Shine Apple

あるちゃいる

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五十七話

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 「ただいまー」

 ラメルの声が屋上から聞こえたかと思ったら続いて

 ”ドズーン……ドドド……”

 と、鈍い音が聞こえた。

 何を持って帰ってきたのかと見に行けば一台の馬車と、黒魔森猪の山だった。

 魔獣は魔素の森で二年程生きると倒して皮を剥いだ跡の肉は食べる事は出来ない。
 体中に染み込んだ魔素が毒になる為、燃やすか刻んで土に還すしかないのだが、桃魔森猪が成長し、一年目位ならそこ迄魔素も含んでいない為、頭と内臓と骨以外は食えるのだ。
 ラメルがそんな事を知らない事は無いので、おそらく持ち帰った黒魔森猪は若い個体なのだろう。
 現にはらわたを取り出した跡は残っていたし、クビは無かった。

 「三十体程でそこの馬車を襲っていたのよ、で乗ってる人たち見たらさ……」

 と言いながら馬車の扉を開けるとそこには、軽装な防具を着けた羊が4匹と兵士の服を着た男が乗っていた。
 全員意識は無いが怪我もなく無事だと言う。
 ホッと一安心したのもつかの間、今度はメリヌが騒ぎ出した。

 どうやらお義母さんと双子の姉の方と弟達だったらしく、飛び付いて揺すりだしたので、揺するのを止めさせる。

 怪我はないとはいえ、馬鹿力で揺すったら逆に、傷を残しそうだった。
 それでも取り乱してるメリヌを見兼ねたラメルは
 ”トンッ……”
 と素早く頭の後ろを叩いてメリヌを気絶させた。

 「全くメリヌったら……」

 と、怒りながらも顔は心配そうにしていた。

 メリヌを俺のベッドへと寝かせると、屋上へと戻り様子を伺う。

 取り敢えず屋上にそのまま寝かせて気が付いたら風呂に入らせてから下の部屋へと案内する事になった。

 男は多分メリーユさんの旦那だろう。
 槍にはヒビが入っていて使い物にはならなかった、盗賊に遭遇した時用に見せ武器みたいな感じで使っていたのかも知れない。

 それとメリヌのお義母さんのナタリーさんに、長男のドランと弟のドルン四人とも羊の姿なので、どれが誰か分からないが久し振りに見た……。

 ラメルに跡は任せて俺は食事の準備を手伝いに行った。

 五人分が増えるのでレッドだけでは足りないかと思ったのだが、杞憂だったようだ。
 ブラウンも手伝って既に追加の人数分も作り上げていた。

 ただ足りのは机だと言われた。
 なので寝室にあったアイテムバッグを棚から取り出し、中から材木を取り出してから、召喚魔法陣を寝室の部屋にスタンプする。

 魔法陣の真ん中に材木を置き、足りない分が無い様に金粉も少し足す。

 宝石が対価の代わりになるなら、他の物でも代用出来るのではと思っていた。
 中々やる機会が無かったので放置していたが、多分材木でも大丈夫なはずだ。

 そして長机と長椅子とを念じると、キャンプ場に有りそうな机と長椅子が出てきた。
 成功だ。
 それを再び指輪のアイテムBOXに仕舞ってから、ダイニングへと戻る。



 ※部屋で使う物なのでアイテムバッグだと邪魔だった。
 なので、何か無いかと探したところ指輪を見付けた。
 皆には買い与えて持たせていたが、自分のが無い事に気が付き買った。

 そして当然持ち主が俺なので魔力を流し込んで、中の収納力を上げた結果。四畳半くらいの広さで収納出来るように成った。

 流石に調理するだけの皆の指輪には何もしていない。
 それでも半年分の調味料が全て入るので問題ないはずだ。

 【閑話休題】

 長椅子を並べて料理を人数分並べ終わる頃にラメルから通信が入った。

 「気がついたよ~風呂にいれるから着替えよろしく~」

 っと、連絡をもらう。

 メリーユの旦那とドランとドルンの男物は直ぐに用意出来た。
 が、女物は分からなかった。
 何を着せればと悩んでいたらレッドが俺を呼んでいた。
 「タクミ様、私のイメージを送りますのでそれを召喚してくださいな」
 「おお、助かったよ」
 「いえいえ、綿飴の為なら……あ、タクミ様の為ならなんのその♪」

 言い換えたが間に合ってねーぞオイ
っと思ったが助かったのは本当なので了承した。

 「やったやったー!」
 「上手いことやったな、少しくれよレッド」
 「よいよ~」

 等と双子の白ウサ達は喜んでいた。

 基本的に分け合うのが基本なのか、妖精達は物に執着はしないようで、だいたい欲しいといえば分けてくれる生き物らしい。

 なので、喧嘩をしているのは見たことが無い。
 (ラメルは別)

 男女の服を五人分持って上に駆け上がると、三人の男達が車座になって座っていた。
 俺が近づくと気付いたようで立ち上がりながらドランとドルンが叫ぶ
 「「タクミ様⁉」」
 「やぁ、久し振りだね 痛い所はないかい?」
 こんな所で出会うとは思っていなかったのか本当に驚いていて言葉を失ってる様だった。
 それを見兼ねたのか兵士が立ち上がり頭を下げて言う。
 「この度は助けて頂いて感謝する! 私はメリーユの夫でサジンと申します」
 「どうも、タクミです
 皆さん怪我も無いようで安心しました。
 旅の疲れなどもあるでしょう
 風呂で汗を流してからこれに着替えて、下へ降りてきてください」

 そう言って服を人数分渡す。
 「あ、有難うございます!助かります」

 「ドラン、ドルン後でな!」
 何故か俯いたままでいる二人になるべく明るい声で話掛けて手を振った。
 二人は苦い顔をしながらも頷いてくれたので良しとしよう。

 取り敢えず先にメリヌを起こす為に部屋へと向かった。






 タクミが居なくなったのを確認するとサジンは、二人に向きなおりと眉間に皺を作りながら

 「おい、お前達……昔何かあったとしても、命を助けてくれた相手に挨拶もしないとはどういう了見だ?」
 そう言って怒るサジンに慌てて訂正する
 「あ、いや……お義兄さん違うんだ……俺達は怒っている訳じゃない! 寧ろ申し訳無さ過ぎて……
 ……俺達は昔、タクミ様を裏切ったんだよ……だから今更どの面下げて顔を合わせれば良いか分からなくて……」

 そう言うとドランの目から涙が零れ落ちた。
 その横でドルンも泣いていた。
 「そうか……まぁ、それは俺もメリーユから聞いている。
 今更だから何とも言えないが……お互い悪かったって事だろ? それに過去に何があったとしても、助けられた事に変わりはないんだから、礼だけは言わないとだめだ」

 そう言って二人を叱った。

 「「はい」」
 二人は素直に頷いた

 涙を拭いていると風呂から上がった二人がタオルを巻いて現れた。

 「あなた達もお風呂に入りなさい」
 と、ナタリーさんが三人に言うと泣いてる二人に気が付いた。
 「どうかしたの?アナタ」
 少し怖い顔をしていた旦那に気が付いたトリーユは心配そうにしながら聞いてきた。
 
 「いや、詳しい事は後でな……ドラン、ドルン行くぞ?」
 「「は、はい、お義兄さん」」
 浮かない顔を隠すように三人は着替えを持って風呂場へと向かった。

 そんな三人の背中を見送りながら二人は心配そうに顔を見合わせた。
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