Shine Apple

あるちゃいる

文字の大きさ
32 / 88

三十二話

しおりを挟む


 「ところでタクミくん。切った大木は今持ってるの?」
 「はい、持ってますよ!出しますか? 加工はしてませんけど……」
 「良いの? ならまたテラスで」
 「いや流石にテラスで出すと壊れませんか?」

 っということで、なら中庭でと言うことになり、俺と、マダムと、セイバスとでテラスに備えてあった階段を使って中庭へと降りていくと、後ろから公爵様も付いてきた。
 その後ろから何故か全員ぞろぞろと続く……

 「あら? あなた達も見たかったの?」
 っと、後ろから続くギャラリーに聞くと公爵様が答える
 「いや、真面目な話をしてる横で美味そうな匂いに何やら楽しそうな事をし始めようとしてるのに、混ざらないのは損じゃろう?」
 「わ、私共は公爵様が動いたので……」
 そう言うと皆が頷く。

 結論というか罰に対する答えを待ってるのに、その答えを言うべき人物が移動したので付いて来たって事だろうか……。

 「構わんじゃろ?」

 っと公爵が言うので頷く以外の選択肢はなかった。

 中庭には小さな池と芝生が広がっていて、バラ園とかは無かった。
 中世系のお話では庭に花園が広がってるイメージだったが違うらしい。

 さっさと終わらせたかったのでマジックバッグに手を入れて取りたいものをイメージする。

 そうすると目の前に取りたいものが現れる。

 カバンに手を入れて掴むってわけじゃないのだ。

 芝しか生えてない場所にドドーンと生えた枯れた大木を見上げながら固まる五人の若者(馬鹿者)と唖然としてる公爵やレギンス。

 歓喜乱舞してるマダムにセイバスとプリムローザは感心していた。

 「本当にこんなのが入るのね……」
 「本当に素晴らしい収納力です」

 感心では無く呆れている声色だった。

 「これをどうやって加工するの?」

 瞳をキラキラさせながら聞いてくるマダムに土塊を土魔法で出したあと、グラインダーをイメージしながら形を作る。
 すると丸いボールの様な形のグラインダーが現れる。

 見たこともない物に興味を惹かれるのは万国共通だったらしく、食い入るように公爵様も皆も見入っていた。

 俺は腐った部分を風魔法で乾燥させながら火の魔法で腐った繊維にマッチの火を灯すイメージで指を鳴らす。

 すると全ての繊維に火が灯りほぼ一瞬で消し炭になった。それをこそぎ落としながら腐っても燃えてもいない部分を、ミラーボールみたいな形のグラインダーを風魔法で回すと中から削っていく。

 削りカスはそのままアイテムバッグへと吸い込まれていく。

 ある程度削ったらその部分を見せて
 「こんな感じで中から削って部屋を作ります」

 っと、説明してやるとマダムが
 「もっと見せてもっともっと!」

 と、せがむものでしばらくの間大木を削る作業をする事になった。

 二時間も過ぎた辺りで魔力が無くなり始めたので止めたが、一階部分と階段、玄関と窓までは削り取れた。

 床部分は腐り落ちていたのであとから補修するつもりだ。

 「申し訳ないマダム魔力無くなりそう……」そう言うと、お茶を呑みながら眺めていたマダムは満足したようで拍手をしていた。

 皆も思い思いの場所に座り眺めていたのか、さっきまでのギスギスした空気は無くなっていた。

 「いや、良い物を見せて貰った感謝する」そう言ったあと公爵様は何かを思い出したかの様に手をポンと叩き。

 「そう言えば白銀とその群れを倒した君にまだ御礼も報酬も報奨もあげていなかったね!」

 と、この場で何が欲しいか尋ねられた。
 俺は今一番欲しい物は決まっていたのでそれが欲しいと言うと

 「塊で用意しよう! ではそれが報酬として、次は報奨だが何が良い?」

 うーんと考えてから
 「では今寝泊まりしてる空き地が欲しいです」
 そう言うと公爵様はマダムを見て頷く。

 「明日にな調べて手続きしますわ!」
 っと、早々にくれるらしい。

 「では最後に御礼だ!」
 そう言うと立ち上がって公爵様とマダムとレギンスにプリムローザが並び頭を下げてきた。

 「「「「ありがとう!街を救ってくれて!」」」」

 と、声を揃えて言うので慌てて頭を上げてもらう。
 気恥ずかしい事この上ないのでやめてほしい。

 なんだかんだあったが取り敢えずこれで終わりっぽいのでソロソロ帰れるかと思っていたが、サンスベルトさんが俺を呼び止めた。
 「すまん!恩に着る!」
 と、涙を流しながら手を両手で握られた。
 サンスベルトさんが言うには、気持ちが落ち着いた公爵様の恩赦で一家滅亡の道は無くなったらしい。
 「それは良かったですね」

 っと、その場は言うと。娘達の話になった。

 この五人は学園へと返された跡、辞めさせられてアリスとルーシーは修道院へ、ブラフと残りの二人は教会員としてほぼ無償で働かされるという。
 少し重いと思ったが、本来ならばアリスとその家族は打ち首、残りの四人は鉱山送りだったのだそうだ。

 生きてるだけマシという話なのだろう。






 もう深夜も過ぎたので細かい話は後日と言う事になり、やっと俺は開放された。

 狼の死骸は一度狩猟ギルドに預け、皮を剥いで鞣してくれるそうだ。
 三十頭も要らないので、白銀と五匹分の狼の毛皮を貰う事にして、残りは売り払った。

 だが、鹿を五匹狩ってないので自分の依頼はまだ終わっていない。
 ことが事だったので依頼期日は一日伸びて二日後で良いという。出来れば明日中には終わらせたいなぁと思いながら小屋へと戻ると、何かが鳩尾にぶつかり膝をついた。

 何事かと思ったら涙を溢しそうにしてるメリヌだった。
 どうやら帰ってこない俺を心配してたのかと思って頭を撫でてやると、顔を上げて一言。

 「おながずいだのおぉぉぉっ‼」

 と、叫ばれた。

 昼飯から何も食べていなかったらしい。
 が、俺も手持ちが……あ、燻製肉があったかと思い出し二、三個出して渡してやるとガツガツと食べ始めた。

 食べ終わると満足したのかそのまま寝てしまった。

 「まだまだ子供だなぁ……」と呟いて俺も疲れていたのか直ぐに寝てしまった。






 タクミが寝入っているのを確認してから、私はソッと寝袋の捲れた部分をタクミに掛けた、おでこにチュッとキスをして抱きしめる。

 「心配してたっつうの……」

 そうボソリと言って寝袋に入り直して眠った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...