Shine Apple

あるちゃいる

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八十七話

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 泉に付くとアシュから出て白ウサ達に手を振った、年齢は三十路に近い年齢だったが精霊は顔で判断しないのか、普通に接してくれた。

 『お帰りタクミ様早かったのですね』そう言いながらブラウンが肩に止まる。
 「うん、まぁ色々あったから早くは無かったんだけどね……」と苦笑い。
 クビをコテっと倒して何を言ってるのか分からなかったようだ。
 そりゃね、白ウサ達と別れて井戸へと潜って何年もウロウロしてた俺と違って、三日かそこらでこの泉で出会ったのだから君等には、四日ぶりだしね……。と、心の中で呟いた。

 まぁ呟いた言葉は脳内通信で勝手に精霊達に届くので更にクビを傾げることになるんだけど……。と、思っていたらマロンとチェリーが説明してくれたようだ。
 ただまぁ、戦国時代やら中世手前の時代やらを体験したのは俺とラメルだけなので、その時間の話はまた後でラメルから聞いとくれと伝えると、皆頷いて応えてくれた。

 俺は聖域を出ると一本のやたら大きく育ったアポルの木の下を掘る。
 根っ子が絡み付いているのか中々取り出せなかったが、何とか取り出して黒ウサギを見ると、毛艶がよくなって薄っすら光っている様に見える。
 黒毛だし太陽の光で反射してるのだろうと思ってそのまま左手に掴んだまま聖域へと戻ると、一瞬精霊たちが慌てた。
 『ちょ⁉ タクミ様⁉……あれ?』
 『え……なんで?』
 『ええええ⁉』
 と、俺の肩に座るブラウンから順にクビをコテっと倒して不思議そうに左手に持つ黒ウサギを見る。
 レッド、ペロン、マロン、ソラ、チェリーと順々にコテっと倒していく様は何とも言い様のない可愛さがあった。
 そのまま聖域の泉で温泉にでも入るかの様にアシュが少し小さくなって浸かっているのを見て少し待つか一緒に来るか聞いて見た。
 『勿論付いていきます!』
 そう言って立ち上がる。と、やはり黒ウサが気になるのかじーっと見た後埋められていた場所を見て、ウンウンと頷いていた。が、まぁ気にせずに滝を潜ってあちらの世界へと向かった。

 洞窟を通り外へと出ると、黒山羊が草をんでいた。
 すっかり草刈り機と化してるラメルを珍しそうに眺める聖域班。
 黒山羊の周りをフワフワ飛んで囲んでジロジロ見るもんだからラメルが怒りだす。
 『何よ! 草食って何が悪いのよ! 私はヤギなのよ⁉ 草以外食べるわけにはいかないでしょうが‼』

 草を動物の様に食ってたのが珍しかっただけらしい。

 『ん? ち……ちょっとタクミ?あ、あ、あんた何で素手で……いや、まさかそんな……黒ウサを手に持って聖域を潜って来たわけじゃ無いわよね?ね?今出したのよね?』

 何故か妙に焦りだしたラメルに首を横に振り
 「いや、潜ってきたけど?手に持って」
 と言うと頭突きをかまされた。
 吹っ飛ぶ俺を軽々キャッチしたメリヌに救われる。
 「おま! 何すんだよ! 危うく死ぬところだぞ! 今の勢いで!」
 『あんたの方が馬鹿でしょうが! あんた忘れたの⁉ 私は闇精霊なのよ⁉ 聖域なんて通ったら消えて……消えて……無いわね?』
 「ちゃんとあるだろうが!」
 そう黒ウサの耳を持ってラメルの眼前に見せる。
 『なんであんの?』
 「何言ってんだ? ボケたのか?」
 『違うわよ! 闇精霊何だから聖域に入ったら消滅するのよ? なんで消えてないのよ』
 そういうと確かにそうだなと思い直す。
 手に持ってる黒ウサを見るが、毛艶が良いだけで特に何も変わってない様だった。
 俺とラメルがクビを傾げていると、後ろで見ていたアシュが言う。

 『聖獣化してるんですよ、それ』

 何を言ってるのかよく分からなかった。なので、もう一度聞いてみると
 『聖獣化してるんですよ、その闇精霊の黒ウサの本体が』
 『「は?」』
 本当に何を言ってるのか分からなかった。
 『取り敢えず体を戻せ闇精霊、そうしたら分かる』
 そう冷たそうにアシュはラメルに言う。
 あまりラメルに対して好意的では無いのかも知れないなアシュは。
 まぁ、普通に闇と聖だしな自然に敵対しているのかも?と、思っていると
 ラメルが黒ウサを地面に置いてくれと頼んできた。

 なので、そのまま下に置くと黒山羊の形が崩れ黒い玉を残して消えた。
 代わりに黒ウサが一瞬光ってから立ち上がった。

 『……何これ……』
 なにか困惑してる声がした。
 レッドや他の精霊もポカーンと口を開けたまま見ている。

 俺とメリヌだけがよく分かってない状況らしい。

 二人でクビを傾げていると、アシュが代わりに答えてくれた

 『黒ウサの本体は分身体と重なった事で神獣化した、そして更に変化して闇聖霊になってる』
 「……ん?」
 違いがよく分からなかったのでクビを傾げていると
 『Dark Holy spiritって事よ』
 と、更に困惑した表情をしながらラメルが答えた。

 『『しかも精霊から聖霊に格上げされてるから、立場的には僕達の上位になるんだよ……これでアシュを足しても均等じゃなくなってるんだけど、聖属性も混ざってるから……如何なんだろ?』』レッドとブラウンが双子の様に同時に話す。

 『タクミ……ちょっと聖域まで行きましょう』
 「え⁉ 大丈夫なのか?」
 何故か妙に落ち着いた声でラメルかが聖域に行こうと誘ってきた。闇精霊なら消滅するが、闇聖霊ならどーなるのかという興味もあるので、何か止めにくい。
 保険の為に一応分身体の黒丸もアイテム指輪に入れてから、向かう事にした。

 洞窟へと皆でゾロゾロと戻ると、ラメルが先に飛び出した。
 そして、泉の水へとダイブして泳ぎだした。流石にそれはヤバイと思ったので皆で一緒に聖水となってる泉へと飛び込んだ。
 のだが、生き生きと泳ぐラメルは中々捕まらなかった。
 やがてラメルは笑いだした。
 泳ぎながら楽しそうに笑う様は、まるで天使か妖精が遊んでいるかの様な響きをしていた。

 ひとしきり泳いだあと、真ん中のshine Appleの真下にくると一つ採って食べた。
 『ねぇ、タクミ? 黒ウサはどこに埋めたの?』
 と、モグモグと食べながら聞いてきたので
 「あそこの木の下」
 と、指を指して教える。
 ラメルも指の先を追う様に視線を動かすと、巨大なアポルの木が立っていた。
 すると、無言で立ち上がって俺の前に来ると、ぴょんっと跳ねた。そのまま俺の身長より高く跳ねると頭にグーパンチを落としてくれた。
 「いってーな!何すんだよ!」
 『なんで聖域の側に埋めてんのよ!馬鹿なのか!』
 「え?」
 そう言ってから俺がまるで分かっていない事に頭を押さえて俯くと、今度は親が幼児を諭す様に優しい声で教えてくれた。

 『あのね? 聖域の廻りは聖水が染み出しているのよ? だから魔素が染み込んだ森の木々達は木を生やせないの、それでね? その地に穴を掘って埋めたらね? 更に聖水が染み出し易くなるの分かるかなぁ? 分かるよねぇ?』
 段々と冷たい声に成っていくのは分かった。

 『危うく消滅する所を救ったのはshine Appleのお陰ね……アレだけは褒めてあげる』
 普段の口調に戻ったラメルは目印代わりにしたアポルの木を見て言う。
 消滅仕掛けた本体は、shine Appleの栄養で何とか魔力を維持して食い繋ぎ、じわじわと聖水も身に宿しながら混ぜ合わせて栄養にしたお陰で進化したらしい。
 ある意味数百年も苦行に耐えた修行僧なんだそうだ。
 「じゃあまぁ良かったのか?」
 『まぁね』
 「じゃあ何で殴ったんだよ」
 『余りにも馬鹿な理由だったから?』

 そう言うと、もう一つshine Appleを採るともう一つの手を俺の前に突き出した。
 「なに?」
 『分身体返して』
 「ああハイハイ」
 アイテム指輪から黒い玉を出すとラメルに渡した。
 ラメルはそのまま黒ウサが埋まってた穴に分身体を入れると少し土をかけ、その上にshine Appleを植えて土をかけて埋めた。

 「何してるんだ?」
 『こうしておけば闇聖霊としてまた契約が継続するのよ』
 この森の結界の話よ?と言ってテクテクと聖域の中へと戻っていった。
 そのままの足取りで洞窟へと入っていったので、皆で追い掛けると黒ウサの姿から再び黒山羊の姿へと戻ると、くるりと振り返って
 『私はこっちで暮らすから、君達は好きにしてね♡』
 そう言ってスタコラ走って行ってしまった。

 残された俺達はただ呆然と黒山羊の消えた藪を見詰めてるだけだった。
 
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