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軽業師と名付けた男
しおりを挟むー 俺が奴に会ったのは40年以上昔の話だ
逮捕率が署のトップになって、ある地方の署長から本庁の刑事課に推薦されてお試しみたいな感じで来たのが始まりだった。
70か80年代だっかなぁ……巷はバブル景気の少し前だった気がする。
何を売っても売れる時代で公務員になった事を後悔する奴等が大勢出て来たし、馬鹿にもされたな。
警備員にでも成ってればもっと稼げたとか何とか言われた事もあった、今じゃ逆転したがな。
まぁ、そんな時代にやつに出会ったのさ
奴もまだ顔に皺なんて無くってな、まぁ俺も無かったが……確かまだ20代だったかなぁ、とある高級マンションの屋上から階段の外側から飛び落ちながら降ってきたんだよ。
登山とかで紐に伝って降りてくる様な感じじゃ無くて、紐無しで壁を器用に使いながら落ちてくるんだよ。さながらジャッキーチェンみたいだった
偶々だったんだよ、俺がそこを歩いてたのは。
ヤクザの下部組織が拳銃だか何だかで撃ち込みがあったとかでな?此方に逃げてきたら対処するように言われてたのさ。
まぁ、人数足りなくて応援に使われただけだったんだけどな。
だいたい俺は○暴じゃなくて、窃盗とかそっちの係だったからよ?新人だった事もあって良い様に使われたのさ。
で、来たのはヤクザじゃ無くてジャッキー並の身のこなしで降りてくる変なやつ。
怪しさ満点でその場で逮捕した。
逮捕したのはいーんだけど罪状が階段の外側から降りてきただけってことでな、愉快犯って事で厳重注意処分で解放されたんだよ。
そいつの家がそのビルにあるってんでな?裏取ったわけじゃねーし、色々忙しかったから構ってられねーって話でよ。
後にも先にも奴を逮捕したのは、その時だけだった。
その数日後にそこの住人からポストに纏まった現金が入ってたって通報があってな?
さらに詳しく調べたら、結婚詐欺で騙されて払った金額と同じだったんだとよ。
その結婚詐欺師もタレ込みで捕まってよ、その詐欺師も騙した人間はその子だけだったらしくてな?
まぁ、詐欺師の駆け出しだったんだが一枚のメモが金を置いといた金庫で見つかったんだと。そのメモには
【縄張り荒らしは許さねぇ】
そう書かれてたんだってよ。
その後そのメモを調べたが指紋も出なきゃ埃も出ねぇ。なぁんにも出なかったのさ。
騙された女の証言と一緒に撮った写真とかで何とか起訴できて結婚詐欺師は逮捕出来たんだけど……
俺はあの時逮捕したサーカス野郎が気になった。まぁ、その後数年は見掛けなかったから少し忘れかけてたがよ?そんな時だ。
鼠小僧みたいな奴が居るって聞いたんだよ
まぁ、所轄の刑事で元同僚から聞いた話だったんだが、サーカス野郎を初めて見た地区の周りだけなんだよ、タレ込みが入るのは。
街の境で似たような事件があっても向こう側だった場合無反応だったんだ。
そんな偏ったタレコミだったもんで、縄張りを荒された奴の恨みを買った奴等がタレ込みされてるんじゃねーか?って、思ったわけだ。
どう考えたって怪しいからな。
金を返して貰った奴の住んでるマンション入り口には防犯用の監視カメラだってあったのに、誰も写ってねーんだぜ?それなのに玄関ポストに投函された音で気が付いたやつばっかりでよ、鼠小僧と呼ばれてた奴の姿はどこにも無かったんど。
響くのは投函された札束だけだってんだから半分オカルト話だよ。
その度にあの街周辺から犯罪が減るもんで助かってるといえば助かっていたけど、詐欺師からとは言え空き巣なのは違いねぇってんで追ったんだよ。
サーカス野郎を追ううちに捕まえた犯罪者は数多くいたから評価もあがるが肝心のサーカス野郎だけは捕まえられなかった、補導は出来ても逮捕まではできなかったんだ。
証拠がねーんだよ。これっぽっちも……
だが、その後一ヶ月くらい経つと大金ゲットする被害者ばかり現れてな。
で、役付になりそうな俺の好奇心を煽りやがったサーカス野郎は、ネーミングセンスねぇな!ってメモを俺の胸ポケットに入れた後消えやがったのよ。
それが、10年前くらいだ。
で、なんとなく悔しかった俺は新しく名前を付けた、その名を【軽業師】ってしたのさ。
その後足取りは追えずに居たが、今から5年程前だ。あの街の辺りでまた出やがったのさ、オレオレで騙された婆ちゃんが朝目覚めたら、枕元に紙袋に包まれた現金があって、騙された金額そっくりそのまま置いてあったんだとよ。
その話をしに来た婆ちゃんが警察署の前に立った直後に署に一本の電話が入って、出し子と指示した奴が住んでる場所のタレ込みが入ったんだよ。
その時タレ混んできたやつが名乗ったのが
「こんにちは、森田さん居る?軽業師だけど」
だったんだってよ。まったく!友達か!
ま、その電話からも結局探知する前に切れちまって定年退職するまでズーッと追ったが会えず終いだった。
「それが、何でこんな裏通りで賄い食ってんだこの野郎!」
「森田さんだって食ってるだろーが!そっちこそなんで食ってんだ!この野郎!」
「ははは!仲良いんですね!今少し忙しくて相手できないっすけど、ゆっくり食ってって下さいね!じゃ!」
そう言って紙コップに入れたお茶を2つ持って来てくれたアンちゃんは店の中へと消えていった
後には何とか森田の爺に見つからない様にコソコソ隠れて裏通りまで来たのに、ごみ捨て終わって賄いを受け取ろうとした所でみつかった俺と
俺をあっさり見付けたのがよっぽど嬉しかったのか、同級生と会ったみたいにフレンドリーに話し掛けた事からアンちゃんに俺の友達と勘違いされて、同じく賄いを渡されて一緒に食ってる森田の爺の二人だけが残された。
「とりあえず食っちまおうぜ」
っと、いう森田の爺に
「言われんでも食ってるわ!てか、あんたが言うな!」
っと返す
お互い見詰め合ってニヤリと笑ったあと久し振りに出会ったので、お茶で乾杯した。
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