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四話
しおりを挟む現場監督みたいな爺さんに講習場所を聞いて街へと戻る。
街に入ると案の定沢山の人々が歩いているが、自分の事は避けて通っているようだ。
何となく苛ついてしまい、横を通る人にぶつかってみようと思い、わざと当たりに行ったら上半身だけが避けてそのまま歩き去った。
「え、こわ……」
何その避け方……まるで風が吹いて左右に靡く草の様に人が自分を空間ごと避けていくのが分かる。
話し掛けても返事は無い。
売ってる物に手を伸ばして掴んでみたら掴めた。が、売り主は気が付かないのか何も行ってこない。
「やっぱり見えてないのか……」
俺は自分が死んでるのかと思い始めた。
だが、さっきの老人は声を掛けたら応えてくれた……。
なんだが変な感じを残しつつ教えてもらった建物へと着いたので、扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
開けた瞬間自分に気が付いたのか、店員みたいな女性に話しかけられた。
「講習ですね?」
「え、あ……はい」
「ではこの先の階段を上がって矢印の方向へお進みください」
何かのパンフレットを貰い支持された方向へと向かう。
この世界は色々おかしい。
話せる人と話せない人が居る。
どちらかと言うと制服を着てる人とは話せる感じだ。
階段を上がると矢印の方向へと進む。
突き当りにはひとつしか扉が無かったので、そこを開けて真ん中辺りに腰掛けた。
貰ったパンフレットを見てみる。
其処にはよく分からない文字だけが並んでいた。
「何語だよ……」
どうせなら日本語のやつ渡せよと思いつつ、映ってる写真やなんかを眺めていると黒板の真ん中がカチャリと開き、其処から眼鏡を掛けた紳士服のちょび髭を生やしたオジサンが入ってきた。
黒板の扉を閉めると、再び何も無かった様に黒板があるだけになった。
「こんにちは、お客人」
そういうとちょび髭のオジサンは頭を下げる。
「ここは何なんですか?」
と、聞いてみたが何も言わずにそのおじさんはニコニコしている。
聞こえてないのかと思ってもう一度声をかけてみた。
「ここは何なんですか?」
一語一句全く同じ質問をしてみたが反応がない。
外に居る人々と同じ対応をされて見えてないのかもと思い始めた。
するとおじさんはジーッと俺を見ている。ちゃんと目が合ったから間違いではない。では、何故返事をしないのかを考えていると
「こんにちはお客人」
同じ挨拶繰り返された。なので俺も挨拶を返す。
「こんにちは」
すると、ニッコリ笑って
「挨拶は大事ですぞ?お客人」
そう言って黒板に何かを書き始めた。
「私の名前はカッツリーノと申します」
そういうと再び俺の目を見て押し黙っているので、自己紹介しろって事かな?
「俺の名前は、佐竹川秀道という」
と、名乗ったがまたニコニコしたまま何も言わなくなった。
五分ほど見つめ合ったあと流石に間違った対応でもしただろうかと首を傾げていると
「目上の人に対して一人称【俺】は無いんじゃない?」
と、女性の声で言われた。
振り向くといつの間にか赤いドレスを着た女性が座っていた。
話しかけようとすると、後ろからパタンと扉が閉まる音がして振り返るとおじさんは居なかった。
「また明日いらっしゃい」
後ろの女性が後ろからそう言うので
「え?」っと呟いて振り返ると誰もいなかった。
「は? え、なになに?」
と、戸惑っているとカチャリと扉が開いて一階で声を掛けてきてくれた女性が入ってきた。
「今日はもう終了です、またのお越しをお待ちしています」
と言って頭を下げた。
「え、ちょっとまって!意味わからないんだけど⁉」と、食い下がったのだが
「またのお越しをお待ちしています」
と、繰り返すだけだった。
何度言っても同じセリフしか返ってこないので渋々その建物を跡にした。
建物から出ると街は既に真っ暗で水銀灯が道を照らしていた。
金も無いし言葉は聞こえないしで如何しようかと思ったが、取り敢えず人のいる所へ行こうと街の中を歩いて行く。
暫く歩くと飯屋みたいな場所があったので、入ってみるがやはり誰に声を掛けても見えていないようだ。
仕方なく目の前で鶏肉を齧ってる男の前に座る。そこしか空いてなかったから。
モグモグと無言で食べてる男の皿から鶏肉を手にしてみたが、何も言われないのでそのまま食ってみる。
それでも何も言わないのでモグモグと食い散らかし、皿の肉が無くなるまで食ってやった。
皿の肉を探すかとも思ったが、その男は溜息を吐き出し店員を呼ぶと再び鶏肉が山の様に入った奴を注文したのか、店員が持ってきた。
ソレを俺も気にする事なく腹が膨れるまで食いまくった。
すると眠くなってきたので、移動する。
再び街へと出た跡、勝手に他人の家へと入って行きその主人のベッドに勝手に寝転がり眠った。
朝目覚めたら横にオッサンが寝ていてびっくりして悲鳴を上げながら飛び起きた。
だが、その叫びも聞こえないのかおじさんは眠り続けているので、俺は見えていないらしい。
その家のリビングなのかダイニングなのか分からないが朝食が置いてあったので勝手に食ってその家を跡にした。
そして再び講義をする場所へ行くと
「いらっしゃいませ、階段を登って矢印の先へ」と、昨日の女性が声をかけてきた。
そしてまた同じ教室に座って待っていると、昨日の居なくなったオッサンが黒板の真ん中から現れた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
「私の名前はカッツリーノと申します」
「僕の名前は佐竹川秀道と申します」
「よろしくお願いします佐竹川さん」
「よろしくお願いしますカッツリーノさん」
一通り挨拶が終わるとオッサンはニッコリ笑うと
「それでは、この世界について説明いたします」
と、言って講義が始まった。
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