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四十二話
しおりを挟む俺達は魔森の街の仕事を片付け、各ギルマスに御礼の品々を貰い国境の砦へと向けて走っている。
メリヌは御礼品の中に自分用の武器があったのでそれをニギニギしながら言う。
「何か貰い過ぎな気がするんだけど」
草原をガラス化させて林も焼き払い宿屋も残らず消し炭にしたのに貰えた物が
水晶の塊✕10個
金粉200キロ
ダイヤモンド✕5個
大金貨✕10枚
モーニングスター✕2(予備)
武器以外全てアイテムバッグに収納済み
「まぁ、結果はどうあれ魔獣を押し戻したんだからいんじゃね?」
「まー今更返せと言われても返さないけど……」
棍棒から遂にモーニングスターへと進化したメリヌの装備は、格段に強くなった。
俺も俺で当分水晶の粉に困る事は無いのでホッとしてる。とはいえ、あまり乱用はしないようにしないと……またすぐ無くなってしまっても困るからだ。
魔力車はやはり速く、今日中に砦へと付けそうだし、さっさと公爵の用事も終わらせて大木ハウスに取り掛かりたいなぁと思っていた。
しばらく走りもう直ぐ国境かなぁって時に肩に何か硬いものが当る。
何かと思い振り返ると、俺の肩にモーニングスターのトゲトゲを当て睨んでるメリヌさんが居た。
「綿飴……買うんだよね?」
「え、いや……時間あったらねって……」
「買・う・ん・だ・よ・ね?」
「は、はい! 当然です! 村寄りますね!」
何かとても怖かったのでハンドルを切ってドリフト気味になりながら村へ続く道を曲がった。
大金貨まで貰った事を分かってるから「今手持ちが無いから今度ね」戦法は使えない。失敗した……もう仕方ないと村にたどり着いて屋台を物色したが、お目当ての店は見つからなかった。
周りの屋台に聞くと、今日は休みらしい。明日になれば開くよと聞いたが、流石に公爵を待たすのは駄目だと言ってメリヌを説得。
駄々を捏ねるかと思っていたがすんなり諦めたのか魔力車に大人しく乗った。
ホッとしたのもつかの間、走り出すとコツコツ音がする。
何だろうと車を止めて周りを見ても何もない。
気のせいかな?と、思ってまた暫く走るとゴツコツと音がする。
タイヤにでも何か挟まってるのかと思ってゆっくり走ると、音は後ろから聞こえてくるようだ。
走りながら後ろを振り向くと、椅子に座りながらトゲトゲの部分で床板を叩いてるメリヌさんが目に入る。
「メ、メリヌさん?」
「……行きに寄っとけば買えた……」
ボソリと呟かれた。
そしてコツコツからゴツゴツに変わっていく。そのうちバキバキと音がしても困るので、魔力車を街道横に寄せて止まる。
「もっと美味しい飴を貢ぎますね! なので武器で穴を開けるのはやめてください!」
涙声を滲ませながら急いで召喚スタンプを貼り付けて日本の飴セットを出す。
ペロペロキャンディー
千歳飴
大玉の飴
梅飴
金平糖等々……
思いつく限りの飴を出し、最後に綿飴を出す。
それをメリヌの腰バッグに入れてやる。
綿飴はそのまま袋から出して渡すと、機嫌が嘘のように消えて笑顔になった。
「フワフワだね♪ ふわっふわだっねぇ♪」
ものすっごくご機嫌だ。
最初からこうしておけば良かったと涙目になりながら床板を貼り直す。
底までいってなかった事に安堵して、楽しそうに綿菓子を頬張るメリヌは、窓枠に座って箱乗りしながら風に揺れる綿菓子を、眺めている。
飴ちゃん……俺が持てば良かったかな……と少し後悔しながら走っていくと、国境の砦が見えてきた。
砦前で徐行すると門番は箱乗りしてるメリヌに敬礼していた。
メリヌもまた真似して敬礼してすれ違う。片手に綿菓子を持って敬礼する姿はまんま子供だった。
通り過ぎると目の前には侯爵家の紋章が描いてある馬車が二台止まっていた。
その周りには騎士が居て、数頭の馬もいる。
(まさか馬もついてくるのか?)
そうなると、馬にあわせて走る事になり時間が掛かるのだが……。
どーしたものかと考えていたら此方に向かって騎士が手を振っていた。
多分あっちに車を寄せろという合図だろう。
徐行しながら馬車の横に付けると
「公爵様が馬車で待っているので、そちらに乗り換えろ」
「あーはいはい」
何故か高圧的に言われるが、気にしても仕方ないのでメリヌに待っててと言って乗り換えた。
馬車の戸をトントンと叩き
「タクミです」
と、名前を告げるとガチャっと扉が開いた。
すると、何時ぞや擦れちがった青年が中に居て、その横に公爵様が座っている。
護衛か?と思ったが同じ紋章が描かれている鎧を着ていた。
「タクミか、してどうだった?魔女様は居たか?」
「いいえ、居ませんでした 誘拐された可能性があります」
「誘拐じゃと? うーんするとやはり赤子に……では急いで王城に上がる!」
そう言うと立ち上がり御者に合図しようとするので止めた。
「お待ちください! 馬車で行くならあちらに乗ってください!」
「あちら?……ああ魔力車か? 座れるのか?」
「はい、勿論です!」
では、向かおうってなり馬車を降りる公爵と
「では私も!」
そう言うと横に座ってた青年も立ち上がるのであなたは座れませんよ?と断る。
「何だと! 父が座れるのだから私も座れるだろ! 私は公爵家の跡継ぎだぞ!」
「あーうん、知ってた。だろうとお思ってました。 ですがね?定員オーバー何です」
「貴様が降りればよかろう!」
「いえ、俺が降りると動きません」
「二人しか乗れないのか⁉」
「いえ、隙間は開けないと窮屈なので、それに僕の護衛も乗ってますので無理です」
「護衛を降ろせ!」
「お断りします」
「ぬぬっ! 貴様!無礼であろうが!」
と、中々納得しない公爵の息子が騒ぎ出してしまった。
その声を聞きつけた公爵様は
「何をしておる! 早く走らせよ!」
と、お怒りの声を上げる。
「ハイハイ今行きますよー」
と、青年はシカトして車へと乗り込むと
青年も乗り込もうとしてきた。
それを見たメリヌはモーニングスターで軽く排除した。
軽く振ったモーニングスターは青年の腹に当たって吹っ飛んで地面にペチャっとくっついた。
その周りを騎士が囲みだし、剣を抜いてコチラを……というか、メリヌを睨んでいる。
「公爵様ぁ……変な子連れて来ないでくださいよぅ」
っと、文句を言うと
「すまん……」
といって謝るが、青年を叱ろうとはしない。
「すまんが乗せてやることは出来ないか?」
というので即答気味に
「無理です狭いです」
だが引き下がらず言う公爵
「でも少し詰めれば乗れるんじゃ……」
「では公爵様が降りてください」
そう言うとフリフリと顔を横に振り
「メリヌ殿を降ろしたら……」
青年と同じ事を言うので
「メリヌは護衛です!絶対おろしません」
と、断固拒否。
どーしても息子も乗せたいようだったので、いい加減鬱陶しくなったので公爵も降ろし、馬車で行くように伝えた。
「では先に行ってますので、お二人は馬車で付いてきてくださいね?」
っと言うと俺は魔力を込めて走り出した。
少し苛ついていたのでスタートダッシュであっという間に公爵様達をゴマ粒の様に引き離すと、そのまま王都へ向けて走っていった。
取り残された二人はあっという間に消えた魔力車を追う様に!と言って発破をかけた。
◇
「父上! 彼らは何なんですか? 全く貴族を敬う感じもなく、ましてや獣人風情が私に対して武器でいなすなど! 打ち首になってもおかしくないですよ!」
余程腹にすえかねたのか剣の柄を握りながら憤る青年は公爵の息子であった。
魔素溜まりが出来て私兵を呼んだら一緒に付いて来たのだ。
夫人も来てしまった者は仕方ないし、魔獣と戦う事を望んだ。
だがそれは、タクミという規格外の魔力を持つ男を保険にしてるからであって、決して息子の力を信じている訳ではなかった。
それも分かっている公爵は、どっちにも強く出ることが出来ずに居た。
息子を無下に扱えば奥さんが怒り、タクミを無下に扱えば奥さんも怒るし、最悪契約はしてくれないかもしれない。
そこでメリヌを外せばと言ったのだが、タクミを怒らせる結果になってしまった。
馬車に揺られながら考える。
この後王都へ付いたら三人の扱いを何とかしなければ、魔素溜まりの災害は広まるだけだ。
考えた結果息子を先に黙らせようと思い、どう言おうか考える公爵様だった。
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