Shine Apple

あるちゃいる

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八十五話

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 ガタゴトと言う音で目が覚めると、正一が囲炉裏に炭を足して火をつけようとしていたので、寝惚けながら指を鳴らす。

 パチンと音がして炭に火を灯しながら鉄瓶にも水が入った。

 「うお⁉ 同時に出来るのか? すげぇな!」

 「はは……鍛えられたんですよ……そこの赤子にね」
 そういうと、まだ寝ているメリヌの捲れた毛皮を掛け直す。
 「奥さんか? 大事にしなよ」
 「はい、あなたも」
 そう言うと、少し驚いた顔をしながらニカッと笑いまだ寝ている赤子を見た。俺もメリヌを見ると優しい笑顔でお互いの愛する人を見る。
 「なんでわかった?」
 と、正一は赤子を見ながら言うので丸わかりですと答えると。
 「そ、そうか?ははは」
 と、テレ笑いしながら朝食の準備をしようと立ち上がった。
 「あ、食事ならすぐ出せますよ?何か食べたい物とかありますか?」と聞くと
 「そうだなぁ……出来るなら納豆が食いたいなぁ」
 「玉子いりますか?」
 「お!イイね分かってるね!」
 「まぁ正直に言うとヨネの味噌汁もあれば最高かな」
 そう言うと、昔を思い出しているのか遠い目をしてるので、ヨネ婆ちゃんの味噌汁を想像しながら召喚魔法陣を床にスタンプすると出ろと唱える。

 すると、ホカホカご飯に納豆と玉子と焼き鮭に味噌汁を召喚した。

 それを見た正一は本当に驚いたのか目が点になって口をあんぐりと開ていた。横を見ると赤子の筈のヨネも目を見開いて驚いていた。

 「何その魔法陣……それもヨネが教えたのか⁉」
 「あ、いえコレは俺のオリジナルですね、まぁ最初は師匠の簡易召喚でしたけどアレンジしまして……」

 そう言うと、赤子のヨネは「あー!あー!」言いながら指を刺して喚き出した。
 「なんか怒ってますけど意識あるんですかね?」
 『あるみたいだよ?』
 そう言いながらチェリーが現れた。

 「「え⁉」」

 その返事に驚いたのは俺だけじゃなく正一もだった。

 まぁ、散々赤子だったけど愛しそうな顔で見たり口で言ったりしてたからね。

 正一はチェリーに本当かどうか聞いて、チェリーが頷くと顔を真っ赤に染めて顔を伏せてしまった。

 まぁ、取り敢えず脚付きお膳を三つだし朝食を載せるとメリヌを起こす。

 ヨネには哺乳瓶をマロンに手渡して飲ませて貰った。

 「「「頂きます!」」」
 と、モクモクと食ったあと
 「「「ご馳走様!」」」
 と、綺麗に食べたのでそのまま脚付きお膳と食器は洗ったあと正一にあげた。
 「わ、悪いな三つも……」
 「そのうち必要になるでしょ?」
 そう言うと顔を真っ赤に染めて
 「そ、そのうちたって十五年以上後だろう⁉ 気が早いな!」
 そう言うと自分でも恥ずかしくなったのか薪を作る!とか言いながら外へと走っていった。

 『あんまりからかうよ!バカ弟子』
 と、通訳してくれたのかチェリーが言う。
 「意識あるなら先に教えてくれよ師匠様よ」
 『ふんっ! それよりアンタグズグズしてていいのかい? やる事があるんじゃなかったのかい?』
 「あっそうだった! 取り敢えず先にやって来るわ! メリヌはここに居な、すぐ終わるから!」
 「あーい」

 俺は急いで外に出ると、薪をバッコンバッコンと力強く作っていた正一にも説明してから洞窟のある裏へと向かうと、藪で覆われていた。

 そこで浮遊しながら近付き洞窟の中へと進む。

 洞窟を抜けるとやはり滝の裏側へと出た。
 何となく木々が小さい様に見えたが、まぁ当たり前かと思い気にせずそのまま泉を渡り聖域を出る。
 少し聖域から離れた草原に穴を開けると、そこに動かない黒ウサギを埋めた。
 しっかりと土をかけると目印代わりにshine Appleも埋めた。
 聖域以外の場所ならアポルにしか成らないと前に聞いていたので多分大丈夫だろう。
 根が張って絡まないように少し離して植える。

 そのまま聖域へと飛んで戻り、沢山実ってるshine Appleをアイテム指輪に入るだけいれた後、再び洞窟へ戻る為に滝へと突っ込んだ。
 服は濡れたが気にせずに洞窟を抜けると、正一が待っていた。

 「タクミさん、実は少しお願いがあるんだけど……いいかな?」
 かしこまって言うもんだから不思議に思ったが気にせずに頷くと
 「shine Appleを少しもぎ採って来て貰えないかな? ほら、ヨネの奴は一応魔族だから千年は生きるんだ……でさ、寂しい思いはさせたくないんだよ……わ、分かるだろ?好きな女がいるなら……」

 そうモジモジしながら言うもんだから思わず笑ってしまった。
 「な、なんだよ!わ、笑うこと無いだろ⁉」
 「いや、申し訳無いププつい……」
 堪えきれなくて吹き出しそうだったのが気に触ったのか、もういいよ!とか言いながら去ろうとしたので、腕を掴むとその手にアイテム指輪を握らせた。
 この中にはかなりの量のshine Appleが入っている。それに、幾ら年月が経とうと腐らないのも知っているので、一口六年だとしても同じ時間を生きられるだけの量も入っている。

 「い、いいのか? これ……。な、何か容量多いけど……如何やって広げたんだ?」

 そう言われたので使用者権限があり、魔力が多ければ広げられると教えた。

 「は~……そんな事になってたのか……そういやタクミさんは魔力多いもんな……そりゃ知らんはずだわ……」
 「弟子は師匠を越えて行くものですからね」

 そういうと笑いだしたので、俺も笑った。
 「有難く使わせてもらうよ!」
 「はい!」

 そういうと戻ろうとしたので掴んでフワリと浮くと、またしても驚かれ飛び方を教えてくれよと言われたが、こればかりは風の精霊と契約しないと無理だと教えた。
 「何匹の精霊と契約してんだよ!」
 「あ、多分全部ですかね……」
 そういうと呆れた様で、小屋に付いてからも口が開いたままだった。

 「ヨネちゃんよ……弟子にはちゃんと常識は教えないと駄目だぞ?」
 と、ボソボソ言ってるのが聴こえたが、ヨネはソッポを向いて聞いていないフリをしていた。

 そして、その日も泊まれよと言われたが、長い時間留まると居心地が良いだけに帰れなくなるからと断り、井戸のあった草原まで転移してもらった。

 「正一さん、ヨネや他の子供達を宜しく頼みます!」
 「ああ、コッチは任せときな! 達者でな! 三代目!」

 別れの言葉は少ない方が良いと思ったのか、またいつか!と言って正一は転移して行った。

 「コッチは任せておけ……か……」

 俺は出掛ける前に聴いた言葉を思い出していた。

 いつ言ったのかと思っていたが……全く……師匠達はと、思わずクスリと笑うと不思議そうな顔で俺を見るメリヌを抱き上げ、井戸へと落ちていった。
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