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七十七話
しおりを挟む抉られた地の底に白と青のストライプ柄のパラソルとガラスの机にカラフルなチェック柄のテーブルクロスを張り、三匹と一人の少女がお茶を楽しんでいた。
赤いウサギは大きな皿からクッキーを摘んでサクサクと軽い音を奏でながら食べる。
茶色のウサギは淡く光るウサギに紅茶を入れ直して貰っている。
亀の甲羅を背負った少女は時計を見ながら呟いた。
「もう三十分くらい経つけど帰ってこないね」
『そうですね~まぁ黒ウサも一緒なので大丈夫ですよ』
精霊は闇精霊を名前では呼ばない。
何故かと問えば皆同じ返事をするだろう。
『情が伝染るから』
過去に何度も戦った相手
それが闇精霊なのだ。
風の精霊と親しくなったエルフ
火の精霊と親しくなった魔法剣士
水の精霊と友人関係だった巫女見習いの少女
土の精霊と師弟関係になったドワーフ
光の精霊と本当の兄妹の様に育った男の子
皆過去の大戦で魔王と戦い散っていった。
ラメルは元々敵なのだ。
だが、固執しないのが精霊なので恨みこそすれ憎まない。
その序に親しくもならない。
故に名前では呼ばない。
『それにしてもアシュ……アナタ小さくなれるのね……』
そう呟いて淡く光るウサギを見るのはチェリーだ。
フサフサと長い毛を微風に揺らしながら垂れる耳がピクリと動くとアシュは言う。
『神獣ですのでこれくらいは出来る』
少し敬語に難があるのか言葉使いは変だったが、誰も指摘しないままだったので定着してしまった。
それから更に時間が過ぎた頃、ようやく井戸から声がし始めた。
だが、言葉が違うのかメリヌには理解出来なかった。
マロン達も首を傾げながら井戸の周りに移動する。
その声は段々近づいて来て、井戸から飛び出し
”ガシャッ”
と、鎧の音をさせながら着地した。
全身フルアーマーで頭の上に赤いモヒカンの様な形の布が少し右側に寄れた歳は20代前半くらいの男がラメルと共に現れた。
右手に赤い十字の模様が描かれた丸盾を持ち左手に短槍を抱え、背中に大剣を装備していた。
敵かとも思ったが傍らにラメルが立っている事から見ると、この鎧男はタクミらしかった。
モーニングスターを手に掛けながら恐る恐るメリヌはその男に声を掛けた。
「……た、タクミなの?」
「……め」
「え? なに?」
「めりぬぅぅぅうっ、あいだがっだああぁぁっ!」
そう叫ぶと短槍も丸盾も放り出し、頭に被ったメットを走りながら放り出し、鎧を着たままメリヌを抱きしめた。
「本物だあ”あ”あ”ーっ! 夢にまで見たメリヌうぅぅぅうわぁぁぁん! 結婚!結婚しよう!」
抱き締められキスまでされて突然の求婚されて冷静で対応出来る人はいないだろう。
当然メリヌは困惑し抱き着くタクミから抜け出そうと藻掻く。
叫びも挙げられない程怖かったので歯を食いしばりながら暴れるが、一向に解けない。
『落ち着け! 馬鹿者!』
ラメルがタクミの頭を引っ叩き怯んだところで引き剥がした。
それを見たマロンもチェリーも驚き目を見開いた。(が、つぶらな瞳はそう大きくならなかった)
精霊に筋肉はあまり付いていない。
ましてや片手で鎧を着ている男を後ろに引っ張る事など普通の力持ちでもそうそう出来るものでは無い。
それなのに今目の前でラメルはメリヌから鎧男を引き剥がしたのだ。
ここで驚かないならいつ驚くんだ?と、突っ込まれる程だった。
すぐ様アシュはラメルを霊視した。
別人かと思ったからだったが、間違いなく闇精霊のラメルだった。
取り敢えずズルズルと引き摺って歩くラメルを呼び止めてテーブルへと案内し、涙と鼻水を垂れ流しながらケバブを食べるタクミと、同じ様に涙を流しながらハンバーガーを頬張るラメルとを交互に見ながら、三匹と一人は唖然としながらも見守った。
『ところで……その鎧はなんじゃ……』
『黒うさも何その力……』
『魔力は相変わらず減ってるのに……』
「ちょっとタクミ⁉ 結婚て何⁉ 新婚旅行てどっかいくの⁉」
一人顔を赤らめて嬉しそうにしながらも困惑して顔が百面相になってる少女は置いといて、何があったのかを聞くことになった。
「取り敢えずそこの井戸は地球に繋がってた」
そう淡々と話すタクミは続ける
地球は地球だったが中世になる前のヨーロッパ。
井戸から這い出たタクミと人型になってたラメルは奴隷商人に捕まり、売られて行く。
その日から数カ月後の道中で、二人の男達に助けられた。
そのまま意気投合したタクミはレイビアを装備して弟子入り、剣技が上手かったラメルはその二人と肩を並べる程の腕前だった為に仲間入りした。
そのうち、もう一つの三銃士と呼ばれる程に成長。
タクミはその弟子として日々を生きる事に……。
だが、どうにかして元の世界に戻らなければ成らず戦いながら捕まった場所を目指して居たが、十字軍に捕虜としてタクミは捕まってしまった。
そのうち大きな戦争に巻き込まれながら、ラメル達と敵対する事になった。
そんな中、タクミは一人馬に乗って敵陣へと突っ込み、ラメルを掻っ攫うとそのまま走り去った。
敵前逃亡と見なされたタクミを探すため追手が組まれた。
ラメルもまた仲間達が同胞を救う為に動き、両方から追われる身となった二人。
何日も何ヶ月も逃げて逃げて逃げまくり、ようやく攫われた場所へ辿り付いたと言う。
「5年位掛かったんだよ……」
そう力なく語るタクミをラメル以外が慰めた。
『ちょっと! ノンビリしてる暇なんて無いんだからね⁉』
ラメルはそんなタクミの鎧を脱がし魔法で体を洗ったあと、長く伸びた髪を適当に結ぶと、嫌がるタクミを抱き抱えて井戸へと消えていった。
一瞬の出来事で二人が飛び込んだ井戸を呆然と見守る事しかできなかった。
その後から半日が過ぎた辺りでアシュの耳がピクリと動き、鼻をヒクヒク動かして何やら警戒し始めた。
『ん? どうかした?』
そんなアシュを見てチェリーが声をかけるとアシュは立ち上がり、垂れてる耳を心無しか持ち上げて耳を欹てる。
『……ちょっと魔森へ行ってくる』
そう言うと高く飛び上がると飛んでいってしまった。
どうしたんだろ?と、二匹と一人は困惑してると、井戸の方から罵声が聴こえてきた。
タクミとラメルの声らしい
そこで二匹と一人は駆け寄って二人が戻ってくるのを待っていた。
『……馬鹿なの⁉ 燃やしすぎよ⁉ ああ……私の城がぁぁ……』
「うるせえ! このクソ魔王が‼ 俺なんて春に子供が生まれる予定だったんだぞ! クソボケがぁっ!」
そんな罵声を叫びながら現れた二人……
今度は戦国時代の甲冑を身に纏って現れた。
人型のラメルは頭頂部分を剃った変な頭をしていた。
口には髭を生やし、妙に威厳が有りそうな顔立ちだった。
西洋鎧を着込み、手にはお気に入りの茶器を抱えている。
一方タクミは、三十代くらいに老け込み、手には折れた槍を持っていた。
次はどんな話をしてくれるのかと楽しみになってる二匹と聞き捨てならない言葉を耳にして指輪からモーニングスターを出していた。
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