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四十五話
しおりを挟む青白く光る複雑な幾何学模様の上に三人で乗ろうとしたら、もう一人いるのに気が付いた。
「ん?なんじゃラメル、お主は連れてかぬぞ?」
「いえ、行かぬと契約は出来ませぬ」
「ぬ、何故じゃ?」
「行けば分かる」
「ふむ、まぁ良いわ時間もないしの」
納得はしてないが時間もないので連れて行くことに決めた公爵と四人で真ん中に立つ。
一人づつ検査でもするかの様に光りだすと魔法陣、床下から光の玉が4つ現れタクミ達の周囲を旋回し始めた。クルクルと渦を巻くように廻りながら高速に廻ってきたと思った瞬間……瞬きする間に場所が移動していた。
「は? え、いつの間に?」
何かしら飛ぶ時に兆候がある物だと思っていたが違ったようだ……。少し覚悟していたタクミは拍子抜けした。
「ほぅ、こーなるのか……」
まるで初めて使った様な口調で伯爵が言いキョロキョロとその場所を見る。
「……部屋じゃなくなってるのう」
飛ぶ前は王室の何処かだったが、今はどこかの屋上の様だ。
少し高い場所へと続く橋が見え、後ろを振り向くと階段が見えた。
これから何処へ向かえばよいのか公爵を見る。が、公爵も分からないようだ。
「この跡はどーするんじゃろう……」
という言葉がボソリと聞こえた。
(おいおい……)
公爵は事前に知ってると思っていた俺達は途方に暮れる。
「……コッチだ」
すると、少し上に続く橋を指差して先を歩くラメル。
公爵と顔を見合わせると、ラメルの後を付いていった。
橋を超えると二段程の階段があって、そこで立ち止まるとラメルは手で制して
「この先は精霊と契約者しか通れぬ」
そう言うと、ラメルの着ていた鎧は無くなり、耳がピンと伸びた一匹の黒ウサギへと変わる。
「……付いてこい契約者よ」
フワフワと浮きながら俺の前を飛び、肉球をチョイチョイと動かしている。
その導きに従う様に歩き出すと、不安を感じたメリヌが俺の名を呼ぶ
「タクミ……!」
「大丈夫、待ってて!」
そう一言だけ告げて導く黒ウサギの後を追う。
気分的には不思議の国のなんとかである。
中央に辿り着くとコチラを振り返る黒ウサギ。
「準備は良いか? 何か質問は?」
「お茶は出ないのか?」
アリスになった気分だったので聞いてみた。
そう言うとヘニャっと耳が垂れた。
「……緊張感のないやつだな……茶が呑みたいなら後にしろ……」
「他には?」
「君は獣人なのか?」
「違う 精霊だ」
「そのウサギの姿が通常なのか?」
「うん、よく分かったね! 人の姿に化けてるって! いつ見破った?」
「いや、感だよ。確信はない」
「そうなのかい……ほかに質問ある?」
「うーん……無いかな?」
「はぁ……もっとあるだろ?魔力はどーなるとか、生活に支障はあるかとかさぁ?」
「いや? そこはあまり気にしてないよ」
「ああ、そうかい……んじゃ始めるわ」
気を取り直して深呼吸すると何かを呟いた。
全言語理解の力が働いている筈なのに理解する事は叶わなかった。
浮かぶ黒ウサギと俺との間に台座が浮かんでくる。その上に手を置けと言われる。
台座の下部分は音もなく静かに沈むと、ただの石畳へと変わった。
石版だけが宙に浮いてる感じだ。
そこに手を添えたままなので、一見握力だけで掴んで石版を持ってる様にも見える。
体感としては浮遊して上に行こうとしてる石版を掌で押さえ込んでる感じなのだが……。
そうやってググっと力を入れると更に力強く浮いてくるので、更に力を入れて押し返そうとしてると
「待て待てそう急くな 私が手を添えておらん」
そう言うと浮きながらポンっと黒いドレスを着た白兎になった。
「それが正装なのか?」
と、問えば
「いや、気分」
と返ってきた。
向かい合いながら石版を下に押していると、石版に前足を乗せ瞬間、いきなりキスをされた。
しかも口と口である。
チュッ……と、吸われた唇を離したら音がする。
唇を吸われた瞬間、俺の体の中から魔力も吸われた。
黒ドレスの白兎はいつの間にか、ただの黒兎へと戻っていた。
「あっ?」
遠くの方でメリヌのキレた声がしてくる。
背中にゾワゾワとした悪寒が走ると冷や汗が流れ出した。
多分これは殺気だろう……
メリヌがめっちゃこっちを睨んでいる。
正確には黒兎さんを睨んでいるのであるが、俺もとばっちり(?)で殺気を飛ばしてくる。
「怒るな! 娘よ、我は精霊じゃ!ノーカウントじゃよ、主の良い人を取ったりなどせぬよ」
良い人の部分で顔を赤らめ
「な、なにを言っているか分かんないなー」と、誤魔化し始めたメリヌ
なんて下手くそな誤魔化し方だろうと、その場にいる公爵も黒兎も呆れてしまった。
唯一タクミだけが分かっていない様だった。
「では、手を離せ」
ゆっくりと手を離すと石版は宙に浮かんでそのまま徐々に空高く舞い上がり光の粒となって魔森のある方角へ飛んでいった。
「契約者よ、コレで我との契約は成された。 今後其方が死ぬか、若返るか、後継者を連れてくるかする時、再びここに訪れて契約を結び直せ よいな? 忘れるなよ……」
そう言うと精霊は人型に戻って言った
「では行くか」
「え?」
何処へ行くのか分からなかったのと、行きたければ行けば?的に思っていたら
「契約したのだから側に居るだろ普通に」
「え?」
「我のことはコレからラメルと呼ぶ様に」
「え、付いてくるの? 俺に? 城に勤めてるんじゃないの?」
「王族が雇い主ではないしな、ヨネ存在がこの世界から消えたのでな、後継者が来るまで手伝っただけだ」
ここで魔女ヨネが亡くなったと聞かされる事になるとは思わなかったので驚いた。
あんなんでも師匠だった事には変わりなく、気持ちが沈んでいくのが分かる。
「ん?何を落ち込んでいる?」
「そりゃな、数年だったが関わりを持った人が亡くなれば落ち込むだろ……人間なら 精霊のあんたには分からないんだろうけどさ……」
「死んでないぞ?」
「は? 何言ってんだよアンタが言ったんだろ?」
「存在が消えたとは言ったが死んだとは言ってないぞ?」
「はぁ? 何言ってんだよ……」
訳のわからない事を言い出した精霊を見るとキョトンとしている。
精霊には死ぬという概念は無さそうだし、存在が消えても魂は残るからとでも言いたいのだろうか……。
「いいか?精霊さんよ「ラメルだ」ああ、ラメルさんよ、精霊には魂が存在していれば死んだ事に気付かないんだろうけど人は違うんだよ」
悲しみを分かれと言っても分からないかもしれないけど……っと、言いかけると、制された。
「語弊というか言葉足らずだったな。 言い換えよう」
「ヨネはこの世界から居なくなっただけで、生きてるぞ?」
「だから魂って事だろ?」
「違う、時系列では何処に行ったか分からぬが、タクミが通って来た洞窟に似て非なる場所を通ったのだよ」
「三百年前も正一が通ったよ」
「三百年前? 行方不明になったという初代国王のことか?」
「うんうん。 なぜ其処を通れたのかはちょっと私にも分からないけどね」
「つまり魔女は……?」
「気配が消えただけの行方不明だな」
俺は頭がこんがらがってきたので、取り敢えず忘れることにした。
「因みに今までの話は外に居る二人には聞こえておらんから、気にするなよ」
「……ああ」
なんかどっと疲れた俺はフラフラしながらメリヌの肩に顎を乗せて
「帰って寝たい……」
「お?おお……か、帰ろう!」
肩に寄りかかるタクミに驚いたのか、急に距離が縮まったからなのか、慌てるメリヌと無事契約が出来た様でホッとした顔の公爵と、帰るにはどーしたらと悩んでいると、階段を降りたその先のホールに、帰りの魔法陣があるのだとラメルが言う。
こうして俺達は王城へと戻り、王様が用意した部屋で一泊する事になった。
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