Shine Apple

あるちゃいる

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十九話

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 「タクミ! そっち行った!」
 「お、おう!」

 隣国までは結構な距離があった。
 食べられるならベーコンなどの保存食でも良いのだが、流石に毎日は飽きる。

 なので休憩中に見つけた川で魚を捕まえようって事になり、追い込み漁をやっているところだ。

 俺が追い込みメリヌが捕まえていたのだが、二匹捕まえたところで俺がバテた。

 そこで交代してメリヌが追い込み俺が捕まえる事になった。

 メリヌが棍棒でバッシャンバッシャンと音を立てて魚を追い込んで、それを俺が捕まえる……筈なんだが中々うまく行かない。

 一匹は捕まえたがスルリと俺の手を掻い潜って逃げてしまう。

 苛立った俺は地面に幾何学模様の召喚式を描いて、川の魚を想像しながら「来い!」と唱えた。

 10匹くらいが一気に集まり地面で跳ねた。

 「むぅ……最初からそれをすればよかったんじゃないの?」

 服をびしょ濡れにしながら棍棒を担いでメリヌが拗ねた。

 「そだね……」

 俺もびしょ濡れになっていたので上着を脱いで軽く絞ったあと岩の上に広げながら頷く。

 「女の子は気軽に服を脱げないのを知ってて川の中へ入ったんじゃないよね?」

 裾を絞りながら俺を睨むメリヌ。

 数日間一緒に過ごしていると大分打ち解けたのかタメ口で話すようになった。

 宿に居た時も同じ空間で過ごしていたらしいが、認識していなかった為に他人行儀だったが、色々会話しながら来たので随分と仲良くなっていた。

 「いや、俺も気が付いたのがさっきだったから」
 「本当かぁ? 疑わしいなぁ……タクミはムッツリだからなぁ?」

 そう言いながら上目遣いで俺を睨む。
 たまたま見てしまった着替えを根に持っているのか、何かしらあるとこうしてムッツリ呼ばわりしてくるのだ。

 まぁ実際少し膨らんだ胸にドキドキしたり、移動中に後ろに乗るメリヌが俺に捕まるとき、背中にあたる感触を楽しんでいたりしているから間違ってはいないが……。

 「乾かすの手伝うからメリヌは魚焼いててよ」

 そう言って背中側から温風をあてる。

 最近覚えた風の魔法でメリヌに教わった。そこへ火の魔法をかけ合わせて髪を乾かしたりするのに使っている。

 雨の日などの洗濯したあとに使えば梅雨でも乾きそうだ。

 「そんじゃお願いしますね~」

 この温風をえらく気に入ったメリヌは事あるごとに強請って来る。

 旅の間村に立ち寄れずキャンプする事も度々ある。
 その時に簡易的な風呂を作って入って居たのだが、メリヌはシャワーしか使ったことが無いと言うので試しに浸かってみろと言い、強引に入れてみたら気に入ったらしい。

 その時に濡れた髪を風魔法を使って乾かしていたので教えてもらった。

 「こんな魔法すら教えてもらえなかったの? 魔女様って本当に適当だったのね。 ちょっと幻滅……」

 大魔女ヨネは街中では意外と人気があった様で、メリヌですら俺が弟子だったというと最初は凄い凄いと言っていた。

 だが俺の使う魔法が一般的な生活魔法しか使えないと知るとガッカリして俺の才能がないから捨てられたと思ったらしい。

 だが、ともに旅をしていて違った事に気付かされたそうだ。

 野営の時に簡単に木々を切り倒しあっという間に頑丈な小屋を作ってしまったのを見て驚いていた。

 召喚魔法で出したカルボナーラを食べた時も素材がないと出せないのにと驚かれた。

 そんな事を毎晩毎晩続けば流石にメリヌでさえ気が付く。
 規格外な奴だと、そして魔女が教えなかったのだと理解した様だ。



 魚が焼けた頃には髪も乾き、食べ終わる頃には服も乾いたのでアイテムバッグから魔転車(魔力で動かすからそう呼んでる)を出すと、それに乗って国境を目指して走る。
 

 「あ、タクミ! あそこに村があるよ!」

 街道を走っているとこーしてメリヌが教えてくれる。
 このまま走り抜けても良かったのだが、ベッド寝たいと言うので寄ることにした。

 その村は国境が近いからか中々栄えている村だった。
 屋台も見たことの無い食材を使っているらしく種類も豊富で楽しめた。

 髪飾りなんかも売っていたのでメリヌに何かしら買ってやろうと選んでいたら

 「タクミタクミ! あっちにフワフワした甘い香りのする物が売ってるよ! そんな飾りよりあっちがいい!」

 そう言って駆け出してしまった。

 まだまだ子供なのか花より団子の様だ。
 店主にスマンと謝って駆け出したメリヌを追いかける。

 魚屋の前の猫の様に屋台にかぶりついて尻尾を振るメリヌをつまみ上げ、列に並ぶ。

 中々人気の商品らしく大人しく待っていると10分くらいで俺達の順番が来た。

 その商品は綿飴によく似ていた。
 日本の祭りでよく見かける量では無かったが二つほど買った。

 食感的には少々硬い。
 どちらかというと鼈甲飴に近い感じがする。
 見た目は綿飴なのに硬いので不思議な感覚になる。
 メリヌは美味いと言ってガリガリ噛んでいた。
 すべて食べ終わると俺のをじーっと見るもんで、舐めてる途中だったが目の前に差し出すと躊躇なく食べ始めた。

 関節キスとかはまだ分からないのかも知れない。

 年齢的には成人しているのだからそ~言うことには敏感かと思っていたが違うようだ。
 宿も部屋は別々にすると勿体無いからと一部屋しか取らないのもその理由になるのかも知れない。

 その割には着替えなど見られると恥ずかしがるのは何故なんだろう。

 本当に女性というのは不思議なものだ。

 そんな事を思っていると、隣でゴソゴソと動き出すメリヌ。

 ベッドの下で寝る習慣が付いていたので、一緒に寝ろよと提案したのは初めて宿屋で泊まった日の事。

 今じゃすっかり共に寝る様になった。
 が、寝相が悪いのか朝になると床で寝ている。

 今日は俺の寝付きが悪くて考え事をしていたのでゴソゴソ動くメリヌを見られた。

 そのまま落ちるのかと様子を窺っていると、ゴロンとコチラに転がってきた。

 少し服がはだけて小さな胸が見えそうになっていてドキドキしていたら

 「……なんだ起きてるじゃん」

 そう言って頬を赤らめるもんで余計に鼓動が早くなっていった。

 「ごめん……やっぱり慣れないから床で寝るね」

 そう言って羊に戻ると床へと転がっていった。

 どうやら俺は少し勘違いをしていたようだ。

 ちゃんと思春期を迎えていたメリヌに安堵していいやら明日からどうメリヌを見て良いのか分からなくなり、余計に寝れなくなった。
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