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五十四話
しおりを挟む魔力車を改造してから早くも月日が過ぎて、あっという間に俺は二年生になり、夏休みを前にしていた。
歴史の勉強は中々面白かったので卒業分まで覚えてしまい、残る学科は体力の授業だけになっていた。
二年に上がると将来を考えた学び方になる為、騎士科に進む者と冒険者に成りたい者とで別れる事になった。
俺は当然の様に冒険学科を選び、貴族やそれに準じる者達は騎士科を選ぶ。
それぞれ教室は違うのでパルモティア・ディアスともコレで永遠に別れる事になってホッとした。
父と一緒に謝りに来た次の日から心を入れ替えたのか学業に励んでいたが、時折此方に殺気を飛ばしてはメリヌに返り討ちにされていたからね、結構鬱陶しかったんだ。
因みにメリヌは体力的にはこの学科を進まなくても良かったのだが、俺に付いてきてるので同じく冒険学科へと進むらしい。
俺が冒険学科を選ぶと、少しひと悶着があった。
大した問題では無かったんだけど、魔術を学ぶ人から反感を買ったようだった。
魔術を学ぶ人等が進む学科は魔道学科で、主に魔道士を目指し城の兵士に成る。
そして、その学科を教える講師というのが現役の王宮魔道士の副長だった。
城の兵士として日々訓練をしている傍ら、卒業後に部下となる子達を育成するのだそうだ。
そこで目ぼしい生徒を先にスカウトしに学年が上がるテストの翌日に来た時、俺にも声がかかった。
「タクミというのは君の事かね?」
「へ? ええ、まぁ……そうですけど……どちら様ですか?」
「ちょっとあんた!王宮魔道士副長官のサラティウス様をご存じないの⁉ 信じらんない!」
と、突然横から魔道士用の白いローブを被った女生徒に怒られる。
「はぁ……知りませんけど、きょうみ「キーーーッ!」」
興味も無かったと続けようとしたら、被せるように奇声を発しながら女生徒が突っかかってきた。が、メリヌが吹き飛ばす(威圧で)
「まぁまぁ落ち着いて、そこの羊人族の娘さんも……」
その間を割る様に入ってきたサラティウスは、吹き飛んだ女生徒を風の魔法で救うと椅子に座らせた。
「ここでは何だから応接室へ行きませんか? タクミくんと、えーと「メリヌです」そう、メリヌさんも素晴らしい風魔法でしたね、貴女もご一緒にどうぞ」
(メリヌのは完全な威圧です威圧、魔法じゃないんです)とは言えない雰囲気だった。
心の中で突っ込みを入れていると、何も返事をしてないのにスタスタと行ってしまった。
その背中を見送りながら立っていると
風の魔法で作った鳥が飛んできて
「早くおいでなさい」
そう言うと頭を突き始めた。
その鳥をデコピンで弾くと消し飛んだが、また来てもうざいので行くことにした。
廊下を抜けて職員室の隣にある応接室へ入ると、ニコニコ顔で迎えられた。
「私の鳥魔法を弾くなんて凄いですね! 初めてですよ?」
そう言って席を勧められた。
適当に座ると隣にメリヌも座った。
「それでは改めて自己紹介しますね? 私の名はサラティウス・デミール伯爵。王宮魔道士の副長をしています」
そう言うと此方をちらりと見てニコニコと笑う。次は俺の番だと言わんばかりに目配せするので
「タクミです」
「メリヌです」
と、簡潔に名乗る。
俺の肩書は魔導師で、精霊と契約した魔法使いというのは言わなかった。
俺の肩書を知っている者は実は少なかったりする。
王族、公爵当主、侯爵当主、全部隊の将軍と副将軍くらいだろうか、魔道士長でも多分知らないと思う。
(パルモティアは知っていた様だが……あの人なんで知ってたんだろ……?)
なのでこのサラティウスが知るはずもなかった。
学園長もケバブ屋の店長という認識しかないのだから、一講師のこの人が知る由もない。
なので、なぜ呼ばれたのか謎だった。
「呼ばれて驚いたと思うが、君の成績は知っているよ? 入学当時で既に私達の部隊への紹介状を貰っているのもね。 なぜ来なかったのかはよく知らないが……」
そう言って意味有りげにメリヌを見る。
「メリヌくんも確か体力がずば抜けていて、騎士団への紹介状を貰っていた筈だけど……君は魔法を憶えたかった……そうだね?」
「は? 違うけど……(魔法使えないし……)」
メリヌが即答で全否定したにも関わらず全く聞いてないのか、話を進めていくサラティウス。
「戦闘が出来ても魔法が使えないんじゃ歩兵くらいにしか成れないものねぇ……分かるよ~君は勉強家なんだね。好きだよ私は……」と、独り言の様に話しているサラティウスは放っといた、まだまだ続くようだったので……
チラリと俺を見るメリヌにニコリと笑って落ち着かせる。
多分メリヌの言いたい事はとっと帰りたいから殴り飛ばして良いか?って事だろう。
(一応副長官だからねー? 駄目だよー?)
っと、心で言いながら目で訴える。
すると分かったのか、ため息を吐くと寝始めた。
詰まらない座学の授業で編み出した聞いてる風にしながら寝る技だ。
目は開いてないが講師が此方を見ると目だけ開くという高等テクニックだ。
ぜひ俺も憶えたかったが無理だった。
「……それに先程見せた風魔法も素晴らしかったね、発動の速さも去る事ながらあの威力!ぜひうちに来てほしい逸材だよ!」
(何度も言うがメリヌに魔力はない、純粋に気合とか、そんな類の何かなんだって!)
心の中で突っ込みをいれていると、いつの間にか演説は終わったのかメリヌも勧誘したいようだった。
口が乾いたのか水魔法で口に手を運び、指から出して飲むと、今度は俺を見て話し始めた。
「タクミくん。 君の魔法は素晴らしかったと聞いたよ? 生活魔法を工夫して頑張ってるとも聞いてる。 私はね?努力家が好きなんだよ、そう君のようなね! わかる? 君はどんな魔法使いよりも素晴らしい逸材なんだよ? 気付いてる?君の魔法を研究したいと言う研究者も居るんだよ……」
生活魔法を研究したい学者ってどんなだよ……っと聞こえない様にツッコミを入れる。
悦に浸ってるのか全く話が見えて来ない、どうやらこの副長官は演説が好きらしい事は分かった。が、無能に近いのかとも思った。
勧誘するならするでいーんだが、要点のない言葉の羅列を繋げて話してるだけなのだ。
(いたなーこーいう上司……)
と、サラリーマン時代を思い出していた
【※この間も無駄な語りが続く】
「~~そこでだ!」
少しウトウトとし始めた頃ようやく勧誘する言葉に辿り着いたらしい。
「君たち二人を我が王宮魔道士隊として雇おうと思います! 学生のまま部隊に入れる人は少ないんだよ? これはとても名誉な事なんだ!」
両手を広げて胸を張り顔は上を見上げながら、さぁこの胸に飛び込んでおいで!的な雰囲気を出してるとこ悪いが、ようやく話が終わったので
「お断りします メリヌ、帰ろう」
「んにゃ……帰るぅ」
と、寝ながらスクッと立ち上がり付いてくるメリヌ。
(その技は知らんかったわ……流石に……)
手を広げながら何を言われたのか分からず固まってるサラティウスを置いてサッサと応接室から出た。
帰り道でまた風の魔法で出来た鳥が数羽飛んできてたらしいが、俺の所に辿り着く前に霧散した。
俺の帰りが遅いからと迎えに来たラメルが霧散させたようだ。
何故わかったかと言うと目の前の黒兎が手を払ったからだ。
何かの魔力の残滓が舞った気がして、振り向いたら鳥が霧散するところだったから。
まぁ、そんな事よりも夏休みが近いのでバカンスに出る予定なのさ
だからメリヌも早く帰りたかったのさ。
全く、余計な時間を使われたもんだ。
お陰で黒ウサ達に待たせたお詫びにケーキを召喚する羽目になったんだからな。
水晶代だけでも貰たい気分だった。
その後進級して俺達二人が冒険学科へと進み学んでもう直ぐ夏休みって頃に噂がたった。
魔道学科の奴等が俺を狙っているらしいと
講師自ら先頭に立ち生徒を誘導してるとか、全学科参加の戦闘大会をしようと言い出してるとか?
そんな噂を聞いた。
ちなみに俺やメリヌは、現在学んでる事以外はしなくて良いと王族から学園長にも伝えてくれてあるので、戦闘大会にも出る気はない。
だって夏休み中にやるんだぜ?
やってらんねーって
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