85 / 88
八十五話
しおりを挟むガタゴトと言う音で目が覚めると、正一が囲炉裏に炭を足して火をつけようとしていたので、寝惚けながら指を鳴らす。
パチンと音がして炭に火を灯しながら鉄瓶にも水が入った。
「うお⁉ 同時に出来るのか? すげぇな!」
「はは……鍛えられたんですよ……そこの赤子にね」
そういうと、まだ寝ているメリヌの捲れた毛皮を掛け直す。
「奥さんか? 大事にしなよ」
「はい、あなたも」
そう言うと、少し驚いた顔をしながらニカッと笑いまだ寝ている赤子を見た。俺もメリヌを見ると優しい笑顔でお互いの愛する人を見る。
「なんでわかった?」
と、正一は赤子を見ながら言うので丸わかりですと答えると。
「そ、そうか?ははは」
と、テレ笑いしながら朝食の準備をしようと立ち上がった。
「あ、食事ならすぐ出せますよ?何か食べたい物とかありますか?」と聞くと
「そうだなぁ……出来るなら納豆が食いたいなぁ」
「玉子いりますか?」
「お!イイね分かってるね!」
「まぁ正直に言うとヨネの味噌汁もあれば最高かな」
そう言うと、昔を思い出しているのか遠い目をしてるので、ヨネ婆ちゃんの味噌汁を想像しながら召喚魔法陣を床にスタンプすると出ろと唱える。
すると、ホカホカご飯に納豆と玉子と焼き鮭に味噌汁を召喚した。
それを見た正一は本当に驚いたのか目が点になって口をあんぐりと開ていた。横を見ると赤子の筈のヨネも目を見開いて驚いていた。
「何その魔法陣……それもヨネが教えたのか⁉」
「あ、いえコレは俺のオリジナルですね、まぁ最初は師匠の簡易召喚でしたけどアレンジしまして……」
そう言うと、赤子のヨネは「あー!あー!」言いながら指を刺して喚き出した。
「なんか怒ってますけど意識あるんですかね?」
『あるみたいだよ?』
そう言いながらチェリーが現れた。
「「え⁉」」
その返事に驚いたのは俺だけじゃなく正一もだった。
まぁ、散々赤子だったけど愛しそうな顔で見たり口で言ったりしてたからね。
正一はチェリーに本当かどうか聞いて、チェリーが頷くと顔を真っ赤に染めて顔を伏せてしまった。
まぁ、取り敢えず脚付きお膳を三つだし朝食を載せるとメリヌを起こす。
ヨネには哺乳瓶をマロンに手渡して飲ませて貰った。
「「「頂きます!」」」
と、モクモクと食ったあと
「「「ご馳走様!」」」
と、綺麗に食べたのでそのまま脚付きお膳と食器は洗ったあと正一にあげた。
「わ、悪いな三つも……」
「そのうち必要になるでしょ?」
そう言うと顔を真っ赤に染めて
「そ、そのうちたって十五年以上後だろう⁉ 気が早いな!」
そう言うと自分でも恥ずかしくなったのか薪を作る!とか言いながら外へと走っていった。
『あんまりからかうよ!バカ弟子』
と、通訳してくれたのかチェリーが言う。
「意識あるなら先に教えてくれよ師匠様よ」
『ふんっ! それよりアンタグズグズしてていいのかい? やる事があるんじゃなかったのかい?』
「あっそうだった! 取り敢えず先にやって来るわ! メリヌはここに居な、すぐ終わるから!」
「あーい」
俺は急いで外に出ると、薪をバッコンバッコンと力強く作っていた正一にも説明してから洞窟のある裏へと向かうと、藪で覆われていた。
そこで浮遊しながら近付き洞窟の中へと進む。
洞窟を抜けるとやはり滝の裏側へと出た。
何となく木々が小さい様に見えたが、まぁ当たり前かと思い気にせずそのまま泉を渡り聖域を出る。
少し聖域から離れた草原に穴を開けると、そこに動かない黒ウサギを埋めた。
しっかりと土をかけると目印代わりにshine Appleも埋めた。
聖域以外の場所ならアポルにしか成らないと前に聞いていたので多分大丈夫だろう。
根が張って絡まないように少し離して植える。
そのまま聖域へと飛んで戻り、沢山実ってるshine Appleをアイテム指輪に入るだけいれた後、再び洞窟へ戻る為に滝へと突っ込んだ。
服は濡れたが気にせずに洞窟を抜けると、正一が待っていた。
「タクミさん、実は少しお願いがあるんだけど……いいかな?」
かしこまって言うもんだから不思議に思ったが気にせずに頷くと
「shine Appleを少しもぎ採って来て貰えないかな? ほら、ヨネの奴は一応魔族だから千年は生きるんだ……でさ、寂しい思いはさせたくないんだよ……わ、分かるだろ?好きな女がいるなら……」
そうモジモジしながら言うもんだから思わず笑ってしまった。
「な、なんだよ!わ、笑うこと無いだろ⁉」
「いや、申し訳無いププつい……」
堪えきれなくて吹き出しそうだったのが気に触ったのか、もういいよ!とか言いながら去ろうとしたので、腕を掴むとその手にアイテム指輪を握らせた。
この中にはかなりの量のshine Appleが入っている。それに、幾ら年月が経とうと腐らないのも知っているので、一口六年だとしても同じ時間を生きられるだけの量も入っている。
「い、いいのか? これ……。な、何か容量多いけど……如何やって広げたんだ?」
そう言われたので使用者権限があり、魔力が多ければ広げられると教えた。
「は~……そんな事になってたのか……そういやタクミさんは魔力多いもんな……そりゃ知らんはずだわ……」
「弟子は師匠を越えて行くものですからね」
そういうと笑いだしたので、俺も笑った。
「有難く使わせてもらうよ!」
「はい!」
そういうと戻ろうとしたので掴んでフワリと浮くと、またしても驚かれ飛び方を教えてくれよと言われたが、こればかりは風の精霊と契約しないと無理だと教えた。
「何匹の精霊と契約してんだよ!」
「あ、多分全部ですかね……」
そういうと呆れた様で、小屋に付いてからも口が開いたままだった。
「ヨネちゃんよ……弟子にはちゃんと常識は教えないと駄目だぞ?」
と、ボソボソ言ってるのが聴こえたが、ヨネはソッポを向いて聞いていないフリをしていた。
そして、その日も泊まれよと言われたが、長い時間留まると居心地が良いだけに帰れなくなるからと断り、井戸のあった草原まで転移してもらった。
「正一さん、ヨネや他の子供達を宜しく頼みます!」
「ああ、コッチは任せときな! 達者でな! 三代目!」
別れの言葉は少ない方が良いと思ったのか、またいつか!と言って正一は転移して行った。
「コッチは任せておけ……か……」
俺は出掛ける前に聴いた言葉を思い出していた。
いつ言ったのかと思っていたが……全く……師匠達はと、思わずクスリと笑うと不思議そうな顔で俺を見るメリヌを抱き上げ、井戸へと落ちていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる