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三十三話
しおりを挟む朝早くに装備を整えてメリヌも連れて、山へ鹿狩りに出掛けようと準備をしていると、公爵家の馬車が二台空き地の中に入ってきて止まる。
なんだなんだと野次馬が集まりガヤガヤしていたので、何事かと俺達は小屋から出て見たら、セイバスが馬車の横で待っていた。
「おはよう御座いますタクミ様」
「おはよーございますセイバスさん」
「おあよ……ます」
メリヌはまだ寝惚けているようだ。あとで水をかけてやろう……
挨拶を済ますとセイバスは懐から羊皮紙を出して、クルクルと広げると中に書かれている文章を読み上げた。
『この土地を報奨とし譲渡する事をここに証明する。
公爵家当主
クリストン・マトリカーサス
商業ギルドマスター
ダイナス・クロスハイド
商業ギルドサブマスター
キャリー・マトリカーサス
狩猟ギルドマスター
レギンス
冒険者ギルドマスター
プリムローザ』
そう言うとまたクルクルと羊皮紙を丸めて俺に渡された。
「では、この土地の権利書は無くさないように大事にしてください」
「はい、有難うございます!」
まさか朝から土地と報酬の水晶の塊を貰えるとは思っていなかった為、驚きと喜びと同時に味わうことになった。
公爵家の紋章の入った馬車に乗ってセイバスは帰っていったが、もう一台は置いていった。
よく見ると紋章は入っていなかったし、馬も居なかった。が、中に入って見ると椅子の上に手紙が置いてあり、魔力で動く馬車のようだ。
これは、商業ギルドの倉庫で眠っていた物らしい。
誰も動かせなかったので、倉庫に保管していた一台だと書かれていた。
何故渡されたのかよく分からなかったが、手紙の最後に商業ギルドマスターの名前が書かれていた。
うまく使ってくれとも書かれていた。
気を使われたのか、投資の意味でもあるのかちょっと怖かったが、座り心地の良いシートに御者が座る場所は無く、フロントガラスみたいな窓の横にハンドルが付いていた、まるでワンボックスみたいで自分が昔乗っていた車を思い出せて嬉しかった。
アクセルやブレーキは無いし、ギアも無いが魔力で動かすなら関係ないのかもしれない。
少し動かして見るとガタガタするので、タイヤとかを召喚するまでは乗れないし、サスペンションも付けたりしたいのでそのままアイテムバッグにしまった。
集まっていた住民にこれからここに家を建てますと言うと拍手喝采された。
また呑もうとか楽しくなるねーとか言われたり背中を叩かれたりして軽く祝われた。
家が完成したら祝賀会をしますと言うと楽しみにしてると口々に言われ、各々帰っていった。
外に出る門を目指して歩いていると鍛冶屋の前で奥さんに呼び止められた。
「待ってたよ! ほい!鉄板は先に渡しとくよ? あと網焼きだっけ? 一応試作で作ってみたんだけど時間あるかい?」
「はい、鹿を狩りに行く予定ですが大丈夫です。 今日はメリヌも居るのですぐ終わる予定ですから」
「そうかい? なら鹿を狩ってからでもいーよ、帰りにうちによっておくれ」
使ってる所も見たいからと言われたので、ではまた後でって事になり鍛冶屋をあとにした。
門を通って山の麓まで来ると狩猟ギルドの人等だろうか? 数人集まっていた。
「お、よう英雄じゃないか! 狩りかい?」
名前も知らないお兄さんに話しかけられる。
「はい、昨日出来なかった鹿を狩りに行くところです。 お兄さん達も狩りですか?」
「いいや、俺達は新人訓練だよ」
そう言うと、周りに居る人等を眺める。
年齢は俺達と変わらないくらいの男女が手に弓や槍を持っていた。
狩猟とはいえ、武器もあまり冒険者や傭兵と変わらないみたいだ。
中には杖を持ってる人もいる。
違いが良くわからないが、何かしら違うのだろうか……。
では、これでと軽く挨拶を交した後、俺達は山の奥へと向かった。
すると何故かその人等も付いてくる。
蘇るフルアーマーを思い出してしまい、振り向いて聞いてみた。
「えっと……付いてくるのは何故ですか?」
「ん? いや、君等がどうやって狩るのか気になってさ」
興味だけだった。
あまり冒険者と狩りをする機会が無いらしい。
冒険者や傭兵は魔素を取り込んだ魔獣が主な相手で、狩人は獣が相手なのだそうだ。
「いや、持ってる武器やなんかは変わらないので多分狩り方も同じではないですか?」
「俺が昔見た時は違ったんだよ」
そう言うと、少しだけ昔話を話してくれた。
お兄さんと思っていたが、童顔なだけで40歳なのだそうだ。
そして、昔は冒険者に憧れてた時もあって、隣の国の魔森の街へと修行がてら向かったんだと。
そこで出会った冒険者と一緒に黒魔森猪を狩りに行ったが返り討ちにされ、狩猟ギルドに転職したんだと。
その時助けてくれたのがプリムローザとレギンスのパーティだったらしい。
なかなか面白い昔話をしてくれた御礼に一緒に山奥へと向かった。
フルアーマーと違うのは基本的な行動が皆出来ていて、歩く音すらも立てない様に歩いていた事だろうか。
爪先で歩く忍者の様な……忍び足みたいな歩き方だった。それでもメリヌの速さに付いて行けてるので脚力も鍛えているようだ。
感心しながら前を歩く俺の足音のほうが大きかったので、自分の足の裏に風の魔法を纏って音も無く歩いてみた。
浮遊魔法だと浮いてしまうので、低い位置で跳ねるように歩いていると
「魔法にそんな使い方があるのか……凄いな冒険者……」
と、まるで冒険者は皆こうやって歩いていると思われてしまったので訂正した。が、更に驚かれてしまっただけだった。
杖を持った新人狩人はオリジナル魔法を使う人は滅多に居ないのだと周りの子達に力説していた。
何となく気恥ずかしい時間が過ぎて山奥へと着くと
「鹿……居る……集団」
と、片言で言うメリヌ
心なしか怒ってる様に聞こえるが、出かける前に目覚まし用の水をぶっかけた事をまだ根に持ってるようだ……。
焼肉をたっぷり食わせて忘れさせなければ!っと、気合を入れる俺。
(もう! 鼻の下なんて伸ばして! タクミって実は女の子に弱いのかしら……後で殴ろ……)
ただの嫉妬だったが、タクミはまったく気付いていなかった。
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