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三十二話
しおりを挟む「ところでタクミくん。切った大木は今持ってるの?」
「はい、持ってますよ!出しますか? 加工はしてませんけど……」
「良いの? ならまたテラスで」
「いや流石にテラスで出すと壊れませんか?」
っということで、なら中庭でと言うことになり、俺と、マダムと、セイバスとでテラスに備えてあった階段を使って中庭へと降りていくと、後ろから公爵様も付いてきた。
その後ろから何故か全員ぞろぞろと続く……
「あら? あなた達も見たかったの?」
っと、後ろから続くギャラリーに聞くと公爵様が答える
「いや、真面目な話をしてる横で美味そうな匂いに何やら楽しそうな事をし始めようとしてるのに、混ざらないのは損じゃろう?」
「わ、私共は公爵様が動いたので……」
そう言うと皆が頷く。
結論というか罰に対する答えを待ってるのに、その答えを言うべき人物が移動したので付いて来たって事だろうか……。
「構わんじゃろ?」
っと公爵が言うので頷く以外の選択肢はなかった。
中庭には小さな池と芝生が広がっていて、バラ園とかは無かった。
中世系のお話では庭に花園が広がってるイメージだったが違うらしい。
さっさと終わらせたかったのでマジックバッグに手を入れて取りたいものをイメージする。
そうすると目の前に取りたいものが現れる。
カバンに手を入れて掴むってわけじゃないのだ。
芝しか生えてない場所にドドーンと生えた枯れた大木を見上げながら固まる五人の若者(馬鹿者)と唖然としてる公爵やレギンス。
歓喜乱舞してるマダムにセイバスとプリムローザは感心していた。
「本当にこんなのが入るのね……」
「本当に素晴らしい収納力です」
感心では無く呆れている声色だった。
「これをどうやって加工するの?」
瞳をキラキラさせながら聞いてくるマダムに土塊を土魔法で出したあと、グラインダーをイメージしながら形を作る。
すると丸いボールの様な形のグラインダーが現れる。
見たこともない物に興味を惹かれるのは万国共通だったらしく、食い入るように公爵様も皆も見入っていた。
俺は腐った部分を風魔法で乾燥させながら火の魔法で腐った繊維にマッチの火を灯すイメージで指を鳴らす。
すると全ての繊維に火が灯りほぼ一瞬で消し炭になった。それをこそぎ落としながら腐っても燃えてもいない部分を、ミラーボールみたいな形のグラインダーを風魔法で回すと中から削っていく。
削りカスはそのままアイテムバッグへと吸い込まれていく。
ある程度削ったらその部分を見せて
「こんな感じで中から削って部屋を作ります」
っと、説明してやるとマダムが
「もっと見せてもっともっと!」
と、せがむものでしばらくの間大木を削る作業をする事になった。
二時間も過ぎた辺りで魔力が無くなり始めたので止めたが、一階部分と階段、玄関と窓までは削り取れた。
床部分は腐り落ちていたのであとから補修するつもりだ。
「申し訳ないマダム魔力無くなりそう……」そう言うと、お茶を呑みながら眺めていたマダムは満足したようで拍手をしていた。
皆も思い思いの場所に座り眺めていたのか、さっきまでのギスギスした空気は無くなっていた。
「いや、良い物を見せて貰った感謝する」そう言ったあと公爵様は何かを思い出したかの様に手をポンと叩き。
「そう言えば白銀とその群れを倒した君にまだ御礼も報酬も報奨もあげていなかったね!」
と、この場で何が欲しいか尋ねられた。
俺は今一番欲しい物は決まっていたのでそれが欲しいと言うと
「塊で用意しよう! ではそれが報酬として、次は報奨だが何が良い?」
うーんと考えてから
「では今寝泊まりしてる空き地が欲しいです」
そう言うと公爵様はマダムを見て頷く。
「明日にな調べて手続きしますわ!」
っと、早々にくれるらしい。
「では最後に御礼だ!」
そう言うと立ち上がって公爵様とマダムとレギンスにプリムローザが並び頭を下げてきた。
「「「「ありがとう!街を救ってくれて!」」」」
と、声を揃えて言うので慌てて頭を上げてもらう。
気恥ずかしい事この上ないのでやめてほしい。
なんだかんだあったが取り敢えずこれで終わりっぽいのでソロソロ帰れるかと思っていたが、サンスベルトさんが俺を呼び止めた。
「すまん!恩に着る!」
と、涙を流しながら手を両手で握られた。
サンスベルトさんが言うには、気持ちが落ち着いた公爵様の恩赦で一家滅亡の道は無くなったらしい。
「それは良かったですね」
っと、その場は言うと。娘達の話になった。
この五人は学園へと返された跡、辞めさせられてアリスとルーシーは修道院へ、ブラフと残りの二人は教会員としてほぼ無償で働かされるという。
少し重いと思ったが、本来ならばアリスとその家族は打ち首、残りの四人は鉱山送りだったのだそうだ。
生きてるだけマシという話なのだろう。
もう深夜も過ぎたので細かい話は後日と言う事になり、やっと俺は開放された。
狼の死骸は一度狩猟ギルドに預け、皮を剥いで鞣してくれるそうだ。
三十頭も要らないので、白銀と五匹分の狼の毛皮を貰う事にして、残りは売り払った。
だが、鹿を五匹狩ってないので自分の依頼はまだ終わっていない。
ことが事だったので依頼期日は一日伸びて二日後で良いという。出来れば明日中には終わらせたいなぁと思いながら小屋へと戻ると、何かが鳩尾にぶつかり膝をついた。
何事かと思ったら涙を溢しそうにしてるメリヌだった。
どうやら帰ってこない俺を心配してたのかと思って頭を撫でてやると、顔を上げて一言。
「おながずいだのおぉぉぉっ‼」
と、叫ばれた。
昼飯から何も食べていなかったらしい。
が、俺も手持ちが……あ、燻製肉があったかと思い出し二、三個出して渡してやるとガツガツと食べ始めた。
食べ終わると満足したのかそのまま寝てしまった。
「まだまだ子供だなぁ……」と呟いて俺も疲れていたのか直ぐに寝てしまった。
タクミが寝入っているのを確認してから、私はソッと寝袋の捲れた部分をタクミに掛けた、おでこにチュッとキスをして抱きしめる。
「心配してたっつうの……」
そうボソリと言って寝袋に入り直して眠った。
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