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四十三話
しおりを挟む思わぬ所で時間が出来たと喜んだ俺は、王都へ入る手前の草原で小屋を出し、燻製の準備を始める。
メリヌには竈を作ってもらって昼飯の桃肉を焼いてもらう。
魔森の街で捕まえた桃魔森猪の燻製を作るのに燻製小屋が必要になった。
とにかく大量なのでいつも通りの燻製焼き用では腐らせてしまう可能性があったので、小屋の中を少し削り水魔法で洗ったあと風魔法で乾燥させて、隙間を土魔法で埋めた。
そのまま桃肉を小屋の中いっぱいに吊るすと、意外と香りの良かった大木の削りカスを燃やす。
モクモクと煙突から出ていく煙と土魔法で作った火皿に削りカスを固めて炎症時間を長くした木屑を置く。
これで暫く燻せるだろう。
そして俺は大木の中を削る作業を始めた。
公爵親子と別れて一路王都を目指してたのだが、三十分もすると怒りは収まり早めに着いたとして何をしようか考えた結果、住処を整えようと思った。
この後作るにしても、暇な時をダラダラ過ごすよりも良い考えだと思った。それに、最近小屋ぐらしに嫌気がさしていたメリヌも喜んでくれたし。
最近メリヌが喜ぶ顔を見ると自分も嬉しくなる事が分かった。
なので、頑張ろうと思う。
ガリゴリガリゴリと大木の中を削る音をBGMにしながら、竈を作って行く。
「ようやく狭くて息苦しい小屋から開放されるかなぁ……」
寝袋で寝るのは寂しかったメリヌ
だが同じベッドで寝るのは照れくさかった。それでも、寝袋で寝るくらいならベッドが良かった。 せめて同じ寝袋なら……とも思ったが、やはり照れるのか考えるだけで頬が熱くなった。
宿屋をやっていた頃はベッドの下で安眠出来たのになぁ……と思い出す。
だがすぐに忘れようと頭を振った。
あの頃に戻ると会話も無くなる事に気が付いて、それも嫌だったからだ。
取り敢えず早く大木の部屋で眠ってみたい。どんな形で寝ることになるのかは、あとのお楽しみにしようと思った。
鼻歌交じりで桃肉に棒を刺し、回す様に焼いていく。
傍から見たら夫婦の様に映っただろう。が、本人達はまだお互いの気持ちも自分の気持ちにも気付いていなかった。
タクミ達が王都で大木を削り始めてから三日後……ようやく馬車に乗った公爵親子が辿り着いたが、王都への街道は何故か混んでいた。
紋章を見た商人や貴族たちの馬車が横に避けてくれたから通れた様なもんで、進みはしたが徒歩と変わらない速さで王都の門へと近づいていった。
「何でしょうねこの人集りは……魔素溜まりの話が漏れて逃げて来た人々ですかね?」
息子が窓から覗きながら呟くと、そんな事はありえないと思った公爵は、御者に何か見えないかと問う。
門とは別の場所に行列が出来ていて混乱しているようですと伝えると、公爵は扉を開けて身を乗り出すと、御者の指差す方向を見る。
其処には何時ぞや中庭で見た大木が生えていて、そこを経由してから門へと流れる馬車と人が並んでいた。
段々近づいていくと、正面にメリヌが何かを話しているのがわかる。
何を話してるか分からないが、板の様な物に何かを記しているようだ。
更にその後メリヌと話をした連中は裏へと回って何かを貰っているようだ。
そして裏から出てきた連中は、手に手に何かを持って食べてる様だった。
そして食べながら門へと向かっているようだ。
一番不思議なのがその列に並ぶ人々は誰も怒っていないのだ。
まるで自ら並んでますから的な感じもする。
ある列の途中ではこの街の衛兵まで並んでいた。
流石に驚いたのでその衛兵に声を掛けた。
「おい、そこの者何をしてるのか」
「ん?あっ!こ、これは公爵様! 飯を買う為であります!」
そう畏まって話す衛兵に
「門へと行きたいものも並んでいるのか?」と聞くと、昨日までは別れて並んでいたが、並ばずにそのまま門へと行った者達から文句を言われたそうな
「あんな美味いもん隠して置くとは嫌がらせか貴様!」
っと怒った方々が暴れだしそうだった為に、面倒臭くなった門兵達は同時に並ぶ様に支持を出したのだそうだ。
「あっ! あいつら! あいつらが原因だったのか! 次こそ手打ちにしてやる!」
そう叫んで馬車を飛び出した息子を止められずに後を追う公爵。
「誰か! そやつを止めろ!」
公爵が叫んだ瞬間その場にいた冒険者や傭兵から足を掛けられ盛大にすっ転んだ青年は衛兵たちによって上から潰す様に乗っかられ捕まった。
その時の青年の装備は鎧を外してラフな格好だったため、何も知らない方々からフルボッコに会い、意識を失ったようだ。
そのまま馬車へと運び込まれ、医者に見せないといけなくなった為、タクミ達に声は掛けずに門をくぐった。
息子のロマールを医者に預けたあと、公爵は大木の家で何かを売ってるタクミに先触れを出した。
その数刻後、馬車に乗って公爵はタクミが居るであろう場所に行くと、門への行列は真っ直ぐ元に戻って、タクミ達は準備を整え王都へ入る列に並んでいた。
列に並ぶタクミの横に馬車を付けて馬車に乗るようにと、声を掛ける。
「随分掛かったんですね。あまりに暇だったんで商売してましたよ」
「タクミ屋のケバブは美味しいんだよ! ほら!公爵様も食べてみる!」
臆せずメリヌは自分の分を腰バッグに入れてたようで、公爵に差し出した。
「ケバブ? というのかねこの食べ物は……どれ」
公爵もまた毒味もせずにメリヌから受け取ったまだ湯気が立ってるケバブに齧り付いた。
「んまっ!」
初めて食べる物だったが貴族間ですら出回ってない味に一言発した後無言で食べきった。
「何だこのスパイスは! ピリリと舌に刺激を与えたかと思ったら止まらなくなったわ! 肉は桃肉の燻製だな? いや、しかしこれは美味い! もっとないのか⁉」
大絶賛な上に更におかわりを強請る。
「あるよあるよー! 僕のオヤツだったけど、後でタクミに作ってもらうから全部上げるよ!」
そう言って腰バッグから12個のケバブを出して公爵に渡した。
「おお!すまんなメリヌ殿!」
そう言ったが早いかあっという間に半分が無くなり、御者をしている騎士にも二個ほど渡す。
壁越しに御者の声が聞こえる。
『んまっ!何だこれ⁉んまっ!』
(気に入ってくれて何より……)
「あれ? 息子さんは置いてきたんですか?」
馬車には公爵しか乗っていなかったので聞いてみると
「いや、不慮の事故で今は王都の病院で寝とるよ。 ……まぁ、うちの息子がすまなかったな……アレでも一応学園では強い方なんだが、あっさりメリヌ殿にやれてちょっと正気じゃなくなってるだけなんで、あまり虐めないでくれると助かる……」
眉尻を下げてお願いされたら、こちらも何も言う気は起こらなかった。
「はぁ……まぁ、分かりましたけど。 一応メリヌも女の子なので気を使ってほしいです」
「うむ、そうだな……気を付けさせると約束しよう」
何とか和解(?)したので、このまま王城へと向かった。
一応王には伝えてあるが、謁見してほしいそうだ。
他国の城へ直接飛べるとはいえ、よく知らない奴を連れて行く訳には行かないんだそうだ。
ま、当然だろーなと思ったので了承した。
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