Shine Apple

あるちゃいる

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二十話

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 「何かタクミ眠そうだね?」

 昨晩モヤモヤしてたお陰で寝付いたのは明け方だった。
 ほぼ寝てないからか頭がぼーっとしてる所をメリヌに指摘され、一泊してから国境へと向かうはずがどうにも上手く魔力が出せず魔転車を動かせない。

 「もう1泊してく?」

 首をコテっとしながら上目遣いで俺を見るメリヌにドキドキしながら頷くと、魔転車をバッグに仕舞う。

 「宿引き払っちゃったけど、他探す?」
 「そうだなぁ……野営するか?」
 「村にいるのに何言ってんのよ……」

 村にいながら野営する人も中には居るが普通はしない。よっぽど路銀が少ないか、劣悪な宿しかない時以外は宿に泊まるのが常識だった。

 「でも他って言ってもなぁ」
 めぼしい宿屋は何処も満員で昨晩泊まった宿屋も運良く見付かったくらいだった。

 「あそこに戻っても多分埋まってると思うぞ?」
 「まぁ~確かに……でも野営かぁ……」

 テントに泊まる訳ではなく、最初に造った小屋をそのまま使い回している。

 寝るのは雑魚寝だが、寝袋みたいな物に二人で入って寝るのだ。

 チラッとこちらを見ては手で顔を仰ぐメリヌ。
 今日は日が出ているが暑くはない。
 って事はメリヌも照れくさくなっているという事か……。

 「寝袋もう一つ買うか?」
 「えー……勿体なくない? 安いものじゃないし……」
 「まぁそうだけど……」

 この世界の寝袋は地味に高かった。
 日本ではそんなでも無かった気がするが……「あっ!」

 「何?どしたの急に……魔物でも出た⁉」

 俺が突然大声で叫んだもんで驚いたメリヌは背負っていた棍棒に手を掛けて辺りをキョロキョロとしながら戦闘態勢に入る。

 「あ、ごめん。そうじゃなくて召喚すれば良いと今気が付いて……」
 「寝袋も召喚出来たの⁉」
 「うん多分行けるはず……」
 「……やっぱりムッツリ……」

 普通の人が使う召喚は食材くらいしか出せないんだそうだ。
 だが俺の召喚は記憶にある物全て召喚できる。現に魔転車のタイヤを召喚していた。
 鉄製品は作れてもゴム製のタイヤは付けていなかったし、サスペンションも無かったので走るとガタガタするのだ。

 乗り心地があまり良くなかったので改造した。と、言っても自分でやったのではなく、売ってた店で付けてもらった。

 どんな素材で作ったのかしつこく聞かれたが魔女の魔法と言うことで誤魔化した。

 村を出て少し歩いた先に川があったので、その付近で小屋を出した。
 魔女に貰ったアイテムバッグは魔力を込めると収容量があがったから入れられる様になった。

 魔女は知っていたのかどうかすら今では分からないが、まぁまぁ良い物を貰えたのだなぁと今更ながら感謝した。

 世界にはいろんな種類のアイテムバッグはあれど、魔力を込めると収容量が変わる物は無いのだとメリヌは言う。

 まぁ俺や魔女の様に膨大な魔力がある人もそんなに居ないから気付かないだけかも知れないが……。
 試しにメリヌの腰バッグに魔力を込めたが変わらなかった。
 持ち主の魔力じゃないと駄目なのかもしれない。
 ちなみに俺のバッグは元々魔女の物だったが譲り受けた時点で俺の名義になっている。
 メリヌのバッグは亡くなった父の名義のままだという。
 本人から直接譲り受けてないと名義は変わらないのだそうだ。
 その腰バッグもナタリーさんが持っていたが、譲り受けたわけでは無かったそうだ。遺品として持っていただけだという。

 検証する程金持ちではないし、調べたところで得するものでもないので気にするのをやめた。



 小屋の前に幾何学模様を描き、金粉と水晶の粉を二摘み出し、生活魔法で水を出して混ぜる。
 ホームセンターに売っていた寝袋を思い出しながら出ろと心の中で呟く。

 ポンッと音がして寝袋を出すとメリヌに渡した。

 「魔法を研究してるところに行けば? 多分仕事あるよ?」

 寝袋を受け取りながら真剣な顔して言うので

 「やだよ、魔女にまた使われる事になるんだぞ?」

 そう言うと、そうだねっと言ってそれ以上勧めては来なかった。

 そろそろ水晶の粉が心もとなくなってきたので買いたさなきゃならないが、路銀もそんなに多くないので無駄遣いは出来ない。

 「隣の国に行ったら仕事探さないとな」
 「この国では仕事しないの?」
 「魔女に見つかる可能性もあるから探せないんだよ」
 「あ~記録も残るしね」

 国境は明日には超えられそうなので、心許ない粉の量だったが、それを使って昼飯を出した。
 麺は飽きてそうだったのでカツ丼を2つ出す。
 「いつも思うんだけど、どの国の料理なの?」

 召喚というのはどこぞにある料理や素材を見た物しか出せないのだという。
 俺の記憶は日本の物なので色々出せるが、通常は生まれ育った場所の物しか出せない。
 年齢も対して違わないのにとブツブツ言いながらも、一口食べればそちらに集中する様で「ま、いっか美味しければ」と、納得するようだ。

 15年が過ぎて、まだ一緒に旅などをしていたら教えてやろうと思う。



 昼飯を食べたら夜用のオカズを探しに川の周辺を歩く。
 旅の殆どはひたすら走るか食べ物を見つけるか狩りをするかに別れる。
 パンが焼ければ良いのだが、竈を作って焼くとなると手間しか掛からない。
 どのみち小麦を召喚しないといけないので、焼けてるパンを召喚したほうが早かった。
 収入がある内ならバンバン召喚して出してる所なのだがそうも行かず、きのこ類や鳥などの獣を狩ってそれを食べることにしている。

 まぁ、今日は川も近いので魚を取って焼いて食った。
 捕るのは難しかったが召喚しろとも言われなかったので数匹穫って早めに寝ることにした。

 明け方には目を覚まし寝不足も無かったので魔転車もよく動く。

 やはり寝る場所を分けたのが良かったのかもしれない。
 これから宿で寝るときも泊まる部屋を分けようかと言うと

 「勿体無い! 絶対部屋は分けないからね!」

 と、念を押されてしまった。

 やはり女性は何を思っているのか分からない。

 一応説得を試みたが無駄だった。
 そんな事を話している間に国境の門が見えて来た。

 門というより砦に近かった。
 冒険者カードを見せると何の質問も無くすんなり通り抜けられた。

 身分をギルドが請け負ってるからだとメリヌが説明してくれた。

 門を抜けると直ぐに村が見えたが、ここは素通りして日が暮れる前に野営をした、その日の夜に次の村か街を見つけたら暫く滞在しようと話し合って決めた。 
 
 
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