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四十七話
しおりを挟む学園に通う前に店を先に開いた。
初日は三人で回したが、とても間に合う気がしなかった。お陰で長蛇の列になり、馬車は渋滞だわ正面からの徒歩客も最低30分待ちになってしまった。
幸いだったのが、クレームは一件もなく衛兵まで来て交通整理をしてくれたことだろうか。
あと、馬糞回収業者からも仕事が一気に捗るとお礼を言われた。
なんの事か分からなかったのだが、ラメルが教えてくれた話によると、都では馬車が多い事から馬糞を拾って農家に売る仕事があるらしく、都中の馬車が集まった事により、回収が楽だったのだろうとの事。
いろんな仕事が有るもんだと感心したが、確かに馬は走りながらでも糞をするよなーと思って理にかなってるんだなぁと納得もした。
それから、開店してくれて有難うと二時間待ってた最後の客に言われ、有り難いが申し訳なくてオマケでクッキーをプレゼントした。
だがこれでは明日からも大変なのは明らかで、人を雇うにも今から面接などはしてられなかった。
「大丈夫!私の知り合いにさっき頼んだから何とかなるよ!」
そう黒ウサギが言う。
妖精の知り合いって果たして人間なのかも怪しかったが、背に腹は変えられない。
あと数時間もすれば開店時間になるし……ここはもう任せるしかないと了承する事にした。
次の日の朝、仕込みをする為に下に降りると白いウサギが二匹立ってた。
赤い目をしたウサギと茶色い目をしたウサギだった。
光の妖精で双子だと紹介された。
名前は無いと言うので赤目のウサギはレッド茶目はブラウンと名前を付けた。
「あ!来てたんだおはよー!」
と、俺の影からラメルが出て来て挨拶を交わす。
最近ではラメルは人にすら化けるのを止めて、黒ウサギのままで生活するようになった。
「黒ウサおはよー、今日から私の事はレッドと呼んでくれ」
「黒ウサおはー、今日から俺の事はブラウンと呼べ」
「なになに? 名前貰ったの? ちょっと!タクミ!何、私に断りもなく契約被せてんのよ!」
なぜか怒られた。
良く分からなかったので聞くと、名前のない精霊に名前を与えると契約成立に成るらしい……。
(知るかよ! そんなもん!)
プリプリ怒ってたラメルも朝飯を食べる頃には落ち着いていた。
これで一気に人(?)が増えた事により初日の様に二時間待ちとか、馬車の渋滞で馬糞の処理に馬糞回収業者が集まってくることも無くなって良かったと思う。多少なり他の地区でも馬車は走っていたので、苦情が来ていたと商業ギルドの職員から気を付けてくださいと言われてしまった。
まぁレッドとブラウンが入ったから、これからは大丈夫だと思う。
次の日の朝。
仕込みに一階へ降りてくると、玄関先に羊を連れた男性が立っていた。
この男性はいつだか見た事があった。
魔森の街で確かパン屋をやりたいと言ってきたメリヌの姉の片割れで名前が……何だっけ……忘れた。
そこへ顔を洗いにメリヌが起きてきた。
井戸は外に有る。
屋上の風呂でも変わらないのだが、そのまま仕込みを手伝う様になったので外の井戸のが楽なんだそうだ。
そして正面玄関を開けて立ってる人と羊を見て言う
「あれ? トリーユ姉? なんで居るの?」
羊人族はやはり人より先に羊に目が行くのか、旦那(人族)の方には目もくれず姉に話し掛けていた。
「あ!メリヌ!おねがい!助けてぇ!」
羊の口から流暢な言葉が出てくるのは今でも不思議だなぁと見ていると旦那さんが俺に気付いて頭を下げるので、俺も釣られて頭を下げる。
「まぁ、玄関先では何なので……」
そう言って中へと入れて、休憩用の椅子に座らせる。
トリーユさんは未だに羊のままだ。
☆羊人族は旅をする時には羊の方が楽なのだと聞く。何故なら食事もまともに取れない時があって、四足歩行の方が歩きやすいのと疲れにくいからなんだそうな。
メリヌの場合は俺が食事の面倒を完全に見ていたので、粗末な非常食みたいな物は出さなかったのと、魔転車に乗っていたので疲れようが無かったからだそうだ。
【閑話休題】
実はねっと話しだしたトリーユさんの話では、俺が草原ごと焼いた事でガラス質の様になった地面に雨がふり、水溜りが出来るようになったお陰で麦畑に居た桃魔森猪は帰る場所を失った。
そして、街の周辺にも来るようになった桃魔森猪はパンを焼くとその匂いに釣られて集まり、客が買ったパンを奪い取り食べてしまうのだそうだ。
客も寄り付けなくなってしまい、困っていたそうだ。
桃魔森猪があふれる要因になってるのが、草原の変わり果てた姿も関係してるらしい。
そして、大討伐を行ったあとの話もしてくれた。
焼けすぎてガラス質になった草原には、ウッドデッキを用いた道が出来てその周りに宿が新しく作られ始めたらしい。
燃やした林はそのうち草原にするらしく、護衛を雇いながら農家の方々が整備し始めたそうな。
もうすぐ閑散期になる二年間でどうにかするみたいだが、狩られなかった桃魔森猪は森に帰る個体と居残る個体が出てきてるそうで、その後もパン屋をやり続ける自信はないそうだ。
そして閉店してしまったのだが、冒険者になるか何処かへ移住するしか道がなかったんだとさ。
トリーユ夫妻の様に街の外側で店を開く所はだいたい桃魔森猪に破壊されるか、居座られたりして、冒険者をしてる人達しか住めなくなったらしい。
数年経てばまた昔の様に暮らせるかもしれないが、今は無理だという。
そこで夫妻は山裾の街へと来たが、そこでも魔獣の被害が残っていて、不安になったのと、商業ギルドの職業斡旋が九割冒険者を探しているらしく、兵士であった旦那だったがやらせる訳には行かなかったのだそうだ。
林側を草原にする事により、今後桃魔森猪は山裾の街に新しく開拓予定の場所に出没するという予想から、大木があった場所に新しく冒険者ギルドの本店を作る事になったらしく、商業ギルドが力を入れて冒険者を募集してるらしい。
なので、開拓した後に住む人達の職業は冒険者が中心になるみたいで、住む場所の確保も出来なかったのだそうだ。
しかし、商業ギルドでトリーユさんを見たサブマスの女性にトリーユさんと同じ種族の人が王都に居ると聞いて、メリヌかと思い訪ねる事にしたそうだ。
そして門兵に俺と店で働いてると聞いたのだと……。
そして……大木の家の横にパン屋が出来ました。
そこでパンズを焼いてもらい、うちで仕入れる事になり、ケバブの他にハンバーガーを売り出すことにした。
他のパンも焼いて売るとの事なので客は少し流れると思っていたのだが……予想が外れて更に客が増えることになった。
ハンバーガーはやり過ぎだったのかもしれないと後悔したがすでに遅く、双子のウサギ達が増えても足りなくなってしまった。
もうすぐ登校する事になりそうで困ってると打ち明けた翌朝。
仕込みのために下へとおりると、茶色いウサギと水色のウサギが楽しそうに休憩用の机でお茶を呑んでいた。
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