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三十四話
しおりを挟む少し盆地になった場所に鹿が見える。
俺達は風下から近づいて様子を窺う。
「結構な数がいるな……手伝うか?」
そう言って俺の横から狩人のおっさん講師がいうが、手で制してから
「大丈夫です、有難うございます」
そう言って音も無く回る風と水の気○斬
もどきを浮かべる。
(そろそろこれに名前でも付けようかと考えていたら)
「牡鹿もいるよ? タクミ」
そう言って俺の脇腹を小突く。
(地味に痛いのでせめて肩にして欲しい……)
「……あ、ああ見えてるよメリヌ」
痛みを堪えて相槌をうつと
見える範囲の鹿の首に狙いを定めて、浮かべていた気○斬を放った。
それと、同時に棍棒を握りしめたメリヌが飛び出し、俺も後に続く。
先程見えた牡鹿諸共十数頭の鹿の首が飛び、血飛沫が舞う。
その血飛沫を隠れ蓑にしてメリヌが撃ちもらした鹿の頭を棍棒で砕いていく。
そんな中、一頭の鹿を見た。
その鹿の頭には半透明の角が光っていた。
口元には牙が生えてきて口をガバリッと開けて唸りだした。
メリヌの棍棒を半透明な角で防ぐと、角に絡めて吹き飛ばした。
「ぐっ……」
と、一言口から声が漏れたメリヌは幹にぶつかり気を失っていた。
追い打ちを掛けるべく、半透明な角をメリヌに向けたまま走り出した鹿の足元に遠隔で穴を掘り足止めにする。
穴に前足がハマったのかガクリと膝を付いて半透明の角が地面に刺さった。
刺さった角が深かったのか中々外せずに藻掻いてる鹿の首目掛けて前後左右から気○斬をぶち込む。
だが、危険を察したのか一瞬後ろに飛び退ったのか、角が抜けて首を狙った気○斬
は角の根本から数センチズレて切り離した。
脳髄が飛び散りかなりスプラッタになってしまったが、角の攻撃は出来なくなって絶命したと思っていたが、トトト……っと歩く牡鹿が見える。
脳みそが上下半分切れても不気味に動いてる鹿にトドメとばかりに首を飛ばす。
そうするとようやく息が絶えたのか牡鹿は倒れた。
倒れ付す他の鹿よりも二周りはデカイ個体だった。
動かないのを確認してから気を失ったメリヌに駆け寄った。
メリヌは背中に背負ってたバックラーのお陰で命拾いしたのか、辛うじて息をしていた。
背中のバックラーは真っ二つに割れていた。
飛ばされた勢いは相当強かったようだ。
半透明の角をそのままアイテムバッグに入れて、他の鹿も捌くことなく仕舞うと、メリヌを抱き抱えておっさんのところに戻る。
一番安全と思えたからだったが、その予想は当たっていて、気を失い息も細いメリヌの背中に何かの液体を掛けると、残りの液体をメリヌの口へ流し込んだ。
高級な回復ポーションだとあとから聞いた。
取り敢えずこれで大丈夫だが、大事を見て一度医者に見せるべきだという助言を貰う。
山を降りる俺と一緒に狩猟ギルドの面々も山を降りていく。
「講義はよろしいのですか?」
「ああ!やってる場合じゃなくなったからな!」
と、そんな事を言い始めた。
メリヌが倒されたから……? と、一瞬思ったが違うらしかった。
何故ならおっさんも困惑した顔をしていたからだ。
街につくとメリヌを医者に任せて狩猟ギルドへと向かう。
おっさんはメリヌは必ず家に返すと約束すると、残っていた新人達に任せた。
そして俺に一緒にギルドへ来てくれと頼んできた。
雰囲気が尋常ではなかった為に俺も同意して、新人達に俺の家を地図で書いて渡し、メリヌを頼むとお願いして狩猟ギルドへと走る。
斥候でもやっているのかやたら速い。
俺も離されまいと風と浮遊を駆使して並列に並んで走る。
まさに飛ぶようにとはこの事だろう。
俺の走りに口笛を吹いた様な口を見せたが直ぐに戻り
「飛ばすぞ!」
と、言ったあと風の様に走り出した。
俺もなんとか追い付こうと頑張ったが背中を見失わない様に走るので精一杯だった。
本店の狩猟ギルドまで着くと、既におっさんは中へ入っているようだった。
俺も続いて中へと入ると、レギンスが険しい顔でおっさんと話をしていた。
俺を確認するなりレギンスに呼ばれる
「タクミ!半透明の角を持つ鹿を倒したというのは本当か? 証拠あるか?」
そう言ってズンズンと顔が近付いてくる。
「ああ、あるよ!てか、顔近い顔……」
レギンスのデカイ顔を押し返しながらアイテムバッグから脳髄が少し残った半透明の角をロビーに出した。
すると方々から口々に
「魔鹿?」
「おいおい……白銀に続いて今度は魔鹿かよ……どーなってんだよ山はよ……」
「てか、また倒したのが冒険者かよ……」
など話す声が聞こえロビーに響いていた。
「そんなに珍しいのか? 半透明の角って……」
そうおっさんに聞くと
「ああ、この街の山では珍しいな……しかも半透明とはな……不味いな……」
そう言うとレギンスに向かって言った
「ギルマス! 俺はちょっと確認してくる! 許可をくれ!」
レギンスはしかめっ面のまま頷き、周りの職員にも声を掛けた
「一緒に護衛を見繕って数人で行け!」
そう言うと頷いておっさんと職員とで周りの狩人達に声を掛けたあと数人連立ってギルドから出ていった。
俺はよく分からなかったが何かが起きてる事は理解した。
「レギンス?」
「白銀に続いて魔鹿もか……」
おっさんと同じことを言うので、白銀と魔鹿と何か関係してるのか聞くと
「お前気付いてなかったのか? それとも知らないのか……白銀は魔狼だよ。 そして魔鹿の角は白いんだが、なりたては透明なんだよ」
「つまり……。 山の何処かに魔素が溜まっている場所が出来たって事か?」
そう俺が言うと、レギンスはゆっくりと頷いた。
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