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八十三話
しおりを挟む雲一つない青い空は何処までも高く、太陽の日差しは容赦無く肌をジリジリと焼いていく中、碧い海には一艘の船が浮いていた。
四方八方を海に囲まれた船の上、船尾楼に青と白のパラソルをテーブルに差し置き、メリヌ達と椅子に腰掛けながら涼やかにアイスティーに口を付ける。
潮の香りを味わいながら呑むアイスティーも中々美味いものだ。
俺の横ではメリヌ達が美味しそうにアイスクリームを食べている。
召喚魔法で都内から取り寄せた奴だ。
魔森の浜辺から出航してアレから一ヶ月が過ぎようとしていた。
帝国の船は所々が赤錆に覆われ、かなり古い船の様で一撃食らわせれば沈みそうだった。
だがそうしなかったのは、乗っていたのが俺達だけじゃなかったからだ。
船倉でオニギリを食べていると、何処で見つけて来たのか少年少女が捕まっていて、壁越しに啜り泣く子供の声が聴こえてきた。
壁越しだったが話し掛けると泣きながらだったが素直に話してくれた。人数を聞くと男三人の女七人の合計十人だという。
流石に赤子を抱いた上に少年少女も助けるとなると厳しかったので、何とかオニギリだけでも食べさせてやろうと、メリヌが壁を殴り壊して居た所、激しい音に気付いたのか帝国兵が数人やって来た。
やばいと思いメリヌに武装させると出方を待った。
帝国兵達は真っ直ぐ俺達がいる部屋へと来ると、武装してるメリヌには目もくれず俺に助けを求め始めた。
この船は見た目通り古い船で、造船してから二百年程修理しながら使っているらしく、海獣のくしゃみ一つで沈み兼ねないという。
俺の魔力は確認済みだったらしく、攻撃魔法も使えるだろうと思っていたそうだ。
もし、手伝ってくれるならこの船から開放はしてやれないが、便宜は図ってやれるから、警護出来ないかと言って来た。
俺は、それに乗り便宜は俺以外でも適用されるのか聞いた跡、一つ要求を出した。
それを聞いた帝国兵に苦い顔はされたが、時間も無いからと投げやり気味に承諾されて、迫り来る脅威から船を守ってやった。
それから一ヶ月間、毎日の様に襲い来る海獣を千切っては投げ、たまに調理し船の安全と食の安全を守っている所だ。
◇
「タクミくんよぉ!休憩のところ悪ぃんだけど、また頼むぜ? 八時方向だ!」
そう舵をとる船長が船尾楼にいる俺へと叫ぶ。
「わかった!」
と言いながら立ち上がり、メリヌに少年少女達を連れて、船室へ避難するように伝える。
バリヤード(帆を貼るロープ)を掴むとフワリと浮いてそのまま掴んだままミズンマスト(三本ある内の後側のマスト)の上に立つ
「八時方向八時方向っと……」
マストの上で器用にくるりと方向を変えると、水辺線上に突起物を出しながら船を狙って近付く一頭の鮫みたいな海獣が勢い良く泳いで来ているのを確認した。
指を拳銃の様にすると、親指で標準を合わせ
「ズドンッ!」と一言叫ぶ
瞬間指先から迸る閃光と石礫が混じった水が勢い良く飛び出して、迫り来る鮫の頭部へと着水した後、その巨大な躰を貫いた。
帝国兵に捕まる前に食ったshine Appleのお陰で魔力も上がった俺は遂に攻撃魔法が使える様になった。
今までは分子レベルでマッチに火を付けるイメージで燃やしたりしていたが、消し炭になってしまっていたので、本当に助かった。
シュラド(網目状の縄梯子みたいな奴)に捕まったり、欄艦から様子を見てた船員達は喝采をあげる。
プカプカと浮かぶ巨大な死骸を船員達が今夜の晩飯として回収する為、ボートを数隻海に投げると、乗り込んでいく。
俺は再びバリヤードを掴むとそれをつたって船尾楼へと降り立ち、歓声を上げている少年少女達に手を振る。
そのまま階段を登って舵を握る船長の側に行くとガッシリと握手を交わした。
「マストの上からだが薄っすらと島が見えたぜ船長」
「おおそうか!もう直ぐアンタともお別れだなぁ……どうだい? うちの船員にならねーかい? あんたなら大歓迎で迎えるぜ?」
「ははは、遠慮しておくよ。それにあの子らも居るしな、俺は船を降りるよ」
「そうか、残念だなぁ……アンタなら立派な船乗りにだってなれるのに」
そう言って、残念がった。
この船長は帝国民ではあったが、脅されて帝国の船に乗っている、普段は孤島で漁師を生業としているのだそうだ。
それが、運悪く島ごと人質にされて仕方なくこの船の船長となり、魔森までボロ船で乗ってきたと言うことらしい。
奥さんは孤島に居て子供達と暮らしてるそうだ。
その孤島は帝国兵にこそ囲まれて居るが、島民には手荒な事はしないという約束をして、ちゃんと契約も結んだのだそうだ。
なのでこの航海が終われば帰れるらしい。
船員達もオヤジさんの船の船員で気心の知れた仲間だという。
俺に便宜を図ると言った男と武器を持った数人の男達だけが帝国兵なのだそうだ。
そいつ等は個室を充てがわれているようだが、中で船酔いになっている筈だ。
出てこられると鬱陶しいだけなので嵐の海で彷徨ってる幻覚をマロンとチェリーが見させているからこの場に居ない。
数刻後俺達の乗る船が帝国の港へと着いた。
俺とメリヌはそのまま帝国兵と共に皇帝と謁見後帝国兵として働く事になり、赤子と少年少女達と別れる事になった。
抗議すると、手荒な事はしないからと言われたが、信用できなかったのでチェリーに頼んでこっそり見張るように頼む。
船長達もボロ船から降りたあと、港に止まっていた漁船に乗り込み島へと帰っていった。
帝国の街は酷く荒れていた。
帝国民は此処には住んでいない様で兵士しか居なかった。
人の住まなくなった民家は廃墟のようにボロボロでいつか見た吹き飛ばされた街の残骸とあまり変わらなかった。
荒れた道を馬車で走るとガタガタと揺れていたが、俺は自分とメリヌを軽く浮かせて尻が痛くならない様にしていたから大丈夫だったが、帝国兵達は痛い様で、馬車から降りると尻をさすりながら歩いていた。
そのままの格好で皇帝の居る謁見部屋へ通されると、膝をついて待てと言われた。
頭を下げると床が見えるのだが、ここも結構年季が入っているのか、所々穴が空いていた。
「……面をあげよ」
嗄れた声でそう言われ頭を上げると、皺くちゃの爺さんが王冠を被って銀の青錆た椅子に腰掛けていた。
着てる服も年季の入った古い貴族服で、国庫は随分前から空なのだろう事が予想出来た。
「我は皇帝ハビロイ、其方が新しい魔道士か……ふむ、此処まで魔力が強いのなら申し分なかろう」
何かの機械だろうか、手には魔力量を計る道具でもあるのか俺達に向けてその機械の数字を見ている。
「其方等に皇帝ハビロイが命令する! 異界への穴より若返りの実を探して来い。もう直ぐ新しい贄も用意出来るしのぅ。準備が出来次第呼ぶので暫し待機せよ」
そう言うと皇帝は話は終わりとばかりに席を立つ。
贄とは何なのか分からないが取り敢えず俺達はその部屋を跡にした。
時間があるから、部屋でお茶でもと言われたが、何となく嫌な感じがしたので外で散歩すると言って断ると、メリヌも連れて中庭へとやって来た。
中庭には庭木が有ったのか花壇等があったが花は咲いておらず、枯れ枝ばかりだった。
芝生も枯れていて薄茶色で覆われていた。噴水でもあったのか、薄汚れた敷石で覆われた窪みには、枯れ葉が詰まっていた。
中庭から少し進むと井戸が見えてきた、その井戸の周りに黒いフードを被った帝国兵が何かの紋様を描いていた。多分そこが儀式の場所なのだろう。その儀式の周りには同じ船に乗っていた少年少女達が居た。そして、司祭服を着た老人の手には赤子とその上にはチェリーが浮かんでいる。
俺は嫌な予感がして堪らなかった。
暫く様子を眺めていると、ようやく紋様を書き終えたようで、ソイツらは円の周りに立ち、帝国兵が中庭を通って俺の後ろからやって来た。
「もう直ぐ儀式が始まるので井戸の周りへ移動してください」
「あ、ああ分かった……」
俺は赤子を抱いた老人から目を離さないようにしながら少年少女達の近くへと向かった。
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