Shine Apple

あるちゃいる

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八十六話

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 出口である井戸へと近付くと異変に気付く。どうやら俺が破壊した井戸はかなり崩れていた様で、両手が無いと逆戻りしてしまう感じだった。
 そういや直ぐに正一達も戻ってきていたなと思い返した。

 井戸の外へポンっと出るとメリヌを、取り敢えず放り投げた後、両足で井戸の側面に足で突っぱねた。
 落ちそうになってる俺の手をメリヌが掴んでくれたが、足のつま先が煉瓦の窪みに引っ掛かってしまい抜けなくなっていた。

 「マ、マロン! そこの引っかかってる煉瓦ずらせる?」
 『ホイホイ今退けるよー』

 そういうとヒョイっとずらしてくれたので、ようやく地面に手と足をつけれた。

 「滅茶苦茶だなぁ……」
 俺は立ち上がると元帝国の中庭部分を眺めた。
 二十メートルくらいの深さで抉れ、クレーターの様になっている。

 「そっか……これ俺がやったのかー……」

 「まぁ、何だ取り敢えず如何するかな……」
 行きは帝国の船に乗って来たが、帰りは全く考えていなかった。
 来た道を帰ると言ってもなぁ……
 この時代はまだアシュは存在してないし……と、如何するか考えて居たが、何も浮かばないので取り敢えず港方面に行けば船くらい残っているかもと薄い希望を抱いて歩いて向かう。

 何となく肩が片方軽いので見るとチェリーしか乗っていなかった。

 「あれ? マロン?」
 そう思って振り向くと井戸の崩れた部分を見ながら頭を捻っていた。

 「マローン? 行くよー?」
 『あ、はーい!』
 直ぐに気付いたのかフワリと浮いて飛んできて、俺の肩へと止まる。
 「何か気になることでもあった?」
 そう聞くと
 『いえ……大丈夫ですよ』
 と、答えた。

 (マロンは気付いていた、さっきずらした煉瓦は最後に時間軸を弄った煉瓦だったと……もしあのままだったら……と思ったが気にしないで忘れる事にした)

 







 港まで来たがやはり何も残っていなかった。
 瓦礫しか無かった。
 「タクミ? どうするの?」
 「んー……休み休み飛ぶか……いやでも……流石に惑星の真裏までかー……」
 と、悩んでいると遠くの方から誰かが叫んでいる声がする。

 幻聴かとも思ったがどうやら違ったようだ。何故なら漁船が一隻コチラに向かって進んで来ていたからだ。

 あれは間違いなく船長の舟だった。
 俺はメリヌを抱き上げるとフワリと浮かんで飛んでいった。
 そして、漁船の真上に来ると
 「やっぱりだ! 生きてると思ってたぜ!タクミ!」
 「船長! 頼みがある!」
 「いいぜ! 任せておきな!」
 「まだ何もいってねーぞ!」
 「いーんだよ! 気にすんな! 取り敢えず降りろ!首が疲れるだろーが!」
 「ああ、悪い悪い……気が付かなかった」

 帝国が突然滅んだという話は直ぐに伝わったのだという。何故なら孤島の周りに居座ってた船団が突然四方八方へ散り散りになって居なくなったからだ。

 たまたま孤島にも一人の兵士が鎧を脱ぎ捨てながらやって来たので島民が聞いたところ、ペラペラと話をしてくれたそうだ。

 その兵士は見習いでよくパシリとして、先輩兵士に頼まれた物を買いに訪れていた事で、それなりに島民達と仲良くなったのだそうだ。
 そして、もし兵士を辞めることが出来たら島で暮らしたいとも言っていたのだと。
 で、その元兵士は他の漁船に乗って今は魚を獲りに沖へ出てるらしい。

 そこで、俺を見付けたと伝書鳩を使って知らせて来てくれたんだとさ。

 礼ならソイツにも頼むと言っていた。まぁ、言われなくとも会ったときに、酒でも奢るよといっといた。

 「まぁ、よく生きてたな!歓迎するぜ!」
 そういって固く手を握りあった。



 ーーそんな訳で俺達は暫く船長が住む孤島でお世話になる事になった。










 あれから二年後、メリヌの誕生日と共に俺達は正式に夫婦となった。
 孤島の教会で永遠の愛を誓い合い、皆に祝福された。
 若返ったメリヌの年齢は辛うじて十三歳だった事から、二度目の成人式を不服そうにしながらも承諾させた代わりに、成人式をやった場所でそのまま結婚式をしろと約束させられた。

 まぁたまにそんな成人の子も居るらしく、周りの皆もそんなに気にしていない様だった。

 島民の皆がワーワーと祝福の花火を打ち上げてくれている中、何かが飛んでいるのが見えた。

 その姿は段々と大きくなっていき、近付いてきた。

 「「アシュ⁉」」
 『あ、やっぱりタクミ様だった! さっき井戸に飛び込んでたのに何故ここに?……あれ? 赤ウサと茶ウサも……あれ? なんで?』
 さっき別れた筈のマロンとチェリーが居るもんだから困惑するアシュ。
 「気にするな! しかしよく来てくれた、良かったーこれで帰れるわ」
 そういうと、お世話になった船長や島民達に挨拶しようと振り向いたら

 島民たちが跪いてアシュに祈っていた。どうやら帝国の民でも敬っているのは精霊信仰らしい。
 そして、俺の結婚式に聖獣様が現れた!と、大騒ぎになった上に親しく話す俺が神々しく思えたのか、俺にまで祈りだした。

 「大司祭様だったのか!タクミ様!」
 そう船長が鼻水垂らしながら大泣きしながら言うもんだから、周りの方々も信じちゃって、もう祈るやら跪いてから立ち上がらなくなっちゃうわで挨拶もそこそこにアシュに頼んで中の部屋へと入れてもらった。

 『健やかにあれ!』
 と、アシュに言ってもらうと更に祈りが酷くなり、もう誰も頭を上げていなかった。

 また来るよーと部屋の中で呟くとアシュにそのまま聖域まで戻る様に伝えた。

 その孤島ではその日起こった事は伝説となり、成人式の直後に結婚すると聖獣様から祝福されると言われる様になり、次の年には島中の成人が結婚したという。









 「あー……お世話になったのに挨拶出来なかった……」
 『何かスマン……』
 久し振りに聴いたアシュの言葉に手をふりふりしながら
 「アシュのせいじゃないよー」
 と、伝えた。
 何となく疲労が貯まった俺達は部屋へ行って少し寝るよーと伝えると、メリヌも付いて来た。

 まぁ、その日は流石に初夜は……と、言ったのだが許してもらえず早くも嫁の尻に敷かれてしまった。

 その次の日は動けずズーッと寝てしまい、その次の日は部屋の掃除と新婚旅行は何処に行くか相談する事になり、これまた夜長する事になった。
 たしかこの世界に新婚旅行は無かったはずなんだけどなぁ……と、不思議に思っていたら、向こうの世界に居た時に婆ちゃんに教わったのだそうだ……。

 そうこうしている内に三日はあっという間に過ぎ去って、聖域の泉へと辿り着いた。

 
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