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六十話
しおりを挟む朝になりダイニングに行くと、レッドがチョイチョイと手招きしていた。
何だろうと近付くと
「今日の朝食は屋上の大木の家で食べる事になりました」と言い、続けて後ろからブラウンが
「ナタリーさん達が作ってくれていますのでお楽しみに」
と、言ってレッドと一緒に屋上へと上がっていった。
俺は久し振りに母親の手作りも食べたがるだろうと思って急いでメリヌを起こしに行った。
メリヌと一緒に大木の家へと行くと、その周りに机と椅子が並べられ、所狭しと料理が並べられていた。
「おはよーございますタクミさん、好きな所に座ってくださいね」
そう言いながら焼きうどんみたいな物を皿に乗せてナタリーさんがやってきた。
野菜炒めや旬の野菜のサラダに、丸パンが沢山入った篭をそれぞれ持ってナタリー家もやって来た。
「「「「おはよーございます!」」」」
そう言ってテーブルに置いて席に付く。
皆が席に座るとメリーユさんが立ち上がり、
「ダッジの宿屋で出していた物ですが、タクミ様から教わった料理をアレンジしたものばかりなんです!」という。
調味料がないものばかりだったのに他で代用して作ったのだと。
一番のおすすめはうどんみたいな麺で作ったナポリタンだそうだ。
ケチャップが無いこの世界で似た味を探して作ったのだという。
その努力は凄いの一言だ、現代人でもケチャップの作り方を知っているのは早々居ないはずだ。
トマトを利用しているのは分かっても、ただ煮つめれば良いというものではない、それを極限まで似せてきたのは本当にすごいと思った。
「いただきます!」と言ってひとくち食べた。
まんまケチャップだった。
塩加減も丁度よい。
ダッジの店でも一番人気でよく売れたそうだ。
「これは美味いですね!」
「ありがとう御座います!タクミ様にそう言って頂けて本当に嬉しいです!」
と、また泣きだしてしまったメリーユさん。
その背中をポンポンと叩きながらサジンさんも喜んでいた。
相当努力しなきゃここ迄は出来ないだろうな……本当に……ついついウルッとしてしまう。
丸パンも俺が焼いていた時よりも美味しく焼けていた。
何も置いて行かずに去った事はかえって良かったのかもしれない……。
その努力は確実にメリーユにもナタリーさんにも付いているのだから。
その日の朝飯はとても楽しいものとなった。
みんなでワイワイ楽しく食べたあと、食後のお茶をブラウンが出してくれてそれを飲んでる時にサジンさんに聞きたいことがあったので聞いてみた。
「そーいえば、なぜ馬車で街を出てたんですか?」
そう言うと皆黙ってしまった。
(あれ……変なこと聞いたかな?)
と、少し焦っていると
「実は……」と言ってお茶を起きながら話してくれた。
何でも閑散期になったので草原の宿屋の売上が下がってしまいナタリーさんが解雇され、ミリーユさんの家に住み始めた頃、桃魔森猪が成長して黒魔森猪になった事で凶暴さが増して、駆け出しではまともに狩りもできなくなってしまったのだそうだ。
それに付け加えて街での仕事も一気に減ってしまい、冒険者ギルドの掲示板にも稼ぎの悪い依頼しかクリア出来ずにこのままでは生活もままならない事になると思ったので、冒険者は一時辞めて飯屋でも開こうと王都を目指して一家総出で馬車も買って出たのだそうな。
「そうだったんだ……」
「飯屋なら私やメリーユも働けますし、畑仕事なら息子達が働けますので、馬車を売って資金を作ってお店を出そうとしてました」
と、ナタリーさんはいう。
「そこを黒魔森猪に襲われて馬車を壊されてしまって……」
そうサジンさんが続けた。
このままでは王都に行っても一文無しになってしまうらしく、一気に暗い雰囲気になっていった。
そんな重い空気を破ったのはラメルの一言だった。
「それならうちのケバブ屋で働けばいーじゃない!」
「あ、その手があったか!」
そうだよ、最近は精霊達に任せきりで忘れかける所だったが、俺は元々料理屋だったじゃないか。と、思い出した。
「「「ケバブ屋?」」」
ケバブを知らないナタリーさんたちに昼飯で出すよとレッドとブラウンが手を上げた。
「そ、そんな!またお世話になってしまうなんてもう私達に返せるものなんて……」と、泣き出しそうになったメリーユの肩に手を置いて
「トリーユも居るよ! 隣に! また家族一緒に暮らせるね!」
と、本当に嬉しそうにメリヌが言う。
「そーですよ! またみんなで暮らしましょうよ!」
と、俺も便乗して言うとなんとか納得してくれたようだ。
序に作り方も教えておいてとレッド達に頼み、魔森の街へ行くのを取り敢えず止めて、引き返す様にマロンに伝えに行きながら
どうせなら大木の家を王都に置いて暫く料理を覚えて貰って夏休み明けにでもお店を任せようと考えた。
俺が階段を降りようとするその背中に頭を下げながら
「本当に……ありがとう御座います」
と、ナタリーさんたちの声が聞こえた。
国境を超える手続きをしてる間にレッドの作ったケバブとハンバーガーに夏休み明けから売り出す予定のテーズバーガーも出してもらい食べてもらった。
それはもう大絶賛で作った分が一瞬で消える珍事も起きた。
是非やらせて下さいという言葉も聞けたので、夏休みの間は店の売り方から回し方も教え、経営の方もやって貰える様に細かく教える事になった。
ただそうなると、俺が依頼を破棄しなくては成らずどーするかと悩んでいると
「「私達が残って教えます」」
っと、白うさ達が同時に手を上げた。
王都に着くと、早速大木の家を元の場所に設置して準備を始めた。
ある程度こちらの世界で材料は確保出来るので、簡易召喚でナタリーさんも材料は用意できる。が、チーズは違った。
なので、練習用に沢山準備しないと足りない事になる。
スタンプを貼り付け魔法陣で出したとしても足りなくなる不安から、この魔法陣を固定して白うさでも出せる様にするにはどーしたら良いかを考えた。
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