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十五話
しおりを挟む「この前食べたトロッとしてるのを食べに来たんだけど……」
そう言って俺をチラ見する男に素材が手に入らないモノなのでと断る。
「まぁ、このナポリタンも美味しいからいーんだけどさ」
なんとか納得してもらってナポリタンとパンが入った籠を受け取り席へと座る。
初日に出したカルボナーラやペペロンチーノを食べた兵士の方々や宿屋の方々はあの味が忘れられない様で、たまに来ては呟いてナポリタンを食べる。
開店祝いの日から二十日を過ぎても言ってくるので、そろそろ何とかしないとなぁと、考えてはいるがチーズが手に入らないので断念せざるを得ない。
酪農をしていたナタリーさんに聞くも、牛の乳でチーズを作っている牧場もあるが、北の方の牧場らしく中々この街まで売りに来る奇特な人は居ないのだそうだ。
あれは完全に保存食で春のうちに集めた乳を冬でも食べれる様にしただけなんだそうだ。
そしてその村の特産品なので街で売ると村まで来てくれる人が居なくなり、宿を営む人が露頭に迷う事になると言っていた。
まれに買いに来る商人も居ないことはないが、断ってるらしい。
やはり数が作れないとどーしようも無いようだ。
かと言って俺が酪農をやるという選択肢も無かった。
流石に宿屋に食事処に畑の管理で手一杯だし、この上酪農までとなると……過労死まっしぐらだ。
それに最近始まった肉祭りのお陰でハム作りやベーコン作りで更に忙しさに拍車も掛かっている。
閑散期に入る二年間で今作っている保存肉を食べるには、相当作らないと足りなくなる。
他の肉を使うにしても、森へと入れない俺ではコストだけが高く付くので割に合わなかった。
せめて狩りでも出来れば話は変わるのだが、俺の魔法は相変わらず生活魔法しか使えない。
そもそも魔女が俺には魔法を教えないのだ。出来が悪いと思っているようで、攻撃魔法等はまったく口にもしなくなった。
そして食事が美味いという評判で宿賃もあげたらしく、それなりのモノを出さないと苦情が入る様にもなっていた。
そして若返った事もあり化粧品から服装も段々派手になってきた魔女は金が必要らしく、俺を馬車馬の如く扱う節が多くなってきた。
流石にイラ立ってきた俺は必ず15になって成人した暁には、魔女の保護化から出て独り立ちする事を認めさせた。
認めなかったら今からストをするつもりで言ったのだが、意外とあっさり認めてくれた。
何か裏でもあるのかと疑ったが、取りやめると言い出しかねないので念書を書かせて指紋を押してもらい2つに切ってそれぞれで持つ事にした。
「随分念入りにするじゃないか、そんなに師匠が信じられないのかい?」
「当たり前だろ? 何を今更言ってんだこの婆ぁは……」
shine Appleと名付けられた光る木の実をすべて俺から奪い、平均サイズのアイテムバッグと交換した事は忘れてないし、生活魔法以外は教わっていない。
召喚魔法もありふれたもので、商人や調理師の間では殆どの者が使える魔法であった。
木を切る魔法も加工する魔法も俺のオリジナルなので実質教わったのは極々一般的なものばかり、これで師匠と呼べは詐欺に引っかかったようなものだった。
確かにこの魔女は優秀なのだろう。
この街の重鎮ではあるのだろう。
この魔女の名前を出すとイチャモンを付けてきた商人や素行の悪い冒険者が来たとき追い払う事が出来たからな。
魔女には俺が弟子だと言う事を禁じられていたが、その時一緒に居たダッジさんが俺の代わりに言っただけだからお咎めはない筈だ。
虎の威を借る狐の如くなるから使うなといったのかもしれないが、俺は魔女の弟子とは語りたくない。
守銭奴だし最近はナタリーさんに何故か近づいてきてるし、油断もスキもない。
ナタリーさんに何を話してるのか聞いたが世間話の延長みたいな話をされたそうだ。
生まれは何処かとか、料理のスキルや知識は何処で覚えたかなどだった。
子供達には特に何も話はしてないようだったので、気には止めなかった。
◇
畑も順調に出来て、肥料の代わりに腐葉土の取り方などを教える。
二人の兄弟達は覚えも早く教えがいもあったので、現代知識をどんどん教えていった。
そのお陰もあり、食事処が完成してから一年ほど立つと、野菜は畑から活用するようになった。
カルボナーラは相変わらず作れていないが、ペペロンチーノは提供するようになった。
主にペペロンチーノはお土産や酒の肴として持ち帰る客が多かった。
ワインみたいな飲み物と呑むと美味いんだそうだ。
宿屋も順調に営めるようになったある日、魔女が一人の男を連れて現れた。
「タクミ、今日からこの男を宿屋に付けるから調理なんかを教えてやってくれ。お前が成人したら私の元から去るのだろう? すると、この宿をお前に任す事も出来なくなるんだよ。 分かるだろう?」
そう言うとニヤーと魔女は笑った。
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