57 / 88
五十七話
しおりを挟む「ただいまー」
ラメルの声が屋上から聞こえたかと思ったら続いて
”ドズーン……ドドド……”
と、鈍い音が聞こえた。
何を持って帰ってきたのかと見に行けば一台の馬車と、黒魔森猪の山だった。
魔獣は魔素の森で二年程生きると倒して皮を剥いだ跡の肉は食べる事は出来ない。
体中に染み込んだ魔素が毒になる為、燃やすか刻んで土に還すしかないのだが、桃魔森猪が成長し、一年目位ならそこ迄魔素も含んでいない為、頭と内臓と骨以外は食えるのだ。
ラメルがそんな事を知らない事は無いので、おそらく持ち帰った黒魔森猪は若い個体なのだろう。
現に腸を取り出した跡は残っていたし、クビは無かった。
「三十体程でそこの馬車を襲っていたのよ、で乗ってる人たち見たらさ……」
と言いながら馬車の扉を開けるとそこには、軽装な防具を着けた羊が4匹と兵士の服を着た男が乗っていた。
全員意識は無いが怪我もなく無事だと言う。
ホッと一安心したのもつかの間、今度はメリヌが騒ぎ出した。
どうやらお義母さんと双子の姉の方と弟達だったらしく、飛び付いて揺すりだしたので、揺するのを止めさせる。
怪我はないとはいえ、馬鹿力で揺すったら逆に、傷を残しそうだった。
それでも取り乱してるメリヌを見兼ねたラメルは
”トンッ……”
と素早く頭の後ろを叩いてメリヌを気絶させた。
「全くメリヌったら……」
と、怒りながらも顔は心配そうにしていた。
メリヌを俺のベッドへと寝かせると、屋上へと戻り様子を伺う。
取り敢えず屋上にそのまま寝かせて気が付いたら風呂に入らせてから下の部屋へと案内する事になった。
男は多分メリーユさんの旦那だろう。
槍にはヒビが入っていて使い物にはならなかった、盗賊に遭遇した時用に見せ武器みたいな感じで使っていたのかも知れない。
それとメリヌのお義母さんのナタリーさんに、長男のドランと弟のドルン四人とも羊の姿なので、どれが誰か分からないが久し振りに見た……。
ラメルに跡は任せて俺は食事の準備を手伝いに行った。
五人分が増えるのでレッドだけでは足りないかと思ったのだが、杞憂だったようだ。
ブラウンも手伝って既に追加の人数分も作り上げていた。
ただ足りのは机だと言われた。
なので寝室にあったアイテムバッグを棚から取り出し、中から材木を取り出してから、召喚魔法陣を寝室の部屋にスタンプする。
魔法陣の真ん中に材木を置き、足りない分が無い様に金粉も少し足す。
宝石が対価の代わりになるなら、他の物でも代用出来るのではと思っていた。
中々やる機会が無かったので放置していたが、多分材木でも大丈夫なはずだ。
そして長机と長椅子とを念じると、キャンプ場に有りそうな机と長椅子が出てきた。
成功だ。
それを再び指輪のアイテムBOXに仕舞ってから、ダイニングへと戻る。
※部屋で使う物なのでアイテムバッグだと邪魔だった。
なので、何か無いかと探したところ指輪を見付けた。
皆には買い与えて持たせていたが、自分のが無い事に気が付き買った。
そして当然持ち主が俺なので魔力を流し込んで、中の収納力を上げた結果。四畳半くらいの広さで収納出来るように成った。
流石に調理するだけの皆の指輪には何もしていない。
それでも半年分の調味料が全て入るので問題ないはずだ。
【閑話休題】
長椅子を並べて料理を人数分並べ終わる頃にラメルから通信が入った。
「気がついたよ~風呂にいれるから着替えよろしく~」
っと、連絡をもらう。
メリーユの旦那とドランとドルンの男物は直ぐに用意出来た。
が、女物は分からなかった。
何を着せればと悩んでいたらレッドが俺を呼んでいた。
「タクミ様、私のイメージを送りますのでそれを召喚してくださいな」
「おお、助かったよ」
「いえいえ、綿飴の為なら……あ、タクミ様の為ならなんのその♪」
言い換えたが間に合ってねーぞオイ
っと思ったが助かったのは本当なので了承した。
「やったやったー!」
「上手いことやったな、少しくれよレッド」
「よいよ~」
等と双子の白ウサ達は喜んでいた。
基本的に分け合うのが基本なのか、妖精達は物に執着はしないようで、だいたい欲しいといえば分けてくれる生き物らしい。
なので、喧嘩をしているのは見たことが無い。
(ラメルは別)
男女の服を五人分持って上に駆け上がると、三人の男達が車座になって座っていた。
俺が近づくと気付いたようで立ち上がりながらドランとドルンが叫ぶ
「「タクミ様⁉」」
「やぁ、久し振りだね 痛い所はないかい?」
こんな所で出会うとは思っていなかったのか本当に驚いていて言葉を失ってる様だった。
それを見兼ねたのか兵士が立ち上がり頭を下げて言う。
「この度は助けて頂いて感謝する! 私はメリーユの夫でサジンと申します」
「どうも、タクミです
皆さん怪我も無いようで安心しました。
旅の疲れなどもあるでしょう
風呂で汗を流してからこれに着替えて、下へ降りてきてください」
そう言って服を人数分渡す。
「あ、有難うございます!助かります」
「ドラン、ドルン後でな!」
何故か俯いたままでいる二人になるべく明るい声で話掛けて手を振った。
二人は苦い顔をしながらも頷いてくれたので良しとしよう。
取り敢えず先にメリヌを起こす為に部屋へと向かった。
タクミが居なくなったのを確認するとサジンは、二人に向きなおりと眉間に皺を作りながら
「おい、お前達……昔何かあったとしても、命を助けてくれた相手に挨拶もしないとはどういう了見だ?」
そう言って怒るサジンに慌てて訂正する
「あ、いや……お義兄さん違うんだ……俺達は怒っている訳じゃない! 寧ろ申し訳無さ過ぎて……
……俺達は昔、タクミ様を裏切ったんだよ……だから今更どの面下げて顔を合わせれば良いか分からなくて……」
そう言うとドランの目から涙が零れ落ちた。
その横でドルンも泣いていた。
「そうか……まぁ、それは俺もメリーユから聞いている。
今更だから何とも言えないが……お互い悪かったって事だろ? それに過去に何があったとしても、助けられた事に変わりはないんだから、礼だけは言わないとだめだ」
そう言って二人を叱った。
「「はい」」
二人は素直に頷いた
涙を拭いていると風呂から上がった二人がタオルを巻いて現れた。
「あなた達もお風呂に入りなさい」
と、ナタリーさんが三人に言うと泣いてる二人に気が付いた。
「どうかしたの?アナタ」
少し怖い顔をしていた旦那に気が付いたトリーユは心配そうにしながら聞いてきた。
「いや、詳しい事は後でな……ドラン、ドルン行くぞ?」
「「は、はい、お義兄さん」」
浮かない顔を隠すように三人は着替えを持って風呂場へと向かった。
そんな三人の背中を見送りながら二人は心配そうに顔を見合わせた。
1
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる