Shine Apple

あるちゃいる

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十七話

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 「えーと、冒険者になるって事で間違いありませんか? タクミ様?」

 久しぶりに冒険者ギルドに来て、荷物持ちとしてやって行きたいと受け付けに伝えると、奥からカリーヌさんが現れた。

 いつの間にか俺の担当になっていたようで、一応魔女との話も聞いているようだ。

 草原の宿屋は魔女に所有権があったが、食事処の所有権は俺に成っていたのを、昨日魔女が変更したらしい。

 本人の居ない所での話だったため、いくら街の重鎮である魔女でも勝手に名義変更は出来無かったが、話は付いているからと割符を見せて証拠としたようだ。

 魔女が元々住んでいた場所は既に売りに出され、一等地だった事もあり大手の大店や規模の大きな宿屋が買い取ったらしい。

 大店達が引っ越した後には中小企業的な店が移り住み、更には中小企業的な方達が住んでいた場所には小規模の店が移動して、最終的に残った場所が空き地になっているからそこに店でも建てたらどうかと勧められた。

 「いや……もう店はちょっと……」

 そう言って遠慮したのだが空き地のままだとあまり見栄えも良くないし、不法占拠されても困るからと比較的安く売ると言うので買う事にした。

 「安心しました。 建築は自分でなさいますか? それとも注文しますか?」

 何となく人手を雇って欲しそうな顔でこちらを見ていたが、元手が少ない事もあったし、どうせなら前作ったトイレや風呂も作りたかったので自分で建てると伝えた。

 「そうですか……人手が欲しくなったら仰ってくださいね? それでは冒険者登録を済ませてしまいましょうか」

 ようやく本題に戻れそうだったので適当に相槌を打っていると、申請書の紙を2枚並べて渡された。

 「え……あの、登録するのは俺だけなんですが?」

 疑問に思って一枚を返そうとすると俺を不思議そうに見ながら人差し指で1、2……と数えるカリーヌさん。

 2の部分で指を下に向けたので釣られて俺もその指の先を追うように下を見ると

 羊が一匹こちらを見上げていた。

 その羊の腰にはバッグが付いていた。
 出会った頃のナタリーさんが装備していた物によく似ている。
 背中にはバックラーが付いていて、その盾は弟君が装備していた物に似ている。
 バックラーの横には棍棒が付いていて、その棍棒は三女のメリヌが装備していた物に似ている……。

 「……メリヌ? 何でここに居るの? お母さんと一緒にダッジの所に行かなくていいのか?」
 「あの人はお母さんじゃないよ?」

 ちょっと何を言ってるのか分からなかった。
 ナタリーファミリーの三女の筈だろう?と言っても違うと言う。

 何だか話が見えなかったので冒険者登録の前にギルドの二階の軽食ができる場所に移動して話を詳しく聞くことにした。

 俺はお茶を2つ頼むとメリヌを見る。
 腹が減っているのか羊のままだったのでパンケーキも注文して食べさせたあと人型になって貰う。

 メリヌの身長は俺の肩らへんしかなく、俺が170くらいなので140センチくらいの身長だ。どう見ても子供にしか見えないがメリヌ曰く成人したらしい。

 つまり俺と同い年なのだそうだ。
 容姿も幼かったので、勝手に年下と思い込んでいたようだ。

 「ずーっと一緒に寝起きを共にしてたのに気付かなかったんですか?」

 少々大きな声だったため、その場に居た方々から鋭い視線が俺に突き刺さる。

 「あんな幼気いたいけな子と?」
とか。
 「変態……」などという不名誉な言葉がボソボソと聞こえて来たので慌てて取り繕ったのだが
 「同じ部屋に居たのに気付かなかったなんて……」

 っと下を向いてフルフルと震え出したメリヌと痛い視線が殺気に変わっていくのと殆ど同時だった。

 「え、いや!待って待って! 俺忙しくて周りの事が目に入ってなかったかも知れないけど……寝起き⁉ してたの⁉」

 「してましたよータクミ様はベッドで寝て、私はその下で寝てました!」

 「その下で⁉ え、床で⁉」

 と、女性陣からも男性陣からも非難の声がザワザワとし始めてしまい、メリヌの手を掴むと軽食処から逃げだした。

 そのまま冒険者ギルドを出て路地に入るとメリヌの肩を掴んでどーいう事か聞き出す。

 「雇ってもらった日に護衛兼ねてタクミ様に付くように言われてたんですよ」
 と、メリヌは答えた。

 そんな話は初耳だった俺は
 「聞いてませんけど⁉」

 と、突っ込んだ。

 双子の姉妹はウエイトレス
 男兄弟は畑
 ナタリーさんは調理
 三女の見た目は幼かったので好きな時にお手伝いだったはずだと答えると

 「それじゃ無駄飯食いになるからお前は強いから護衛しろと言われてずーっと側に居たの」

 そう言うと俯いてしまった。

 なんで言わなかったの⁉と、聞くも
 「聞かれなかったし忙しそうだったから言えなかった」と答えられた。

 自分が忙しいと周りに目を向けない悪い癖は確かに昔からあったが……存在さえも気が付かない程だったと改めて反省することになった。

 俯くメリヌの手を引いて冒険者ギルドに戻ると、カリーヌさんが居る受付へと戻り、一緒に登録すると伝えた。

 「それではパーティ名をメリルさん。 あなたが決めて下さい」

 と言い始めたカリーヌさんを驚いた顔で見ていたら説明された。

 「荷物持ちの職はとても大事な仕事ですが、あくまでもサポートなんです。 二人のパーティとはいえサポートなのでリーダーには成れないんです。 武器も所持していますので、この場合パーティリーダーはメリヌさんになります。 つまり、パーティ名はメリヌさんしか決められません」

 そう言ったカリーヌさんの、話を聞いているのかどうか分からないメリヌは俺を見上げて言う

 「お腹減った……」

 「なんですか? もう一度お願いします」
 よく聞き取れなかったのかカリーヌさんはメリヌに聞き返す。

 腹の音を鳴らしながら俺を見上げ今度は大きな声でメリヌは言った。

 「お肉食べたい!」

 「はい、ではパーティ名は【お肉食べたい】に決定されました、一年間は変更出来ませんのでよろしくお願いします」

 そう言ってカリーヌさんから二枚の冒険者カードを渡された。


 (そーいえばパンケーキ食べてる途中に外に出たっけ……)

 その決定に頭を抱えた俺は、周りを見ない性格を本気で治そうと心に誓うのだった。
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