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六十六話
しおりを挟む取り敢えず疑問点がいくつかあったので聞くことにした。
まず一つは
「将軍を説得するのは良しとして、何故ソフィーリアが必要なんですか? 将軍から権限を借りるなどしてサクッと水晶を剝してしまえば良いじゃないですか?」
そう言うと、物凄く困った顔をしたのち説明してくれた。
「魔の森というのは魔素が多い森というのはご存知かと思います、魔素が多いと言う事はつまり、魔素を出してる原因があると言われており、それは神魔対戦時代にまで遡ると言われております……」
この跡の話は神代の時代の話なのでもはや眉唾的なよくある伝説の物語だ
神と敵対していた邪神と言われる竜との戦いの話だ。
神と戦い破れた竜は息絶える瞬間その地を呪った事により、竜の遺体から魔素が出てこの地は侵されたという話だ。
そして、森の端っこである草原までが呪われており、その地を剥がすには【聖】の加護がないと剥がせない。
つまり、ソフィーリアは【聖】の加護を授かっている聖女という事らしい
将軍が溺愛している理由も、この世界でただ一人の【聖女】が自分の娘だったからなのだそうだ。
無理矢理剥がすと呪いが更に広がる危険性があるという。
『眉唾と思ってるところ悪いんだけど……これ本当の話なのよタクミ。その証拠に神の一撃の跡ならアナタも見たはずよ?』
補足するかのようにラミルが話す
俺が最初にこの地に来て、降り立った場所こそが竜が倒された場所だった。
神が少しでも魔素の排出を止めるために撃ち込んだ力で地面が結晶化され窪地が出来た。
そこへ水が流れ込み泉となり、陽の光が結晶化した水晶によって跳ね返り浄化され聖水の泉に
その聖水のおかげで竜の肉片があった場所が浄化され肉片を養分に木が生えた。
その実が【shine Apple】となったという。
だからあの実を食べると魔力が上がるのだという。
『浄化された竜の栄養素が詰まった実なのよ』
(マジか……)
邪神が倒された頃から生きてるラメルが言うのだから間違いではないのだろう。
『因みに邪神は私の父よ?』
『そして、闇精霊を押さえ込む為に五大精霊が生まれたのですよ』
と、いつの間にか居たペロンが語る
思いがけず精霊の生い立ちを知ることになった。
因みにこの精霊達の産まれた話は世界の人々は知らないのだとか……
魔の森の出来た理由は伝わっているけど、細かい話は端折られているんだそうだ。
『そうしないと私の立場が更に最悪のことになって封印されちゃうから正一が隠したのよ、だって私がいないと邪神の呪いを一か所に封じる事が出来ないからね』
そう誇らしげに語るラメルだった
◇
「はぁ、まぁ理由は分かりました……しかしそうなると将軍を説得するのはかなり骨が折れそうですね……」
「はい、ですが二年後黒魔森猪が子を産みに畑まで来るとなると、街ごともっと国境側へ避難しないといけなくなります。そうなると予算が幾らになるか分かったものではありません」
それこそ天文学的な数字が消えることだろう。
半ば強制的に依頼を受けることになり、残りの疑問点の報酬などは剥した水晶の半分と砂金の山を貰う事になった。
俺達は取り敢えず色々準備すると言ってギルドを跡にした。
魔力車へと戻り作戦会議をするために二階の草原へと集まった。
ガーディアンの王都は魔森があった事で、かなり遠くに作られている。
魔力車に乗って飛ばしても七日は掛かるとペロンは言う。
鳥の様に飛べればその距離は直線になるのでもう少し早いかも知れないと呟いたペロンを見つめた。
「ナイスアイデア!」
『え? じゃあ綿飴をください』
何かよく分からないが褒められたと分かったペロンは綿飴が欲しいと強請るので一袋進呈した。
それを見ていた他の者達も俄然やる気になったのか思考の海へと潜って行って暫く静まり返る
俺の計画はソフィーリア達が乗った馬車を追い越して先にガーディアンの王都へ行き、どうにか将軍を説得した後、途中でソフィーリアを拾ってこの地へ戻ると言うものだ。
それが一番早かった。
だが、魔力車を改造しなければならない。
想像して創造するのだが、概要をラメル達精霊に伝えると俺の魔力だけじゃ足りないと言われた。
ただでさえ魔力車の改造は集中力が必要なうえに、一発で作らなければ成功しないのだという。
そこで急遽白うさ達も呼び出された。
「ドローンみたいにプロペラ沢山付ければ飛ぶ事は簡単なはずだ」
『プロペラ?でございますか? それはどんなモノなんです?』
レッドが首を傾げながら聞いてくる
なので、ケバブのタネを作るのに混ぜ込みが大変だった時に召喚したフードプロセッサーみたいな奴だよと説明すると
『殺戮兵器を作るつもりなの?』
と、ラメルが喜んだ
が、周りの皆が猛反対した為に頓挫した。
飛行船にするか……というとやはり皆頭に『?』マークが浮かぶらしく、説明すると。
『温かい空気を送るならば良い考えがありますよ!』
と、チェリーが手を上げた
チェリーは火の精霊だ
産まれた場所は帝国領の火山地帯だという。
この地の反対側に位置する帝国領だが、精霊ならひとっ飛びで行って帰って来れるという。
そこに簡易召喚魔法の陣を固定魔法で設置すれば、常に熱風を得ることが出来るらしい。
それを使えば容易に浮かせることが出来ると言うので、簡易召喚魔法の陣を2つ作ることになった。
出口と入り口を作り、熱風を取り込むためだけなので、大して魔力を使う事なく2つの簡易召喚魔法陣が完成した。
次に推進力はどうするかと言うと、ペロンが手を上げて自分の産まれた場所なら常に風が吹いてますと言うので、そこにも固定魔法の簡易魔法陣を置くことになった。
そして綿飴の袋をペロンに渡す。
次に形をどうするかと考える
気球のようにするか、飛行船の様にするかで悩んでいると、どんなのか見たいというので絵に書いた。
すると、「空から下を覗いたり出来るようにしたら?」と、畑で育ってた人参をぱくつきながらメリヌがいうので、艦橋を継ぎ足す。
そうすると縦長になる気球ではおかしくなるので、飛行船の形に自然となった。
『操舵室は上下左右が見えやすいのが良いですね』
とマロンが言うので顔の様に飛び出す感じで突き出させると段々形が出来上がっていった。
小一時間悩んだ末出来上がったその絵を見てラメルが一言……
「カースドラゴンみたいね♪」
その一言で形を全て書き直す羽目になったのは言うまでもない
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