Shine Apple

あるちゃいる

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五十五話

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 夏休みに入って10日程過ぎた日に全学科参加の戦闘大会が開かれた。
 全学科と言っても、参加するのは二年生と三年生で一年は免除される。
 年齢に幅はあるとはいえ、学んできた事に開きがあるからだ。
 流石に不公平だし、一年には無い学科もあると言うので、観客になってもらうのだそうな。

 騎士科から成績上位の者五名
  ディアスは上位五名の枠からは外れたようで、悔しがる姿を見た。
 魔道学科から成績上位の者五名
 何時ぞや会った白ローブの女生徒が選ばれたそうだ。
 冒険学科からは俺とメリヌを抜いた上位の者五名あまり話した事が無かったが頑張ってと前日に伝えた。




 「冒険学科のタクミはどこに行ったのかね⁉ まさか欠席かね⁉」
 そう憤るのは魔道士団副隊長で講師もやってるデミール伯爵だ。
 「彼等は王都を去り、隣国の魔森の街へと向かう予定です」
 ビクビクしながらも冒険学科のリーダーが言う。【因みに彼は短槍使いの盾待ちで父は騎士爵なのだそうだ、跡を継いでも平民に戻るので冒険学科へ進み冒険者を目指すのだそうだ】
 
 「移住……するのか?」
 「いえ、観光と依頼だそうです」
 「観光……? 観光だと⁉ 巫山戯てるのか‼ この大会は魔獣が再び溢れた時に備える為の大会だぞ‼ 去年山裾の街で起こったスタンピードを忘れた訳ではあるまい! その時は何処かの誰かが倒したらしいが、次は無いかもしれんのだぞ‼」

 「そんな事を私に言われても……」
 と、困惑する生徒を押し飛ばし
 
 「開会式は始めていろ! 私が直々に迎えに行ってやる!」

 そう学園長に言うと、止める暇も与えずに副団長は自身に体力向上の魔法を唱え走って消えた。

 ザワザワと唸る観客の声が響く中、第一回全学科対抗戦の開会式が始まろうとしていた。







 「タックミー♪ 飴ちゃん出してくれた?」

 「ああ、そこのバッグに入ってるよ」
 「えへへ♪やったね!」

 俺達はケバブ屋も休みにして全員で俺の作った馬車に乗り込み長いバカンスの準備をしていた。
 当初俺とメリヌとラメルだけで行く予定だったが、同じ契約者なら連れて行くべきだと皆に言われ、じゃあって事で皆と行くことになった。
 パン屋のトリーユ夫妻はパン屋を開くそうだ。
 最初はペロンも残ると言ったのだが、旦那さんがたまには遊んで来いと言って送り出してくれた。
 因みに旦那さんの魔力は少ないらしく契約はしたが、魔力を対価にしていない。
 ペロンの対価は、旦那が作るパンだった。
 ペロンいわく「このパンは魔力より美味しいので大丈夫です」だそうだ。

 なので、仮契約をして俺がペロンに魔力を分けている。
 腹は膨れるし満足もするし、体内で魔力も作っているが、精霊が人の目に写り続ける為には契約者から魔力を供給され無ければならず、仮契約になるけどお願いしますと頼まれた。
 なので二つ返事で了承した。
 仮契約とはいえ俺の風の魔法は強くなるので、こちらとしても問題はなかった。
 唯一ラメルだけが最後まで反対していただけだった。

 「タクミの浮気者‼」と、喚くラメルを宥めるのは大変だった……
 
 さて、準備も出来たしそろそろ行くかって時にペロンの感知魔法に何かが引っ掛かり、此方に向かっていると俺に伝えてきた。
 ペロンは風の精霊だけに空気の振動が伝わりやすく、無意識状態で感知魔法を使っているらしい。
 感知魔法を意識して発動すると、隣国の森の奥に居る黒魔森猪まで感知出来るらしい。

 普段は精々此処から学園の門あたりまでで、半径にすると三百メートルくらいなのだそうだ。

 それはさておき……何となぁく嫌な感じがするので、急いで馬車に乗り込み出発しようとしたが、奴は以外にも早く辿り着いてしまい、馬車の前に立ち塞がった。

 「おいおい……何処に行こうというのだね?」
 ゼイゼイと息を切らしながらサラティウス・デミール伯爵が口角をあげて笑いながら睨む。(器用なやつ……)

 「国王陛下の依頼で魔森の街へと向かうところですが何か用ですか?」
 そう聞くと目を見開いて驚いていた。


 嘘は言っていない。
 確かに依頼は受けた。

 「タクミくん、一つ相談なのだがね? 魔森の草原に出来たガラス質の地面を何かに利用出来ないかね? いや、ちょっと嫁の従姉妹が向こうを観光していて金儲け……いやいや、何かの産業に出来ないかと聞いてきてね? 観光がてら行って見てきて欲しいんだよ」
 そう言われたので、メリヌの帰省がてら行く予定だと言うと、丁度よいって事で話がどんどん進み、滞在費は国王のポケットマネーで払い、それを報酬として冒険者ギルドへ指名依頼にして貰った。

 全ては予定通りに事は進み、学園長の許可も貰った。
 ある意味アルバイトみたいなものだったので、許可が必要かもと思ったのだ。
 (※俺の行ってた高校がバイトに厳しい学校だった。夏休みなどの長期連休で、もし家の都合以外のバイトをするなら、校長の許可を生徒が自ら取らなければ成らなかった)
 【閑話休題】

 そんな経験をしていた物だから、つい癖みたいなモノで学園長に菓子折り(新作ハンバーガーセット)持って言いに行ったのだが

 「タクミくんは学園行事に強制的に出る必要は無いよ? そう取り計らう様にと国王陛下から直々に言われてるから態々許可なんて取る必要ないのに……因みにこれは新作かね⁉ ハンバーガーは私の大好物でね?いやぁ嬉しいね!有難く頂くよ♪」
 と、言われた。(ハンバーガーに関しては大絶賛だ。秋頃に店で売ると伝えたら喜んでいた)
 


 「まぁお土産まで貰っちゃったから言う訳じゃないけど、何か困った事があったら気兼ねなく言ってきてね」
 っとにこやかに言ってくれた。

 賄賂……いやいや、お土産は渡しとくもんだなと染み染み思う。









 「な、こ、国王陛下から……だと?」
 「貴様! 嘘だったらそのクビ貰い受けるからそう思え!」

 そんな捨て台詞を残して去ってった。
 「何しに来たのん?あの人」
 そうメリヌが首を傾げていた。

 必要な事を言わないのは相変わらずだなぁと思った。特に待っていろとも言われてないが彼の事だ、言わずとものが当然と思っているのだろうな。

 まぁ、待ってるのもダルいのでとっとと出発しますけどね俺は。
 ハンドルを握り、魔力を注ぎ込みながらとっとと走る。

 メイン通りに出る寸前で今度は数人の生徒に止められた。

 よく見てみれば白いローブを着込んだ例の女生徒とそのクラスメイトが立ち塞がっている。
 手にはそれぞれ短杖や長杖が握られていて、今にも攻撃してきそうだった。

 警戒したレッドとブラウンが光の魔法でシールドを展開しはじめ、マロンとソラが足元を泥沼に変えて生徒達の杖と体半分を地面に埋めた。
 そこへペロンとチェリーが風魔法と火魔法の合わせ技で乾燥させて、身動きを取れなくさせる。

 一瞬で行ったお陰で、誰もパニックに落ちず悠々と危なっかしい杖を回収できた。

 因みに杖を回収したのはメリヌで纏めてバキボキと生徒の目の前で折りたたみ粉々にした。

 生徒達はそんなメリヌを間近で見て青褪めていた。

 齒をカチカチと鳴らしているだけで、何しに来たのか誰も言わないので、そのまま通り過ぎる。

 多分誰かが掘り起こしてくれると思うので、気にせず放置して俺達はようやく街の外へと出れたのだった。
 
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