ! 少しでもいいから寄越しな! それとも上がった魔力で攻撃魔法を撃ち込まれたいのかい?」

 師匠と弟子とで言い合っていると奥からナタリーさんが慌てて出てきて売上の少しを渡すと言ってきた。

 せっかく出来た店を壊されたら露頭に迷うと思ったのだろう。少し顔も青ざめている。

 「流石は雇われとはいえ店主だねぇ? わかっているじゃあないか、馬鹿弟子よりは全然使えるねぇ……」そう言うとニヤーと笑いだし、月の終わりにまた来ると言って帰って行った。

 「ナタリーさん……馬鹿魔女を止められず申し訳ない……」

 そう言って頭を下げる。

 「いーんですよ、それに私は貴方に雇われてる従業員ですから、売上は全て貴方のものですよ? 店主になったと聴いて青褪めましたよ……」

 魔女を追い出す為の嘘がうっかりナタリーさんを苦しめていた事に気付いて更に謝ることになった。

 「あ、でも経営を任せる事はあってますよ? 俺はこれから宿屋と畑作りで手が塞がるので食堂の管理が出来なくなるので……」
 そう言うと手をフリフリしながらナタリーはドランとドルンを呼び止めた。

 「「なーに、お母さん?」」

 双子でもないのに声を揃えてナタリーの左右横に並ぶと

 「畑はこの子達がやるのでタクミ様は手を貸さなくても大丈夫ですよ?」

 そう言うと二人の背中を押してアピールしろとコソコソと耳打ちする声が聴こえてきた。

 「タクミ様! 畑は僕達に任せてよ! 土魔法が使えるから耕すのも開拓するのも得意なんだ!」

 そう言うとドランは軽く掌から土を出して何かの苗を芽吹かせた。
 魔力を落とすとその苗も消えてしまった。

 「僕は水の魔法が得意だから水やりも完璧だよ!」

 そう叫ぶドルンは掌からシャワーの様に水を出すと虹を作り出した。

 そういう事ならたまに知恵を貸すだけで出来ると踏んだ俺はよろしく頼むと頭を下げた。

 二人は喜び「「お任せください!」」と声を揃えて胸を叩くと、厨房へと戻っていった。

 「兎に角、私は経営には向いてないので引き続き食事処の方もお任せいたしますよ?ご主人様?」

 そう言ってニコニコしながら厨房へと戻っていったナタリーさんの背中を見ながら少し考える。

 そのうちこの街を出ていく予定だから色々任せたかったんだけど……まぁ、それでも15年後の話なので置いておく事にして、俺も手伝うべく厨房へと戻っていった。
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