59 / 88
五十九話
しおりを挟む「~~であるからして、此処に第一回各学科対抗戦闘大会を開きます!」
歓声と拍手で開会式は無事終わった。
ペコリと頭を下げてからテクテクと台座から降りてくるのはこの学園の学園長
鼠人族のガルプス・リッパ
鼠人族の族長にして、魔法術士。
(魔法術士とは主に、転移魔法や空間魔法などの所謂サポートを主としてる。
軍事物資の運搬から傷ついた兵士を戦闘地域から離脱させたり、城から戦闘地域へと送ったりする術士だ。
戦争も無くなり、魔獣の氾濫もない平和な世界ではあまり役に立たない仕事だった、元々温厚な性格の為に冒険者等にもならず、兵役を退いた後、無気力になって居たところ、後進を育てる為に学園長として働かないかと国王陛下に言われ任された。
「はぁぁ……こんな大会余り意味が無いけど、生徒のモチベーションが上がる様ならと許可は出したけど……まさか私怨だったとはなぁ……」
開会式が終わり、各部門での予選が始まると、学園長の出番は特に無い。
なので、園長室へ帰ってきてからお茶を啜っていると、タクミを影から見守る者達からの報告書が机の上にあったので、読んでいた。
【既にタクミには、契約した闇精霊が付いているので、特に護衛などは必要としていない。
それに、最近では光、水、土、火、風の五大精霊とも契約したと報告に上がっていた】
なので、見守り隊の仕事は、本当に見守るだけの者達なのだ。
「サラティウス・デミール伯爵の邸宅から確かな証拠を抑えました……」
最後に書かれていた文を読み、二枚目の計画書を読む。
それを観て学長はため息を吐くと
「はぁぁ……優秀な講師何ですけどねぇ……」
それだけ言うと頭を抱えて唸る。
(陛下に進言してみるかなぁ……タクミ君の秘密を講師だけでも広めていいか……じゃないとどんどん優秀な講師を失う事になるし……全く貴族のプライドなんてあるだけ無駄だなぁ……それに精霊にも問題が……)
学長は深い溜め息を吐くとお茶を啜る。
”ワーワー”と窓の外では歓声が聞こえる。
(楽しそうだなぁ……混ざりたいなぁ)
実はこの学園長お祭り騒ぎは大好物だった。
何となくウキウキしていると
”スッ”と、影の者が再び現れて学園長に伝える。
「サラティウス・デミールが王城にて御乱心」
聞きたくない言葉を聞いた学園長の眉毛がみるみるうちに下がり始め、深い溜め息を吐いた後
「……数人付いて来い」
と、今までとトーンを変えて低い声で呟くと
部屋に待機していた部下数名と共に”……ヒュッ”と、消えてその場から居なくなった。
~王城廊下付近~
「あれ? デミール伯爵ではないか、其方何故こんな所(王城)におる? 今日は学園の何とかって大会に出席するんじゃなかったのか?」
サラティウスは馬車にも乗らずひたすら走って王城まで来ていた。
疲れていた事もあり、息を整えるのに必死で、偶々出会った副将軍(陸)と鉢合わせになったのだが、まともに挨拶もしないで通り過ぎる。
「貴様!副将軍に対して失礼であろう!」
そんなサラティウスを見て後ろに居た
パルモティア・ディアスの父
パルモティア・バディアスはサラティウスの肩を掴んだ。
(※パルモティアは副将軍直轄の部隊に所属していた騎士であった。
バディアスがタクミのことを知っていたのは、スタンピードの時公爵の息子が初陣するというので、副将軍直々の命で護衛任務をしていたから)
「邪魔を……するなっ!」
そう叫ぶサラティウスはバディアスを魔法で吹き飛ばした。
壁に当たって意識を飛ばしたバディアスに駆け寄る副将軍達には見向きもしないで王のいる執務室を目指して進む。
「何だアイツは⁉ 我々が見えていないのか⁉」
バディアスの同僚が叫ぶと、他の者はヒーラーを呼ぶ為に叫ぶ。
従者や侍女達は混乱の恐怖で叫び声を上げて逃げ惑い、王城は一時パニック状態に陥った。
「「静まれーーい!」」
その声で一括された王城内は”シーン”と静まり返り、コツコツと歩く男を皆が振り返る。
そこに居たのは数人の部下を連れた学園長だった。
学園長は後ろに控えていた部下に目で合図を出す、その部下は頷くと一瞬でパルモティアの側に立ち
「ヒール」と、唱えた。
部下の手から暖かい癒やしの光が溢れ出し、ゆっくりとパルモティアの傷を癒やし始めた。
「ガルプス・リッパ将軍‼」
副将軍は安堵したかのように叫ぶと駆け寄った。
周りの兵士達は敬礼する。
「元を付けろ馬鹿者め!」
「も、申しわけありませぬ元将軍閣下」と、敬礼する。
ガルプスはもう一人の部下にも指示を出すと、その部下も素早く消えて
「……貴様⁉何者だ! ガハッ⁉」
っと、遠くの方で叫び声が聴こえた瞬間呻き声に変わり、誰かが床に倒れる音がした。
程なくしてグッタリとして意識を失ったサラティウスを抱えた者が帰ってきた。
「サラティウス……なぜ彼はこんな事を……」
副将軍は魔道隊福長官を見て言葉を失う。
彼は勤勉で真面目な性格なのは有名な話だった、ここ迄後先なく行動する者では無かったので驚いていた。
サラティウスを拘束する様に伝えるとガルプスは副将軍を見て言う
「マトリカーサス将軍以下各部隊の副長官までの全員を呼び出してくれ」
「え……」
「※緊急事案である!」
「は、はっ!直ぐに!」
困惑する副将軍は鬼気迫るガルプスの言葉に最敬礼したあと部下に支持を出して各部隊に連絡するように伝えると、自分も将軍を呼びに走る。
そしてガルプスは国王陛下の謁見を申請しに執事室(秘書課みたいな場所)へと向かった。
【※緊急事案とは※
退役した元将軍や元副将軍に与えられた権限の一つで、退役後でも緊急的な場合に限り、議長となって会議を開く事が出来る事である】
~王国軍事部隊階層図~
将軍ー副将軍(陸軍)
副将軍(空軍)
副将軍(海軍)
副将軍(魔道(攻))
サポート部隊(魔道(守))
遊撃隊
副将軍(陸)ー騎士長官、副長官
副将軍(空)ー飛竜長官、副長官
副将軍(海)ー海竜長官、副長官
副将軍(魔)ー魔道士隊長官、副長官
王族直轄の為、近衛騎士は軍事とは別系統
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる