異世界団地

あるちゃいる

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20話楓side

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  私が彼と出会ったのは、私が5歳の頃だった。その頃は優しい「兄」感覚だった気がする。

 彼が好きだと気付いたのは10歳の頃
彼には妻が居て、私はその間には入れなかった、としてなら、入れたけど、それだけだった。

 最初はLIKEの方の好きだと思っていた。それはそうだ、血の繋がりはないとは言え物心付いた頃から「兄」として、認識してたんだから。

 母が亡くなり「兄」が泣き崩れた時、私はLOVE何だと確信した。

 彼の隣にいた人が居なくなり、私もとても悲しかったし寂しかった。でも、少し嬉しかった。

狂気に近い何かだったかも知れない。

 それでも私は嬉しかったんだと思う。死んでくれてありがとうとは思っていないけれど……。

 でも、「彼」には余りにも残酷な仕打ちだったのだろう。

 日に日にやつれていくのが分かる。
笑顔はとうに失くなった。

 偽りの笑顔なら満開なのに……
毎晩「彼」は泣いていた、声には出さずに、深酒が多くなった。

 私は母が昔着ていた服に袖を通した。
そして彼の横に座った。
ただ元気づけようと思っただけだったが

 それが良くなかったのか
私は「彼」に押し倒された

 私に反応したのかと思ったから
私は歓喜した……でも「彼」は私を見ていなかった。

「ああ、ソーニャ帰ってきてくれたんだね! もう離さないからな……」

そう言って寝てしまった……
安心したように……

どれくらい、こうしていただろうか……
1時間か2時間か分からないけれど

 急に目が覚めたのか……ガハッと起き上がり私を見た、一瞬笑い掛けて……困った顔をした。

 「楓……か? なんでお前かぁさんの服なんて着てるんだ? 」

ゆっくりと私を放して、そういった

「パパが苦しそうだったから……」
(違う……私が苦しかったから)

本音は隠した。言ったら壊れると思ったから。

そう言った私の頭を撫でてポソっと言った……

「すまない……」

と私に言った言葉では無かった気がした。

 その日を境に「彼」は「父」になった
私も「父」だと認識できた
仕事にも身が入ってドンドン家は裕福になっていった。

 毎晩下のお店からは笑いが溢れ
とても幸せそうな「父」の声もしていた

 それが壊れたのは突然だった
世界がその風に覆われ、大勢の人の悲しみで、世界が包まれていった

 絶望を撒き散らす風は私の家にも襲った、店からは人の笑い声は失くなり
「父」もまた苦しそうにしていた

 「店を手放そうと思う」
突然の告白だった、兄は直ぐにパパに賛同した

 私は……「ママとの思い出が無くなるのは嫌だ」と、反対した

 でもパパは「大事なのはお前らだよ」
そう言って笑った。なんの影も映さずに
もうそこには「父」しか居なかった

 昔聞いた昔話
母の稼いだお金で店を作って、修行に明け暮れて誰よりも早く独り立ちした

 必ず返すと約束したお金は、2年くらいで返してしまった

 あとは家族四人で楽しく暮らしました!って、いうお話。

 子供にも分かりやすくもっと砕けた感じで母が話して聞かせてくれた寝物語

(あれはこの店の話だったんでしょ? )

 私達の為に手放そうとしてるのは、分かるけど……と、不安そうな私の頭に手を載せて

 「必ず取り戻す」そう力強く言った
だから心配すんなって笑った

 それから団地に越してきた
第一印象「狭いっ」6畳の部屋をベッドで別けたら更に狭かった

 でも、パパとの距離も縮まって嬉しかった、家の足しになるかもと思って趣味で始めてたVTuberも、本格的にやり始めた頃

 父の顔にまた曇が陰った
思った以上に世界は厳しく仕事のない日々が続いたから

 だから、ネットで買ったセーラー服着て父を強襲してみた。母の服はもう一枚も無かったから。引っ越しの時に未練は残したくないって、捨ててしまった。

 その時の顔が、男の顔に見えた。
私は少しドキドキしてしまった

 それがいけなかったんだと思う。
久しく忘れていた「彼」だった人が
戻ってしまった

 もう「父」には、戻せなかった
日に日に「彼」を想う気持ちが増していった


    
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