異世界団地

あるちゃいる

文字の大きさ
22 / 56

22話

しおりを挟む
 街を出てから数刻が過ぎ、今夜の野営場所へと着いた

 倉庫は既に改造済みで、仕込みのできる部屋と
台所は一緒にして、4人部屋を作った。

 一樹は自分の倉庫で寝ると言ったが、折角の旅なのだからと同じ空間にしてもらった。

 食事を作るのは楓に任せた。猫は晩酌がしたいというので、一献付けたが沢山は駄目だと言ったら泣き出したが、そこは徹底したら諦めた

 猫の憔悴しきった顔と言うのは見てられない物があったが、心を鬼にして耐えた

 商売道具をそうそう振る舞っていたらアッという間に無くなってしまう

 そうなると、寿司や刺し身の出が悪くなる
まぁ、旅に生物を食べる強靭な胃を持ってる人が居るかどうかは分からないが

 野営地には他に団体さんが居た
ガリボリと保存食を齧っていて、とても味気ない食事をしていた

 まぁ、それが普通なのだろうが
なので、試しとばかりに店を出してウサギ肉の寿司を作り(無難に)提灯を掲げ【営業中】としてみた

 それを見た人がやって来て
「ここは店なのかね? 」と聞いてきた
「はい! 是非食べていってください! 」
そう進めてみた。

 じゃあ少しと言いながらカウンターに座って、壁に付いてるメニューを見出したが、分からなかったらしく、適当なものを出してくれと頼まれた。

 なので、サクッと兎肉の握りを出した
醤油を少し付けて食べて下さいとというと、一口で食べた。

 まぁそのくらいの大きさだしね
「うん。美味いね! ドンドン出してくれ! 」
なかなか好評で、握る速さが食べる速さに追いついて無く、度々待たせる事になってしまって居たので、お酒を勧めてみた。

 旅先なのと野営ということもあって、度数の高いのはやめて、生ビールをだしてみた
 
 これが、兎肉と合さって大好評
やがてその人の仲間も集まり始めて、すっかり宴会みたくなってしまった。

 夜は大丈夫なのかと聞くと、一応見張りを別に頼んであるからと言って、指差した方向を見ると

 何とも恨めしそうに見てる数人の護衛が居た
一樹に耳打ちして度数の高いラムを小瓶に入れて
渡す様に言い「寒くなるから少し飲んどけ」って言っといてと頼んだ

 小走りで向かって渡すと手を振って喜んでくれた
暫くすると腹が満ちたのか話しかけてきた

 「なぁご亭主よ、こんな美味いものを食ったのは初めてだ、どうだろう? この先の町で店を出してみないか? 資金なら儂が出資してやろう! 」

 そう言われたが「いえいえ、実は私共はその街から来たのですよ」そう言うと
「店持ちが何でまた旅なんかするんだね? 」
と、たいそう驚き唖然とされた
『俺もそう思うよ』と猫ニャンかお猪口片手に手酌で呑みながらやって来た
 それを見た商人は「あれっ!?魔法使いギルドのマスターじゃないか! 何してんの? 」
と、驚愕的な事を仰った

 「ギルドマスターっ⁉ 」思わず叫ぶのは仕方ないだろう、今の今まで知らなかった。職員とは思っていたが……まさか、マスターって。

 「仕事はどーしたんだ? 猫ニャン」
「ちゃんと言ってきたニャ。暫くヨロシクニャって、サブマスに」

 (うーわー……)と、全員の心の声が重なった気がした

 その次の日に、団体さんと「またいつか会いましょう」と言い合って、手を振って別れた。護衛さん達も、ご機嫌で手を振りあった

 移動寿司屋も中々の手応えを感じた良い夜だった。さぁ、行きますニャ!っという猫ニャンの掛け声で馬が馬車を引く、風が舞って窓から覗く俺の髪を揺らした




 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...